5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

阪神タイガースバトルロワイアル第六章

1 :依頼です:2005/06/13(月) 20:42:46 ID:rK7iU5f30
第一章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1094306095/
第二章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1099708704/
第三章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1102341356/
第四章 http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1108902838/
第五章 http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114253667/

2 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:46:22 ID:YT5Xur8Y0
2

3 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:48:54 ID:42cPxl8O0
保管庫
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
若虎BR紅白戦
ttp://homepage2.nifty.com/sorasouyo/wakatora.htm
暫定HTBR板
ttp://jbbs.livedoor.jp/sports/20081/
HTBR保管庫掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/sports/21871/

4 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:49:16 ID:42cPxl8O0
リレー関連

二章スレ939氏による選手一覧・時間表
ttp://www.geocities.jp/htbr_2004/list.html
ttp://www.geocities.jp/htbr_2004/time.html

5 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:49:40 ID:42cPxl8O0
他球団現行スレ

中日ドラゴンズバトルロワイアル第十一章
ttp://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114096225/l50
千葉マリーンズバトルロワイアル第6章
ttp://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1110970758/l50


関連スレ

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ4
ttp://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1113322101/l50

6 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:50:09 ID:42cPxl8O0
他球団バトルロワイアル保管庫

読売巨人軍バトルロワイヤル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/ (2004年版)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
千葉マリーンズバトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/

7 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:50:37 ID:42cPxl8O0
作品ガイド 1/6

『13◆2qL78YV/jc氏版』

タイガースバトロワの最初の職人である13氏による作品。
時期は2004年11月。舞台は人工島。
甲子園と人工島は地下通路で連絡している。

運営委員会からの『指令』というものがあり、これに沿わないと爆死するなど、
独自のシステムが特徴。

13氏が体調を崩しているため、しばらく休止の状態。

8 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:50:52 ID:42cPxl8O0
作品ガイド 2/6

『火粒◆0Afu/D6AhM氏版』

二番目の職人?である火種氏の作品。
時期は日本シリーズが行われる頃。
舞台はいずこかの遊園地。ロッカールームから出発。
どことなく詩的な文章が特徴。

短期間の投下ののち、動きが止まってしまっている。再開が待たれる。

9 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:51:04 ID:42cPxl8O0
作品ガイド 3/6

『328◆U/eDuwct8o氏版』

328氏による作品。現在、単独職人遂行型では最大の話数を誇る。
時期は2004年のいつか。オフシーズンであることがうかがえる。
舞台は阪神壬午園(じんごえん)球場。甲子園に酷似し、規模はその何倍もある球場。
武器はバットとボール、それにグラブが渡されるという異形のバトロワ。
少年漫画の如きアツい展開が特徴。

投下も頻繁にされており、人気を集めている。

10 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:51:16 ID:42cPxl8O0
作品ガイド 4/6

『781◆2Ud8ySLCX氏版』

781氏による作品。話数はまだ少ないが、強烈なインパクトを残す。
時期は2005年冬。選手らはキャンプ先のオーストラリアへ向かっているが、
搭乗機が攻撃を受け、不時着したマリアナ諸島のいずこかの無人島が舞台。
異形、といえばこれ以上異形のものはないであろう、
B級アクションのような独特の展開と文章が特徴。

しばらく前にも投下があり、マイペースながらも進行はしている様子である。

11 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:51:31 ID:42cPxl8O0
『リレー版』

プロ野球板におけるバトロワの基準方式であるリレーによる作品。
515氏、514氏、615氏、542氏、924氏の参加が確認されている。
時期は不明ながら、2004年オフシーズンと推測する。
舞台も不明ではあるが、元祖バトロワに近い感じの島のようだ。

神職人ぞろいだと個人的には思っている。泣かせの名文が多く含まれる。
読者による地図や参加者&武器の一覧などもあり、タイガースバトロワの看板的存在。

職人さんが複数いるせいか、投下頻度も高い。

12 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:51:51 ID:42cPxl8O0
作品ガイド 6/6

『49◆NRuBx8130A氏版』

最も新参の職人、49氏による作品。
各バトロワの投下が滞っていた時期に開始された新しいバトロワ。
時期は日本シリーズ終了直後。
舞台は何十年も前に廃坑になった鉱山の島。49氏自身から地図が提供されている。
長崎県端島、別名軍艦島と呼ばれる実在の島がモデルになっている(原作2も?)。

開始時期は遅いが、投下が頻繁であったため話数は進んでいる。

13 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:53:16 ID:42cPxl8O0
通りすがりですがテンプレ貼らせていただきました。
あとは投下、保守ヨロ。ノシ

14 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 20:56:49 ID:42cPxl8O0
>>5
ぬが、しまった! 更新忘れてたorz
↓こっちが正解。

ソフトバンクホークスバトルロワイアル第4章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117464758/

千葉マリーンズバトルロワイアル第8章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117500482/

中日ドラゴンズバトルロワイアル第十二章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117976320/

アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第一章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117769506/

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ4
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1113322101/

15 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:02:52 ID:8ujh2WQu0
>>1
スレ立て依頼をした者です。
ありがとうございました、感謝します!

16 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:08:50 ID:dEyzgqfz0
支援

17 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:22:25 ID:0qdevRfl0
hosyu

18 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:26:54 ID:8ujh2WQu0
保守

19 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:36:10 ID:kQ6LgT8c0
スレ立て乙です。
保守手伝い

20 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:40:09 ID:SUzfCzKa0
リレー:生存者の状況(二日目午後現在)
【 】内は支給武器

秀太 【銃】民家にいた庄田を殺害。彼および一緒にいた中谷の荷物を奪う。
中村豊 【不明】未登場。
鳥谷 【S&W M686】桧山、矢野と民家に潜伏中。当初はゲームに乗るつもり
    だったが仲の良かった筒井の死を知って改心。
藤原 【不明】山中で林と会話中のアリアスをいきなり撲殺。意図不明。
藪 【花火・爆竹】錯乱気味の藤川を救えず心身ともに傷ついた後、
   井川に救われ民家で過ごしていたが、片岡に襲われる。

21 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:42:31 ID:SUzfCzKa0
金本 【ピコピコハンマー】ゲームを壊すため「ゴレンジャー」と称するチームを
    結成。そのうちの藤本とさらに仲間を集めるべく行動中。
今岡 【SOCOM Mk23】好奇心を満たすため中村泰と野口を死に追いやるが、
    生と死について考えるうちに不安に襲われ、金本に会いたいと願う。
片岡 【IMIウージー】筒井と前川を殺害し、現在は藪と井川を攻撃中。
    完全にゲームに乗っており、殺人に快感すら覚えている様子。
藤本 【コルトパイソン 4インチモデル】金本と行動中。下柳のために中林に
    とどめを刺そうとした金本を止めるなど、しっかり者。
浅井 【不明】海岸近くで新井に撃たれ倒れるが、容態不明。

22 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:44:37 ID:SUzfCzKa0
太陽 【アイスピック】森で出会った萱島を冷酷かつ簡単に殺すが、我に返って
    激しく苦悩する。
安藤 【スタンガン】捜していた親友の吉野を石毛から救出し、意識を失った彼を
    連れて森に隠れる。
杉山 【トゲトゲ付きナックル】江草、狩野と行動中。三人のリーダー格。
    ゲームを憎みつつも護身のためには戦闘もやむなしと考える。
金澤 【不明】二日目朝、民家に潜伏していた。ゲームに怒りを抱いている。
吉野 【サバイバルナイフ】石毛に襲われ重傷を負う。安藤に救われるが意識不明。

23 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:46:18 ID:SUzfCzKa0
桧山 【メス】鳥谷、矢野と民家に潜伏していたが、矢野の仮眠中に外出し、
    まだ戻らない。
江草 【ザウエルP220】杉山と共に狩野を拾い民家に潜んでいたが、戸口で
    前川の遺体を見つけ、危険を感じた杉山の提案で移動する。
井川 【トカレフTT33】負傷し倒れていた藪を助ける。二人でゲームの背景を分析し
    阻止する手立てを考えようとするが、片岡に襲われ絶体絶命。
久保田 【閃光手榴弾】神社で桜井を心ならずも殺そうとしていた小宮山を止め、
      一緒に行動することに。
濱中 【長靴】葛城に銃を試し撃たせ、佐久本を殺させる。驚く葛城の前で佐久本の
    武器を奪い、「ある人に会うためには何でもする」と言い残して去る。

24 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:48:10 ID:SUzfCzKa0
久慈 【不明】海辺でパニックに陥っていた新井を救う。ゲームを食い止めたいと
    考え、選手会長たる今岡に期待を寄せている。
葛城 【ショットガン】濱中の計略で意図せず佐久本を殺害。危険を感じつつも
    「会いたい人がいる」との濱中の言葉を信じ、そのまま別れる。
三東 【白鞘の短刀】中村泰の死体を見て、生きるために人を殺すことを決意。
    牧野を負傷せしめ、沖原に殺意を抱くが、どちらも殺害には至らず。
林 【麺棒】山中で死のうとしていたアリアスを懸命に説得して翻意させるが、
  直後、彼は突如として現れた藤原に殺されてしまう。
矢野 【中国刀】ゲームに反対して殺された佐藤コーチの仇討ちを目標に
    鳥谷、桧山と行動中。鳥谷への疑念をぬぐいきれない。

25 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:50:45 ID:SUzfCzKa0
桟原 【木刀】牧野を救えず禁止エリアに残して泣く泣く別れた後、彼を襲った
    三東を捜している。
関本 【不明】自分の眼前で海に身を投げた福原の荷物と二岡への遺言を預かり、
    あてもなく単独行動中。
立川 【不明】未登場。
新井 【ニューナンブM60】はずみで石毛を射殺してしまった後、浅井にも発砲して
    取り乱していたが、久慈に救われる。
桜井 【カミソリの刃】ゲームに乗った一人。田村と松下を殺害。死に物狂いの
    小宮山に気絶させられ殺されかけるが、久保田の制止で助かる。

26 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:52:19 ID:SUzfCzKa0
赤星 【不明】「ゴレンジャー」の一員。人を集めるべく出かけた金本と藤本を
    「アジト」で他の二人の仲間とともに待っている。
ウィリアムス 【不明】未登場。
喜田 【金属バット】久慈を襲って失敗した上坂を殺す。さらに久慈を追うも逃がす。
小宮山 【ワルサーPPK/S】チーム最年少。桜井を止めるために彼を殺して
      自分も死のうと考えるが、久保田に助けられる。
狩野 【青酸カリ】風邪でダウンしていたが、杉山と江草に助けられ一緒に行動中。

27 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:53:59 ID:SUzfCzKa0
中谷 【空気鉄砲】一緒にいた庄田を秀太に殺され荷物を奪われる。その後、
    杉山らが去った後の民家で前川の遺体を発見。そこに誰かが来る。
伊代野 【日本刀】公園にて、三東と会話した直後の沖原を背後から殺害。
的場 【不明】冒頭で金本に「ゴレンジャー」に誘われるが、合流できたか不明。

和田 【不明】二軍コーチ。前球団社長・野崎の頼みでゲームを止めるべく島に渡り
    首脳陣にかけあうが、捕えられゲームに参加させられる。
木戸 【不明】二軍監督。和田と共に島へ乗りこみ、ゲームに参加させられる。
八木 【ライフル】先日引退した「代打の神様」。和田・木戸と島へ渡り、同じ運命に。

28 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:55:26 ID:SUzfCzKa0
リレー:死亡者

中村泰 【不明】選手中最初の犠牲者。ゲーム開始直後、今岡に射殺される。
     遺体は後続の選手たちに発見され、彼らに様々な影響を与える。
田村 【斧】松下を待っていたが、桜井にカミソリで首を切られ死亡。
福原 【グロック17】自分は殺し合いなどできないと考え、居合わせた関本に
    荷物と幼なじみの二岡への遺言を託して海に身を投げる。
上坂 【カマ】久慈を襲うが失敗し、直後、喜田に金属バットで撲殺される。
藤川 【サバイバルナイフ】森で出会った藪を恐怖と猜疑心から切りつけるが、
    血を見て我に返り、自責の念からか衝動的に自分の喉を突く。
筒井 【こけし】海辺の倉庫に隠れていたが、片岡に見つかり射殺される。

29 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 21:59:28 ID:SUzfCzKa0
石毛 【ボウガン】吉野を襲うが安藤に倒され動けなくなり、通りかかった新井に
    死体と間違えられ、突然の反応に驚いた彼に頭を撃ち抜かれる。
萱島 【柳刃包丁】ゲームに乗った太陽に戦いを挑まれ、やむなく受けて立つが
    アイスピックで延髄を貫かれ死亡。
佐久本 【カラシニコフ】葛城が濱中に頼まれ試し撃ったショットガンの弾に当たる。
下柳 【H&K MP5A4】金本と藤本に「ゴレンジャー」への誘いを受けている最中に
    中林に銃撃され、二人を逃がして応戦し、相討ちに。
中林 【銃】半ばやけになり、相談中の金本、藤本、下柳を襲う。マシンガンで
    対抗してきた下柳と撃ち合い、彼に詫びつつ息を引き取る。
松下 【コルトガバメント】桜井にだまされ銃を彼に渡してしまい、射殺される。

30 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 22:01:25 ID:SUzfCzKa0
野口 【カッター】今岡の口車に乗せられ、自らの頚動脈を切ってしまう。
前川 【十徳ナイフ】片岡に撃たれ逃れるも、杉山らの潜む民家の戸口で力尽きる。
沖原 【デザートイーグル】公園で三東と会話後、伊代野に刺殺される。
牧野 【ノコギリ】三東に襲われ負傷、桟原に救われるが足手まといに
    なりたくないとして、彼を逃して禁止エリアに残り、爆死を遂げる。
アリアス 【不明】死を決意していたが、山中で出会った林に諭され思いとどまる。
      しかしその直後、背後から現れた藤原に撲殺される。
庄田 【空気鉄砲】中谷と民家でのん気に過ごしていたが、秀太に殺される。

生存者:41人 死亡者:18人

31 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 22:04:34 ID:jjjUPhBZ0
このスレ何が面白いの?

32 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 22:10:49 ID:xTFyhkJC0
保守

33 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 22:34:27 ID:/33hn1X40
保守。

34 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 22:45:09 ID:l8ZtGhQX0
捕手


35 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 01:37:54 ID:zRTDNAAR0
虎バト復活おめ!リレーの続きが激しく気になる。

36 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 01:38:59 ID:tY6EFnVc0
ホッシャ

37 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 05:26:34 ID:VZgKj6SA0
矢野

38 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 10:20:36 ID:Zs8C8u2cO
ほしゅ

39 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 13:26:50 ID:atPJdhHZO
保守

40 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 18:20:29 ID:atPJdhHZO
再度保守

41 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 20:05:13 ID:/Hv08rVd0
保守

42 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/14(火) 22:08:39 ID:+s0Ccejq0
保守保守

43 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 01:16:55 ID:O2h37Dr50
捕手

44 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 16:38:48 ID:OLK/a/oHO
保守

45 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 16:41:20 ID:ShezO8cq0
保守

46 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 18:08:12 ID:0hgBJ5Of0
まったりと保守

47 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/15(水) 21:04:54 ID:CsO+Cttd0
星野の腰巾着である岡田と野村が対立しているということは、星野と野村も対立しているというわけだ。
ゆえに星野と野村が手を組むことはまず無いと考えてよさそうだ。
ということは、互いにそれぞれ腹にイチモツ抱えている計算になる。
この話、まだまだ裏があるな…?

「野村氏はですね」
今岡がそう思案をめぐらせていると、不意に頭上から声が聞こえてきた。
声の主は藤川だ。
太い木の枝に、藤川は立っていた。右手には、抜き身の刀が握られている。
「あなた一人だけは、殺さず生かそうとしたのですよ」
その切っ先を眼下の今岡に向け、藤川は飛び降りた。
即座の判断で今岡は三歩後退する。
今の今まで今岡の立っていた地点に刀を持った藤川が降ってくる。
「いきなり何や」
「かわしましたか」
「――死にたいんか?」
凄んでみせる今岡を前にしても、藤川はひょうひょうとした顔でおどけてみせた。
「おや、いまの話に心を動かされませんか?」
「なんやと…」
片眉を吊り上げて藤川を睨むと、藤川は温和な笑みを浮かべて「いいですよ、お話ししましょう」と言った。
「金本、アリアス、ウィリアムスに伊良部など、よその球団から多額の資金を用いて移籍させてきた選手。これらのすべてを皆殺しにし、あなた一人だけを残す。これが、野村氏の考えたシナリオです」
突然の藤川の言葉に、今岡は「はぁ?」と思わず毒気を抜かれた。
「アホちゃうか。そんな真似して何の意味があんねん」
「さぁ、どうでしょう。こちらとしても理解に苦しむ思考回路ですね」
「…オレ一人を、野村が…?」
藤川の言葉に、今岡は当惑した。

はっきり言って、俺は野村が嫌いだった。
巷では名監督などとおだてられていたらしいが、俺にとって奴は最低の監督だった。
――星野と野村のどちらにつくかと問われれば、俺は間違いなく星野につく。
野村にとっての俺は、ただのボヤきの対象に過ぎないだろうし、俺にとっての野村は、やる気を奪う最大の原因でもあった。
そんな野村が、何故…?

48 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/15(水) 21:06:22 ID:CsO+Cttd0
当惑する今岡の約70mほど後方、草むらの陰から突き出ている筒があった。
ライフルのような銃器の、銃口だ。それは真っ直ぐに今岡に向けられている。
今岡は気付いていない様子だが、岡田と藤川は、無論そのことを知っていた。


   “ イ マ ダ   カ ツ ラ ギ ”


今岡に悟られぬよう、指先だけの挙動で好機を知らせる。
それを確認するなりこれまで息を殺して潜んでいた葛城育郎は、大きく呼吸をし最後の照準を合わせた。

「……?」
ふと感じた違和感に、今岡は雑念を停止させた。
唐突に訪れた、この張り詰めた空気は第三者の登場を予感させたからだ。

 タァン!!

予感が確信へ変わるや否やの瞬間で、空気の裂ける音が辺りに響いた。
「しまった」と叫ぶ時間も、舌打ちをする時間もなかったと思う。
今岡に出来たことは、弾丸が飛んでくるわずかな間に急所をずらすことだけだった。
「――ぬぅっ……!」
弾丸が肩を貫くと、今岡は滅多に開かぬ眼を見開いた。
視線をわずかに左下にずらすと、肩口から夥しい量の鮮血が吹き出ていた。
平衡感覚の狂った今岡の身体は、不意に横転する。
今岡は、地に叩きつけられるその際に岡田の会心の笑みを見た。

(…もう一人…隠れとったとはな……)

…どさっ!


自分の体が地に投げ出される感覚を、今岡はまるで他人事のように感じ取っていた。

49 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/15(水) 21:09:00 ID:CsO+Cttd0
ども。


新スレ乙です。
久しぶりに書いたからなんだか違和感が…(´・ω・`)


50 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 22:10:44 ID:aq7osHCU0
職人さん、乙です!

51 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 22:11:30 ID:pr1NpnWVO
きたきたー

乙あげぇ

52 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/15(水) 22:57:52 ID:ceXv+mvx0
乙です!
だが今岡あああああ!!

53 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/16(木) 03:42:37 ID:T1HrJ+7z0
沖原【クレイモア】鳥谷とともに民家に潜伏していた岡田の情報をキャッチし
         入り口にクレイモアを設置。見事に岡田を爆殺。
         鳥谷は安否不明だが重症との噂。その後逃亡。

54 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/16(木) 14:58:02 ID:6lJ19aJq0
ホス

55 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/16(木) 17:10:35 ID:hOabaDd10
おお、新スレ立ってるやんけ。
新作も来てる!
激しく乙。

56 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/16(木) 20:59:26 ID:zzv8uvwc0
「着きましたよ」

藪と矢野を乗せた黒塗りの車は、大きな屋敷の前に止められた。
「星野のアジトです」
車から降りた高山ケニーが、藪と矢野を先導する。
「ここは…?」
「これは、オーナーの屋敷やないか」
「ええ、そうですよ。といっても、“元”ですが」
「元、ねぇ…」
「急病で死んだと報ぜられていますが、オーナーは星野によって暗殺されたのです」
「ふぅん…」

「さて、乗り込みますか。おそらく中は、敵がたくさん居ると思われます。どうか気を抜かないように」
「おいおい、大丈夫なんかい」
「心配は無用です。お忘れですか、私は戦闘のプロですよ?」
「はは、どないやろ…」
誇らしげに笑う高山に、矢野は思わず苦笑した。
「おい、早くしろ」
門の前で藪が急かす。
「そう急がれないことですよ。冷静さを欠いたら、大事なことを見落としがちになりますよ」
「なんやの、重要なことって?」
大きな門をくぐり、大きな庭に入る。
三人は特に警戒した様子もなく、一直線に玄関へ向かった。
「とにかく、ここはなるべく目立つ行動は控え、無傷のまま星野のところへ向かいたいところです。ここからは、戦闘のプロである私の指示に従ってください」
「へいへい」
矢野は気のない様子で生返事をする。
「まあ見たところ敵もいませんようですし、さしずめ私の実力に恐れでもなしたのでしょうか。誰だって死ぬのは嫌ですからね」
「あほかい。なんでそない自信満々やねん」
「それはもちろん、プロですから。こんな状況で、自慢もありませんが私はかつて“ベトナムの虎”と呼ばれ、畏れられていたものです」
「…なぁ藪、なんか食いモン持っとらん?」

もう誰も聞いちゃいなかった。

57 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/16(木) 20:59:48 ID:zzv8uvwc0
「………!」
そのとき、不意に藪は足を止めた。
それに合わせて、同じく足を止めた矢野は訝しげな表情で藪を振り返った。
「ん、どないしてん。おい、藪――」

「動くな、藪・矢野」
「……えっ!?」
聞こえた声に、視線を前方に戻すとそこには体格のいい男が五人ほど並んでいた。
「なんや、いきなりモロバレやん。どないする、戦闘のプロ?」
「えっと…とりあえず、逃げましょう!」
「無駄だ」
しょっぱなから逃げ腰の高山を、低い声で藪は諭す。
「え?」
「もう囲まれてる」
回れ右して振り返ると、後方には四人。
右にも四人。左には三人。皆一様に武器を構えている。
気付けば藪たち三人は、完全に包囲されていた。
「こ、これは一体…?」
高山は驚いた様子で目を丸くしていた。
「おいおい、これでええんかい。戦闘のプロが…」
最初から呆れっぱなしの矢野は、深い溜息をついてから高山をジト目で睨んだ。


早くもピンチである。


58 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/16(木) 21:02:57 ID:zzv8uvwc0

さすが洗練されたSPたちなだけあって、その包囲陣には微塵の隙も見当たらなかった。
妙な素振りを見せたら、一瞬で袋叩きにされることは火を見るより明らかだ。
「藪、どないしよ…」
「…………」
藪は答えない。無論聞こえていないわけはないだろう。
「…藪?」

藪は集中していた。
一点の隙も存在しないように見える包囲陣を、さらに精密機械のように細かく見据えて僅かなる隙を探そうと。
藪は考えた。
相手側は、まさかこの状況で突っ込んでくるとは思うまい、と。
それに、本来なら頼りにするべきだろう高山は、この人数相手に露骨に萎縮している。この挙動もかえって好機を呼び込んでいると考えてもいい。
ある程度の意表をつけそうだ。
「矢野、走るぞ」
ぽつりと、相手に悟られぬよう小さな声で藪は呟いた。
「は?」
「行くぞ」
間抜けな声をあげる矢野を急かすように、藪はもう一度言った。
返事を待たずに、藪は駆け出した。
「ちょ、おい、藪!」
「――な、なにをっ。死ぬおつもりですか!」
意表を突かれた矢野と高山は動けない。棒立ちしたままだ。
それでも、構わず藪は突っ込んだ。
「邪魔だ……どけ」
藪はSPのうちの一人に向かって、フルスピードでの体当たりを決めた。
「こ、こいつっ!」
「なめてやがるな…」
「取り押さえろっ!」
SPのうち一人を思い切り吹っ飛ばした藪だったが、声を揃えたSPたちによって、たちどころに押さえ込まれた。


59 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/06/16(木) 21:04:45 ID:zzv8uvwc0
「…失敗したか」

SPに羽交い絞めされながら、藪は軽く舌打ちした。
「あ、アホかお前ー。死にたいんか!」
矢野は慌てて藪に駆け寄ろうとした。
「動くんじゃねぇ! てめぇら、妙な真似が出来る立場だと思うなよっ!」
だが、舐められていると感じたのだろう。リーダー格と思しき男は怒鳴り声をあげ、動きを封じられた藪を思い切り殴りとばした。
「もういい、さっさと殺せ!」
男がそう言うと、複数名のSPは藪に銃口を向け引き金を引こうとした―――のだが、

「待つんや! 撃つんやない!!」

静止の怒鳴り声がその場に響いた。
場に居た男たちは皆、その声の主に顔を向けた。
その声の主は――

「……!?」
「あ、アンタは…」

「星野、仙一………」



―――星野だった。


60 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/17(金) 07:13:52 ID:+UBxxUdW0
乙です!
続きがめちゃくちゃ気になりながら保守

61 :542(1/5):2005/06/18(土) 00:13:02 ID:O6pZAuHr0
>>前スレ104

53.崩壊現象

決して。
決して、彼が憎いというわけでは、なかったのだ。
『俺の目の前でまたそれはないだろう、それは!』
叫んだつもりの言葉は、藪の身体の輪郭より外に出る事はなく。
(ひどいじゃ、ないか……)
理不尽だと。不条理だと、血で灼けて嗄れきった咽喉が叫んでいた。金切り声を
上げても、みっともなく縋りついても、一向に答えは帰って来ない。
どうして。どうして、こんな事に。
「、っあ……ぐ、う……」
単純な音の羅列はまるで意味を成さず、勝手に口をつく呻き声が血液と共に
垂れ流されていた。胸にどす黒く、毒が広がる。感情を蝕むそれは憎悪だ。
行き場のない、憎むべき対象を得られない、暗くて激しい奔流。
―――それでも、目の前に立っている狂気の男その人が憎いというわけでは
決してなかったのだ。少なくとも、藪にとっては。
「最初っからオレを疑うてきたんはあんたらが初めてや」
まぁ言うてもそんなにようさん会うたわけやないけどなぁと補足し、片岡は手の
甲で口元を拭った。鼻腔からの出血は既に止まっていて、代わりに笑みを湛える
肉薄の下唇がぱっくりと切れている。小首を傾げるように頭を振って顎まで伝う
血をなぞり上げ、拭いきれない残滓をぺろりと舌で舐めとった。
肉食獣の仕草だった。
「何か、言い残したい事とかないのんか?」
赤いものの混じった唾を吐き捨て、片岡。
井川に投げかけられた何気ない問いは、情けをかけるというよりは寧ろ純粋な
好奇心から来ているもののように思えて、藪はおぞましさに背筋を震わせた。

62 :542(2/5):2005/06/18(土) 00:13:47 ID:O6pZAuHr0
「何スか……何が、言いたいんスか」
「まぁアレやん。何となく聞いといたろうかなーなんて思ってん」
「フン」
うっわ、可愛くないなぁお前。
大仰に肩を竦めながら呟く片岡はごく自然で―――
(ああ、普通だ。普通の、いつもと同じアッちゃんだ……)
『普通』というのが一体何を指す言葉だったのかはとうに忘れてしまったような
気もするが、兎も角彼は以前と変わらぬ彼のようであった。それがまやかしで
ある事は疑うべくもない。藪は半分吹き飛んだ痛覚に首まで浸かったまま、
崩れそうになる身体を必死に支えていた。
「まぁええわ。聞いといても忘れてもーたら意味ないし?」
ちゃか、と軽く音をさせ、トカレフを真っ直ぐ井川の額に向ける。
片岡の顔には薄く笑みが刷いてあった。その意味は知らない。知りたくもない。
知ったところで自分に何が出来るというのだ。
(後輩一人も助けてやれないオレが)
生きている間、きっと死ぬ直前まであの残像と感触がついてまわるのだろう。
それでいい、それでいいんだ。そうでなければ。
(お前の言ってた事、正しかったなァ……)
『何でお前はすぐ大事な事忘れんねん。いっそグラブに書いといたろか?
 それとも何か、ショック療法でもやってみるとええんかなぁ』
真面目で、そして意外と短気な女房役の言葉が耳の中で木霊する。
ショック療法でどうにかなるんやったら苦労せんやろー、と口々に容赦なく扱き
下ろしてきた当時の投手陣年長組の事も思い出して、藪はちいさく笑った。
悲しかった。こんな事を、こんな場面で思い出す自分が悲しかった。
藤川の悲しそうな顔。あんな顔は見た事がない。衝撃は想像以上で―――
以前、自分の失投で件の女房役が殴られるのを目の前で見せ付けられた時も
それはそれで藪の頭をぐちゃぐちゃにかき回すくらいにはショックだったのだが、
人の生き死にが関わってくると、もはや限界を超えてしまっている。痛みの
代わりに彼の裡を満たしていたのは、つまるところ死に至る病というものだ。

63 :542(3/5):2005/06/18(土) 00:15:28 ID:O6pZAuHr0
『ホンマになぁ、ちょっとは考えんかい!』
(怒るなよ、矢野)
自分が不甲斐ないせいで、彼にはかなり辛辣な事まで言わせたと思う。
同級生という気安さもあったのだろう。自分はその気安さに甘えて、ちゃんと
向き合う事なく、受け流す事ばかり上手くなっていった。畢竟堪えない自分も
原因の一端だったのかも知れない。今となっては後悔ばかりだ。
「お前ももう疲れたやろ。オレも疲れたわ」
オレだって疲れたよ、と藪はごちる。片岡の笑った顔はつくりもののそれで、
何を信じていいのか、何が本当で何が間違いなのか判断するすべがない。
確実に言えるのは彼がきっぱりと壊れきっているという事だけ。
「そうゆうわけで―――さよならや、井川」
井川に向けられる、トカレフTT33。
安全装置が全く存在せず、すぐに撃てる。装弾数は8発。口径は小さいものの
火薬の量が多いため、貫通能力が非常に高く、それ故にマン・ストッピング・
パワーは乏しい。精度が良くてスマート、能力値は高い。だが決定力に欠ける。
「二人とも、すぐ楽にしたるよ」
添付された説明書を見せ、まるで藪さんみたいな銃ですねぇと井川は言った。
彼なりの冗談のつもりだったらしい。その時は一緒になって笑ってやった。勿論、
このガキ、からかいやがって、と軽く小突いた後でだ。
「じゃあな」
片岡が笑う。にこりと笑う。
オレみたいな銃で、井川は殺されるのか。
あんな恐ろしい武器がオレみたいだって?おいおい冗談も大概にしてくれよ。
オレはそんな事したくない。殺したくもないし、殺されたくもない。嫌だ。嫌だ。
大体、人を兇器に例えるなんて悪趣味ってモンだろ?ましてや例えた本人が
それで殺されるなんて滑稽だとしか言いようがない―――
―――ああ、でも。
そこで、はたと思い当たる。
―――オレみたいな銃なら、きっと欠点だって一杯あるんじゃないか?

64 :542(4/5):2005/06/18(土) 00:17:51 ID:O6pZAuHr0
『重度のマゾヒストですね』
井川の糾弾が舌先で転がる。シニカルと言うよりかは、哀れまれていたと解釈
するのが妥当だろう。ぽっと浮かんだ自虐的な発想はしかし、実際的確な認識
だった。銃の特徴通り弾は左肩を貫通しているらしい。重傷だ。だが重体では
ない。身体はまだ動く。ただ今度こそ左腕は使い物にならなくなったようだが。
『後悔すんで?』
矢野の声で、そう一言。
後悔。
これまで散々味わってきたその単語に対し、その時ほど強い焦燥感を覚えた
事はなかったと、後に藪は思う事になる―――
「―――」
白く白く、限りなく白く。抜け落ちる。染め上げられてゆく。
視覚も聴覚も嗅覚も、触覚も、味覚も。感覚という感覚、思考の糸の一本一本。
全てが白く浸される。考える余裕も考える気もなかった。身体が動く。不随意だ。
もはや自分のコントロール下にない己が肉体だったが、それをどうにかしようと
いう気はない。それはある種の既視感、或いは予感。
鉛のように重かった身体がゆらりと持ち上がり、小振りな兇器を拾い上げる。
何も考えなかった。
ふわふわと、頭の中が柔くてわけの解らないもので満たされる。
プロセスは簡単だ。利き腕が無事であるなら尚更。
まっさらな世界の中で、今度は違う声がした。曰く『大丈夫だよ』と。何が大丈夫
なんだ、と少し思ったが、考えるのが面倒になってこちらはあっさり放棄する。
もうどうでもいい。ああ、でも、どうでもいいって言うと語弊があるか―――
振り上げて、振り下ろす。
ああ、簡単、だ。

65 :542(5/5):2005/06/18(土) 00:18:48 ID:O6pZAuHr0
痛覚が完璧に壊れたらしい。
痛みはどこかに散逸し、代わりに温くて激しい熱さが隅々まで行き渡る。
「―――」
音が聞こえない。聴覚も壊れたのか?
「―――」
いや、本当はきっと聞こえている。聞きたくないと思うから聞こえないだけだ。
オレの身体が、勝手に聞こえないフリをしているんだ。いつものビョーキだな。
「っあ゙……、あ、ぁ!」
ほら、ちゃんと聞こえるじゃないか。嘘吐きめ。我ながらホントに困った奴だ。
まーた矢野に説教されるぞ―――
「この、っ、!!」
アッちゃん、怒ってるなぁ。
いや、怒らせるつもりはなかったんだけど、でも仕方ないじゃないか。
もう何か、イヤになっちゃったんだから。
そういう時ってあるだろ?ピンと張った糸がプツっと切れて、その後の反動が
凄くて、わけが解らなくなっちゃうって事。誰だってあるだろ?
オレさ、今、現実を見たくない気分なんだよな。
これ以上この続きは見たくないんだ。
仕方ないだろ?もう、ホントにちょっと疲れちゃったんだから。
だから許してくれよ。もういいだろ?一息ついてもいいだろ?
な?
だから、もう―――
「……疲れた、なァ……」
限界を超えるという事はつまり、壊れるという事だ。
その論理で行くと、藪は今まさに壊れようとしていた。誰が壊したわけでもない、
しかし確実に崩壊の連鎖を惹き起こし、彼を構成する回路がめちゃくちゃに
破壊されてゆく。元に戻るかどうかは神様の気まぐれ次第だ。あっさり修復され
るか、それとも足の下で踏みつけられ、粉々になって風化してしまうか―――
致命的な事に、処方箋を書ける人物は幾人もいない。

【残り41人】

66 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 11:09:52 ID:RIHZOOxF0
リレーキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!


67 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 16:32:12 ID:douH2qXj0
虎バトで一番気になっていた御大たちのリレーがうpされてて泣きそうになったよ…542さん乙です。ありがとうございます。大好きです。


68 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 19:21:06 ID:vsFU1fZR0
御大!!!
職人さん乙です。

69 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 21:15:18 ID:BM5jY/ZJ0
hosyu

70 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 21:59:29 ID:68QwrNRP0
職人さん乙です!
御大ついに…ウァアアン!

71 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/19(日) 17:37:50 ID:mKaiRdO90
捕手


72 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/19(日) 21:48:03 ID:QL/IqKev0
保守

73 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/20(月) 01:09:39 ID:BB7IOq2G0
[`ー」ー] ・・・ホシュ

74 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/21(火) 18:19:47 ID:B4hMwu/p0
ほしゅ

75 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/21(火) 22:34:25 ID:bNUsQMcT0
保守

76 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/22(水) 19:30:42 ID:kK0NVjb40
hosyu

77 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/23(木) 21:30:30 ID:LKIBP+It0
壊れゆく御大、すごくツボ。
作家さんたち、乙です。

78 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/23(木) 22:51:58 ID:r0mYPtbW0
上げます。

79 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/25(土) 00:27:25 ID:sP0INo6w0
hosyu

80 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/25(土) 00:29:13 ID:3hDk8rUG0
            ・ ∴.'
     / ^⌒⌒ ̄ヾ  ∴.'∴.
    /   /ノノヽ、ヽ:;∴.'
    l   ノ  \ / l ブチッ
    |  /  《;・,;》, 《・;》'|
   / ヽ|  、 _ , 。。、 _ 〕   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   | 6 l ヽ、__,-=ニ-、/  / この糞ヘッポコ野手陣が!8回を3失点に抑えたんだから
   `ーヽ  ヽコロコロコ <  ちゃんと援護せんかい!ボケナス共が!ムカツクんは俺様の
      ヽ   ヽニニノ    \ 代打で出た江豚!遊ゴロって何考えとるんじゃ!
   / | i | ヽ ー/\      \_____
  /   ヽr‐-‐-‐/⌒ヽ 
 r ヽ、  |_,|_,|_,h( ̄.ノ i 
 | ー-ヽノ| ` ̄`".`´"⌒⌒)
 |  ノ^ ( ヽ_ 入_ノ´ ̄ 
 ト、/   \_ /    | 
  |\     /     | 

糞スレ おめでとうございます。

81 :542(1/4):2005/06/25(土) 01:57:58 ID:WYHQBk0k0
>>65

54.貴女のその指先を、恋う

 細いリングを嵌めた、すべらかな手。
 かけがえのないもの。
 『恵輔?』
 ああ、可愛いなあ。我ながら惚れてるなと思う。特に笑った顔が可愛かった。
愛嬌があって、ちょっとした気遣いが優しい。いい娘だ。
 『凄い手だね』
 何百球、何千球の球を受け、すっかり分厚く硬くなった狩野の左手をそっと
包み込んで、そう呟く。マメの出来たでこぼこの手を、細い指先でゆっくりと
なぞり、うちまもる。手のひらに注がれる彼女の眼差しは優しい。
 ―――とても優しくて、温かかったのだ。
 『結婚?』
 狩野が低く呟いた言葉を反芻し、きょとんとしたあと、にこりと小さく笑んで
いいよ、とやっぱり小さく言った。思わず握り締めた手は冷たくて、か細くて。
寄り添うと髪からほのかにシャンプーの匂いがして、どきりとした。
 オレってガキみたいだなぁ。
 照れ隠しのように独りごちると、彼女がふふ、と控えめに笑い声を漏らし、
狩野の肩にことりと頭を乗せる。小さくて温かくて、少しだけ重い。
 どこかで細く高く鳥の啼く声がして、狩野はふっと目を閉じた。時の流れが
柔らかく淀み、いつまでもそこに佇んでいたいような心地よさに誘惑される。
 幸せというのは、きっとこんな形をしているに違いない。それは本当に稀少で、
しかし誰もが手にする事の出来る、そんなささやかな温かみ。
 誰そ彼どきの仄かな闇に紛れ、彼女が囁いた。
 『生きてるって、いいなぁって……今、凄く思ったよ』

82 :542(2/4):2005/06/25(土) 01:59:03 ID:WYHQBk0k0
 狩野は空を見上げた。
 「……」
 絶句する。僅かに開いたかさかさの唇から、滑らかな空気の塊が滑り出た。
背の高い草の間で、血の臭いがゆらゆら、ゆらゆら……
 「杉、山」
 江草の掠れた声が、妙に響いた。
 「佐久本さん……」
 目眩がする。
 乾いた地面の上に沈黙するその血に染まった死体、佐久本昌広(背番号47)
の変わり果てた姿が網膜に緑色の残像となって染みつく。佐藤や前川の血の
記憶を否応なく引きずり出され、胃の辺りに嫌な寒さが起こった。
 目の前でぱたぱたっと星が瞬いて、杉山の背中の18という数字が大きく歪む。
大きく小さく視界がかき混ぜられ、あ、しまった、と思った瞬間、中途半端に天を
仰いだ格好で膝が砕けた。
 「―――狩野!」
 左腕を掴まれる感触がする。身体を支える力なんかどこにも残っていなくて、
その場に座り込んだ。唇からたらりと唾液が垂れた事に気がついたが、止める
事も、拭う事も、況や吐き出す事も出来ない。
 「狩野、しっかりし」
 「大丈夫か?」
 肉体は、もう限界。
 「狩野、聞こえるか?聞こえてたら手ェ握り」
 頬を軽く叩かれ、左手を取られた。狭窄した視野の中でぐにゃりと湾曲する
杉山と江草の顔が、古びた映画のひとコマのように見える。
 「意識はあるみたいやな」
 指が動いたのか動かなかったのか自分でもよく解らなかったが、杉山がそう
言うのだから多分動いたのだろう。少し頭を動かしただけで脳髄がずきずきと
脈打ち、こめかみの辺りで不快なざわめきが絶えず起こっていた。
 「江草、そっち、両脚持って。そう……せーの」
 脇に杉山の腕が差し込まれ、身体が宙に浮く。胸中で何度も二人に謝ったが、
唇は固まってしまって動かなかった。

83 :542(3/4):2005/06/25(土) 02:01:01 ID:WYHQBk0k0
 (聖子)
 朦朧とした意識の中で、愛しいひとの名前を呼ぶ。返事はない。代わりに、
最後に見た姿が―――ひらひらと、薄いフリルレースのついた袖を振る仕草が
まぶたに浮かび上がる。
 「疲れがモロに来てんな」
 そっと木陰に横たえられ、額に濡れタオルを乗せられた。杉山の言う通りだ。
疲労で悪寒がぶり返してあちこちの関節が痛んでいる。首元から異様に汗が
噴き出すのとは対照的に、舌と上顎はカラカラだ。
 江草が何か相槌を打つのが聞こえたが、煮えたぎった脳は彼が何を言って
いるのか理解する事すら困難なところまで来ているらしい。
 苦しかった。辛かった。
 それが自分だけでないのは、解りすぎるほどに解っていたけれど。
 (帰りたいよ……)
 小さく呟く。帰りたい。どうしてこんな事になってしまったんだろう。どうして、
こんな酷い目に遭わなければいけないんだろう。人殺しにならなければ生き残
れないなんて、そんなの無茶苦茶だ。
 「狩野、水だけど飲めるか?」
 帰りたい。彼女の元へ。あの世界へ。
 息を吸い込む。身体を起こされるまま、唇に宛がわれたペットボトルの口から
水を飲むと、乾いて粘ついていた口腔が涼やかに潤された。咽喉元を緩く吹き
抜けた風が熱を宥め、皮膚の奥の疼きを和らげる。
 帰りたい。死にたくない。帰って―――彼女に、会いたい。
 (あ、……)
 もう一口含んで―――また蘇る。
 柔らかで冷たく、ほんのり甘い唇の感触。
 彼女の故郷、安芸の海に沈む夕日を眺めながら、一本のペットボトルを半分こ
して飲んだカルピスソーダ。乾いた白砂と、打ち寄せる波。寝転んだ浜辺から
伝わる大地の温かさ。
 ゆら、ゆら、潮風と戯れて揺れる彼女の髪が、肩越しに見えた。
 『リップクリーム、塗らなきゃ駄目だね』
 かさついた狩野の唇を指で辿り、彼女は微笑む。舌先に残るカルピスの甘さ。
初恋の味―――そんな懐かしいフレーズが頭を過ぎって、切なかった。

84 :542(4/4):2005/06/25(土) 02:02:02 ID:WYHQBk0k0
 胸元を探ると、嵌められた首輪とは別に、細い金属の感触がそこにある。
チェーンに通され、アンターシャツに浮かび上がる円い輪郭。片割れは彼女の
指に嵌っているはずだ。私、冷え性で困るんだよね―――手足の熱い狩野を
子供みたいだと笑い、それから肩を竦めてそんな事を言っていた彼女の手は
冷たく、とても繊細だった。
 ピンクパールのマニキュアがひらりと揺れて、止まる。
 『奥さんかぁ。何か、不思議な響きだな』
 少しだけはにかんだように笑う彼女の左手は、それとなく腹の辺りを押さえて
いる。それがあんまり愛おしくて、狩野は彼女の髪を撫でた。身体、大事に
しろよ。転んだり無理したり、するなよ。これでも凄く心配してんだからさ。
 『名前、考えようね』
 ああ、母親というものは、こんなにも優しく美しく、しなやかで強い生き物で
あったのか―――
 (……置いていけるわけ、ないじゃないか)
 愛するひとを。あの笑顔を。いつくしむべき、授かりものを。
 ―――置いていけるわけがない。
 額から目元を覆うタオルに隠れ、狩野は静かに泣いた。
 静かに、密やかに、声も立てずに、ただ涙だけを流した。押し殺した嗚咽は
身体の中にゆっくりと沈み、悔しさと恐怖と、苦しみを混ぜ合わせた色のまま、
昏い闇の中に呑み込まれてゆく。―――残ったのは、灰色の悲しみだけ。
 (もう、帰れないかも知れないよ……ごめん、聖子。ごめん)
 狩野は泣いた。
 冷たくて細い彼女の指先が、ひどく恋しくて。

【残り41人】

85 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/25(土) 02:49:51 ID:zWkHLRPD0
続きキテター ヽ(゚∀゚)ノ 毎度乙ですー
散ってた点が徐々に接触していってますねえ、リレー

86 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/26(日) 00:37:08 ID:Wt7gA90z0
職人さん、乙です!

87 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/26(日) 21:43:44 ID:PvAKANeQ0
hosyu

88 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/26(日) 23:23:27 ID:rKw4cDM90
保守

89 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/27(月) 21:24:59 ID:rh2D1vfx0
捕手

90 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/28(火) 21:25:53 ID:yjWWbV9W0
hosyu

91 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/29(水) 00:23:13 ID:1ht9GoJJ0
狩野タン、結婚してたんだ・・・

92 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/29(水) 17:09:21 ID:SjJW5gGJ0
ほっしゅ

93 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/29(水) 18:51:15 ID:q3C9rPlK0
保守

94 :542(1/5):2005/06/30(木) 00:30:31 ID:X0ACqROv0
>>84
55.乖離現象

 単なる衝撃。
 気付くまでに些か時間がかかった事は、認めざるを得ない。
 ひどく唐突なタイミングで背中に違和感が走り、片岡は思わず振り向いた。
いつの間に立っていたのだろう、焦点の合わない目をした藪が背後にうっそりと
佇んでいて、じっとこちらの顔を、そしてそこを素通りしてその先にあるものを
見ている。―――否、実際は何も見ていないに違いない。
 サカナのような、生気の薄い彼の目を見つめ返し、片岡はついと視線を下げた。
握られている。何が?鈍色のものだ。その先端に何がついている?赤いものだ。
赤いもの。それは何だ?
 ―――血、だ……
 「あ、あ、あ、」
 一気に。それこそ唐突に。焼け付く痛みが氾濫する。
 「……アンタは、っ……」
 切りつけられたのが首筋だったなら確実に死んでいただろう。
 膝をついた瞬間、指に痺れが―――恐らく精神的なものだ―――走ってトカ
レフを取り落とした。致命傷ではないが、左肩甲骨からわき腹にかけて、ざっくり。
兇器は切れ味の悪そうな、錆びついた包丁。
 油断、というのとは少し違う。と思う。
 イニシアチヴを完全に握ってなお、片岡の神経は過敏なまでに尖っていた。
無駄話をしているようでいて、実際には周囲360度全てに細心の注意を払って
銃を構えていたのだ。隙はなかった。はずだ。それなのに自分は一撃を喰らった。
 何故か?
 ―――藪の一連の行動からは、凡そ気配というものが完璧に欠落していたからだ。
 有り得ない話だが、足音一つなく息を吐く音もなく、衣擦れの音さえなかった。
彼は音と名のつくものを纏っていなかったのだ。あたかも、そこに彼が存在して
いないかのように。
 出し抜かれた事より何より、自分の理解のおっつかない現象に言葉を失う。
おかしい。こんなのはおかしい―――激昂が、温い不安に絡め取られる。

95 :542(2/5):2005/06/30(木) 00:30:57 ID:X0ACqROv0
 膝をついて固まったまま見上げてくる片岡を他所に、彼を抉った当の本人は
ふらふらと肩を揺らし、半開きの唇を閉じる気配もなくほとりと立っていた。
 血でぐっしょりと濡れてぶら下がった彼の左腕が片岡の視界に入る。薬指と
小指が失われている事はすぐ判った。その空白の隣、意外と細い中指と人差し
指の先端からは、ぽたぽた、ぽたぽた、赤い珠が躍る。
 血の水時計をぼうっと見遣る片岡の前で、藪がやおらトカレフを拾い上げた。
 「もうやだよオレ……」
 ネジの飛んだ目で、ぼそりと。
 「……あー、もうやだよ、ホントにさ」
 泣きそうな顔だった。
 しかし目は乾ききって充血している。これも、いつかどこかで見た表情。
 「……どいつもこいつも、どうして殺そうとするんだよ……」
 目に焦点がなく、黒い虹彩が厚いフィルターをかけたように輝きを失っていた。
それはつや消しの黒碁石が眼窩に填まっているようだった。
 「何が嬉しいんだよ。何が楽しいんだよ。―――オレはくるしいのに」
 いたいのに、くるしいのに。
 ぼろぼろと稚拙な言葉をばら撒き、小さく、細く、ため息。銃を持つ右手でゆる
ゆると自分の肩を抱き、あちこちに彷徨わせた視線をふと、片岡の上で止めた。
 どくん。
 「そうだよ……皆して、笑って。オレは、オレは、こんなに、」
 ―――何なんだ、この人は―――
 頭のどこかで鈍い音がする。
 片岡の中で、正体不明の何かが小さく弾ける。
 「なー、矢野ぉ、どーしてかなぁ……やっぱりオレがあかんのかなぁ……」
 こちらに銃を向けるわけでもなく、井川を助けるでもなく。
 ひどく、疲れきった表情。
 彫りの深い彼の顔が恐ろしく平面になっているのにはとっくに気付いていた。
 しかしそれが何を意味するのかは解らない。解らないだけに気味悪さが余計
つのる。―――最初は小さかったそれが、徐々に大きく、徐々に深く。
 「……あー、忘れてないって、ちゃんとおぼえてる、わかってる、解ってるって」
 とつとつ、とつとつ、誰かに話しかけるように。
 「オレがわるいのは解ってるよ、わかってるってば」

96 :542(3/5):2005/06/30(木) 00:31:29 ID:X0ACqROv0
 真っ赤な袖を纏った左腕がいやに不恰好に持ち上げられて―――左肩付近
に弾丸を撃ち込まれたのだから、腕を動かせた事自体が驚きだ―――ばつが
悪そうな顔をしながら、癖のある髪をグシャグシャとかき回す。滴るほどに袖を
潤す血が髪を伝い、額から頬から見る間に赤く汚れていった。睫毛が不規則に
しばたたく。頑是無くかぶりを振るたびに血が飛散する。
 好い声だ、と。かつてはそう思っていた。
 低くてよく通るそれはしかし、ふっつりと抑揚を失い、一本調子になった途端に
ひどく不気味なものになる。彼の全てが平坦な中で、しかし息遣いだけは異様に
激しくて、片岡は混乱していた。情報処理が上手く行かない。
 手掛かりを求めて、思わず倒れたままの井川に視線を遣った。
 ―――そして彼もまた、彫像よろしく硬直して藪を凝視していたのだ―――
 「でも、結局、どうしたっていつも……いっしょなんだよなぁ。何でかなぁ……
  オレなりにかんがえてるツモリなんだけどさぁ」
 これは、崩壊現象だ。
 頭の奥で激しく警告音が鳴り、不協和音を奏でる。赤いランプが点滅する。
このゲームが始まってから初めて、片岡は己の中の恐怖を受容する回路に
血液が巡るのを感じた。心臓が冷たい。胸に不快感が込み上げる。
 「うん……そやな、うん、そーかもな」
 答える者のない、イレギュラーな対話。藪の世界に片岡と井川は存在しない。
そこに唯一存在するのは、彼と『話し』ている人間だけだ。
 「え?……うん、そう。だから、次はちゃんとやってみせるから」
 藪はそっと『相手』の肩を叩いた。血が、また飛び散る。そこには誰もいない。
誰も彼には答えない。誰も彼を救わないし、癒さない。赦しもしない。
 しかしそれでも、藪にとってはそこに『彼』が存在しているのだ。
 「うん……ごめん、ごめんってば。うん、ごめん」
 ―――見たくない。自分が見たいのは、こんなものじゃない。
 「カントクにもいわれたよ。だから……そう、そうやな」
 違う。オレが見たいのは。
 「ああ、そやな。今度はそうするよ……」
 こんなものを見せるな。やめろ。腹が立つ。
 腹が立って……気分が悪い。
 きもちわるい―――

97 :542(4/5):2005/06/30(木) 00:32:00 ID:X0ACqROv0
 「うぁあぁぁぁぁああァア!!」
 湧き上がる衝動のまま。
 その胴体を、どん、と思い切り突き飛ばした。藪は抵抗すらせず、だが銃は
ぎゅうっと握り締めたままで木偶の如く転倒する。受身を取っている辺り、正気
なのか単なる本能なのかは判別し難かったが、そんな事はどうでも良かった。
 片岡はベッドの下に手を伸べ、ウージーを探す。へたり込んでいたのが嘘の
ように素早く飛び上がった井川が、何かを喚きながら藪を引きずって行くのが
目の端に映ったが、それよりも武器を取り戻す事が先決だった。
 あれがあれば、この殺戮ゲームでは断然有利になれる。
 そうでなくたってあれを失くすのは少々、いや大いに困るのだ。強い武器さえ
あればいつだってとどめは刺せる。いつだって、力づくで屈服させる事が出来る。
そう、筒井や前川を殺った時のように―――
 そんな筋道立った思考が展開したのは結局、身体が動いたあとだった。
 (胸クソ悪い……)
 気持ち悪い。腹が立つ。気持ち悪い。腹が立つ。気持ち悪い。腹が立つ……
 ああ、腹が立つ!
 「ハァ、ハァ、はァ……」
 息が上がっていた。本能的な忌避行動に頭がついていかないまま、ひたすら
片岡は執着していた。あの男の姿に、怒りと恐れという名の執着を抱いていた。
 それを執着と呼ぶのは、片岡にとってはきっと不本意な事なのだろうが。
 (何やねん。一体、何やっちゅうねん!)
 片岡は煽られていた。煽られて、嫌悪と敵愾心を剥き出しにしていた。あれは
気持ち悪い。あれは真っ赤に爛れて穢れている。片岡は思った。あれは自分
とは違う生き物だ。敵だ。異質なものだ。存在を許すべきではない。
 『―――でも、あれは』
 (違う!)
 『あれは、どこかちょっと、似てる』
 (違う!……違う!)
 否定の言葉は空しい。それでも片岡はその『声』を、己の存在全てを懸けて
否定した。自分を人殺しと呼びたければ呼べばいい。それはルールに則った
行為じゃないか。この武器を与えたというのはそういう事だろう?
 でもあれは、そういった範疇の話じゃない―――

98 :542(5/5):2005/06/30(木) 00:32:31 ID:X0ACqROv0
 『違わない。解ってないのはアンタだけだ』
 (違うゆうてるやろ!!違う!絶対に違う!!)
 戯言を振り払う。携えるのは、やっとの思いで取り戻したIMIウージー。
 (コイツだけは、手放せへん)
 それがいなくなったら、何かが失くなってしまいそうな気がするのだ。
 止まらなくなってしまいそうな気がするのだ。
 (どこや、どっちに行ったんや!)
 殺してやる。二人とも、思い知らせてやる。
 ざっと見回してもやはり人の姿はなかった。点々と続く血の痕を追い、二人が
消えた方向を目指す。床を踏み抜かんばかりの勢いで廊下を走り、玄関を駆け
下り、立て付けの最悪な扉を苦労して引き開ける。力任せに引き開けて、そして、
 「うわッ!?」
 外界は、真っ白に光り輝いていた。
 「……!!」
 自失する。固まった彼に対し、痛覚が反乱を起こした。身体は勝手に飛び退る。その事も理解しないまま、片岡はただ呆気にとられていた。
 「……何、が……」
 ―――血と悪意と腐臭で塗り潰されたはずの、この世界。
 なのにそれが今、白く鋭く、けざやかに閃くもので満たされている。
 白い衝撃が、闘争本能も嫌悪感も、何もかもすっかり覆い隠してしまっていた。
細く、息を吐き出す。舌がもつれ、目が乾き、頬がチリチリする。彼は空っぽの
ままそこに立ち尽くし、あの『屍』の目を思い出してした。光を反射する事もなけ
れば、吸い込みもしない。生きた人間を映さない、あの目を。
 白光はとめどなく、流れ続ける。流れて、落ちて、また網膜を灼く。
 「―――」
 混乱に巻き込まれた頭から血が引いたのは、たっぷり数分が過ぎたあとだった。
 白い光と音と熱と、煙が舞っている。きらきら、ぎらぎら。踊る。踊り続ける。
 踊い狂って流れ落ちて、そしてあとは静かに消えてゆくだけ―――
 地面設置型の、噴出花火。
 宙に向かって迸る炎はあかあかと無邪気に咲き誇る。そしてそ知らぬ風で、
おとがいまで薄く血の痕を残した片岡の顔をくっきりと照らし出していた。

【残り41人】

99 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/30(木) 03:23:53 ID:j9dfTK+g0
すげー!続きが来てた!!
片岡があっちゃんと呼ばれてるのにワロタ。

100 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/30(木) 16:29:00 ID:TBfiwetF0
いいわぁ〜

101 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/30(木) 18:43:49 ID:+ZGyO8zv0
こええええ!乙です…

102 :代打名無し@実況は実況板で:2005/06/30(木) 21:51:20 ID:i16cQ9Om0
ほしゅ

103 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/01(金) 00:14:45 ID:AdHilvlA0
sage

104 :514(1/3):2005/07/01(金) 15:14:54 ID:7Pbujl5r0
>>98
56.運命を打ち砕け

踏み締めた葉から香る緑に雨の匂いが交じり出した。
振り返ってみる。誰かいる訳がない。
薄暗い林に方向感覚を狂わされ、もはや自分が通った道さえ
分からない。それでもまだ自分は絶望していなかった。
なんとかなるだろうと楽天的な考えを持っている訳でもない。
自身のことより留守番を命じた後輩と、体調を崩した先輩の事が
心配でならなかった。
「はよ戻らんとな。」
それでも進む足はますます彼らがいる家から離れている気がする。
必死に縋り付き行くなと止めた後輩を振り切り飛び出しもうどれ程の
時間が経っただろうか。何故自分はあの家から出て行ったのだろう。
ご丁寧にも自分の鞄に食料や着替えを詰め、矢野の武器の中国刀を
持ち出した。
(本能、か)
自分は此処にいるべきではないと、自分の中の何かが告げたのかも
しれない。運命が存在して人にそれぞれ役目があるならば、きっと
自分は矢野と鳥谷を引き合わせる役目を請け負っていたのかもしれない。
だから、あの二人を会わせた時点で自分はあそこから退場しなくては
ならない。だから。出た。今の所、そうとしか自分自身思えなかった。
当てもなく歩き、木々を掻き分け森をさ迷う。ふと、立ち止まる。
(誰か、おる)


105 :514(2/3):2005/07/01(金) 15:18:23 ID:7Pbujl5r0
そのまま真っ直ぐ進んだ。がざがさと草木の音が鳴るがそれすら
構わず、自身の感覚を頼りに前へ進む。木々をくぐり抜け、そこ
には−−
「いま、おか。」
民家の前、立ち尽くす『彼』は焦点の合わない眼は虚空を見ていた。
それはまるで何かに縋るような−−いや、何かを探しているかの
ような、そう、いつもの『彼』らしくなかった。
今岡誠。冷静で頼れる、背中で引っ張る選手会長はそこにいなかった。
ユニフォームのズボンに血痕が付いていえ、一瞬身構えるが今岡自身は
今は攻撃してくる気配が感じられない。
気配で気が付いたのか今岡がこちらを向いた。目に覇気が全く無く、
今岡らしくないなと思ったがそこでふと思い直す。
(今岡らしい、って何や)
誰かが言っていた。今岡と自分は正反対の選手会長だと。
良くも悪くも自分と彼は正反対で。対談式のインタビューをした時
も話が噛み合わず聞き手のアナウンサーが苦笑いして呆れていた。
ああそういえばそれは優勝した時だったか−−約一年前の出来事なのに
遥か昔のことのように、それは懐かしい香りを伴い蘇ってきた。
優勝旅行の地は温かな気候の土地だった。煌めく陽射しの下、じんわり
と汗をかきながら今岡も自分も、皆笑っていた。誇らしげに。
(もう二度と戻ってこんのや)
しかし今、目の前にいるのは迷い子のような眼をした今岡。
(誰かに似てるな)
そうだ、あの時の鳥谷だ。茂みを掻き分けてきた自分に、彼は銃を
構えていて、今の今岡に少し似た、追い詰められた目をしていた。


106 :514(3/3):2005/07/01(金) 15:21:58 ID:7Pbujl5r0

静かな声が自分の名を呼んだ。名前を呼ばれたのはひどく久方振りな
気がして、緩く笑った。
そして桧山は唐突に絶望を知った。
常に付き纏っていた自分自身の死の予感が急激に膨らんでいく。
桧山の経験上こういう予感は外したことはなかったから、余計に性質
が悪い。
−−自分はここで今岡の手に掛かって死ぬ。
運命という言葉では片付けたくなかった。それでも、この最低なゲーム
に、この予感に、この遭遇に、自分が今置かれているもの全てに何か名前
を与えるとするならそれしか桧山は思いつかなかった。
(今岡、お前なら何て名前をつける?)
あぁ、自分の死を知ったら、あの二人や妻や息子はどんな顔をするだろうか。
鳥谷は自分を責めるだろうか。矢野も思いつめていたようだが、思い直して
くれたらいいが。そうだ、妻のお腹には二人目がいるのに、その子の顔は
見れそうもないな。息子はまだ小さいから理解出来ないだろうか。それでも
桧山は心中で詫びずにはいられなかった。ひたすら繰り返す。すまない。ごめん。
(俺はたぶん)
桧山は一度目を閉じ、ゆっくりとまた開いた。今岡が立ち上がっていた。
こっちに、来る。
悪意を持たない、けれど密やかな、無意識の攻撃性を持つ、迷い子が。
雨が降る前特有のじっとりした湿りが桧山の体を包む。汗が伝う。暑い筈
なのに不思議と冷たかった。

(ここで、死ぬから。)

【残り41人】


107 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/01(金) 17:02:11 ID:4RfLpKWq0
いつもお疲れ様です。
今岡と桧山、こんな状況で(しかも今岡が揺れている時に)遭遇したら
一体どうなってしまうのか・・・
案外、桧山に説得されちゃったりなんかしそうな気もするけどw
金本と今岡は会えるのかとか、矢野と鳥谷のその後も気になります。
あー、続きが気になる・・・

108 :514:2005/07/01(金) 20:56:25 ID:R4Sf99jzO
すみません、今岡の台詞が抜けてました
三つ目、一行目に
「……桧山さん。」
追加です。申し訳ありません
保管庫さん、お手数おかけします。

109 :514:2005/07/01(金) 20:56:36 ID:R4Sf99jzO
すみません、今岡の台詞が抜けてました
三つ目の一行目に
「……桧山さん。」
追加です。申し訳ありません
保管庫さん、お手数おかけします。

110 :514:2005/07/01(金) 21:03:06 ID:R4Sf99jzO
やってしまった……_| ̄|○
すいません……

111 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/01(金) 21:07:14 ID:0fx4cgox0
乙です!この2人、どうなるんだ・・・

112 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/02(土) 10:04:36 ID:LyTzrT8i0
保守

113 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/02(土) 18:34:20 ID:DTHRLcHv0
ほす

114 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/02(土) 23:38:42 ID:N66FcGj+0
職人さん乙。モナは桧山まで手に掛けちまうのか・・・

ところで、保守の時に何でもいいから一言添えるキャンペーンとかどうよ?
好きなキャラでも願望でも負けた鬱だでも何でもいいから。

115 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/03(日) 17:59:02 ID:29VS7Ajo0
hosyu

116 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/04(月) 02:30:34 ID:KCIfvs2l0
保守

117 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/04(月) 15:14:25 ID:JsHVv1ju0
うんこ

118 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/04(月) 19:44:00 ID:mqMAW62E0
捕手

119 :924(1/4):2005/07/04(月) 23:07:22 ID:d+Yaowio0
>>106より
57.信頼できる人

「俺に起こったことは、これで全部です」
最後にそう言って、小宮山は自分の話を締めくくった。
気を失った桜井を伴ってあの神社からほど近い民家に落ち着いた後、久保田と
互いのこれまでについて語りあった。もっとも久保田にはさしたる出来事は
なかったため、もっぱら小宮山が話すことになった。

体育館を出てすぐ田村の死体を発見したこと、太陽が萱島を殺す場面を目撃
したこと、そして桜井とのこと、――いずれも思い出したくない悪夢ばかりだ。
久保田は話したくなければ無理には訊かないと言ってくれた。しかし、小宮山は
あえて身の上に起こった一切を話した。自分を救ってくれた久保田にはすべて
包み隠さず語っておかねばならないと考えたからだが、現実から目を
そむけないという決意も込めてのことだった。ただひとつ、桜井を手にかけたあと
わが身をどう処するつもりだったかは話さずにおいた。

「俺と違って……大変だったんだな」
小さなちゃぶ台の向こうで終始腕組みをしたままほとんど相槌を打つこともなく
じっと耳を傾けていた久保田はようやく言葉を発した。
「……って、大変で片付けられる話じゃないな。……よく話してくれたな」
「いえ、聴いてもらって良かったです」
「そっか……」
岩のようにどっしりしたたたずまいと、のっそりとした話し方は普段と変わらない。
およそ何事にも動じることのなさそうな久保田だが、それきり何かを考えるように
黙ってしまった。かなり衝撃を受けているらしい。
小宮山もこれ以上話すことはなく、重苦しい空気が二人を包んだ。

120 :924(2/4):2005/07/04(月) 23:09:52 ID:d+Yaowio0
「……まだ起きないか?」
不意に久保田は体を傾け、小宮山には背後にあたる隣の部屋に視線を
投げかけた。そこに仰向けに寝かされている桜井の膝から下だけが
半ば閉められた襖の陰から見えている。
見てきます、と小宮山は這うように隣室に移動し、薄暗い影の中に横たわる
桜井の顔をのぞきこんだ。頭に巻かれた包帯はわずかに赤く染まっているが、
血は止まっていた。しかし、依然として目覚める気配はない。

小宮山は再びもとの部屋に戻り、不安そうに告げた。
「まだです。もしかして、このまま意識が戻らないなんてことは……」
「……べつにヤバそうなところはなかったし、大丈夫だろ。起きたら起きたで
 大変そうだし」
久保田にしてみれば小宮山の心を軽くするための言葉だったのだろうが、小宮山は
複雑な気分になった。桜井の容態は心配だが、目を覚ました時にどう扱えば
いいのか見当がつかないのだ。実際、ここに着いて最初に久保田と取った行動は、
桜井の頭の手当てよりも何よりも、意識を回復した時に備えてその身体を
いましめることだった。今、彼の身体はこの家にあった荷造り用ひもや粘着テープで
がんじがらめだ。

「まあ……また起きた時に考えりゃいい。それより、この先どうするかだ」
小宮山の戸惑いを見透かしたように言うと、久保田は組んでいた腕をほどき、
ちゃぶ台の上に置いた。
「このままだと、俺たちは最後の一人になるまで殺し合わなきゃならん。俺は
 殺すのも殺されるのもごめんだ。……お前もだろ?」
一瞬言葉につまった後、小宮山は久保田の視線から逃れるように目を伏せ、
小さな声ではい、と答えた。言われたとおり、殺すのも殺されるのも嫌だ。
しかし理由がなんであれ、自分は人を殺そうとした。その事実が後ろめたく
感じられた。

121 :924(3/4):2005/07/04(月) 23:11:59 ID:d+Yaowio0
「……だよな。だから、なんとかしてこのゲームを止めないとな」
今度は小宮山の迷いに気づいた様子もなく、久保田は続けた。
「でも、どうすればいいんでしょう?」
「簡単に分かりゃ苦労しないさ。……まず、俺たちだけじゃどうにもならん」
久保田はデイパックを引き寄せると、中から名簿を取り出し、広げた。
「16人死んでるってことは、殺した人がいるってことだからな……。中には
 事故なんかがあるにしても……」

小宮山も名簿を開いた。昼の定時放送の時にも恐怖にうち震えながら繰り返し
目を通した。この中にいったい何人の殺人者がいるのか――と。
「ひょっとすると……残りはもう30人くらいかもな。けど、殺し合いに乗った人
 ばかりってこともないだろ。中には信頼できる人もいるはずだ」
名簿に目を落としたまま久保田は続ける。
「矢野さんとか……金本さんとか……今岡さんとか、大丈夫だと思うんだけどな。
 あと、杉山とか江草も……」

(信頼できる人――か)
そういう人物がいるかについて、小宮山は今まで一度も考えてみなかったことに
気づいた。昨夜からの苛酷な体験のせいで、誰も彼もが恐ろしく思えてしまうのだ。
しかし久保田に救われたことにより、ようやく気持ちに余裕が生まれた。
冷静になって考えてみると、一人の先輩が頭に浮かんできた。

『よろしく。ルーキー同士、これから頑張ろうな』
それが彼から最初にかけてもらった言葉だった。去年の12月、入団発表のために
横浜から関西を訪れ、甲子園を見学した時のことだ。前月のドラフトでタイガースが
ただ一人指名した高校生だった小宮山は最年少のうえ同級生がいない。不安と
緊張で萎縮しどおしだったが、同期入団の先輩四人はみな優しかった。
中でも何かと気を遣ってくれたのが、鳥谷だった。

122 :924(4/4):2005/07/04(月) 23:14:37 ID:d+Yaowio0
それだけでも嬉しかったが、さらに帰りの新幹線で一緒になり、いろいろと話を
聴く機会を得た。東京六大学のスター選手でドラフトの目玉だった鳥谷は名前を
知るだけの頃から憧れの存在だったが、実際に本人に接してその気持ちはさらに
強くなった。彼の野球への思い、練習に対する姿勢、工夫、数々のアドバイス。
それら一つ一つに感銘を受け、心に刻みつけた。同じ寮で生活する今も、
毎日だれよりも遅くまで練習する鳥谷の姿には敬服するばかりだ。

(鳥谷さんは――大丈夫ですよね? 信じても、いいですよね?)
小宮山は心の中で呼びかけた。"大丈夫"という単語には二重の意味がある。
まず、鳥谷が命を落とすとは考えられない。きっと今もどこかで無事でいる。
そして、彼ならこのゲームに乗るようなことはないはずだ。

「とりあえず……誰か探すにしても明日にした方がいいな。もうすぐ夕方だし、
 天気も悪くなってきたし、いろいろあってお前も疲れてるだろ」
身体をひねって窓の向こうの空をうかがっていた久保田が言った。だが、その
声は小宮山の耳には届いていなかった。次第に高揚しつつある心に
つき動かされるままに小宮山は立ち上がった。久保田が驚いて顔を上げる。
「久保田さん。俺、行ってきます」
「え?」
「仲間になってくれそうな人を探しに行きます」
目を丸くしている久保田をよそに、小宮山はカバンを手に取り肩にかけた。

【残り41人】

123 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/04(月) 23:19:19 ID:WTdhbXKf0
バンビ!思いつきで行動するな!本気で死ぬぞ!w

・・・職人さんに乙と言うよりも先に、心の中でこんなツッコミを
してしまいました。でも小宮山はこの純粋さ加減が(・∀・)イイ!!
段々と選手同士の絡みが多くなってきそうなフラグが立ってますね。
職人さんたちいつも乙です。また新作楽しみにしてますんで!

124 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/04(月) 23:33:23 ID:87PJ+GIH0
職人さん乙です。
仕方ないとはいえぐるぐる巻きにされてる桜井ワロスw
久保田は年下の小宮山と一緒なせいかもしれないけどなんだか頼もしいな
でも今岡はやばいって(((( ;゚Д゚)))

125 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/05(火) 01:36:32 ID:N1GlDJv70
でも「大丈夫そうな人」に今岡を分類する気持ちはわかるw

126 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/05(火) 22:10:43 ID:tn7pjBbCO
圧縮回避age

127 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/05(火) 23:37:28 ID:WrnqKXKp0
捕手

128 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/06(水) 22:42:34 ID:NrZ9GSpj0
保守

129 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/07(木) 19:33:49 ID:ylsvOONX0
ほっしゅ

130 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/08(金) 18:16:41 ID:5m90aPfO0
[`ー」ー]

131 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/09(土) 16:54:48 ID:YbUlGqIH0


132 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/10(日) 13:38:12 ID:8+6P/yd90
hosyu

133 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/10(日) 18:35:56 ID:Do8yt2zI0
捕手

134 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/10(日) 21:33:50 ID:AdodtQUq0
★山手線で新形式が営業を始めた年度の翌年度に阪神優勝!!
昭和18年度  63系入線 19年度 阪神優勝!!(の繰り下げ)
昭和21年度  63系独立 22年度 阪神優勝!!(大阪タイガース)
昭和36年度 101系入線 37年度 阪神優勝!!
昭和38年度 103系入線 39年度 阪神優勝!!
昭和59年度 205系入線 60年度 阪神優勝!!
平成14年度E231系入線 15年度 阪神優勝!!

そして、、、

平成16年度 E231系2階建てグリーン車登場
(湘南新宿ラインの『Suicaグリーン券』で乗れるグリーン車です。)
 湘南新宿ラインは、一部で埼京線の線路を走りますが、
 これは「山手貨物線」といいます。

今年は、その翌年の平成17年です。


135 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/11(月) 02:05:15 ID:KzX23kdo0
職人さん達本当に乙です、全てに泣きそうだ…

136 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/11(月) 16:53:30 ID:qKLvmbcp0
ちょ…名作…

137 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/11(月) 21:49:00 ID:Tb28WyJZ0
hosyu

138 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/12(火) 22:34:18 ID:TmnYLcnq0
見守るスレで知ったけど939さんのリレー進行状況が更新されてますね
いつも乙です!

139 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/13(水) 05:47:06 ID:dKQrCU4U0
おお、こっちでもクボタンがいい味出してますね。

・・・ばんびは行動する前に3秒立ち止まって考えれ。

140 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/13(水) 15:18:32 ID:wPrX3p/WO
捕手

141 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/13(水) 17:40:39 ID:fmxSX//j0
職人最高 保守

142 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/13(水) 20:19:43 ID:8VcNXyGS0
御大… 保守

143 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/14(木) 11:08:01 ID:eRz0yN6+0
捕手

144 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/14(木) 22:29:30 ID:flrpU1hk0
捕手

145 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/15(金) 11:28:54 ID:I8Dsy4oV0
[`ー」ー]

146 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/15(金) 19:40:20 ID:VnKUF1EM0
hosyu

147 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/15(金) 23:47:15 ID:1pMJLhI90
保守

148 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/16(土) 14:39:22 ID:xG5lsD6d0
ほしゅ

149 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/16(土) 23:09:16 ID:cVC8z+nk0
こんなにこのスレにハマるとは思わなかった…
職人さん、乙です。

150 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/17(日) 17:27:42 ID:ZeWMJhAh0
神レベルの職人さんだらけだ
保守

151 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/18(月) 09:53:23 ID:LeOB37qC0
hosyu

152 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/18(月) 14:47:01 ID:y+fHexsg0
 ,,;;フ;リ;カ;ケ;フ;リ;カ;ケ,
          ノノノ        从
         (シノシノ       从从
        ノノ) ノノ         i、(((i、
        ノノノノ((          从从 
       ( i从  〓〓ノ   〓〓 从从
       i、从 -=・=-   -=・=- 从从   
      ノ从从       l     /从从人 
     (人从:|.∴ヽ    ∨    /∴|从从人)
     (人人人  !  ー===-' !  从从人人)       
      i、人人人ヽ   ̄  U  ノ i、人人ノ
           同じスレにはコピペ 
           できるけど、違う
           スレにはコピペでき 
           ない不思議コピペ


153 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/19(火) 13:44:34 ID:Q/ovGxNB0
ほしゅ

154 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/19(火) 14:01:11 ID:zdJfIaYO0
職人さん乙です。
保守

155 :924(1/4):2005/07/19(火) 23:15:49 ID:ZRw3e5CT0
>>122より
58.絶体絶命

突然のことに声も出なかった。膝をつき、前川の足にシューズを履かせ
かけたまま中谷の全身は硬直した。だが、驚いたのは相手も同じらしい。
30センチばかり引かれた戸の隙間から出した顔を即座に引っ込めたからだ。
心臓がまたしても激しく脈を打ちはじめる。敵か? 味方か? どうすれば
いい? 金縛りにあったかのように身体が動かない。そうこうしているうちに
相手が戸の陰から再びこちらを覗きこんできた。曇っているとはいえ明るい
戸外を背にしているため、顔がよく見えない。

「それ、お前がやったのか?」
落ち着いた声が頭の上に降ってきた。中谷はハッとして前川のシューズを
手放した。取り落としたと言った方が正しいかもしれない。
「違う……俺やない! 俺はただ、血の跡たどって来ただけや」
中谷は大きく首を振りながら答えた。
「ふうん」
素っ気ない相槌とともに引き戸が大きく開かれ、一人の男がゆっくり中に
入ってきた。中谷もよく知っている同級生――喜田だった。

「……前川さんか。昼の放送で名前呼ばれてたな」
「そ、そうや。さっき俺が来た時には、前川さんはもうとっくに死んでたんや。
俺が犯人やったら、いつまでも自分が殺した死体のそばにいるはずないやろ」
中谷は懸命に自分の潔白を主張したが、喜田は関心がないといった風情で
足元の前川をじっと見下ろしている。相手が鳴尾浜でなじみの仲であった
ことに若干の安堵をおぼえた中谷だったが、おびただしい血にも驚きや
嫌悪感を示すことなく、手にした金属バットで前川の身体を軽くつついたり
しながら確かめる喜田の様子に再び胸の内で不安がざわめきはじめた。

156 :924(2/4):2005/07/19(火) 23:18:44 ID:ZRw3e5CT0
「なるほどな」
観察を終えた喜田が視線を前川からこちらに移した。目が合った瞬間、
中谷は背筋に寒気を感じた。普段と変わらないようでいて、底知れぬ冷たさを
たたえているように見えたのだ。
「で、お前はここで何してるんだ?」
果たして、自分の現状を正直に言っていいものかどうか。心ある相手なら、
助けてくれるだろう。だが、そうでない相手なら自分が明らかな弱者だと
教えることになる。
「俺は……」
中谷が答えに迷って口ごもったその時、喜田の金属バットが一閃し、
脳天目がけて落ちてきた。ばきっ、と大きな音が響く。

「な、何するんや!」
転がりながらかろうじてよけた中谷は、尻餅をつくように座り込んだ姿勢で
喜田を見上げた。
「何って? 殺し合いしろって言われたのを忘れたのか?」
喜田は床板にめり込んだバットを引き、とんとんと叩いて先端の木屑を
払った。中谷はようやく自分が最悪の事態に直面していることを知った。
相手は完全に殺すつもりでいる。それでも問わずにはいられなかった。
「お前……やる気なんか? 殺す気か?」
「殺す気も何も、俺はもう一人殺してるんだ」
さらりと事もなげな答えが返ってくる。

「悪いな。お前が二人目だ」
金属バットの先端がすっと顔の前につきつけられる。中谷は座り込んだまま
ほんの少し後ずさった。その分またバットが近づく。また後ずさる。と、背の
後ろの床についた右手が何かに触れた。さっき置いた釘抜きだ。
「俺が二人目なら……一人目は誰や?」
好奇心からというより時間を稼ぐために中谷は質問した。悟られないよう
釘抜きをそっと握る。まだあきらめてはいなかった。

157 :924(3/4):2005/07/19(火) 23:20:34 ID:ZRw3e5CT0
「上坂さんだ。あの人の最期は間抜けだったな。久慈さんを殺そうとして
 逃げられて、へこんでたら俺にやられたってわけだ。けど、お前も相当
 間抜けだな。そんな靴はいてるとこ見ると」
バットの先が中谷の顔からつま先へと移動し、止まる。
「心配するな。すぐ終わる。上坂さんも痛いとか思うヒマはなかったはずだ」
相手はこちらの狙いを知らずとくとくと語る。その間に中谷は必死に考えた。
次に喜田が打ちかかってきた時が勝負だ。絶対にかわす。そして向こうが
体勢を立て直す前に、この釘抜きで攻撃する。
中谷がイメージし終えた時、喜田が両手で静かにバットを構えた。

「恨むなよ、中谷。お前は生きてたって仕方ないだろ?」
「……どういう意味や」
今度の問いは時間稼ぎが目的ではない。聞き捨てならなかったからだ。
「あのまま阪神にいたって、どうせそのうちクビだろ。ドラ一だから今まで
 置いてもらってるようなもんで」
恐怖で満たされていた心の中でわずかながら怒りに火がついた。釘抜きを
持つ手に力が入る。

「お前にそんなこと、言われる筋合いはない」
中谷は傲然と自分を見下ろす喜田を精一杯にらみつけた。
「筋合いがあろうとなかろうと、本当のことだろ」
「それでも……それでも、俺は死ぬわけにいかん。俺には……守らなあかん
家族がいる」
だが、中谷の悲痛な思いを喜田はふっと鼻で笑った。
「家族のため? 冗談だろ。だってお前、嫁さんとは――」
「やめろ!!」
全身の血が一気に頭へと逆流した。中谷は信じられないほどの瞬発力で
立ち上がり、釘抜きを振り上げて猛然と喜田に向かっていった。

158 :924(4/4):2005/07/19(火) 23:25:18 ID:ZRw3e5CT0
次の瞬間、釘抜きは床に落下していた。
中谷は低くうめき、激痛の走る右手を左手で押さえた。満身の力をこめて
振りかざした武器は、素早く反応した喜田のバットにあっさりはたき落とされて
しまったのだ。間髪を入れずバットがうなりを上げて襲いかかってくる。
中谷はすんでのところでかいくぐると、低い姿勢で一目散に外へと向かって
走り出した。

手の痛みは中谷が失いかけていた冷静な思考を取り戻させた。喜田の
並外れたパワーは二軍で一緒に練習しているだけによく知っている。たとえ
素手でも自分がかなう相手ではない。ここで怒りにまかせてやりあえば、
九分九厘負ける。すなわち殺される。だから、逃げる。これが結論だった。
ああも侮辱されながら一矢報いることもできず逃げ去るのは本意ではない。
しかし今は、逃げるしかない。屈辱と怒りと悔しさが頭の中を渦巻く。

後ろから追ってくる喜田の足音を聞きながら、中谷は全力で走った。
窮屈な革靴では走りにくいことこのうえない。それでも走る。民家の間を抜け、
森へと分け入っていった。島のどこを走っているのかまったく分からない。
前川は正午前に死んだという。ならば、あの地図には示されていない
禁止エリアがあるはずだ。いや、それが判明していたところで自分がどこに
いるか不明なのだからどうしようもない。分かるのは、今立ち止まって捕まれば
確実に殺されるということだけだ。

中谷は背後を振り返ることなくひたすら走った。しかし、喜田はもはや
あとを追ってはいなかった。あることに気付いた彼は、距離が開くのも構わず
足を止め、カバンから地図を取り出していた。迷走する中谷の足はまさに
懸念していた禁止エリア――体育館方面へと向かいつつあったのだ。
そのことを知るよしもない彼は、ただただ一心不乱に走り続けた。

【残り41人】

159 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/20(水) 04:47:32 ID:8mVIx9E00
かー!中谷タン生き延びてくれ・・・

前スレから気になってたんだよぉ。
靴を取り替える暇もなかったんだね。。。

160 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/20(水) 19:22:22 ID:MKLTf/7m0
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
職人さん乙です

161 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/20(水) 23:27:16 ID:oVKDvg/z0
職人さん乙です。
中谷は突っ走ってって大丈夫なんだろうか…

162 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/21(木) 01:13:53 ID:OjK1saLC0
喜田怖ぇーよ喜田・・・職人さん乙です。
ここに来て中谷がちょいと気になる存在になってきたね。
気になると言えば秀太や伊代野、太陽、三東あたりのゲームに乗った面々が
この後どう動くのかも気になる。

163 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/22(金) 22:31:59 ID:cQyiXWPk0
保守

164 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/23(土) 20:17:19 ID:vn9yy98mO
矢野様

職人さん乙です
吉野ファンとしては彼等の現状が気になって眠れんです

165 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/23(土) 23:22:57 ID:4nLpPbpv0
職人さん方いつも乙です

自分はゴレンジャーが気になってます
彼らの活躍に期待してます

166 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/24(日) 20:56:01 ID:rpoOs03Z0
ほしゅ

167 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/24(日) 23:45:32 ID:PJz6zbPn0
捕手


168 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/25(月) 05:00:49 ID:tAfYmP4V0
保守

169 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/26(火) 04:00:54 ID:JxGZZlhr0
保守

170 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/26(火) 04:39:03 ID:+NGdD3dv0
禁止エリアって、入った瞬間あぼーんなの?


171 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/26(火) 22:19:10 ID:piiUcO6I0
捕手

172 :170:2005/07/27(水) 09:15:24 ID:dKfpVhfy0
だれかおしえてお

173 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/27(水) 13:22:02 ID:CLn0Q3mc0
あぼーんだけど、細かいことはこれから出てくるやも、待て

174 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 00:22:09 ID:8FFWGKy40
最近このスレを読み出した者ですが、名作揃いで感動しました
今更リレー参戦というのは出来ないんでしょうか
神職人揃いで、人数も少なくなってきている中でちゃちゃを入れるのは
神職人さんたちの今後の予定の邪魔になってしまいそうで((;゚Д゚)ガクガクブルブル なところもあるので
ご意見お願いします。

175 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 05:21:03 ID:IugE42QA0
保守



176 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 07:23:44 ID:uqMi4LI00
>>175
1人の読者としては読んでみたい気もするけど…
どうなんだろ?

177 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 07:24:30 ID:uqMi4LI00
あ、ごめん、>>174でした…orz

178 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 09:10:02 ID:sj1LPS3D0
>>174
職人さんщ(゚Д゚щ)カモォォォン
だけど今からだと一人で一つの物語を書く方がいい気がするな


179 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 18:49:56 ID:kxlfkvFa0
hosyu

180 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/28(木) 23:08:50 ID:yyQRNQ+y0
捕手。
個人的には新職人参加でリレーのカンフル剤をキボンヌ

181 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 02:41:09 ID:9XlSyzDa0
ていうかリレーは許可制でもないから、書いていいかと言われてもみんな結論は出せない。
リレーでやりたいならまずは一本書いてみることをオススメする。

有りや無しやの判断は職人さん含めみんながしてくれる。
よほど酷い文章じゃなきゃ案ずることもないと思うがね。

182 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 04:03:30 ID:GFu5yC5x0
age

183 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 21:03:58 ID:OGJAZimb0
リレーは確か職人さん専用の打ち合せ板があって、
アドレスは管理人さんと現職人さんしか知らないはずだよ。
新規職人さんが参加するときはどうすんだろう?

まず一本書いてこれならOKってことになってから
打ち合せ板のアドレスを教えてもらうのか、
最初に打ち合せ板で誰それを使いたいとかこんな展開にしたいとか
ほかの職人さんに相談した上でデビュー作に取り掛かるのか。

184 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 21:31:50 ID:vpc8qV0B0
皆さんレスありがとうございます
全員に返信した方がいいですよね。ウザかったらすみません
>>176
どうなんでしょう・・・
>>178
えーと、すいません、一つで一つの物語というのはどういう意味なんでしょう
新しく初めから一つバトロワを作るということでしょうか?
>>180
カンフル剤になれたら嬉しいですが
同時に職人さんたちの予定を狂わすことになったら・・・という逆の気持ちもあります
>>181
そうですか。
ただ初めからここにいたわけではないので暗黙のルールとかがあっても分からないのですが、
どうも見ているとキャラ担当制(?)のような感じになっているので、
他の職人さんたちが動かしている選手を勝手に使っていいのか、ここが一番悩んでいます
試しに一本書いてみて、その反応を見てダメっぽかったら(文章能力、勝手にキャラを動かすetc)
削除してもらっても私は構わないんですが・・・
>>183
マジですかΣ(゚д゚lll)ガーン
そんな掲示板が・・・orz
>>181さんのアドバイスにのっとって先に一本書いてみようかと思ったんですが、
それなら勝手に投下しないほうがいいですかね・・・
管理人さんか他職人さんの降臨を待つべきでしょうか

やはりこの時期に新規参入したいなんて無謀でしたかねorz
なんてこと言ってしまったんだと昨日から心臓がバクバクしていますよ


185 :174:2005/07/29(金) 21:32:38 ID:vpc8qV0B0
あ・・・184は174です。名前入れ忘れましたすいません

186 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:15:14 ID:25C9fZ2l0
>>184
>>181氏の言うとおり、とりあえず書いてみても構わないとは思う。
文章が良かったら歓迎されるし、ダメだったら叩かれるしで反応は絶対に返ってくるからね。
でも、どうしても不安だというなら職人さんが降臨するまで待ってみてはいかがでしょう?


187 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/29(金) 23:47:41 ID:9XlSyzDa0
選手を勝手に使うことを心配しているが、実はまだ未登場の選shう輪n何をすr(ry

あと他所の書き込みだが(勝手にコピペするけど内容としては問題ないと思うので)


587 Classical名無しさん sage 05/07/29 23:22 ID:ICiET/TQ
虎書きの端くれだけど、規制されてる上に私生活上の理由でずっと投下出来ないでいるし、
手をつけた選手をなかなか進められなかったりして色々申し訳なく思ってる。
ので、新しい職人さんが来てくれるのはいい事なんじゃないかと……
自分は他人の事言えるレベルじゃないから、文とかもよっぽど破綻してなきゃおkだと思う。

188 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 00:55:31 ID:m9PBCoBE0
>>186
ありがとうございます。
もしダメだったら削除されるのは全然大丈夫です。
とりあえずある程度書き終わってるので近いうちに投下してみることにします(`・ω・´)
時系列的に微妙なんですけどバトロワなのでいいっこなしで

>>187
未登場の選shう輪n何をすr(ry だけを登場人物に話を進めるのはかなり厳ry
でもちょっと使ってみたい選手がいたりします
どこのレスか分からないですがありがとうございます
そこが一番気を遣うところなのでちょっと胸が軽くなりました。

189 :174:2005/07/30(土) 00:56:44 ID:m9PBCoBE0
187=174
また・・・・orz

190 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 01:50:48 ID:Hcwx3B650
>>188
文章力以上に過去の話と辻褄が合ってるかどうかが大事なので
投下前に確認しておいたほうがいいよ
前にも参加しようとした人がいたけど話に大きな矛盾があって批判が続出
職人さんたちは何とかその話を生かす方向でいたけど
書いた本人がそれきり来なかったので修正のしようもなくて
削除と決まるまでリレー全体が長期間滞ったことがあったから

でも新しい職人さんの参加自体はみんな歓迎してたし
自分も174さんの話を楽しみにしてます

191 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 02:01:49 ID:m9PBCoBE0
>>190
はい、その辺は大丈夫です
あまりいてもウザいと思うのでそろそろ消えますノシ

192 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 02:42:44 ID:HbDhlisU0
待ってるよー!

193 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 17:44:40 ID:LGeEQQjV0
保守

194 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/30(土) 21:00:26 ID:U+SsAY8x0
捕手

195 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 13:40:26 ID:tB8R66K4O
圧縮恐いので保守age。

196 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 14:45:35 ID:VEt+3/JE0
久しぶりに保管庫でリレーの進行状況表見てたら
>精神崩壊気味(SYBSか)の藪
の表記に笑ってしまった

197 :542氏代理投下(1/4):2005/07/31(日) 20:07:52 ID:ESbx1+b20
>>158
59.横顔と隻影
 「オレさ、耳いいんだよねー。カラオケも得意だし」
 ともすると舌足らずにも聞こえるその口調に対し、そりゃ嘘だ、と遠山奨志(元背番
号52)は胸中反射的に突っ込んだ。まぁ流石に下手とは言わない。言わないが、
 (自分で音痴だって言ってたの、どこの誰ですか)
 彼の柔らかそうな癖っ毛の襟足を眺めながら、遠山はもう一度突っ込んだ。
 勿論声に出すなんてヘマはしない。大して意味の無い前振りにいちいち異を唱え
るのは面倒だ。それに下手に伊藤を拗ねさせるのも大人げない。
 「だからさ、お前の声聞いてピンとね、来たんだ」
 ね、鋭いでしょ?
 伊藤敦規(元背番号47)は俯き加減の東辰也(背番号96)にゆらりと微笑んで
見せた。相変わらずの童顔で、年甲斐もなく八重歯を覗かせてにこにこ笑う男だ。
 自分との属性の違いを再認識しながら、遠山は頬杖を突き突き傍観を決め込む。
 適度に薄暗く、適度な客足の店内は、やはり適度なざわめきで満たされていて、
遠山たちが遠山たちである事には幸い誰も気付いていないようだった。反面それが
どこか寂しいような気もしたのだが、世の中所詮そんなものだと割り切る事にして
カップに口をつける。―――ああ、少し煮立ちすぎなんじゃないの、このコーヒー。
 (とりあえずこっからどうオトすかが問題なわけで)
 本当ならどこか三人だけになれる場所が良かったのだろう。
 が、車の中ではそれこそ落ち着かないだろうし、カラオケボックスでは個室といえ
ども締まりがなさ過ぎるというものだ。
 とまれ、バイパス沿いのファミレスというチョイスの適当さは否定しないが。
 「なーんかさ、どっかで聞いた事ある声やなって思ってさ。ずーっと考えてったら、
  お前の顔がパッと思い浮かんだんだよね。やっぱりアタリやったなぁ」
 銀の器に盛られたアイスクリームを木の匙で掬って、嬉しそうに口元へ持って行く
様子は子供のそれだった。彩り良く鎮座する紅白の氷菓に飾られたセルフィーユの
葉を、男にしては細い指先でひょいと取り除ける。彼の仕草は無造作だが、しかし
決してせかせかした印象はない。
 そしてついでに緊張感もない。
 「これ結構美味しいよ。遠山も食べてみる?」
 敢えて、ツッコミは入れずにおいた。

198 :542氏代理投下(2/4):2005/07/31(日) 20:10:06 ID:ESbx1+b20
 「もう一つ追加で頼もっか。イチゴも美味しいけど、違う味のがいいよね」
 どう?とメニューを指す彼に、早く本題に入りましょうとは決して言わない。言える
雰囲気でもなかったし、そもそも言う必要もないだろう。
 主導権は既に伊藤の手中にある。 
 遠山はこっそりため息をついた。ウェイトレスを呼び止め、アイスクリームのダブル
をも一つ、バニラと抹茶のでね、と心持ち弾んだ声で告げるのを眺めながら、
 (この天然さ加減はある種の武器だよなー)
と心の中で独りごちる。勿論褒め言葉だ、これは。
 「遠山は甘いモンそんなにイケないけど、東は食べるやろ?」
 不意に、衒いなく笑いかけられて、東が眉の辺りをビクリと引きつらせた。
 (……解ってやってるんかな、この人は)
 彼の人はにこにこと笑っている。裏表なく、年齢不相応な幼さの残る顔で。
 それに相対する青年は、広い肩幅を縮めるようにして俯いている。
 (あーあー、その笑い方は逆効果だわ、アツさん)
 伊藤の怖いところだ。
 何の含みもなく、無邪気に笑っている時でさえ、その目のどこかに相手をじっくりと
観察するような光が宿っている。本人も意識してはいないのだろうし、それどころか
気付いてさえもいないのかも知れない。
 穏やかな眼差しの中に在る、一本の鋭い針。
 しかしその隠された毒性にこそ、伊藤敦規という優しくて鷹揚な男の熱さ烈しさ、
決して低くないプライド、本能と呼ぶべきしたたかさが秘められているのだと思う。
 そういうところに、遠山はたまらなく惹かれていた。昔も今も。
 「落ち着いた?」
 問いかけに、ハイと小さく答える青年の声は掠れた響きを帯びている。
 遠山は苦いコーヒーを呷った。伊藤は漸く本題に入るつもりになったらしい―――
そのタイミングが厭味なほどに絶妙であり、さり気ない。
 本当にタチの悪い、巧妙な、人の好い男。
 「ココア、冷めるから飲みなよ」
 「……ありがとうございます」
 促されておずおず手を伸ばす東のマグカップの中で、白いホイップクリームがゆる
ゆる溶けていく。ふー、ふー、と吹いて冷まし、ぎこちない手つきでひとくち含んで
少し黙り込んだあと、青年はぽつり、おいしいスね、と呟いた。

199 :542氏代理投下(3/4):2005/07/31(日) 20:12:46 ID:ESbx1+b20
 その呟きをきっかけに、沈黙が暫しその場を支配する。ゆらゆら湯気が揺れる中、
何度か瞬きを繰り返した彼の目元が赤く腫れている―――ような気がした。
 (しっかし……要するにこれってさ)
 表情を硬くした東青年を前にして微妙に引っかかっていたのは、これが所謂事情
聴取だとか尋問だとか呼ばれる類のものなのであろうかという事だ。―――仮に
この場面、自分の相棒が伊藤ではなく葛西であったとしたら、些かおっかない光景
にも見え兼ねないような気がするのだが。
 「疲れた時は、甘いもの食べなきゃね」
 笑う伊藤。彼のアイスクリームは、いつの間にか綺麗に平らげられていた。
 東はひとくちふたくち飲んだだけでカップを戻してしまい、叱られた子供のような貌
をして紙ナプキンを弄んでいる。細く、短冊のような形に繊維を裂いては三つ編みに
してみたり、捻ってみたり、無心に繰り返しながら伏し目がちに口を噤んでいる。
 (……自分からサイン出すつもりはないって事か)
 遠山と同じ判断をしたらしく、伊藤はウエハースの最後のひとかけを口に放り込み、
それでね、と続けた。途端に東がひたりと指を止め、咽喉を上下させる。
 コーチ契約取り消しの電話の意図にせよ、球団の微妙な異変にせよ、不可解な
事柄は山積みだ。―――さて伊藤はどこから切り出すのか、お手並み拝見。
 「訊きたい事は色々あってさ……実はね、昨日くらいからなんやけど、葛西と連絡
  が取れないんだ。携帯にも出ないし、自宅に電話掛けても誰も出ないし」
 いるんだよね、大事な時に限って連絡がつかない奴って。困るよねー。大体、携帯
して使ってなきゃ携帯電話じゃないと思わない?
 愚痴っぽい伊藤の声を聞いているのか聞いていないのか、青年の指先は無為に
動く。ぴり、ぴり、と短冊が増え、白いフリンジが卓上5ミリの超低空をひらひら舞う。
 「東は聞いてないかな。練習の事とか言ってた?どこかに行くとか、用事だとか」
 ぴりり、ぴり。
 「練習のスケジュールとか」
 こつこつ、と短く切り揃えられた爪の先でテーブルを叩いて、伊藤。
 「何か、普通じゃない、特別な事があったとか」
 ぴ、。
 「―――聞いてるんじゃない?」
 ……びり、……
 「―――」

200 :542氏代理投下(4/4):2005/07/31(日) 20:15:06 ID:ESbx1+b20
 「知ってる、ね」
 遠山の視線上、淡い赤で印刷された筆記文字が、真ん中から裂けていた。
 (……ど真ん中ストレート、ピンポイントで行ったな)
 東はちょっと気の毒になるくらい目元を歪ませ、紙ナプキンの両端を握っていた。
 伊藤としては緩い変化球から入ったつもりだったのが、初球から見事なまでに
核心を突いてしまったらしい。流石は伊藤敦規、単なるお人好しとは一線を画す
―――などと自分でもわけの解らない感心をしながら、遠山は二人のやり取りを
観察する事に徹していた。
 「それで東は、何を知ってるの。―――教えてくれるかな」
 「僕は、」
 青年の大きな手の中で、くしゃ、と紙ナプキンが丸められる。つっかえながら言葉
を紡ぐ。しかし伊藤は決して急かさない。決して、無理強いはしない。
 「僕は、……僕は」
 「うん」
 「僕は、本当は」
 「うん」
 ただ、静かに彼の言葉を待つ。どんなに時間がかかっても、彼はきっと本当の事
を教えてくれるはずだ―――伊藤がそう確信しているらしいのが伝わってきた。
 東の今にも泣き出しそうな顔が、そう思わせたのだろうか?
 「……僕は」
 「うん」
 遠山奨志は、伊藤敦規の横顔をじっと見ていた。
 それは相変わらず穏やかで、優しくて、人好きのする、温厚な「アツさん」で。
 「伊藤、さん。葛西さんは……僕に」
 「……うん」
 青年の唇が微かにわなないた。
 力の緩んだ手のひらから、押し潰され、丸められた紙屑が転がり出る。二、三度
揺れてから卓上に沈黙したその表面に、赤い文字が蚯蚓のように這いつくばって
いた。まるで苦しんでいるかのように。痛みにのたうつかのように。
 その赤い影が、何故だか強く、遠山の目に灼きついていた。

【残り41人】

201 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 22:48:11 ID:bBRDKrwe0
職人さん乙です!
課長、素敵だ…

202 :代打名無し@実況は実況板で:2005/07/31(日) 22:48:37 ID:sfVrwlLc0
542さんも代理の方も乙です
課長たちがいよいよ…!?

203 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/01(月) 21:48:43 ID:I+Re/ir+0
hosyu

204 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 01:08:59 ID:YRNP7hiW0
緊張感がある場面なのに、課長ったら。。。

205 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 01:57:14 ID:prSrAvtyO
捕手

206 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 15:52:18 ID:cPe/623S0
保守

207 :174(1/5):2005/08/02(火) 22:11:03 ID:0SlYG+hd0
60.天の導き

 関本健太郎(背番号44)はいまだ海岸沿いを南に下って歩いていた。
 遠くに別の島の影が見えた。まだ明るいので灯りは見えないが、人家はあるのだ
ろうか。死ぬ気で泳げば辿り着けるだろうか――どうせほっといて死ぬなら、泳い
で逃げてやろうか。
 そこまで考えて、関本は最初の岡田の言葉を思い出した。「勝手に島から出たら
首輪が爆発する」と。
「はぁ〜……」
 ため息が出た。無力だ。実に無力だった。
 精神的な疲労は肉体の疲労を促進させる。気を張りつめて、岩や繁みに隠れなが
ら進むのはそれだけでも相当な労力を要した。異常に足が重い。鉛のようだった。
 少し休憩しようと、関本は岩陰に腰を下ろした。
 目の前で福原忍(背番号28)の投身自殺を見て、次に筒井和也(背番号19)
の亡骸を見て――それ以来、関本は死者にも生者にも出くわさないまま、ただ歩い
ていた。
 とにかく誰かに会わなければならない。海岸沿いを歩いているのは、森などに比
べて視界の開けた場所が多く、誰かを見つけるには適していると判断したからだ。
 誰かに会って――どうする?
 関本は考えた。あまり考えたくはないが、そういうわけにもいかない。
 自分が頭が悪いのは百も承知だが、今はその脳をフル回転させる。
 一緒に行動したい。一人は危険だし、自分一人では何も出来ないだろう。だが複
数人だからといって信用出来るだろうか?
 もう殺し合いは始まっているのだ。福原忍はともかく、筒井和也は確実に誰かに
殺されていた。定時放送の度に増える死人も、それを表している。
 自分はどうしたいのだろう? 関本は己に問いかけた。
 とにかく、福原の遺言は全うしたい。そのためには生きてこの島を出なければい
けない。自分が最後の一人に? そんなことはあり得るのだろうか。想像しかけて
ぞっとした。

208 :174(2/5):2005/08/02(火) 22:12:17 ID:0SlYG+hd0
 もしかしてこのまま誰にも会わないで、その間に全員が死ねば(恐ろしい言葉だ。
使いたくもない)あり得るかもしれないが、そんなことは考えたくもない最悪の
フィナーレだ。このまま誰も死なずに、かつこのくそやくたいもないゲームを放棄
できるなら――綺麗事でも何でもなく、大部分のまともな人間はそう思ってるはずだ。
(ちくしょう……)
 あの胸くその悪い首脳陣球団幹部は別だ。自分で手に掛けたいとまでは思わないが、
死んでしまえばいいとは思う。福原を追いつめた、筒井を殺した、今チームメイトを
――去年ひとつになって優勝という夢をもぎ取った自分達を――殺し合わせようと
している狂人どもなど。
 このゲームが明るみに出たら、奴らなど当然豚箱行き、社会的地位を失ってしまう
だろう。むしろ死刑だ。どれだけ軽くても終身刑だ。タチが悪すぎる。
 関本は怒りを静かに胸に秘め、拳を握りしめた。爪が掌に食い込んで、痛みを伝え
てくる。
(どうやったら、このゲームを終わらせることが出来る?)
 逃げ出すか、奴らを倒すか――なんでもいい。殺し合い以外の選択肢で、このゲーム
を終わらせることが出来るなら。
(でも俺は何も出来ない……)
 何もない。頭も悪いし、鋼の肉体があるわけでもない。取り立てて人徳があるわけ
でもない。自分の無力さに、情けなさすら感じる。
 だからこそ、関本は誰かに会いたかった。
 誰か――自分を導いてくれる誰かに。
(誰だ? 福原さん、あなたなら、どうしますか――誰が信用出来きますか)
 初めからこのゲームに参加することを選ばなかった者に問いかけても仕方がないが、
関本は目の前で死んだ友に話しかけた。
 背後から波の音が聞こえる。海か。海釣りは趣味ではない。関本はバス釣りが好き
だった。仲の良かった福原や、良くしてくれた先輩の矢野とはよく休日一緒に釣り
に行った。
「楽しかったな……」

209 :174(3/5):2005/08/02(火) 22:13:40 ID:0SlYG+hd0
 たった2日前の日常が遠く感じられる。バス釣りの腕は、福原が一番うまかった。
負けず嫌いな先輩に対して『まぁ僕の方が上手いですけどね』とのほほんと挑発する
福原、そんな生意気な後輩を笑いながらこづく矢野。そんな時、関本は彼らのやり
とりを笑って見ていたものだ。年の離れた先輩後輩だが、福原と矢野はそんなこと
も許せる間柄だった。
 あまりの出来事にすっかり忘れていたが、来週は琵琶湖に、カツノリも誘って
4人でバス釣りに行こうと計画していたはずだ。
 もう、その約束は果たせない。例え矢野と関本が戻れたとしても、もう福原は
いないのだから。
(良かったっスね、カツノリさん。トレードで出されて――)
 かつてのチームメイトで、バス釣り仲間のカツノリを思い出す。いつも調子の
良い彼とは喧嘩したこともある。でも気安い男だった。
 トレード通告を知った日は、矢野も福原も酷く浮かない顔をしていた。だが今
思えば、それは彼にとって幸運だったはずだ。こんな殺し合いの島に放り込まれる
よりも、ずっとマシだ。
(頑張ってくださいよ――)
 空の向こうにエールを送る。
 俺の分も頑張れ、なんていったら死ぬのを覚悟しているみたいで抵抗があるが……
もう野球が出来なくなるかもしれない、なんて、こんな孤島で思わなきゃいけない
なんて想像もつかなかった。
 矢野は福原忍の死をどう思っているのだろうか――弟のように可愛がっていた、
若き右のエースの死を。
「矢野さん――」
 そうだ。
 自分の呟きに驚くように、関本は岩に預けていた背を浮かせた。
 何故今まで思い浮かばなかったのだろう。
 誰を信用できるって? 何を悩んでいたんだ。
『お前、俺のこと忘れとったやろ!』と日常生活でなら、笑いながら軽く肘で
こづいて突っ込んで欲しいところだ。『ははは、すいませんって、矢野さん。
ちょっと焦ってたんですよ』そんな会話が出来たらなんと幸せだろうか。日常とは
こんなに美しいものだったのか。

210 :174(4/5):2005/08/02(火) 22:14:53 ID:0SlYG+hd0
 金本知憲と矢野輝弘、この二人はまず大丈夫だろう。彼らは頭が良い、それに
強い。精神的にだ。もしからしたら、もうすでに何かを考えて行動しだしている
かもしれない。
 金本が野手陣のカリスマ的存在で、兄貴分であるとしたら、投手陣にとっての
(無論関本自身は投手ではないが)それは矢野だ。兄貴分というよりは、若くて
まだ精神的に弱い部分もある投手陣たちの、母のような存在。
 あの人なら―― 
 あの人たちなら、なんとかしてくれるかもしれない。
 どちらかに――あるいは両方に(この二人が組めば最強ではないか? 岡田や
平田などのナスビ頭を出し抜くのはたやすい)会いたい。 
 そして何より矢野には、福原の最期を伝えたいと思った。自分には伝える義務が
あると思った。
 多分彼は、カツノリのトレード宣告の時以上に――悲しそうな顔をすると思うけど。
(歩こう――)
 時間が惜しい。関本は立ち上がった。
 今も刻一刻とチームメイト達の命が危険に晒されてるかもしれない。もしかした
ら、矢野も。今あの人を失うわけにはいかなかった。
 しかしどうする? 関本はもう一度自身に問いかけた。
 この島で、正体不明の殺人鬼がうろついてるかもしれないこの島で、特定の人間
に会うのは簡単なことではない。会えるか?
(会えるか? じゃない。会わなきゃ、だ)
 自分を叱咤する。弱気になるな。何もない自分に今あるのは、勇気を持つことと、
福原の遺言だけだ。
「福原さん」
 空にいる――いる、と関本は信じることにした――友に願いをかける。
「頼みます、俺を導いてください」
 あの人の元に。
(あなたのことだから、矢野さんのこと心配で上から覗いてるんでしょう? ケチケチ
せんと、位置くらい教えてくださいよ。貸してあげたジュース代の150円まけて
あげますから――)
 必死で願いをかける。運しかない。運しかないのだ。

211 :174(5/5):2005/08/02(火) 22:15:33 ID:0SlYG+hd0
 少し早足に、それでも最善の注意を払って、関本は前に進んだ。30分程歩いた
だろうか。さっきほど足の重さや疲労は感じなかった。明確な目標が出来たから
かもしれない。とりあえず、何もしないまま元の世界に戻ることを願うよりは、叶え
やすい目標が。
 ガサ――
 草木が揺れる音がした。関本は足を止めた。
 漸く生きた誰かに会えるのだろうか。それが死神か女神かは知らないが。
 関本は息を潜めて次の動きを待った。どれぐらい経過しただろうか。鳥か猫か? 
という疑問も頭を掠めだした頃、30メートルほど手前の繁みから人影が姿を現した。
 そいつはを警戒するように辺りをきょろきょろ見回しながら、草木の間から半身を
乗り出した。何かを探しているのだろうか。 
 当たり前だが、そいつはストライプのユニフォームを着ていた。関本の角度から
だと、影になって顔が分かりにくい。
(誰だ?)
 関本は目を凝らした。果たして福原に、関本の願いは届いていたのか、どうなのか。
 一応警戒して、関本はポケットに突っ込んだグロック17に手をかけた。福原の
遺品だ。出来たら使いたくはないが、いざというとき威嚇くらいは出来るだろうと
思い、装弾しておいた。
 辺りに誰もいないことを確認し、そいつは砂浜の方に歩み出た。
(――っ!?)
 相手が全身を明るみに出した瞬間、関本の顔が凍り付く。
 その男は、何故か三つのデイバッグを両肩に担いでいた。
 田中秀太(背番号00)だった。

212 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 22:27:08 ID:ZXvkJVFm0
新規職人さんキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!
乙です!
って、関本どうなるんだ!?

213 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 22:54:03 ID:OUvFSou8O
あけ

214 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/02(火) 23:55:49 ID:Vf0h16K40
頭悪い言い過ぎw

215 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/03(水) 01:52:14 ID:qSaMzdgz0
>>211
GJ!新職人さんマジ乙!!
ぐいぐい話にひきこまれてくな・・・・関本良い奴だ

216 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/03(水) 14:40:03 ID:9caTSZaF0
新規職人さんは暫定板に行ってみてはどうか
管理人さんがうまく手を引いてくれると思うよ

217 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/03(水) 15:36:45 ID:ug2oW6PW0
hosyu

218 :924:2005/08/03(水) 23:30:15 ID:IxXSYkU70
自分も20章を過ぎてからリレーに参加させて頂いた身です
174氏、これからよろしくお願いいたします

書き手用ミーティング板についてですが、
自分たちの時は管理人さんにメアドを伝え、
板のアドレスとハンドルパスワードを教えて頂きました
そのやりとりは、スレの最初の方にもリンクがはられていますが、
216氏のおっしゃる暫定HTBR板で行われました
管理人さんはミーティング板と同じ方です
ttp://jbbs.livedoor.jp/sports/20081/

219 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 04:13:53 ID:+ZtCpmHZ0
関本の独白、すげぇ。
ほんとに、そんな風に考えてそう。

福原が関本より先輩?とは知らなかった。
なんとなく福原のほうが年下だと思い込んでいたよ。

この後どうなるんだ?
ワクテカして待ってるよ!

220 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 20:03:14 ID:bcteBi3f0
新規職人さん、乙です。
続きが気になるなぁ〜!

221 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 22:00:01 ID:jRfofhYq0
捕手

222 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/04(木) 23:08:23 ID:mW5faZvW0
新人さん、乙です!
秀太キタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━!!!
でも関本ピンチ!?

223 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/05(金) 13:19:43 ID:APUxv/af0
age

224 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 04:01:09 ID:Fk0ETJd70
保管庫のリレー一気読みしてきた。
すげー名作。
ファンだからこそ書けるって感じ。

リレーじゃない各作品は土日のうちに読み直す予定。



225 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 14:13:28 ID:I8RYQnvj0
>>224
ナカーマ

杉山江草組と御大の行く末が気になる


226 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/06(土) 23:25:16 ID:BJh0sGHy0
今岡と桧山の続きが非常に気になる
あとやっぱりゴレンジャー

227 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/07(日) 01:52:33 ID:fuSfOrEZ0
今岡といえば、328氏の今岡も気になってたりする。あれは不意打ちだった…

228 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/07(日) 17:36:35 ID:ik98ENOp0
あげ

229 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/07(日) 17:39:48 ID:tf98aJXC0
\ 岡田様のお通りだッー! /   _________         , ,--'::::::::::::'''`-,,,
                    ,.r‐''''...................-、       /::::::::::::::::_ :::::::::ヽ
      ____       /:::::::::::::::::::_ ::::::::ヽ     /::::::::::::::::::}十{::::::::::::::::'
    /∵∴∵∴\     !::::::::::::::::::::::}十{::::::::::::::i    |:::::::::::;;;;-――-,,;;;:::::::::|
   /∵∴∵∴∵∴\    !::::::::::::::::::_,,、-'''''' ̄ ̄`'ヽ   |::/'  __ノ''  'ヽ、_`ヽ::|
   /∵∴/\   /|   |ミシ ̄ ̄__,,,〜,__ !''   .,-l||.-=・=- 、 ..i'.-=・=- ll|-,
  |∵/   (・)  (・) |  (6ミ──〔|lii!iil|〉〈|li!il|〕|   |ヽl|      .l、    l|り|
   (6       つ  |    し.    "~~´i |`~~゛ .i   ヽ. l|    ´^ ^`    ll. /
   |    ___ |    ミ:::|:::::........ f ・ ・)、 ...:::i    ` i.   、.....ニニ.....,   |´
    \   \_/ /      ヽ::::::::::::-=三=-:::/      ヽ    ー―'   /
     \____/         ヽ:::::::::::゛::::ノ/       ヽ _  ⌒  ,./
     /     \        / ̄ ̄ ̄\         /  ̄ ̄ ̄\
   .ィ⌒ヽ i⌒ii⌒i ィ⌒ヽ    .ィ⌒ヽ i⌒ii⌒i ィ⌒ヽ   .ィ⌒ヽ i⌒ii⌒i ィ⌒ヽ
  ((、、、(((\ニニニ/))), , ,)) ((、、、(((\ニニニ/))), , ,))) ((、、、(((\ニニニ/))), , ,))  ドルンドルン
     _~l |(Θ)| l~_        _~l |(Θ)| l~_        _~l |(Θ)| l~_
    (   _.l l ⌒ l l._   )      .(   _.l l ⌒ l l._   )      .(   _.l l ⌒ l l._   )
    \ I |i⌒i|. I /       \ I |i⌒i|. I /       \ I |i⌒i|. I /   パラリラパラリラ
     ⊂ニUl  lUニつ         ⊂ニUl  lUニつ        ⊂ニUl  lUニつ
        .i___j               .i___j               .i___j


230 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/08(月) 00:05:14 ID:myK4AC9p0
トリー、かわいそうに。。。

231 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/08(月) 14:42:27 ID:2yJlSesj0
ほす

232 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/08(月) 20:43:20 ID:qkiO6eh40
保守

233 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 01:54:01 ID:2ct++TkO0
関本ピンチだな。
生き残って、島から出てほしい。

234 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 23:08:34 ID:Q4erArkO0
捕手

235 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 23:15:27 ID:qAqlbqAX0
見守るスレ落ちた…

236 :174(1/6):2005/08/09(火) 23:36:59 ID:Dlw/78+r0
>>211
61.天の助け

 関本健太郎は凍り付いた表情でその男を凝視していた。
(3つ……何で3つも持ってるんや!?)
 どちらかというと細身な背中に、重そうに担がれた三つのデイバッグ。
 その意味するところを考え、関本は全身が総毛立つのを感じた。
(一つは自分のやろ。でも、あとの二つは……)
 落ち着け、と自分に言い聞かせる。
『そう』と決まったわけではない。だが関本の思考は、どうしてもそちらの方へと
向かってしまう。
(まさか、誰か殺して……)
 背筋を冷たいものが這う。二人か? 二人も殺したのか? この目の前の男は。
(まさか……まさか秀太さんが、人を殺……)
 そんなことがあり得るのだろうか。年の近い先輩。いつもおどけて笑いを取り、
みんなを和ませる。そんなムードメーカーだ。いい加減そうに見えて、意外に後輩
の面倒見も良い。この男が、人を殺す姿なんて想像がつかなかった。
 動いてはいけないと思いながら、無意識に身体が逃げたがってしまったらしい。
わずかにかかとの後ろに体重がかかり、パキリ、と足下にあった小枝が音を立てて
割れた。
(ヤバイ――)
 どうか気付かないでくれ、という関本の嘆願は、あっさりと振り向いた男に呆気
なくかき消された。
 目が合う。相手の方も関本を見て驚いたようだった。目を見開いて、こちらを
凝視してくる。しゃがんで繁みに隠れた自分と、砂浜で棒立ちになっている相手。
数秒の見つめ合いは、えらく奇妙なもののように思えた。大の大人がかくれんぼ
でもしているようだ。
「セキ?」
「しゅ……うたさん」
 当たり前のように名前も呼ばれ、思わず関本は呼び返した。だが近づいてきた
田中秀太に、反射的に身体が逃げる。相手の顔を見たまま、ずるずると後ずさった。
「どうしたんだよ? 何びびってんだよ」

237 :174(2/6):2005/08/09(火) 23:37:54 ID:Dlw/78+r0
 秀太はからかうように笑うと、ドサッと肩に掛けていたデイバッグをまとめて砂浜
に落とした。
「秀太さん、そ、それ、カバン……」
「あーこれ? あ、もしかして俺が誰か殺して奪ってきたと思ってんの? ひどい
なー、お前」
 落としたデイバッグに一度目を落としてから、不服そうに口を尖らす秀太。
「ちょっと前にさ、休憩しようと思って民家に入ったら……庄田が死んでたんだよ」
 自分で口にした言葉に、秀太は苦々しげに眉を顰めた。
「床に庄田のと、もう一つ誰のか知らないけどバッグが転がってた。死んでそんなに
時間経ってなかったみたいだし、それってまだ人殺しが近くにいるかもしれないって
ことだろ?」
 ゆっくり近づいてくる秀太との距離を意識しながら、関本は大人しく秀太の言葉
に耳を傾けていた。
 田中秀太は嘘の上手い男だった。あまりにも嘘っぽいことを、本当のように言う
ので、逆に信じてしまうのだ。信じやすい関本は、どうでもいい嘘を秀太につかれ、
よくからかわれていた。
 何度も騙されて笑われても、関本は秀太が嫌いではなかった。それは秀太ならでは
のキャラクターだろう。
 騙される側も笑える、彼の嘘にはセンスがあった。
 だが、今回騙されればシャレでは済まない。人を信じられなくなるのは嫌だが、疑う
ことは必要だと関本は思った。
「怖くなって、とりあえずバッグひっつかんで逃げ出した。ちょっと悪かったなって
思ったけど……とっさの判断でさ。俺も食料とか欲しかったから」
 死んだ庄田の遺品を失敬した後ろめたさからか、秀太が視線を地面に落とす。
 その表情は、いつになく真剣だった。
 当たり前だ。いくら根っからのお祭り男でも、同僚の死を前にしてふざけてなど
いられないだろう。
「そ、そうっスか……すいません俺……」
 思わず謝りながらも、関本はまだ秀太を信用しきれてなかった。
 だが疑い切ることも出来なかった。

238 :174(3/6):2005/08/09(火) 23:39:08 ID:Dlw/78+r0
 一人一つのはずのデイバッグを3つも持っているのを目にした瞬間、誰かを殺して
奪ったという想像が頭を巡ったが、実際秀太が言うような状況に置かれたら、自分も
同じように行動するかもしれない。よく考えれば、自分だって福原のデイバッグの
中身を持っているではないか。福原の場合は関本に『くれた』のだが、二人の状況
にあまり変わりはない。
 そう考え出すと、秀太が人を殺したと見るよりも、そちらの方が自然な気がして
くる。
 そんな関本の葛藤の間にも、秀太はどんどんと近づいてくる。敵意や警戒心がある
ようには見えなかった。
(どうしよう……どうする? 俺は、秀太さんを、秀太さんを……)
 信じたい――
「お前は? どうしてたんだ?」
「俺は……」
 福原や筒井のことを話しても良かったが、こんな雑談のような形で話す気には
なれなかった。まだ口にするには、その事実は重い。
「とりあえず、誰か一緒に行動出来そうな人を捜して――」
 ――パァン!
 関本の言葉を遮るように、銃声が響いた。
「な、何だ!?」
 それ程近くはない。だが一瞬、関本は気を取られその音のした方を振り返った。
「秀太さん、今の、銃声ですかね……?」
 もう一度秀太の方を向き直ろうとした時、関本の背筋に悪寒が走った。それは
本能の警告だった。ほぼ反射的に横に身体をずらして、振り返る。その脇腹を灼熱
の感覚が突き刺した。
「――痛っ!?」
 痛い、と言うよりは熱い、という表現の方が正しいかもしれない。脇腹を押さえて、
関本はのけぞった。
 ついさっき遠くで聞こえたのと同じような音が、今目の前で聞こえたということを
認識したのは、その後だった。
「し、秀太さん!?」
 関本が裏返った声を上げる。銃を構え仁王立ちになった秀太が、強ばった表情で
関本を睨め付けていた。

239 :174(4/6):2005/08/09(火) 23:40:21 ID:Dlw/78+r0
(やっぱり……秀太さんは殺したんだ――!)
 誰を殺したのだろう。庄田だろうか。もう一人は誰だ? 逃がしたのかもしれない。
先程秀太がついた嘘には、幾分の真実が込められていたような気がした。
「動くなよ、当たらないだろ」
 秀太がもう一度、銃を握った手に力を込める。BrowningのBuck Mark.22。22口径
で通常の銃に比べてかなり小さいそれは、至近距離以外は威力が低い。その代わり
精密な射撃に向いていて、護身用や狩猟の入門用に使われることが多い銃だ。
 冗談じゃない。まるでこちらが悪いかのように咎めてくる田中秀太に、関本は青ざめた。
 奥歯の根が噛み合わない。脳に響くガチガチという歯の音が、まるで他人の音の
ように聞こえた。
(死ぬのか? ……俺はここで死ぬのか?)
 誰に問いかけているのか、自分でも分からなかった。
 死にたくなかった。まだ、やり残したことがある。
「な、ななんでこんな……」
「なんで? まぁお前には分かんないだろうな」
 何かを含んだ笑みを浮かべる秀太。関本は右手の中の銃を握り直した。それを見た
秀太の目がぎらりと光る。
(間に合わない……!)
 関本はそう思った。
「うわああぁ!」
 咄嗟に――それこそ闇雲に――関本は左手でグロック17とは逆側の腰に下げて
いたシザーケースの中から一本のシザーを掴みだし、力任せに秀太に投げつけた。
 『美容師さんセット』。それが関本に与えられた武器だった。洒落たシザーケース
に、数種類のシザー、日本剃刀、レザー、コームやフェイスブラシ、ヘアーブラシ、
バリカンにトリマーまで付いている。
 関本が見た瞬間困惑したのは言うまでもない。美容院には馴染みがないので、説明書
を読むまで、使い方も名前も知らない道具も結構あった。とりあえず嵩張るものでも
ないし、何かに使えるかもしれないと思って腰にセットしておいたのだ。
 関本には知るよしもないが、美容師の利用する専用のシザーは、通常の鋏より
格段に切れ味が良い。中には刀職人が作った鋏などもあり、人の肌を切り裂くの
にも何の支障もなかった。
「っツアァッ――!?」

240 :174(5/6):2005/08/09(火) 23:41:44 ID:Dlw/78+r0
 顔面に刃を向けて飛んできたシザーを左手で叩き落とした秀太は、予想外の激痛
に悲鳴を上げた。
 研ぎ澄まされた刃にざっくりと切り裂かれた指の間から血が滴り落ちる。それ程
深い傷ではないだろうが、秀太の注意を逸らすには十分だった。即座に銃を構え、
関本は秀太の右手に握られたブローニング・バックマークに照準を合わせた。
 ――パァン! パァン!
 連発する。が、どうしても身体に当てないように銃口が逃げてしまい、関本が
放った銃弾は虚しく虚空を切り裂いた。
「痛ってぇな!」
 怒りを露わにし、秀太が右手で引き金を引く。
(死ぬ――!)
 思わず目を瞑る。死という言葉があまりにもリアルに関本の脳裏を過ぎった。心臓
が逆立つような恐怖に、関本は悪あがきのように無茶苦茶に引き金を引いた。
 ガギィン!
 銃声とほぼ同時に耳障りな金属音が響く。
「え……?」
 関本が目を開けると、秀太が流血した左手で右手を庇い、うずくまっていた。
 弾き飛ばされたブローニング・バックマークが、砂浜と繁みの間辺りに鉄色の光沢
を帯びて転がっていた。
 片手だけで撃とうとした秀太が放弾の衝撃によろめいて、泳いだ右手に持っていた
ブローニング・バックマークが、関本の銃弾が当たって弾かれたのだ。その際に人差
し指を骨折しなかったのは、よろめいた瞬間に銃を握り損ねていたからに他ならない。
秀太にとっては不幸中の幸いだった。
「うわ、うわ…うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 関本は状況を完全に把握しきれないまま、秀太に背を向けて走り出した。先程銃声
が聞こえたのと逆方向に逃げるだけの判断力は辛うじて残っていた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 叫びながら走る危険性など考えていなかった。とにかく、一秒でも早くその場から
離れたかった。
(福原さんのアホぉぉぉ!)
 勝手に祈っておいて勝手に文句をつけながら、徐々に深くなる森の中を、関本は
無茶苦茶に走った。

241 :174(6/6):2005/08/09(火) 23:42:12 ID:Dlw/78+r0
 逃げて、逃げて、逃げて……
「うわあぁぁぁぁぁ……!」
 ボゴッ
「ぐげほぉっ!?」
「……ぁぁあああ!?」
 関本は何か引っかかって、大転倒した。


【残り41人】

242 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/09(火) 23:55:28 ID:7xkumJAl0
174さん、乙。

いいなあ、こういう端的であっても淡白にはならない文章好きだ。
読みやすいし臨場感もある。がんばってください。

243 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 11:26:23 ID:wJMTZmPv0
新作来てる!!職人さん乙です。

関本、ガンガレ関本

244 :174:2005/08/10(水) 20:34:55 ID:iWglySUZ0
関本は何か引っかかって、大転倒した。

関本は何かに引っかかって、大転倒した。

ですorz
些細ですが誤解を招く表現なので訂正させて下さい。申し訳ありません。

245 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 22:05:46 ID:7gn5eGtL0
続き来たーーー!

うそつき秀太、コワス・・・

246 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/10(水) 22:18:57 ID:sMXImHq70
174さん、乙です!
秀太も関本もいい味出してますなあ
手に汗握る場面なのにどこかユーモラス

247 : 542氏代理投下(1/3):2005/08/11(木) 09:28:34 ID:xLD36bkh0
>>241
62.君の名は

 ゆらゆら、ゆらゆら、と、温かな水の中を漂っている。肺の奥、耳の奥、臓腑の隅
から隅まで、静謐な温みが行き渡り、気持ち悦さにひっそりと淡くため息をついた。
手放したくない柔らかさ。横たわったままで、いつまでもいつまでも浸されていたい
ような、ほの昏い心地よさに包まれ、ふわふわと漂う。
 体温と同じくらいの―――昏くて微かに甘い匂いを呼び覚ます、母親の胎内に還
ったような、緩やかな安寧を感じていた。
 (ここは……)
 ゆら、ゆら。
 (俺、どこにいるんだろ)
 まぶたは重く、視界は闇に閉ざされたままだ。五感の全てがゆるゆると渦の中に
呑み込まれ、あやふやな思念だけが彼の手元に取り残されている。
 波に揺られながら、暫し、とろりとまどろんで、ふと思い出した。
 (そうだ、俺には名前があった)
 吉野誠(背番号21)。
 (忘れてたのかな)
 忘れていたわけではないだろう。この『世界』では、自分に与えられた固有の名前
がそんなに大した意味を持っていないという、ただそれだけの話。
 (何をしてたんだっけ)
 思い出せない。
 意識がひどく混濁しているようだった。寄せては返す記憶の波が身体中を覆い、
捕まえようとするとするりと逃れ、しずしずと引いてゆく。それを繰り返すうちに、考え
る事にも意味を見出せなくなってくる。
 ゆら、ゆら。
 (ああ、気持ちいー……)
 このまま甘い誘惑に身を委ねて、眠ってしまいたい。起き上がる事も、考える事も、
言葉を紡ぐ事も、自分を呼ぶ声も、全て投げ出して温かな眠りの海へと沈んでしま
いたい―――
 (―――声?)
 自分を呼ぶ、声。

248 :542氏代理投下(2/3):2005/08/11(木) 09:29:28 ID:xLD36bkh0
(声、だって?)
 漸く気付いて、そっと耳を澄ます―――実際には考えるのを止めただけで、手足
はぴくりとも動いてはいない。自分の中を空っぽにする事で、周りの音が全て身体
の奥深くまで染み渡ってゆくような、そんな錯覚を覚えただけ。
 『―――の、よ―――』
 (誰……)
 『大丈夫、俺が必ず助けてやるから』
 誰の声だろう。
 吉野は深く息を吸い込んだ。親しげに自分の名を呼ぶ、その声の主の顔を思い浮
かべようとして失敗する。ほのかな声はぼんやりとした影を水面に映し出すだけで、
はっきりと像を結ぼうとはしなかった。
 (誰だっけ)
 胸のどこかに微かな懐かしさが湧いた事だけが、手掛かりらしいと言えば手掛か
りらしい。
 うつらうつらと思索のループに溺れながら、耳元で木霊する声をもっと近くに手繰
り寄せようとして、つと手を伸ばした―――つもりだった。実際にはやはり、身体は
ぴくりとも動かなかったのだけれど。
 (あれ)
 何もなかったはずの視界に、ぽつん、と生白い人影。
 (誰だっけ―――絶対、知ってるはずなのに)
 見慣れたピンストライプのユニフォームを着て、キャップを手にし、ちょっと振り返っ
たような格好で肩越しにこちらを見ている。背中の番号ははっきりと見えているはず
なのに、何故か吉野の脳はそれを認識していない。見えているはずなのに、知って
いるはずなのに、吉野には彼が誰なのか解らない。
 横たわったまま、言葉を発する事も出来ない吉野に向かって、彼は笑った。
 『吉野。やっと起きたか』
 ああ、思い出せない。
 解らない。自分の頭は今一体どうなっているのだろう。
 (あれは……誰なんだ……?)
 解らない。
 ゆるゆると蠢くゲル状の波に呑み込まれ、夢うつつに吉野は問いかける。
 (名前、名前を教えてくれよ)

249 :542氏代理投下(3/3):2005/08/11(木) 09:30:12 ID:xLD36bkh0
『モタモタしてると、置いてっちまうぞ』
 手を挙げながら、ニコ、と微笑む彼の顔を見つめる。頭の片隅に置き忘れられた
記憶のひとふさを必死に探し当てようとするのに、あともう一歩が届かない。
 『ほら、早く』
 (待ってよ)
 背を向けて歩き出した彼を引きとめようとして、吉野は精一杯、腕を伸ばした。そう
してやっと彼の袖を掠めたと思った瞬間、その姿は煙のように消えてしまった。
 (あっ)
 世界は再び、吉野以外に何一つ存在しない、無に浸される。
 (夢を見てたのかな?)
 だとしたら頷ける。やわやわと消えてしまった彼の姿も、見えるのに見えないその
背番号も。
 夢とうつつが同化する。あのよとうつしよが交錯する。気まぐれに混ざり合い、戯
れて、果てのない螺旋を描いていく。
 知らず、我、夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に我と為れるか―――
 (どれが現実で、どれが夢なんだろう)
 親しげに笑いかけてきた彼の顔がまぶたに残っている。自分の名を呼ぶ声の懐
かしさ、そのうしろ姿の輪郭。一つずつ、全てに切実なデジャ・ビュを覚える。
 彼の名前が―――だと、本当は解っているはずなのに。
 (君は誰なんだ?)
 咽喉元まで出掛かっているのに、出てこない。咽喉を塞がれたようなもどかしさに
軽く喘ぎ、身体をよじった。
 思い出せない。
 (君の名前は)
 知っているはずなのに。
 (君は一体、誰?)

【残り41人】

250 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 19:10:45 ID:vDlXTWi80
野球バトルロワイアルを見守るスレ出張所
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1121949460/


251 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 21:30:58 ID:Mzm7Mvln0
職人さん、そして代理投下の方乙です!
吉野ぉ〜!

252 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/11(木) 22:44:44 ID:XtrmW7Ps0
激しく乙です!
もう何度泣かされたことだろう…
自分も小説書きなので、勉強させてもらってます

253 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/12(金) 18:18:42 ID:8le8DBkw0
hosyu

254 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/12(金) 21:41:11 ID:S/Cxggkz0
俺も何度も泣いてるよ。
吉野たん、目覚めるのか・・・?

255 :924(1/4):2005/08/13(土) 00:42:29 ID:CQ0zo6TY0
>>249より
63.留守番

空はどんよりと灰色によどみ、今にも大粒の雨を降らせそうな気配を
漂わせながらも持ちこたえていた。
(じれったいな。降るならさっさと降ってくれよ)
久保田は縁側に面した大きな窓のそばに立ち、しばらく薄暗い外の風景を
眺めていたが、落ち着かない様子で腕時計に目をやった。まだ10分しか
経っていない。振り返ると、居間のちゃぶ台には7割ほど水の入った
ペットボトルがぽつんと立っている。

『仲間になってくれそうな人を探しに行きます』
突然、小宮山はそんなことを言い出した。先ほどまでの沈んだ面持ちとは
打って変わって目が輝いてさえいた。その様子にややたじろぎながらも、
当然ながら久保田は反対した。だが、相手は頑固だった。暗くなってくるから、
雨が降りそうだからこそ、逆に今のうちに行きたい、時間が経てばそれだけ
犠牲者が増えるのだ、と。

そう言われると返す言葉がなかった。今日の午前中だけで12人が
死んだという。このハイペースで殺し合いが進んでいるなら、残りは先ほど
推測したように30人、いや、それ以下かもしれない。明日まで待つなどと
悠長なことを言っている場合だろうか。行動するなら、一刻も早い方が
いいのではないか。

考えたすえ、久保田も人を探すことに同意した。とはいえ、小宮山を一人では
行かせられない。かと言って、いまだ気を失ったままの桜井を残して二人で
出かけるわけにもいかない。だから、小宮山をここで待機させ、自分が行くと
提案した。ところが、小宮山はこれも聞かなかった。言い出したのは自分だし、
運良く人に会えた時にはチーム一の下っ端の方が相手の警戒心を
解きやすいから、というのが理由だった。

256 :924(2/4):2005/08/13(土) 00:43:14 ID:CQ0zo6TY0
結局、折れたのは久保田の方だった。ただし1時間以内に必ず戻ること、
雨が降りはじめたら戻ること、危険を感じたらすぐに中止することを固く
約束させて送り出した。念のため、自分の手榴弾も二つ持たせてやった。
ちゃぶ台の上のペットボトルは、荷物になるからと小宮山がカバンから出して
置いて行ったものだ。どこか寂しげに取り残されたその容器を見つめながら、
久保田は今更ながら思わずにはいられなかった。
どうして止めなかったのか。自分が行けなかったのか。

小宮山の異様な迫力に気おされてしまったのは確かだが、もう一つ理由が
あった。小宮山と桜井を――互いに殺そうとし、殺されかけたという彼らを
二人きりにすることが気がかりだったのだ。
久保田の目に焼きついて離れない光景がある。倒れ伏す男の頭に銃を
突きつける一人の少年。いささかの迷いも見受けられない表情で、
これから手にかけようとする相手をまっすぐ見据えている。

決して小宮山が信じられないわけではない。もう人が死ぬのは嫌だと涙し、
今またゲームを止めようと行動を起こした、これらの姿の方が真実である
ことに疑いはない。そんな彼でさえ、一時的にせよ冷然と人を殺そうとする
までに変貌してしまうのだ。その事実が恐ろしい。

(それ以上に怖いのは――)
久保田は奥の部屋に目をやった。ふすまの向こうに横たわる桜井、
そしてどこにいるか分からぬ太陽。
小宮山の未遂に終わった凶行は、既に二人を殺し、これからも殺すであろう
桜井を止めるための最後の手段だった。まだ納得できないでもない。
だが、彼らはすすんで殺人を犯したという。こちらは完全に久保田の理解の
域を超えている。特に信じられないのは、太陽のことだ。

257 :924(3/4):2005/08/13(土) 00:43:42 ID:CQ0zo6TY0
『嫁さんと子どものためにも頑張らないとな』
昨年結婚し、今年初めに第一子を得た太陽はよくそう言っていた。そのために
手術もリハビリも絶対に乗り越えてみせる、と。久保田も先日入籍してから、
太陽のその気持ちが実感として分かるようになった。親兄弟や友人など大切な
存在はこれまでにも大勢いた。しかし、はじめて自分が守るべき家族が
できたのだ。死ぬわけには行かない。妻を一人残して絶対に死ねない。

――だから、チームメイトを殺してでも家族のもとに生きて帰る。
あるいは太陽はそのように考えたのかもしれない。だが、と久保田は思う。
自分には無理だ。むしろ生きて再び妻に会いたいからこそ、この手を
汚しては顔向けできないのだ。太陽は、生きて帰れたとして、普段と
変わらない優しい夫の顔で妻にまみえるのだろうか。萱島の命を奪った手で
可愛いわが子を抱くのだろうか。自分には、絶対に無理だ。

「……なんやねん、これっ!」
突然、思考を妨げるように隣の部屋から声がした。久保田は一瞬顔を
こわばらせた後、気持ちを落ち着けるようにふう、と息をはいた。
(いよいよ、か)
二人を殺害したという後輩にどう接するべきか、正直、見当はつかない。
もっとも、今の桜井は身体の自由を奪われ、武器はこちらの手中にある。
特に危険なコルトガバメントは久保田が携えていた。自分は彼を警戒しつつ、
守ってやる義務もある。いきさつも説明せねばならない。
(殴ったのは俺ってことにしといた方がいいか……)
いろいろ考えながら久保田はそっとふすまを開けた。

258 :924(4/4):2005/08/13(土) 00:44:50 ID:CQ0zo6TY0
桜井は畳の上に芋虫のように転がったまま全身を必死に動かしていた。
「……気がついたか?」
声をかけると彼は暴れるのをやめ、キッと睨みつけてきた。
「悪いけど、お前を野放しにしとくわけにはいかないんでな」
さぞかし頭にきてどなり散らしてくるかと思ったが、久保田が言葉を切っても
桜井は無言だった。いまいましそうに眉間にしわを寄せながらも目を細め、
何かを確かめるかのようにじっとこちらの顔を凝視している。
「どうした? 大丈夫か?」

「……あんた、誰や」
「は?」
今度は久保田が眉をひそめる番だった。普段の試合や練習は一軍と二軍に
分かれているが、寮ではしょっちゅう顔を合わせていた。覚えられていない
わけがない。
「ていうか、ここ、どこやねん? なあ、俺はなんで、こんななってるんや?
俺、はよ帰らなあかんねん!」
混乱した様子でわめくと、桜井は再びもがきはじめた。久保田はハッとした。

「桜井、お前……」
漫画やドラマの世界なら、なるほどありがちな展開だ。だが、現実にこのような
ことが起こるとは考えもしなかった。よほど打ちどころが悪かったのだろうか。
思いがけない事態に、久保田はそれ以上言葉を継げなかった。

【残り41人】

259 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 03:36:19 ID:8Rvv1Te+0
新作だーっ! 思わぬ展開で来てる!!!


職人さんたちも本業がそろそろ夏休み? 乙ですぅ。
最近新作アップが続いてて、毎日ワクテカしてるよ。

260 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 16:49:36 ID:1gkDBGlf0
hoshu

261 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/13(土) 23:58:28 ID:NUfqE8Rd0
保守

262 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/14(日) 08:44:56 ID:0LEDSN010
捕手

263 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/14(日) 17:07:01 ID:Q+jCwbWb0
[`ー」ー]

264 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 17:43:58 ID:A/DiQsW80
保守

265 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 19:23:11 ID:ItoGrEbO0
小宮山、出て行ったきりなのか。
無事に帰ってこいよ。

266 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 20:41:26 ID:ASEN4MXY0
単独でやってる職人さん、最近来ないなぁ…


267 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/15(月) 21:45:24 ID:iZysVYGIO
のんびり待とうぜ。保守age。

268 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/16(火) 02:50:38 ID:5kx5ccV70
久保田、災難続き保守

269 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/16(火) 19:51:59 ID:ouN6Pjgj0
>ていうか、ここ、どこやねん?

ワロタ

270 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/16(火) 22:37:03 ID:urHoiGy30
保守

271 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/08/16(火) 22:44:44 ID:HiO8JUeE0
「星野………監督…」
抵抗する力を完全に緩め、藪は目を丸くして星野を凝視する。
「おやっさん…こいつらを殺さないんで?」
「いいから、屋敷にあげてやるんや」
睨みをきかせて星野が言うと、男たちはそのまま言うとおりにエモノをしまった。
「…どういうつもりですか。我々が何をしにきたかくらい知っているでしょうに」
「おれに話があるんやろ? 視界の端をチョロチョロするなら殺すつもりやったが、こう正面から馬鹿正直に突っ込まれたのをつまみ出したんなら立つ瀬がないやろ。話くらい聞いたるわ」
「左様でしたか」
釈然としない表情のまま、高山は頷いてみせた。

SPたちはすべて屋敷の奥に下がり、藪たち三人は誰もいない和室へと通された。
部屋の外に見える庭は、見事に手入れが行き届いており風情を感じさせる光景だった。
「さて…」
そう言いながら、大儀そうに座布団の上に腰掛けた星野を、三人はみな一様に睨みつけた。
そんな三人に気付いているのかいないのか、星野は大きくあぐらをかいた。
「今は“バトルロワイアル”の真っ最中やろうが。何しにここへ来たんや」
星野は僅かな間を持たせて口を開いた。
「それとも、もうみんな片付けて、優勝したのがお前らバッテリーやったんか」
「バトルロワイアルというのは?」
矢野はさも可笑しそうに笑う星野の問いには答えず、逆に聞き返した。
「…………」
「この大会の名前や。おれと野村で考えたんや」
「…低俗な殺し合いには、いかにもふさわしい低俗な呼び名だ。――虫酸が走る」
「ほゥ…!」
苦虫を噛み潰したような顔で静かに藪が口走ると、星野は表情を僅かながら曇らせた。
「監督よ。こんなふざけた真似をやらかそうと考え出したのは、あんたらしいな」
そういうたぐいの詰問は当然されるものと予想していたのだろう。
星野はニヤリと笑ってこう答えた。
「その通りや。ちょうどいい退屈しのぎやったぞ。ぬるいお前らにもええ刺激だったやろ」
「――ふざけるなよッ! 一体なんのつもりだっ!!」
深い憤りを抑えきれずに、藪は思わず立ち上がって怒鳴った。
そんな藪に、星野は挑発的な笑みを口元に浮かべた。  

272 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/08/16(火) 22:45:09 ID:HiO8JUeE0
「一度優勝を経験して、勝つのが当たり前になるとな…どうも飽きてしまうんだよ」
「なんだと…」
藪は眉をピクリと反応させた。堅く拳を握っている。
「阪神タイガースにも、いささか飽きた。…つまらん玩具を壊すのに、意味なんて要るのか?」
「手前っ!!」
言うなり、藪は拳を振り上げた。
「やめろ藪!」
そんな藪の腕を、座ったままの矢野が掴んだ。俯いたままの矢野の表情は翳り推し量ることは出来ない。
「矢野……」
「抑えるんや、藪。こんな野郎、殴る価値もあらへん」
矢野の手は震えていた。表情は伺えないが、それでも藪は矢野が怒りに打ち震えているのだと知った。
「………」

「こいつ、狂ってやがる」
鬼神の表情で矢野は星野を睨みつけた。
「ククク、そうか…。ワシは狂っておるのか…ククク、ウフフフ……」
「…………」

矢野はきつく拳を握り締め、ぎりっと大きく歯噛みした。

273 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/08/16(火) 22:45:37 ID:HiO8JUeE0
「つまり“バトルロワイアル計画”は、あなたにとってはあくまで娯楽、ということで…よろしいんで?」
沈黙の広がった場に、再び一石を投じたのは高山だった。
質問の意味を理解しかねた星野は訝しげな表情で切り替えした。
「そうだと言っとろうが」
「――本当に?」
「…くどいぞ、こぞう」
「八木や桧山など、古くから阪神タイガースで活躍している選手を殲滅。他にも、タテジマに愛着を持っていそうな選手たちを適度に殺しておく。貴方の描いたシナリオはこうでしたね」
唐突に高山は立ち上がって語りだした。
「………」
「そして、あなた自身が連れてきた伊良部などの選手は生かしておこうと、あなたはこうも考えたはずです」
それは何故か。
矢野や藪は押し黙ってその先に耳を傾けた。
「それは何故か――?」
星野は、語り続ける高山を前にして何も言わなかった。
未だ表情も変えてはいない。ポーカーフェイスに隠されて、何を考えているのかは推し量りかねた。
高山は構わず続けた。
「貴方は、阪神タイガースを一時消滅させ、再建しようとしたのです。これまでとは全く違う、貴方の息がかかった、貴方の色に染まったチームにね!」
「……!」
(…なるほどな。そうだったか)
「どうですか、星野さん。これが僕なりに立てた仮説ですが」

274 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/08/16(火) 22:46:34 ID:HiO8JUeE0
「フン…」
したり顔の高山に、星野は一度鼻で笑う。
余裕の伺える星野に、高山は思わず眉をひそめた。
「自信満々に語るなや。恥ずかしいぞ、こぞう」
「………」
「そんなのはあくまで建前や。愉しくなければ、娯楽やないやろうが。殺しが愉しければ、ワシャそれで満足や」
「どうもそれが本心とは思えませんね。球団が無くなれば、貴方だって利益を失うことになりますからね」
「そんなもん、ワシの顔があればどうにでもなるわ」
「あ、さては貴方…既に球団以外の何者かに雇われていますね。恐らく球団の買収を企む何者かに…楽天市場の三木谷氏、あるいはライブドアか…」
「買収…?」
「なんだって…それは本当か!?」
「その通りや」
驚く二人を尻目に、星野はにやりと笑って頷いた。
「ワシはその両会社に声をかけられた。まぁ、どちらも断ったがな」
「なに…? では何処が……」
「――読売ジャイアンツや」
「………!?」
「巨人が……」
構想外の黒幕の名に、高山や藪らは大いに驚いた。
「読売に雇われ、内部から球団を消滅させるよう派遣されたエージェントがこのワシや」
「売ったのか、球団を!」
「あんた、それでも男か。闘将の名が泣くで」
「フン、周りが勝手にそう呼ぶだけだ。ワシが頼んだわけじゃない」
「くそ、卑怯だぞ。外道め!」
「褒め言葉だな、くくく」
「…………」 

275 :328 ◆U/eDuwct8o :2005/08/16(火) 22:46:59 ID:HiO8JUeE0
「貴方も所詮雇われた男ですからね。利益を第一に考える貴方なら、1億よりも2億。2億よりも3億出す経営者に尻尾を振ることでしょう。
 でも考えが甘いですよ、星野さん。この二人が戦場を抜け出してきたのを筆頭に、壬午園では様々なイレギュラーが起こりつつあります。貴方でさえ予測できなかった事態がね! この先も貴方のシナリオ通りに事が進むとは限りませんよ」
「抜かせ。ワシはタイガースの選手達のことを買いかぶったこともなければ、見くびったこともない。あらゆる事態に備えて準備は周到や」
「それを邪魔するのがオレたち選手か。星野、もはや貴様の思い通りにはさせん…!」
藪はようやく立ち上がり、一歩二歩星野に近づいた。
「ククク、フフフフ、はははは……」
「何が可笑しい」
「うつけ者め…何故ワシが貴様らごときに全てを話したと思っとるんや」
「……!?」
「貴様ら程度じゃ何の障害にもならんからに決まっとるやろうが。うぬぼれるなよ小僧ども」
「――なんだとっ!」
「おい、もういいぞ。出て来い」
そう言うなり、部屋の外から大量の男たちが現れて藪たち三人を取り囲んだ。
「なんだっ!?」
「しまった…囲まれた!」
「こいつらを地下牢に閉じ込めておけ。厳重にな」

あまりの人数に、大した抵抗も出来ぬまま三人は動きを封じられ、囚われの身となった。

276 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/16(火) 23:42:37 ID:lZ+Uv1qN0
328氏、乙です!
そんな裏があったとは・・・

277 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 01:37:50 ID:zro53PVA0
328氏の新作キテター!
お元気そうで何よりっす

278 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 02:20:06 ID:eDWJ/ETp0
ってかこのスレでの御大って結構職人たちに愛されてる希ガス・・・
御大ファンとしては嬉しいことなのだろう・・・
その小説でも御大の動向が気になるなぁ

279 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 18:05:05 ID:cpXgMtX50
保守

280 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 18:35:58 ID:affzJWaU0
328氏、久し振り!そして乙です!

281 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 20:55:37 ID:LXVCmL/+O
捕手

282 :174(1/7):2005/08/17(水) 22:23:56 ID:GDlLxyV60
>>258
64.パートナー

 一瞬だけ浮遊する感覚がし、関本は左半身から地面に叩きつけられた。とっさに
身体を捻り利き肩を庇ったのも、受け身を取れたのも日々の訓練の賜だろう。
 最初は木の根にでもつまずいたのかと思った。その割には柔らかかった気もした。
「がぁぁぁ!?」
 痛みに悶絶し、転げ回る男を関本は呆然と眺めた。
「ま、まさか俺が殺……」
「まだ死んでねぇよ!」
 見事に関本の蹴りが決まった鳩尾を押さえ、肩で激しく息をしながら男が起き
あがる。
「金澤!?」
 ようやく相手を認識し、関本は声を上げた。同級生の金澤健人(背番号20)
だった。
「……おぅ」
 ボサボサになった茶髪を掻き上げ、金澤健人は不機嫌な顔でその場にあぐらをか
いた。まだ腹の辺りを痛そうに撫でさすっている。
「ってお前、こんなとこで倒れてて大丈夫なのか!?」
 ようやく脳が正常に動き始め、関本は身を起こして金澤に近づいた。
 こんな森の中に寝転がっているのは不自然だ。もしかしたら気を失っていたのか
もしれない。
「誰かに襲われたとか……!」
「……寝てた」
「はぁ?」
「うっせーな! 寝てたんだよ! 文句あっか!」
 拍子抜けた声を上げた関本に、金澤が噛みつく。金澤の剣幕に、関本は思わず身
を引いた。
 普段から沸点の低い金澤だが、その不機嫌っぷりは確かに寝起きの金澤のそれに
酷似していた。だが、こんな状況でこんな場所で寝れるものなのだろうか。関本は
金澤の神経の図太さに感心すると同時に、こういう時の彼は変に刺激しない方が
いいとこれまでの経験から学んでいた。

283 :174(2/7):2005/08/17(水) 22:24:27 ID:GDlLxyV60
「いや、別に文句はないけど……」
 数ある突っ込みどころにあえて目を瞑り、大人しくその会話を流す。
 同級生でよくつるんだ相手と出会え、関本は内心ほっとしていた。
 実際のところ、金澤は数時間前まで最初にいた民家に身を潜めていたが、近くで
数発の銃声を聞き、危険を感じて近くの森へと移動した。この不条理な状況へ放り
込んだ首脳陣たちへのムカつきと、何も出来ない自分への腹立たしさにヤケクソを
起こし、森の中で不貞寝を決め込んでいたのだが、そのことを関本に説明する気は
ないらしい。
「お前こそ何大声出して走り回ってんだよ」
「それは……」
 言いかけ、忘れかけていた事態を思い出す。関本は慌てて自分が来た方向を振り
返り、身を低くして様子を見た。
 追ってきている気配はない。だが、あまりここに長居するのは危険だろう。
「ってかお前怪我してんじゃん!」
 ようやく関本の脇腹に滲む血に気付き、金澤が声を上げる。
「かすっただっけだから」
 そうは言ってみるものの、傷はじくじくと痛む。
 金澤はごそごそと枕代わりに地面に置いていたデイバッグを探り、包帯や消毒液
などを取り出した。
「さっきまでいた民家で、使えそうなもんいろいろパクってきたんだよ。俺って
アッタマいいなー」
「……お前……」
 窃盗を誇らしげに語る金澤に呆れるが、状況が状況だ。金澤の判断に感謝するべき
だろう。促され、関本はユニフォームをたくし上げた。
「で、何があったんだ? ……誰にやられた?」
 意外に手際よく傷口を消毒して、包帯を巻きながら金澤が問いかける。
 アンダーシャツの下の、関本自身も初めて生で見たその傷は明かな銃創だった。
 ――それは、誰かが殺意をもって関本を攻撃したことを、如実に伝えていた。

284 :174(3/7):2005/08/17(水) 22:24:50 ID:GDlLxyV60
 金澤に問われ、自分でも信じたくない現実を関本は思い出していた。
 こちらに銃口を向ける秀太の強ばった表情。冷笑。そして怒りの形相――
 庄田の死を語るときの辛そうな表情は演技だったのだろうか。ふいに目頭が熱く
なりかけ、関本は慌てて目を閉じた。
「……秀太さんだ」
 吐息と共に、関本はその名を吐き出した。
「マジかよ!? 秀太さんが!?」
 声を荒げた金澤に、関本が無言で頷く。それを見た金澤の顔が一瞬にして青くなり
……そしてすぐに赤くなった。
「嘘だろ? 秀太さんがそんなこと……」
 紅潮した顔で、金澤が奥歯を噛みしめる。金澤自身、秀太にはよく面倒を見てもら
っていた方だった。秀太が金澤や他数名の後輩を連れて町に繰り出すことも珍しくは
なかった。
「バッグを3つも持ってて、俺を襲ってきた。もしかしたら、俺の前に誰か――」
「……ちっくしょう……!」
 関本の言葉を遮り、金澤は左拳を地面に叩きつけた。伏せられた表情は見えない
が、真っ赤になった耳の先が彼の胸中を代弁していた。
「そんな、秀太さんが……チームメイトを……畜生……っ」
 その声も、固く握りしめた拳も、興奮に震えてるようにだった。その感情が、怒り
なのか恐怖なのか――おそらく、金澤ならば前者なのだろうと関本は思った。
 今のこの瞬間、正義感の強いこの男の中で、あらゆる信念が打ち崩されているの
かもしれない。関本は金澤に出会ったこと、事実を伝えたことを少しだけ後悔した。
「みんなおかしくなっちまいやがった!」
 吐き捨てる。血を吐くような叫びだった。
「みんなじゃない」
 関本の言葉に、金澤がぴたりと動きを止める。自分でもいやに冷静な声が出たも
のだ、と関本は感心した。自分ですら、実際秀太に殺されかけ、気持ちが揺らぎか
けているというのに。

285 :174(4/7):2005/08/17(水) 22:25:13 ID:GDlLxyV60
「みんなじゃない。……絶対に」
「そう、だな……」
 金澤が頷いた。先程に比べれば、随分落ち着いた声音だった。
 そう、信じるしかない。自暴自棄になっても何も始まらない。
 自分達が正気(多分、おそらくは)なのだから、他にも正気な人間はいるはずだ。と。
「でも俺正直分かんねーよ」
 俯き、金澤はぐしゃりと自分の前髪を握りつぶした。
「お前に会えたのはラッキーだったけど……そんな、秀太さんまでお前を殺そうと
してるのに……」
 ぐしゃぐしゃと髪をかき回す。
「ああもう分かんねぇ! 何を信じたらいいのか……誰を信用したらいいのか――」
「俺も同じこと考えたよ」
 苛立つ金澤に、関本は同意した。
 信じたいと思った瞬間に秀太に撃たれた。その現実は関本にとって決して小さな
ことではない。考えれば考えるほど、不安になりそうな自分がいた。これから誰に
出会ったとしても、気を許した瞬間に、そいつは牙を剥いてくるかもしれない。
 この状況で、他人が他人を信用することの難しさは、恐らく誰もが考えることで、
その「疑い」はすなわち、誰一人信じられなくなることに繋がる気がした。
 それこそが、このゲームの本当の恐ろしさだ。疑いが人を殺し合わせる。
「でも俺思ったんや。誰かを信じることは難しいし、リスクもあるけど……誰も信
じられなくなったら、負けやって」
 金澤が俯いたまま、目だけで関本を伺っていた。
「だって俺ひとりじゃなんも出来へんのに、誰も信じられなくなったら終わりやん」

286 :174(5/7):2005/08/17(水) 22:25:33 ID:GDlLxyV60
「そっか……」
 再び、金澤は視線を地面に落とした。指先で砂を弄り、数秒――いや数十秒か――
口を閉じる。
「……で、お前は誰を信用出来るってんだよ?」
 顔を上げた金澤の表情は、さっきよりも幾分すっきりしているように、関本は感じた。
「俺とか言うなよ」
「いや、正直お前のことは忘れてた」
「オイ!?」
「俺は矢野さんを捜そうと思ってる。あと、金本さんとか」
 金澤の突っ込みを無視し、関本は話を続けた。福原のこと、筒井のこと、秀太のこと。
彼のためというよりは、自分の中でこれらの事件を整理するためだった。
「――だから、俺はこの伝言を二岡さんに伝えなきゃと思ってるし、福原さんの最期
を、矢野さんに知らせたいと思ってる」
「そっか……あのふたり、仲良かったもんな」
 そう括った関本に、金澤は感慨深げに呟いた。しきりに頷きながら、何かを頭の
中で考えているようだった。
「そっか、矢野さん、金本さん……あの人たちなら……」
 名前を呟く金澤の顔に、少しだけ希望の色が生まれる。彼の目には、頼りになる
先輩たちの顔が浮かんでいるのかもしれない。
「あの人達なら、なんとかしてくれるんやないかなって。あの人たちを中心に信頼
できる人間が集まれば、このゲームを脱出する方法が見つかるんやないかなって思
ってる。――なんて、他力本願だけどな、はは……」
 言いながら、関本は自虐的に笑った。結局、人に頼らないと何も出来ないのだ。

287 :174(6/7):2005/08/17(水) 22:25:54 ID:GDlLxyV60
「何言ってんだよ。お前すごいじゃん」
 そんな関本の内面の落ち込みを、金澤の言葉が一蹴した。
「俺がヤケになって寝てた間にお前そんないろんなことに出くわして、いろんな
こと考えて、ちゃんと目標もって行動してるんだからすごいよ」
(ヤケになってたのか……)
 金澤がポロリと言った本音は、あえて突っ込まないでやる。
 すごい、と言われて、関本は久し振りに自分が誉められた気がした。
 もっとも、責めていたのは自分自身だ。
 福原を目の前にして何も出来なかった自分、今こうして何も出来ない自分に、必要
以上に自虐的になっていた部分はある。
 すごいすごいと子供のように連発してくる金澤に、少し気持ちが軽くなった気がした。
「で、矢野さんがどこにいんのかお前知ってんの?」
「何で俺がそんなこと知ってんねん」
「知らねーのかよ!」
 知っているわけがないのだが、どうやら期待していたらしい金澤ががっくりと
うなだれるのを見て、関本は考え込んだ。
 せめて体育館を出る前に矢野と向かう方向などを申し合わせておければ、もう少し
話は簡単だったのだが、当初完全にパニックに陥っていた関本にそこまで頭が回った
はずもない。
 脳内に島の地図を描く。小島とは言っても、何の手がかりもなく特定の人間を捜す
にはそこは広すぎた。しかもゲームに乗っている人間がいる限り、不注意に歩き回った
り、大声で呼んだりすることもできない。
「やっぱ無謀だったかな……」
 肩を落として関本は呟いた。諦めたわけではないが、それは恐ろしく無謀な挑戦
のように思えた。
 それこそ女神でも頭上について導いてくれない限りは。

288 :174(7/7):2005/08/17(水) 22:26:19 ID:GDlLxyV60
 座り込んで天を仰いだ金澤と、俯く関本。二人の間に居心地の悪い沈黙が落ちた。
 あぐらを掻き、自分の足に視線を落としながら、関本は右腰に差したグロッグ17
に触れた。おかしな話だが、福原が遺したそれは自分に考える余裕を与えてくれる
気がした。
 誰かを捜して、積極的に動き回るのは危険と言えば危険だった。本当は、出来る限
り安全な場所で(そんなところがあるのかは知らないが)禁止エリアに指定されない
限りはじっと動かずに時が過ぎるのを待つというのが、一番リスクは少ないはずだ。
 だから関本は、こんな話をしたものの、金澤に仲間にならないかと言いだすのは
気が引けていた。
「ヨッシャー!! ちょっとやる気出てきた!」
 突然咆哮を上げ、金澤が両握り拳を作って勢いよく立ち上がる。
 その表情には力強く、マウンドで相手打者を三振に打ち取ったときのガッツポーズ
を彷彿させた。 
「金澤……お前……」
「そうと決まれば善は急げだ。さっさと行くべ」
 興奮に故郷の方言が混じりつつも、金澤は関本を急かして自分の荷物を担ぎ上げた。
 ぼんやりしていると本当に置いていかれそうだったので、関本は金澤があと少し
のところで放置した包帯を結び、よろよろと立ち上がった。
 すでに前方、草木をかき分け進んでいる金澤の背中を見て、関本は少しだけ笑み
を浮かべた。
 頼もしい仲間が出来た気がした。
 ともすれば弱気になってしまう自分を、死者の遺言しか拠り所のない自分を――
正しいと思わせてくれる、前に進ませてくれる仲間が。
 金澤の勢いは、自分が自信をなくした時の後押しになるだろう。
 逆に、気性の激しい金澤が無茶な行動に出た時、彼を引き留めるのは自分の役目
だと思った。
 関本は自分の荷物を担ぎ上げ、もう一度腰の銃に手を触れた。
「サンキュ……」
 誰にともなく、関本は礼を言った。


【残り41人】

289 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 22:36:46 ID:D3vfBN5v0
新作だ!174さん乙です!!
関本が転んだ時、悲鳴が二重になっていたので
もしや誰かに…・・・と思ったら金澤だったんだ
仲間ができて良かったな!

290 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/17(水) 23:52:24 ID:BCfVJkHV0
チンポ━━━━━━(*・∀・)━━━━━━━!!!!!
関本なに踏んだかと思ったらチン様だったのか
早漏なチン様と落ち込み気味な関本って意外といいコンビになるかもw

291 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/18(木) 22:39:09 ID:xwNoPIWt0
野球バトルロワイアル総合雑談所
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1124368992/


292 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/19(金) 21:59:47 ID:5TpzbbaC0
保守

293 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 09:31:23 ID:iLuuahIq0
捕手

294 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/20(土) 21:39:58 ID:VV8AUA7O0
保守

295 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 12:30:13 ID:u1I8pD9k0
ほす

296 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/21(日) 21:47:57 ID:oDon027O0
hosyu

297 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 15:09:24 ID:QurjFZIt0
保守age

298 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 15:16:04 ID:TucA3jtp0
ここでことわざ
「阪神に塩谷」
阪神に塩谷が居るとしおれるように、人が元気がなくしょげるようすをいう。

299 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 21:27:47 ID:KNarBG8l0
保守

300 :174(1/4):2005/08/22(月) 22:05:25 ID:uouC62t10
>>288 
65.fukkin sucks

 ジェフ・ウィリアムス(背番号64)は怒り狂っていた。
 試合においても元々ファイティング・スピリッツ溢れる彼だが、ただ今ここで理性
だけはなくすまいとしていた。
 頭を冷やそうと、池の水に頭を突っ込んだ。池といっても、かなり規模は大きい。
上流からの川の流れが流れ込んでいる場所のようだった。
 荒く息をつき、ウィリアムスは濡れた頭を振って水気を飛ばした。濡れた肌に外気
が触れ、火照った顔を冷やした。だが冷静さを取り戻しても、この怒りが収まるわけ
ではなかった。
(“殺し合え”だと? ふざけている――)
「BULLSHIT! it fukkin sucks...!」
 そんなことの為に日本へ来たわけではない。愛する妻も、可愛い子供もいる。
 湖面に映る、歪んだ自分の顔に向かってウィリアムスは小声で吐き捨てた。大声
で叫んでやりたかったが、それはこの状況では危険だった。
 人殺しは罪だ。それは当たり前だ。
 だが“殺さざるを得ない時”というものはあると、ウィリアムスは思っていた。
それは国の威信をかけた戦争であったり――やむを得ない正当防衛であったり、
そんなものだ。時代の流れや情勢というのもあるだろう。
 しかし今この時が、自分達が殺し合いを“せざるを得ない時”であるわけがない。
プロ野球という一種の国民のエンターテイメントの一部を担っているだけの人間に、
他人の命を奪う権利が一体どれだけあるというのだ。
 池の周囲は森――と言うよりは林だろうか。さほど鬱蒼とはしていないが、不均等
に地面から伸びた木々がそこには立ち並んでいた。
 膝程まである天然の芝に、木漏れ日が落ちる。静かなその空間には、鳥のさえずり
さえ聞こえる。じっと湖面を見つめていると、時折小さな影が映り、湖面が波立った。
魚がいるのだろう。
 晴れやかな日だった。つい先程聞いた放送がなければ、今自分がいる理由が殺し
合いゲームのためではなく、ピクニックかトラベルであれば。

301 :174(2/4):2005/08/22(月) 22:06:34 ID:uouC62t10
 前方には小高い山がある。この池に繋がる川が、その山の上へと伸びていた。この
山の向こうには、自分達が出てきた体育館があるはずだ。
 ウィリアムスは見通しの良すぎる池のほとりから離れ、辺りで一番大きな木に背
を預けて身を隠した。座り込み、もう一度配布された紙を見る。
 冗談のような内容が英語でプリントされてある、その最後の余白部分の、手書きの文。
 誰もが望んでこんなゲームやろうとしているわけではないことは、すぐに読みとれた。
やりたがっているのは一部の人間だけだ。――あいつらだ。
 センイチ・ホシノは素晴らしい将だったと思う。彼のファイティング・スピリッツ
には感動させられることも多かった。そんな彼が、体調不良とはいえ志半ばで監督
の座を退くことになったのは心から残念なことだった。
 その意志を継いだはずのオカダは、何をとち狂ったことを言いだしたのか。ベース
ボールというものを、侮辱している。いや、命というものを軽んじている。
 ウィリアムスは、右手に抱えていた黒光りする銃器を自分の身に引き寄せた。
 マシンガンだった。
 この引き金を引けば、人を殺すのはたやすいだろう。このマガジンを惜しみなく
使えば、最後に生き残るのはウィリアムスかもしれない。
 しかしそんな生き残り方をしてどうする? チームメイトを殺し、殺人者となり、
一体どうやってその罪と魂を背負いながら生きていけるというのだ。
 だがその生き残りを望んでいる人間がいるというのも――確かだ。
 ウィリアムスはもちろん日本語をよく理解しているわけではないが、チームメイト
の名前くらいは理解している。あと、数字も早口でなければ理解できる。オカダが
放送で羅列した背番号と名前の選手が現在までの死者であろうことは予想がついた。
 禁止エリアも、アルファベットすら酷く日本語なまりだったため聞き取りにくかった
が、なんとかメモできた。それが合っているかどうかは自信がないが、何も分から
ないよりはマシだった。禁止になる時間は分からなかった。数字が聞き取れても、
それが午後か午前か、そもそもそれが時間を表した言葉なのか、ウィリアムスには
分からないからだ。とにかく、ウィリアムスはその放送が流れた時点で禁止エリア
には全て入らないようにした。

302 :174(3/4):2005/08/22(月) 22:07:02 ID:uouC62t10
 幸い、自分がいる場所は今のところ禁止エリアには指定されていない(はずだ。
間違っていなければ)。むやみに動くのは得策ではない。
 ウィリアムスは深くため息をついて上を見上げた。
 枝葉の間から漏れる柔らかな太陽の光が、尾を引いてウィリアムスの顔に降りかかる。
 その整った顔立ちでマシンガンを携え、大木に背を預け黄昏れる姿は、ピンスト
ライプのユニフォームさえ着ていなければ戦争物ハリウッド映画のワンシーンのよう
に見えたかもしれない。
 目を閉じる。ウィリアムスには決意があった。
「I'll kill...OKADA」
 オカダを殺す。殺しは罪だ。だが、ただ殺されるのを待つのは嫌だった。かつて
共に喜びを分かち合ったチームメイトに殺されるのは、自分が殺すのと同じくらい
におぞましいものだ。
 ならば――
 もし自分が死ぬ危険性があるとしても、オカダを倒す。奴らを倒せば、このクレ
イジーなゲームは終わる。チームメイトも助かるだろう。
 ウィリアムスはもう一度マシンガンの感触を確かめた。
 固い。そして冷たい。
 アメリカのサウスイースタン・ルイジアナ大学にいたとき、ディア・ハンティング
が趣味の友人に促され、ライフルを手にしたことがあるが(鹿を撃つ気にはなれな
かったので、狙撃練習を少しやらせてもらっただけだ)、それとは比べ物にならない
重量――そして殺傷能力。
「George...」
 ゲームに参加させられた、もう一人の助っ人外国人の名を呟く。
 彼は敬虔なクリスチャンだった。ウィリアムスもクリスチャンではあったが、彼
ほど信仰の深い友人に出会ったのは久し振りだった。
 彼はゲームに参加できないだろう。そして自分のように復讐を考えたりもしない
だろう。それは全て、神の御心に背くものだからだ。
 ウィリアムス自身も罪悪感がないわけではない。葛藤もある。信仰とは、己の精神
の底辺に根を張るものだ。ここにいる限り、常に苦悩し、葛藤し続けなければいけない。
 それでもやらなければならない。ウィリアムスはそう思った。
 そっと、指先で銃口に触れる。昼の光りすらも吸収する黒々としたホールを、円
を描くように撫でると、指が震えた。

303 :174(4/4):2005/08/22(月) 22:07:29 ID:uouC62t10
 これは――この鉄の塊は、人を殺せる。
 忌むべき道具なはずだ。だが今自分はこれに依存している。これだけが、己の目的
を達成するための、唯一無二の希望だった。
 そう、オカダを殺すという、目的の。
 改めて己の中で決意を固くし、ウィリアムスは立ち上がった。
 辺りを警戒しながら、もう一度歩みを進める。ウィリアムスは北上していた。この
結論に辿り着くまでに随分南下してしまった。
 とりあえず、一度は出た体育館に、もう一度近づくつもりだ。体育館の一体は禁止
区域になっているから立ち入ることは出来ないが、オカダ達を殺すつもりなら近づく
しかない。
 なにか――なにか打開策が欲しかった。
 何か方法さえ見つかれば、ウィリアムスは自分一人で乗り込んでやつらを倒すつもり
だった。
 アリアスと合流する気はなかった。彼は自分を止めるだろうし、彼を自分に巻き
込む気はなかった。それは、あってはならないと思っている。
 他の日本人の選手は――ダメだろう。外国人という垣根があるだけに、相手が自分
を信用するかどうかというところからネックがある。そして言語の壁。英語がしゃべれる
人間はそう多くない。よしんばある程度分かっても、ちょっとしたニュアンスの違い
や聞き取りミスから取り返しのつかない事態に陥る危険性も否定できない。
 ただ放送もロクに聞き取れず、知恵を出し合うパートナーもいない状態で、一体
何が出来るのか……それはウィリアムス自身も、まだ何も思いつけずにいた。
 ただ一つ――その青い目に秘めた炎が宿すものは、このファッキンサックスなゲーム
の首謀者達への、強い復讐心。
(俺にこの凶悪な武器を与えたオカダに――後悔させてやる)
 神よお守りくださいとは言わない。
 自分はもう神を裏切っているのだから。


【残り41人】


304 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 22:19:04 ID:iYv9ricJ0
職人さん、乙です!
ウィルの登場を待ってました。
やっぱり、かっこいいなあ。

305 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/22(月) 23:38:59 ID:euljl3EL0
ウィルの背番号は54では?

306 :174:2005/08/22(月) 23:48:27 ID:uouC62t10
>>305
うわ・・・失礼しました
なんで64にorz
お恥ずかしいです。脳内で訂正しておいてくださいorzorzorz

307 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 22:08:39 ID:FlaHkTdp0
174氏、乙です!

308 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/23(火) 23:06:28 ID:qzbEJ5NV0
>>174氏乙!!
ジェフかっこいいな…アリアス(ノД`)


309 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/24(水) 17:12:29 ID:oETCkCbP0
(´゚ぺ`)hosyu

310 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/25(木) 07:24:41 ID:fdtphdPF0
age

311 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 17:57:03 ID:k6aJ1nqN0
保守

312 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 22:34:06 ID:0ABxrgvi0
保守がてら、リレー登場各人の足跡を追ってみる

中村豊 : (‘〒’)ノシ 〜 しばらくお待ちください
秀太 : 民家6 → 海岸沿いの繁み
鳥谷 : 体育館近辺 → 森1 → 民家2
藤原 : 山中・川付近
藪 : 森4 → 民家3 → …
沖原 : 公園
金本 : アジト → 背の高い草原 → …
今岡 : 体育館近辺 → 民家5 → 林
片岡 : 海辺の砂浜 → 民家4付近 → 民家3
藤本 : アジト → 背の高い草原 → …

313 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 22:55:51 ID:0ABxrgvi0
浅 井:海辺・森近く
中村泰:体育館近辺
アリアス :山中・川付近
太 陽:森?付近に茂み → …
安 藤:森3
杉 山:民家4 → 森近くの草原
筒 井:海辺の砂浜
金 澤:民家1 → 森6
吉 野:森3
桧 山:森1 → 民家2 → 林
前 川:民家4付近 → 民家4
江 草:民家4 → 森近くの草原
野 口:民家5
福 原:海辺の崖
井 川:森4 → 民家3 → …
久保田:神社 → 民家7

314 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 22:59:49 ID:0ABxrgvi0
濱 中 : 森近くの草原 → …
久 慈 : 山中・斜面 → 海辺・森近く
葛 城 : 森近くの草原 → …
牧 野 : 森5 → 海辺の洞窟
中 林 : 背の高い草原
三 東 : 森5 → 民家2 → 公園
 林  : 山中・川付近
矢 野 : 民家2
桟 原 : 森5 → 海辺の洞窟 → 海辺の岩場
下 柳 : 背の高い草原
上 坂 : 山中・斜面
関 本 : 海辺の崖 → 海辺の砂浜 → 海岸沿いの繁み → 森6
立 川 : (’ん ’)ノシ 〜 しばらくお待ちください
佐久本 : 森近くの草原
石 毛 : 森3
新井智 : 森3 → 海辺・森近く

315 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 23:09:29 ID:0ABxrgvi0
桜 井 : 森2 → 海辺の岩陰 → 神社 → 民家7
赤 星 : アジト?
ジェフ : 池・川の下流
喜 田 : 山中・斜面 → 民家4
田 村 : 森2
小宮山 : 森2 → 森?付近に茂み → 神社 → 民家7 → …
狩 野 : 民家4 → 森近くの草原
庄 田 : 民家6
谷 中 : 民家6 → 民家4 → …
伊代野 : 公園 → …
萱 島 : 森?付近に茂み
松 下 : 森2 → 海辺の岩陰
藤 川 : 森4
的 場 : アジト?

三点リーダは移動したような記述があった場合に使用
民家や森の後ろの数字は登場章順(多分)

316 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/26(金) 23:46:26 ID:1fdpKIAO0
>>312-315
乙! GJ!
けど一瞬俺の谷チュンいたっけ!? って保管庫探してしまったじゃないかヽ(`Д´)ノ ウワァァン!!

317 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/27(土) 04:16:18 ID:dSDTOGTV0
>>312-315
乙ですぅ。

318 :312-315:2005/08/27(土) 16:47:19 ID:ZknOqpno0
>>316
ごめん&指摘ありがとう
一番やっちゃだめな間違いやっちまった。回線切って仙台に逝ってくる

319 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/27(土) 20:40:47 ID:jtk/Eavp0
ほしゅ

320 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/27(土) 22:52:52 ID:ku70wLs+0
>>318
いやこちらこそスマンw
単純に谷中ファンなことアピリたかっただけなんだ。戻ってきてくれGJ

321 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/28(日) 14:59:47 ID:w6lVjo910
保守

322 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/28(日) 21:53:56 ID:hbEK/sib0
保守

323 :174(1/5):2005/08/28(日) 22:04:00 ID:ua4Pb9+Q0
>>303
66.人を殺す理論

「な……」
 目の前が真っ白になった。わけが分からない。何が起こったのか、今目の前の事象
を必死に理解しようとする自分と、しまいとする自分が脳内で戦闘していた。
 身体が震えた。顎先で揺れていた滴が、その衝撃でぽとりと地面に落ちる。
 もう涙は乾いていた。あまりの衝撃に瞬きすることも忘れ、林威助はただ自分の
視界に映るものを眺めていた。
 瞳孔の開いた青い目。幅のある身体が傾いで岩に寄りかかっている。遠目から見
たら、疲れて休憩しているように見えたかもしれない。だが間近で見るそれは――
つい数秒前までジョージ・アリアスだったそれは――感激に紅潮していたはずの肌
はすっと血の気が引いて、マネキンのように青ざめていた。彫りの深い顔も、ぴくり
とも動かない今は血塗れの人形のようで不気味だった。
 そう、血――
 アリアスの左の側頭部はひしゃげていた。ひしゃげていたというのか抉れていた
というのか――相応しい日本語の表現が出てこない。どうでもいい。林威助にとって
そんなことはどうでもよかった。
 ただ理解するべき事実は、アリアスが目の前で撲殺されたということ。それのみ
だった。
「おま、お前、な、何す……!」
 口が固まって上手く動かない。
 アリアスを撲殺した張本人――藤原通は、血の付いた石を抱えながら、きょとん
とこちらを見返してきた。

324 :174(2/5):2005/08/28(日) 22:04:30 ID:ua4Pb9+Q0
「何って、助けてやったんやん」
「た――……?」
 助ける? 何を言っているんだ。この男は?
「だってアリアス、今お前のこと殺そうとしてたやろ?」
「な、そんな、ことっ……あるわけ――っ!」
 至極当たり前のことをしたとでも言いたげな藤原の口調が、林を激昂させた。今
にも掴みかかりたい衝動をギリギリで抑え、わななく唇で非難の言葉を紡ごうとする。
「お前、ちゃんと日本語しゃべれってー。しゃべれるやろー?」
 林が台湾人であることと、ショックで上手くしゃべれていないことを掛けて一人
で笑う。
 何故この男は、人一人殺しておきながらこれほどまでに自然体なのか。
 苦しい。息苦しさと吐き気に、林は自分が興奮のあまり上手く呼吸が出来ていな
かったことに気付いた。激しくむせ返り、一度呼吸を落ち着けようとする。
「はぁ……っはぁ……っ」
 空気を肺に入れると、少しだけ頭が冷えた。だがそれでも、藤原の行動は全く理解
できなかった。何か理由があったのだろうか。この異常な状況でも少しでも好意的
に物事を見ようと、林の思考が働くが、無理だった。
 アリアスが自分を殺そうとしていた――? どこをどう見たら、あの状況をそう
歪曲できるのか。
「ア、アリアスは、生きるって――死のうとしてたけど、家族のために生きるって
決めたんだ!」
 自分が何を言いたいのか、自分でもいまいち分かっていなかった。それでも林は、
アリアスの潔白を精一杯主張しようとした。

325 :174(3/5):2005/08/28(日) 22:04:57 ID:ua4Pb9+Q0
「あんな敬虔な人間が、俺を殺そうとするわけないだろ!?」
 林の非難に、藤原は困ったように頭を掻いた。
「お前、バッカだなー」
「な……っ?」
 再び、言葉に詰まらされる。
「そんなの騙しに決まってるやろ。お前馬鹿素直だから騙されたんだよ。あいつ外人
だぜ? 出稼ぎに来ただけの国で、こんなゲームに巻き込まれたら人殺してでも帰
ろうとするやろ」
 外人――? 何を言っているんだろう。
 藤原の高説は、林の理解の範疇を越えていた。
「チームメイトっていっても、あいつらにとっては数年一緒に野球やるだけの人間
だろ。あいつらは俺たちとは違うんだよ。信用できない」
 外国人だから信用出来ない?
 信用出来ないから殺す?
 では自分はなんなのだ。アジア人だから? 見た目が似ているからか? 日本語
がしゃべれるから?
 藤原の理論は、まったく理論的でないように思えた。だがそれを、相手は至極当然
のことのようにしゃべった。そうまるで、太陽が東から昇って西に沈むのは当たり前
だろうとでも言うように。もしかして、自分の方が間違ってるのではないかと、林
ですら分からなくなってしいまいそうな程に、その男は『普通』だった。
「な、俺が来て良かったな。リンちゃん」
 へらっと笑う。そこにチームメイトを殺した人間の邪気はない。
 確かにアリアスを殺した藤原に、殺意があるようには見えなかった。友人の腕に
蚊が止まろうとしたから殺した。それくらいその行動はこの男にとって普通である
ように思えた。だからこそ、恐ろしかった。
 正気なのか? この男は。
 どうせ狂うのなら、もっとあからさまに狂ってくれた方がずっとマシだ。
 気味が悪い。だが恐怖よりも怒りの方が勝っていた。

326 :174(4/5):2005/08/28(日) 22:05:24 ID:ua4Pb9+Q0
「ふ、ふ……」
「ふ?」
 笑っている訳ではない。藤原はその続きを興味深そうに聞き返した。
 限界だった。
「ふざけんな! お前の方がおかしいだろ!? 人殺し――!」
 一気に胸倉に掴みかかり、思いつく限りの言葉を投げつけた。
 おかしい。こんなのはおかしい。
 アリアスが死んで、この男が生きてるなんておかしい。
 神様がいるなら、何故アリアスを救わなかったのだろう。
(あんまりじゃないか――!)
 林に為すがままに暴言を浴びせられていた藤原が、ぽつりと、呟いた。
「なんだ、お前も『外人』か」
「……え……」
 その声は、鉄のように無機質だった。
 ゴスッ――
 側頭部への強い衝撃に、視界が揺らぐ。
 突き飛ばされ、林は地面に転がった。
 まるで全身に指令を出す機能がいかれたかのように、身体が痺れて動かない。
 最後に見えた藤原の顔は、先程のへらへら笑っていた男とは別人のように冷たく、
眼差しはそれ以上に冷ややかだった。まるでいやらしい虫けらでも見るような――
侮蔑と不信の目。
 動けないままでいる林の上に、藤原がのしかかった。しゅるりと、首筋に固い感触
が走る。
(――!?)
 林がそれが何かを理解する前に、藤原は林の首に巻いたベルトを思い切り締め上
げた。

327 :174(5/5):2005/08/28(日) 22:05:50 ID:ua4Pb9+Q0
「う……ぐぁっ……!」
 ギリギリと喉に食い込む皮の感触に、林はようやく事態を理解する。理解した時
には、もう遅かったが。
 ようやく感覚を取り戻した両手で、無我夢中で喉元をかきむしる。爪で首の皮
がめくれるが、そんなことは気にならなかった。
 必死で首に巻かれたものを引きちぎろうとするが、それが敵わないことを悟り、
林は朦朧とした頭で目の前の藤原を殴りつけた。
「ぐっ……がぁ……っ」
 呻きながら渾身の力で殴りつけても、藤原の力は一向に弱まらない。林は薄れて
いく意識の中、全身から力が抜けていくのを感じた。
 媽媽(マーマ)――
 柔らかな笑みが浮かぶ。
 記憶の中の彼女は悲しそうに笑っていた。深く顔に刻まれた皺が、彼女のこれ
までの苦労を物語っている。
(俺……ここで死ぬのかな……)
 もう二度と悲しませないと、誓ったはずなのに。
 たくさんお金を稼いで、たくさん楽にさせてあげたい――二度と苦労はさせない
と。幸せにしてみせると。
(約束、守れなくてすみません――)
 あの世で父に合わせる顔がない。
 浮かんだのは、暖かな地で、砂浜で父とキャッチボールをする幼き自分の姿だった。
 母を守れと言われたのに。
(生きたい――)
 意識が闇に落ちるギリギリの場所で、林は爆竹のような音を聞いた。


【残り41人】

328 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/28(日) 23:16:12 ID:3GLZ7jRv0
来たー!!!


329 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/29(月) 00:00:03 ID:eOW5yDsV0
職人さん乙ですー。
うぁぁーリンー!

330 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/29(月) 01:52:25 ID:GSvT7AJw0
職人さん乙です。
リンーー!!
マーマのためにも生きろー。・゚・(ノД`)・゚・。

331 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/29(月) 18:38:31 ID:D4pqGCsG0
職人さん乙です!

332 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/29(月) 20:04:05 ID:WDw3Xp9v0
ほしゅ

333 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/30(火) 07:28:13 ID:zalcdmgP0
保守

334 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/30(火) 21:34:56 ID:LE+KmvhW0
捕手

335 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/31(水) 03:49:15 ID:pyg8Mm3K0
藤原、お前コワス

336 :代打名無し@実況は実況板で:2005/08/31(水) 21:57:40 ID:V3meULYR0
ほす

337 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/01(木) 00:46:07 ID:VLjramE80
hoshu

338 :542(1/5):2005/09/01(木) 18:07:58 ID:212/giMC0
>>327
67.間の悪い男

 殺すか殺さないか―――選択肢は、二つに一つ。
 殺すのなら今しかない。ターゲットは血塗れの、手負いの男。それからかなり興奮
―――『こんらん』というルビを振るのが正しいだろう―――しているらしい青年。
 何て事はない。後ろから忍び寄って、先に興奮している方の咽喉をかき切る。それ
から、蹲って木に背を預けている重傷の男を殺せばいい。それだけで自分の生存
確率は随分と上がる。
 黒土の冷たさがズボンを通して伝わってきて、鳥肌が立った。
 背中に寒さが這い、頚動脈と首のリンパ腺の辺りに嫌なものが湧き上がる。首筋
を撫ぜても寒気は消えなかった。べっとりと張り付いたまま、ちくちく、ちくちく、神経
をささくれさせていく。
 (今更びびってんのか)
 寒さは、再び犯そうとしている罪への慄きではない、と思いたい。
 臓腑に生まれた小さな寒さを持て余しながら、木と蔓と、植物が幾重にも絡み合っ
たバリケードの陰から、そっと彼らの様子を窺う。
 「聞いてるんスか、アンタ」
 青年が小声で、しかし鋭く問うた。
 「聞けよ」
 うんざりしたような嘆息を漏らし、青年は倒れそうになった男の身体を半ば無理矢
理に引きずり起こす。地面に膝をつきうす汚れた布を広げたかと思うと、縦に思い
切りよく裂いた。同じものを何本か作り、手際よく男の肩をぐるぐる巻いていく。男は
されるがまま、四肢も視線も注意も意識も全て適当に放り出した体だった。
 青年は平手で軽く、男の頬を打った。
 一回。二回。叩かれても何も言わず、顔を動かす素振りもない。五回まで数えたと
ころで諦めたらしく、青年は忌々しそうな舌打ちと、短く尖った言葉とを投げつける。
 「聞くつもりもねってか」
 青年がぎゅ、と布を締め付けると、それがみるみるうちに暗く赤い染みを浮かび
上がらせ、男はびくんと身体を震わせた。半開きの口から、つう、と滴る唾液。生理
的な違和感を覚えたのか、数度、素早く瞬く。
 木偶のようだ。

339 :542(2/5):2005/09/01(木) 18:09:52 ID:212/giMC0
 「その耳はお飾りかよ?……そうじゃねっぺ、そうじゃねだろ」
 言い聞かせるような口調は、そのまま彼の不安を表しているかのようで。
 焦燥に駆られて、青年は延々と過剰なくらい布を巻きつけてゆく。片方の肩がアメ
フト選手のように盛り上がったところで、漸くその手を止め、きつく縛った。そうまでし
てやっても、やはり男はどこか遠いところを見つめている。押し黙ったままそこには
ない何かを見つめている。ぼんやりと、全てから見放されたような、情けない表情。
 既視感がふと頭を過ぎった。ベンチ裏。アイシングをしている彼の姿。
 「勘弁、してくれよ」
 ―――けれど、彼があんな顔でいるところは見た事がない。
 「聞けよ……俺の目を見ろよ!」
 がっ、と音がするほどに、青年は彼の肩を掴む。強く揺さぶる。首の据わらない赤
ん坊のようにぐらぐら頭を揺らすだけの男は、それでも答えようとはしない。
 ほんの数回瞬きして、視線を揺らして、また沈黙。
 (ああなったらお終いだ)
 あんな風に壊れてしまったら、お終いだ。
 (俺は、俺は……帰りたい)
 だから殺さなくては。
 ―――論理展開があまりにも突飛過ぎやしないだろうか。栞を挟んでおいたペー
ジを開いてみたら、でたらめな、全然違う話が展開されていたような気持ち悪さだ。
理由は?因果関係は?倫理や算数的な方程式は、一体どこへ行った?
 胸がぐるぐるする。
 頭からざあっと血が引いていく。
 藤田太陽(背番号15)は、ひゅう、と息を吸い込んだ。
 (大介だって殺せたんだ……一人やったら、あとは二人でも、三人でも、何人だっ
て一緒だろ)
 殺すんだ。
 もう後戻りは出来ないと、嫌と言うほど思い知らされたじゃないか。
 (殺すしかない―――)
 「―――俺だって、怖いんだよ。なぁ藪さん。俺だって。俺、だって……」
 掴んだ両肩に縋るようにして、井川慶(背番号29)はずるずると座り込んだ。

340 :542(3/5):2005/09/01(木) 18:11:08 ID:212/giMC0
 (そんなに怖いならいっそ殺しちまえよ)
 肩に掛けた手をちょっとだけ上へ移動させて、首を絞めればいい。
 今ならきっと抵抗もないはずだ。怨み言も聞かずに済むし、衝動で殺してしまった
のだと言い訳する事だって出来る。
 それでもそうしないのは?
 「痛ぇよ……」
 手足を放置した藪恵壹(背番号4)の正面に蹲って、井川。
 重い空気の塊を吐き出して、彼は右手でそっと脇腹を押さえた。左の手は未だに
藪の肩を掴んだまま、放す気配はない。
 「痛ぇよ。もう、あっちゃこっちゃ痛くて訳解んねぇよ」
 「……」
 「俺だってさぁ、ただの人間だっぺ。しんどい時はしんどいし、痛ぇもんは痛ぇし」
 「……」
 「いでぇよぉ……」
 独りごちて、ぎゅっと右手に力を入れる。震える指が藪の肩に食い込む。
 なんて痛そうな貌。
 (嫌、だ)
 あんな風に、なす術もなく打ちのめされて、苦しむなんて。
 「俺は強いから大丈夫、だって?……冗談じゃねぇ」
 大きな拳が、どん、と藪の胸を叩いた。
 「冗談じゃねぇよ!俺だって怖ぇんだよ。俺だって殺したくなんかねぇし殺されたくも
  ねぇんだよ。おめぇ解れよそれぐらい!」
 井川は低く唸った。爪が喰い込むまで握られた手が、藪の胸元の『4』に、何度も、
何度も、鈍く籠もった音と共に打ちつけられる。
 打ち据えて、散々に罵って、ひとしきり吐き出して、
 (―――そのまま殴り殺せないのが、お前の優しさなのか?井川)
 太陽は思う。
 彼は、本当はきっと凄く優しい。しかし優しさだけでは生きていけないのも事実だ。
その事を彼はよく知っているのだろう。太陽自身も知っているし、誰だってそんな事
は解っているはずだ。知っているはずだ。
 知っているからこそ無力なのだ。
 自分も、井川も、そして一切を投げ出した藪も。

341 :542(4/5):2005/09/01(木) 18:12:38 ID:212/giMC0
 「しんどいのは、アンタも俺も、みんなも、一緒だっぺ……」
 動作はいつの間にか兇暴さを失くし、代わりに駄々を捏ねる子供の稚さを孕んで
いった。本人にも自覚はあるのだろう。だからなのか余計に無力で無意味な、稚い
所作になってしまっている。
 ぽふん、ぽふん、と拳が跳ね、叩かれた部分が悲鳴代わりに啼いた。井川は俯い
て、小さくとつとつ呟いている。横顔が苦しそうだ。
 見上げれば、陽が赤く朱く色を纏い、鈍色の空をうすむらさきに染め上げていた。
 ゆったりと濃くなってゆく雨の匂い。皮膚を撫ぜる、冷たい空気。
 とろとろ混ざり合う斜陽の朱と黄昏の灰が、辺りに漂い始める。
 『殺すなら、今だ』
 (どの道やるしかない)
 包丁の柄を握り締める。自身の血を吸ったそれで、今度は他人に血を流させよう
としている自分。何て馬鹿馬鹿しくって、おぞましい趣向。あまりの悪趣味っぷりに
反吐が出る。
 しかしそれに逆らえない自分たちは一体何なのだ。
 そうやって潰されてゆく自分たちの人生とは一体何だったのか―――
 (余計な事は考えるな。あの時みたいにやればいい。あの時みたいに、冷静に、
何も考えずに、殺さなきゃいけない……)
 嚥下して意を決し、太陽は一歩を踏み出そうとした。
 ―――踏み出そうとして、急ブレーキをかけた。
 (!)
 視界の隅っこで、突然ふらりと何かが傾く。
 思わず視線が吸い寄せられた。放り出された藪の右腕と、それを覆う黒くぴったり
したアンダーウェア。表面に一瞬筋肉の束の線が浮かび上がって、中指と人差し指
が同時にぴくぴくと動き、一寸二寸おいて、今度は五本の指が緩く握る仕草をする。
 反射的に藪の顔を見た。瞳が少しだけ、井川の方を向いている気がする。
 (正気に戻るのか?)
 縋りついた格好で頭を垂れ言い募る井川は、きっと気付かなかっただろう。
 「痛ぇ……」
 どうする。
 (今しかないって、言っただろ。藪さんが起きないうちに、井川を殺す)

342 :542(5/5):2005/09/01(木) 18:15:04 ID:212/giMC0
 鼓動を抑えつつ、利き手の武器を確かめた。柳葉のすらりと長い包丁。人脂の曇
りが微かに浮かんでいる―――言わずもがな、この兇器が太陽の肉体を傷つけた
という証だ。
 忘れていた、忘れようとした肩の傷が強く痛みだす。じくじくと皮膚の内側で蠢き、
血管が異常なほど大きく脈打って、我が手に握る刃の鈍い光にくらくらした。
 萱島の笑った顔がふと、まぶたに浮かんだ。
 快活そうな、陽に灼けた笑顔だった。
 ―――太陽は決心した。
 二人分のバッグを草叢の奥へと押しやって、片膝を立て、井川の広い背中にある
『29』が正面に見える位置まで音を立てぬように移動した。草木の隙間から二人を
窺う。まだ動かない。二人ともさっきと同じ姿勢のまま、動いていない。
 包丁の柄が手のひらとくっついてしまいそうなくらいに握り締め、一つ、細く深呼吸
をして目を見開いた。樹の幹に沿わせた身体をゆっくりと引き剥がし、空気の流れ
を乱さぬよう慎重に、地面と垂直に立つ。
 ここから先は後戻り出来ない。これ以上動くと、二人から、特にこちらを向いている
藪から、自分の存在が丸見えになってしまう。
 (家族は、こんな俺を赦してくれるかな?)
 赦してくれるはずもない。赦されようとも、最早思わない。
 (それでも、それでも俺は生きたいんだ……)
 立ち籠めていたのは、雨の、微かに埃っぽい青鈍の匂い。
 太陽は、重い重い、多分一生で一番重い、血の枷を嵌められた一歩を踏み出そう
とした。ゆっくりと、体重を移動させようとした。
 ぽふん。
 ……ぽふん、ぽふん。
 「太陽、さん?」
 ―――コメディチックな、白ヌキのポップ体。
 自分の肩を叩くその音が、丸みを帯びた書き文字となって躍っている。
 背後の声は、恐ろしいほど唐突で、忌々しいほど遠慮がちだった。
 太陽は顔の筋肉をごっちりと凍りつかせたまま振り返った。
 江草仁貴(背番号26)だった。

【残り41人】

343 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/01(木) 18:42:44 ID:E84KtD5Q0
新作来た!!
職人さん乙!

344 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/01(木) 21:42:48 ID:tvHILO4R0
542氏、待ってました!

えぐ・・・武器もってないんじゃ・・・
おすぎ!おすぎはどこいっちゃったんだよぉーーーーー


345 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/01(木) 23:43:24 ID:nxdfo2V20
職人さん、乙です!
この後どうなるんだ!?

午後に入ってまだ2人しか死んでいないだけに
いつ来るかいつ来るかと非常に怖い・・・

346 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/02(金) 18:47:19 ID:ipYZF8yL0
捕手

347 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/03(土) 01:06:49 ID:KszZE4dw0
保守

348 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/03(土) 10:10:07 ID:TbE2359T0
保守上げ

349 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/03(土) 23:59:17 ID:0dBK94nV0
続き楽しみ保守

350 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/04(日) 18:48:28 ID:NV7iJnGe0
保守

351 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/04(日) 22:08:47 ID:A2nREPy30
hoshu

352 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 00:51:47 ID:Z448xaGd0
白抜きポップ文字・・・まさにその通り。
細かいところがいちいちツボだよ。職人さん、すげー。

353 :174(1/6):2005/09/05(月) 01:09:21 ID:Z/NSMUHr0
>>342
68.rest in peace

 進行方向を変えたのは、別に気まぐれというわけではなかった。
 林の向こうから、何やら言い争うような声が聞こえたからだ。
 近くで争いが起こっているのかもしれない。――この場所では、争いは簡単に殺
し合いへと発展する。
 嫌な予感がし、ウィリアムスはそちらへと向かって駆け出した。
 無駄な殺し合いは止めなければいけない。参加者全員がウィリアムスが持っている
ような殺傷能力のある武器を所持しているとしたら、ウィリアムス自身にも危害
が及ぶ可能性は高かったが、見過ごすわけにはいかなかった。
 声を頼りに木々を潜り抜けると、微かに川のせせらぎが聞こえた。
 そこからはそっと、足音を潜めて近づく。もう、先程のような喧噪は聞こえなかった。
遅かったのだろうか――焦燥感に駆られながら足を進める。
 ごつごつとした岩場の間を縫うように小さな川が流れていた。先程の池に流れ込む
水流だろう。ひたすら山の向こうの体育館を目指して歩いていたが、すでにそこは
だいぶ上流のように思えた。
 岩陰に、人影があった。
 その背番号を確認しようとウィリアムスは目を凝らし――我が目を疑った。
 目に入った背番号は2だった。誰だったか――記憶を手繰るが、名前が思い出せ
ない。それよりも、その男は手にしたロープのようなもので、もう一人誰かの首を
絞めていた。
 目の前の凄惨な光景に硬直している暇はなかった、ウィリアムスはすぐさま林から
飛び出し、そちらに向かって駆けだした。

354 :174(2/6):2005/09/05(月) 01:09:44 ID:Z/NSMUHr0
「Hey!! What are you doing!?」
 何をしている――通じていようがいなかろうが構わない。とにかく注意をこちら
に向けようと、ウィリアムスは叫び、彼らのいる手前の川に向かってマシンガンを
連射した。
 パララララ!
 一種のタイプライターのような音が響き、水面に突如魚が跳ねたかのような水飛沫
が起こる。
 威嚇だった。これですぐにあの男が被害者から手を離してくれれば――
 男は一瞬硬直し、ウィリアムスを見た。愕然と目を見開く。その表情は犯行現場
を見られたことへの驚きより、迫ってくる者への恐怖に駆られているように見えた。
 すぐさま男はもう一人から手を離し、相手の首を絞めていたベルト(ロープのよう
に見えたのはベルトだった)を手に逆方向へと逃げ出した。
(どうする――? 殺すか――?)
 相手は人殺しだ。野放しにしておくのは危険かもしれない。今なら、無防備に晒した
その背中を狙えば、確実に仕留められるだろう。
 背番号に狙いを定め、ウィリアムスは引き金を――引けなかった。
 川を渡り、例の岩の手前まで来たところで、歩を弛める。
 マシンガンの銃口を下ろし、荒い息を吐きながら、小さくなっていく背中を見送った。
 それはすぐに林の中へと溶け込み、完全に視界から消える。
(殺せなかった……)
 一瞬の躊躇は、理性とは別の判断だった。これで良かったのかどうか、ウィリアムス
は己の咄嗟の判断にジャッジを下せないでいた。
 それよりも先に、被害者の手当だ。
 気持ちを切り替え、地面に倒れている相手に目を移そうとし――ウィリアムスは
信じられないものを目にした。
「Jesus...!」
 ジーザス――ウィリアムスは神の名を呟いた。

355 :174(3/6):2005/09/05(月) 01:10:07 ID:Z/NSMUHr0
 その岩の影――ウィリアムスからは死角になっていた場所に、休養を取るように
岩にもたれ掛かっていたのは、このゲームが始まってから幾度と無事を祈り、思い
を馳せた同僚だった。一目見て事切れていると分かる――ジョージ・アリアス。
 その無惨な死に様に、ウィリアムスの視界が一瞬、壊れかけたテレビのように
ノイズを伴って揺らいだ。
「Geor...」
 思わず駆け寄ろうとしたとき、足下で聞こえた激しい咳き込みにウィリアムスは
我に返った。
「げほっ……がはっ……!」
 岩場に転がったまま、締め付けられた首に手をやり、しきりに咳き込む――背番号38。
 『LIN』とその汚れたユニフォームの背中に記されていた。
 生きていた――とにかく、間に合ったことを喜ばなければいけない。
 今まだ、ぶち当たった現実に打ちひしがれている場合ではない。生きている者の
安否を確かめることの方が先決だ。込み上げる悲嘆に蓋をし、ウィリアムスは己の
中の優先順位を確認した。
「Are you OK?」
 大丈夫か?――ウィリアムスは跪き、目線を低くしてゆっくりと林に尋ねた。
 断続的に咳き込みながら、林が唾液の零れた口元をユニフォームで拭い、小さく
頷く。
 首を締められただけでなく、側頭部を何かで殴られたらしく林の頭には出血が
見られた。だが意識は戻っているらしく、焦点の合った目が痛々しく歪み、ウィリアムス
を見上げていた。

356 :174(4/6):2005/09/05(月) 01:10:36 ID:Z/NSMUHr0
「LIN WEIZHU...?」
 名前を呼ばれ、林は驚いたようだった。林からすれば、ウィリアムスが自分の名前
を覚えているとは思ってもいなかったのかもしれない。
 ウィリアムスはずっと一軍に登録されているし、林はシーズンのほとんどをファーム
で過ごしていたはずだ。実際、顔や背番号を見ただけでは分からなかっただろう。
 ただ、『LIN』という名に覚えがあった。
 確か同じ03年に入団した台湾出身の選手だ。日本に滞在している期間が長く、
外国人選手ながら日本人登録をされていると、教えてくれたのは当時の通訳だった。
 来日前に父親が急死し、それからは母親が一人で働いて日本へ仕送りをしてくれ
てたということ――そのことに感謝し、これからはお金をたくさん稼いで母親を楽
にしてやりたいと入団会見で話したという美談に胸を打たれ、今でもその名を覚え
ていた。
 緩慢な動作で上半身を起こした林が自分の喉に手をやる。空いた方の手をゆっくり
と握ったり閉じたりを繰り返し、意志通りに動くことを確かめているようだった。
 まだ咳を続ける林に、ウィリアムスは自分のデイバッグを探り水を取り出した。
 ペットボトルの蓋を取り、林に手渡す。
「センキュ……」
 少し戸惑った様子を見せてから、林は小さく呟いてペットボトルを受け取った。
 恐る恐る、しかししっかり水を飲み込んだ林に安堵し、ウィリアムスは小さく嘆息
した。 
「sorry...」
 小さく、林が謝る。まだ違和感があるらしく軽く咳をして喉を整えながら、林
がゆっくりとした英語で言った。
 それが彼を救えなかった事に対しての謝罪であることは明白だった。

357 :174(5/6):2005/09/05(月) 01:10:56 ID:Z/NSMUHr0
 林はぽつりぽつりと語ってくれた。
 アリアスとの出会い。彼がしようとしたこと。二人が話し合ったこと――彼の
唐突にして呆気ない最後についても。
 その全てを英語で明確に伝えるのは、林には些か難しかったらしい。それでも、
自分の思いを含め、出来る限り伝えようと真剣に言葉を探す林に、ウィリアムスは
何度も頷き耳を傾けた。
「sorry」
 ごめんなさい――何度となく彼の口をついて出てくるその言葉に、ウィリアムスは
胸が締め付けられる思いだった。恐らく心清らかなこの青年が、まるで自分が人を
殺したかのように己を責め立てている。
「Never mind. It's not your fault」
 気にするな、君のせいじゃない――手振りも交え、出来るだけ優しい口調で言う。
そう、彼の責任ではない。アリアスを殺したのが、あの背番号2であることは状況
を見ても明確だった。
 それでも、心優しい青年は酷く気に病んだ様子で、ウィリアムスが渡したペットボトル
を握りしめたまま俯いていた。
 濡らしたユニフォームの切れ端で傷口の周りを拭いてやり、気休め程度の応急措置
を取る。幸い、頭部の傷は比較的浅いものだった。
 それが終わり、ウィリアムスは大きく息を吐いた。
 そう、もう一つの残酷な現実と向き合わなければならない。
 気を落ち着かせ、ゆっくりとアリアスの遺体の放置された方を振り向く。先程と
変わらぬ姿勢で、魂の抜けたその身体はひっそりと岩にもたれかかっていた。
 瞑目する。認めたくない現実は、大きな哀しみを伴ってウィリアムスを襲った。
 何故こんなことになったのか。何故彼が死ななければならなかったのか。
 すぐ側に跪き、見開かれたままの目を閉じてやった。そっと身体を岩場に横たえる。
 持ち上げた手はまだ少し温かく、彼が命を失ってからまだそれほど時間が経って
いないことを生々しく伝えていた。

358 :174(6/6):2005/09/05(月) 01:11:25 ID:Z/NSMUHr0
「Please...rest in peace」
 どうか、安らかに眠れ――冷たくなった手の甲に口づけ、ウィリアムスは目を閉
じて祈った。静かに十字を切る。
 本来ならば、すでに神を裏切ったはずの自分が神に祈るべきではないのかもしれ
ない。だがそうせずにはおれなかった。
 これはアリアスの為の祈りだ。
 救われるべき魂は最後まで神に仕えた敬虔な徒のもので、ウィリアムス自身では
ない。ならば神はこの祈りを聞き届けるべきだ。
 そう自分に言い聞かせる。
 自分が死ぬときは、煉獄に行こうが地獄に行こうが構わない。
 ただ彼だけは救って欲しかった。

 そう、だから――

 rest in peace.
 その祈りだけが、悲痛な叫びとなってアリアスの魂に捧げられた。
 

【残り41人】

359 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 03:23:27 ID:qdietwez0
やの

360 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 14:34:38 ID:EQMxeiQF0
各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ7
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1125897603/

見守るスレがたったのを知らせに来たら…職人さん乙です。
林が無事でよかった…
けどウィルとアリアス…(ノД`)・゚・。

361 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 17:14:58 ID:xBh7voGS0
職人さん乙です。
林助かってよかったけど、泣けるよー(つДT)

362 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 18:42:47 ID:nP6oQhCB0
職人さん乙!
うおおぉ…・゚・(つД`)・゚・

363 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/06(火) 17:54:16 ID:xR1Lnokc0
保守

364 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/06(火) 20:51:41 ID:XR4rRRZw0
ほしゅ

365 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 05:25:11 ID:p5aKrmFy0
ハードボイルド風だけど、なんか暖かいな。
職人さん、ほんとにすごい。
続きも期待してます。

366 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 08:44:05 ID:p5aKrmFy0
暖かいというよりは熱いか?
深度が気になるので保守っとく。

367 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 16:19:23 ID:6lFX85O80
捕手

368 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 16:52:13 ID:U18gKxqA0
ほしゅん

369 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 22:32:14 ID:83gpaNDY0
保守

370 :924(1/4):2005/09/07(水) 23:09:18 ID:uBYNzAhe0
69.疑念

(自分は何をしているのだろう?)
葛城育郎(背番号33)はあてもなく森の中をさまよっていた。やみくもに
動いても何一つ良いことはない。いたずらに体力を消耗するだけであり、
誰かに遭遇する危険性も増す。それでも、動かずにはいられない。
じっとしていると気が変になりそうだった。

正午の定時放送で名を呼ばれるのがせめて佐久本だけであってほしい。
その願いは空しかった。告げられたのは、朝の時点での死亡者をはるかに
上回る12人もの名前。まるで自分をあざ笑うかのように。皆、いったい
どうしてしまったのか。朝の放送で岡田がはっぱをかけたから、そのとおり
殺しに精を出し始めたとでもいうのか?
(……狂ってやがる)

だが、かく言う自分もすでに人殺しなのだ。意図したことではなかったにせよ、
この手でショットガンを構え、引き金を引き、放たれた弾丸に当たって一人の
人間が死んだ。殺すつもりがなかったでは済まされない。しかも自分は、
佐久本をあの場に放置した。遺体の傍らで定時放送を――あまりに多い
死者の名を聴いているうちに、恐ろしくなったのだ。これだけの数の人間が
命を落としたこと、そして自分もまた加担したという事実が。頭では自分の
したことが分かっているつもりでも、認めたくなかった。だから、佐久本の
遺体を整えることもせずに去ってきてしまった。とんだ人でなしだ。


371 :924(2/4):2005/09/07(水) 23:09:59 ID:uBYNzAhe0
「ふう……」
葛城は立ち止まり、ショットガンを杖のように地面についた。もともと重量の
ある武器だが、歩き疲れた身にはいっそう重く感じられる。自分に人を
殺させた忌まわしい武器でもある。何度投げ捨ててしまおうと思っただろう。
だが、今はこれだけが我が身を守る頼りなのだ。いかに嫌悪していても、
手放せない。そのことがまた自分をいら立たせる。

殺させたといえば――濱中はどうしているだろう。天使のような無邪気な顔で
自分に近付き、佐久本を撃たせるという悪魔のごとき計略をめぐらせた
あの男は、今どこで何をしているのだろう。
彼に対して怒りは感じない。ただ、自分の考えのおよばないものに
遭遇したような不思議な感覚だけが付きまとっていた。

――会わなきゃいけない人がいるんです。
――俺はその人に会うためなら何でもする。
濱中の謎めいた言葉がゆらゆらと頭の中を浮遊する。
(お前は誰に会うつもりだ? その人に会って何がしたい?)
彼の真意が何なのか、考えれば考えるほど分からなくなる。今となっては、
あのやり取りはすべて夢だったような気がする。佐久本を撃ってしまった
ことも夢であれば、どんなにいいだろう。

その時、前方の木々の間にちらりと人影が見えた。葛城は慌ててそばの
大きな木の陰に身を隠した。なかば朦朧としつつあった頭が突然目覚め、
にわかに胸の鼓動が速くなる。
体育館を出てから生きた人間を見るのは二人目だ。ゲームに乗った
やつか、それとも逆か? だが、濱中のように本性を隠して近付いてくる者も
いるのだ。

372 :924(3/4):2005/09/07(水) 23:10:40 ID:uBYNzAhe0
(逃げた方がいい――か)
様子をうかがおうと、木の陰からほんの少しだけ顔を出す。向こうはこちらに
背中を向け、下を向いて立っていた。
(なんだって?)
一瞬、目を疑った。選手にしてはやけに恰幅のいい身体の背中に見える
番号は70。その上に並ぶ四つのアルファベットは「ケー・アイ・ディー・オー」。
(どういうことだ?)
木戸克彦二軍監督――。なぜ、あの人がこんな所にいるのか。

ゲームに参加させられているのは選手だけで、監督やコーチは主催者側だ。
体育館で気味の悪い笑いを浮かべながら司会を務めていた岡田、楽しそうに
補佐する平田、ロボットのように淡々と佐藤の遺体を運んできた中西や平塚、
普段どおりの落ち着いた声で選手名を読み上げていた福原。あの場に姿を
現さなかった連中も同じであるはずだ。それがなぜ、ここにいるのか。

木戸はこちらに気付く風もなく、相変わらず下を向いたまま突っ立っていた。
左肩にデイパックをかけている。腰から下は手前の茂みに隠れて見えない。
葛城は足音を立てないよう注意を払いつつ、そっと動いた。逃げるため
ではない。彼が何をしているのか確かめたかったからだ。遠巻きに背後から
右手へと大きく回り込んだ時、木戸の下半身をさえぎっていた茂みが
途切れた。

(な――!)
石像のように微動だにしない木戸の足元には、タテジマのユニフォームを
身に着けた一人の男が転がっていた。葛城に足を向けて伏しているその
人物が誰であるかはよく見えない。木戸の眼鏡をかけた横顔の表情も
読み取りづらいが、じっと目の前の男を見つめている。右手には拳銃らしき
ものが握られている。殺したのか――?

373 :924(4/4):2005/09/07(水) 23:11:23 ID:uBYNzAhe0
衝撃と恐怖。それ以上に怒りがふつふつと体内に湧き上がってくるのを
葛城は感じた。なぜ木戸がここにいるのか、少しずつ分かってきた気がする。
選手は主力級も一軍クラスも二軍も一切の区別なく全員が殺し合いの地獄に
放り込まれた。ならば、首脳陣もまた一軍二軍関係なく全てが敵だろう。
ただ一人、ゲームに反対して殺された佐藤以外は。

(俺たちをさっさと始末するために――自らおでましってことか?)
そうとしか考えられない。もしかすると、昨夜姿を見せなかったコーチ陣、
特に二軍の首脳陣は島のあちこちに放たれているのではないか? 
今日に入って激増した死者数の理由も、そこにあるのではないか。
どこまでも卑怯な連中だ。思わずショットガンを強く握り締めた。

葛城はそろそろともと居た場所に戻った。再び木戸の背後をとる。
――それでも誰かを殺すよりはいい。
ふと自らが濱中に言った最後の言葉が浮かんだ。たとえ誰かに殺されても、
誰かを殺すよりはいい。あの言葉はきれい事でもなければ強がりでもない。
だが、自分たちを陥れたやつらは別だ。
(見てろ……)
じりじりと距離を詰めながら、葛城は木戸の背中に向けてショットガンを
構えた。

【残り41人】

374 :924:2005/09/07(水) 23:14:07 ID:uBYNzAhe0
すみません、>>370>>358からの続きです

実況見ながら書いていてボーっとしていました
勝って良かった……

375 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/07(水) 23:18:53 ID:/wCr4XWE0
職人さん乙です

376 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/08(木) 03:38:06 ID:eGw5d69U0
職人さん乙です。
殺されたのが誰か気になる!

377 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/08(木) 19:30:07 ID:RquemUJi0
924氏乙!

378 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/09(金) 03:00:39 ID:pPKBr8Qz0
職人さん乙です。
続き期待してます。

379 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/09(金) 05:15:05 ID:vgd9uIov0
・・・で、木戸さんの足元に倒れている人は誰なんだろ。もう死んじゃってるの?

924氏の続きが気になる連載。いつもいつも乙です。

380 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/09(金) 21:02:24 ID:L6/jFGcX0
hoshu

381 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/10(土) 10:07:47 ID:NGIxtlYK0
age

382 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 05:46:03 ID:OTIqVXvl0
sage hosyu

383 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 16:15:44 ID:JctJqr/h0
保守

384 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 21:46:13 ID:uURSFhXP0
ほしゅ

385 :名無しさん@そうだ選挙に行こう:2005/09/11(日) 23:47:08 ID:nd10xzxe0
hoshu

386 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/11(日) 23:57:29 ID:/l3XZr6r0
続き期待保守

387 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/12(月) 18:50:15 ID:owOdGGFt0
捕手

388 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/12(月) 20:26:43 ID:n6c8ui0w0
ほす

389 :174(1/8):2005/09/12(月) 21:12:47 ID:erlS+mj/0
>>373
70.回想・五連星

 その話は一日目の夜に遡る。

 『体育館の裏手に左回りで。』
 藤本敦士(背番号9)から伝え聞いた言葉に、赤星憲広(背番号53)はおおよそ
のことを把握していた。
 招集した人間は分かり切っている。
 誰が集められたのか、メンバーもある程度は予想できる。だが一体何人いるのかは
赤星も推し量れずにいた。それほど、大人数ではないだろうが。
 体育館を出てすぐ建物の左手に周り、デイバッグの中身を確認した。武器として
支給された物を握りしめ、赤星は早足で指定の場所へ向かっていた。
 赤星の背番号は53だ。
 藤本、そして自分達を集めようとしている張本人はもっと背番号が若い。待って
いるといっても、状況が状況だ。いつその場を離れなければならなくなるか分から
ない。
(急がないと――)
 定期的に、手に持った探知機の小さな画面を確認する。
 首輪をした人間の生命反応をキャッチする位置探知機。これが赤星に与えられた
武器(?)らしい。
 古ぼけたトランシーバーのような形をした黒い携帯機器だ。白黒の、丸い小さい
画面がはめ込まれている。電源は入っているはずだが、そこにはまだ何も映し出さ
れてはいない。どうやら、ごく至近距離でないと表示されないらしい。
 試しに体育館の壁に張り付いて見たところ、同じ場所にひとかたまりになった
十数の黄色い光と、そこから離れていく一つの光が映し出された。
 ドラゴンボールのなんとかレーダーがちょうどこんな感じだったと、赤星は思い
出していた。

390 :174(2/8):2005/09/12(月) 21:13:29 ID:erlS+mj/0
(お、)
 立ち止まる。ふいに、画面の端、赤星の進行方向から二つの灯りが生まれた。
 よほど近接しているのか、それらは引っ付いたままのろのろと近づいてくる。
じっと画面を見つめていると、二つの点はやがて一カ所に留まって動かなくなった。
 赤星は息を潜め、探知機を頼りにそちらに向かった。
 さほど経たない内に、ひそひそと声を潜めた会話が聞こえてくる。
(誰だ……?)
 こっそりと、赤星は草陰から相手を観察した。
「牧野さん大丈夫ですか?」
「ああ……すまない、サジ」
 桟原将司(背番号40)と牧野塁(背番号35)だった。
 木の根本に腰を下ろし、向かい合っている。
 牧野の右腕が、血で真っ赤に染まっていた。桟原が怪我の手当をしてやっている
ところらしい。
(牧野さんが……誰かに襲われたのか?)
 まだゲームが開始してから間もないことを思うと、ぞっとした。
 すでにその気になっている者がいるということだ。
 害はなさそうな二人だ。声を掛けても良かったが、赤星は先を急ぐことにした。
 すでにあちこちで争いが起こっているとなれば、より藤本たちがまだ指定の場所
で待っているという保障はない。危険を察知すれば、彼らだって赤星を置いてでも
逃げなければいけないだろう。体育館を出たときからあった焦燥感は更に増した。
 ピッと、突然また進行方向から黄色い光が出現した。
 今度は一つだった。
(誰だ――?)
 かなり早いスピードで近づいてくる。赤星は顔を強ばらせた。牧野を襲った張本人
が、再び獲物を探してうろついてるのでは――と嫌な想像が頭を巡った。
 どうせなら背番号も書いておいて欲しい。どこまでも贅沢を言う赤星だった。
 今、赤星は丸腰だ。
 唯一武器があるとしたら――己の足。
(ヤバそうだったら――全力で逃げる!)
 目的地から離れてしまうが致し方ない。赤星は相手がいる方向に気を張りつめ
ながら、いつでも逃げれる体勢で少しずつ近づいていった。

391 :174(3/8):2005/09/12(月) 21:13:53 ID:erlS+mj/0
 ちらりと、一瞬木々の向こうに影が動く。
 反射的に赤星の足に、進行方向と逆の方向へ体重がかかったとき――
「あ、赤星じゃん!」
 不用心にかけられた声に、赤星は思わず転びそうになった。
「秀太?」
 がさごそと繁みをかき分け近づいてきたのは、同級生の田中秀太(背番号00)
だった。
「あー良かった。遅いんで探してたんだよ」
 ほっとしたように言う秀太。探してた、ということはやはり秀太もあの人に召集
されたうちの一人だったのだろう。いつものメンバーだ。
 馴染みのある顔に出会い、張りつめていた糸が少しだけ緩む。
「探すって、一人で動いたら危ないだろ?」
 背番号からいって、秀太はもうとっくに彼らと合流しているはずだ。せっかく
信頼出来る人間と集まった後に、わざわざ一人で行動するのは危ない。
「来る方向だいたい分かるし、この近くうろついてただけだから、大丈夫。金本さん
も藤本もすぐ近くにいるよ。何か、ゴレンジャーとかいうらしいぞ、俺ら」
 秀太が肩をすくめる。赤星も思わず、ははっと乾いた笑いを返した。
 長い付き合いだ。命名の由来も、命名した人間も瞬時に分かった。
(あの人らしいや)
 呆れるよりも先に、つい感心してしまう赤星だった。あと一人は誰だろう。
「ここに来るまでに何かなかったか?」
 秀太に案内され、ゴレンジャーとやらが集まっている場所へと向かう。
「何で?」
 赤星を心配しているだけではないらしい秀太に問い返す。
「さっき……ちょっと前だけど、近くで争うような声とか悲鳴とか聞こえて、気に
なって3人で見に行ったんだよ。結局、誰も見つからなかったけど」
 秀太が説明する。ふと思い当たることがあり、赤星は神妙な口調で告げた。
「……さっき桟原と牧野さんを見かけたけど、牧野さんの方が怪我してるみたい
だった。誰かに襲われたのかもしれない」
「桟原と牧野さんか……」
 ふむ、と秀太が何かを考えるように黙り込む。
 そのまま沈黙が落ち、二人は黙々と歩を進めた。

392 :174(4/8):2005/09/12(月) 21:14:20 ID:erlS+mj/0
「遅いぞ! ちっこいの! 足は速いんじゃないんか」
 体育館の裏側に出た瞬間、相手を確認する前に不躾な言葉を投げつけられた。
「無茶言わないで下さいよ、俺53番なんですから」
 腕を組み、仁王立ちになった金本だ。その隣で藤本が突っ立っている。
「他に誰か呼んだんですか?」
 とりあえずそこには二人しかいないことを確認し、赤星は先程から気になっていた
ことを問いかける。金本が答えた。
「矢野プーも、声を掛けたんじゃけど……」
 そこで言葉を切る。
 矢野は金本と同い年で、大学時代のチームメイトだ。いれば心強いだろう。
 が、赤星が来た時点で合流していないということは、なんらかの理由があって来
なかったということだ。
「俺たちも喧噪が気になって一時的にここを離れたりしたんで、その間に来てた
かもしれませんね」
 少なからず落胆しているであろう金本に秀太がフォローを入れる。
 金本もその可能性は考えていたのか、頷いた。
「もしさっきの騒ぎが、赤星が見かけたっていう牧野さんと桟原と、他の誰か襲った
奴の間で起こったことなら、時間的にもちょうど矢野さんともかぶりますしね」
 牧野が35番で、矢野が39、桟原が40番だ。向かった方向が同じなら、ほぼ
同時に同じくらいの場所にいたとしてもおかしくはない。矢野が巻き込まれていな
ければいいが――

393 :174(5/8):2005/09/12(月) 21:14:41 ID:erlS+mj/0
「しゃぁない」
 先程よりさっぱりとした口調で、金本が言った。
 会えるに越したことはないが、会えなくても仕方がないのが現状だ。
 むしろ、ゲーム開始直後にこれだけ集まれた方が運が良いともいえる。ここは金本
の冷静な機転のおかげだろう。
「そのうちかち合うかもしれん」
 その言葉に、藤本と赤星が同時に頷く。ここから会えるかどうかは運だけだ。
 途端に、金本が恨みがましい視線を藤本に向けた。
「サルがこっちの話も聞かずに飛び出すからじゃ」
「俺のせいですか!? 一番最初に悲鳴聞いて走り出したの金本さんだった気が
するんですけど!」
「気のせいじゃ」
「気のせいちゃいますよ。そろそろボケが……」
「なんじゃとこのサル!」
 ピコーン! と、甲高い音が響く。金本の持っているピコピコハンマーだ。
「音大きいですって!」
 予想以上に響いたピコピコハンマーのヒット音に、秀太がおどおどする。反撃に
蹴りを入れる藤本。秀太の制止も聞かず金本がハンマーを振りまわす。が、藤本の
猿のような軽快な動きにかわされ、ピコピコハンマーはことごとく空を切った。
「何やってんですか、全く……」
 そんないつもと変わらない彼らに、赤星は何物にも代え難い安堵感を覚えている
自分を自覚していた。

394 :174(6/8):2005/09/12(月) 21:15:05 ID:erlS+mj/0
 彼らがいれば大丈夫だと思える。
 仲間、という言葉の大きさ。
(絶対に――みんなで生きて帰る……!)
 その言葉を腕一杯に抱え込んで、赤星は固く心に誓った。
 失いたくない、絶対に。
 ここに、彼らと一緒にいることに感謝しなければ。
「じゃあこれで、矢野さんを除いたら全員ですか?」
 今で4人。来なかった矢野を含めて5人。
 来たばかりの赤星は、まだ完全に状況を把握しているわけではない。だが
ゴレンジャーというからには5人だろうという頭があった。だが予想外に、一度
3人は顔を見合わせた。
「いや、あと一人……」
 藤本の方が応え、金本の顔を伺う。
「ゴレンジャーなのに?」
「正義の味方は何人いてもいいんじゃ」
 赤星の疑問に、金本はにやりと笑って応えた。
 単に語呂が良かっただけか、と赤星は納得した。
「あとは的場か……」
 背番号99。的場寛壱。
「一番最後やないですか」
 わざわざ一番背番号の大きい男を選んだことに藤本が突っ込みを入れる。
「ちょうどええ時計じゃろ」
 的場が来たら、それ以上誰も待つ必要がない。確かにいい目安にはなる。
 そこまで考えていたのかと納得すると同時に、赤星はふとした疑問を口にした。
「的場が来なかったらどうするんですか」
 金本は答えなかった。

395 :174(7/8):2005/09/12(月) 21:15:30 ID:erlS+mj/0
「遅いな……」
 どれだけ経ったのか。正確な時間は分からないが、結構な時間待たされていると
感じる。
 赤星の独り言に応える者はいない。
 藤本は待ち疲れたのか、地面にあぐらを掻き座り込んでいた。金本は仁王立ちで、
両腕を組んだまま変わらぬ表情で赤星が来た方向の繁みを睨み付けている。
 赤星はというと、的場が来ると予想される方角に一番近い場所で、探知機と睨み
合いをしていた。
「探してきましょうか?」
 秀太が提案する。
「もうええ。動きすぎるのは危険じゃ」
「あっ……」
 画面の端に現れた一点に、赤星が小さく声を上げた。
「来ました! 一人です」
「的場か?」
「それは分かりませんけど……」
 黄色い点は迷うことなくこちらに向かって進んでいる。的場である可能性は高い
が、何らかの形でここに人が集まっていることを知った「ゲームに乗った人間」
かもしれない。
「行くか」
「行くんですか?」
「確かめんといけんかろ」
 そろそろ待ち飽きていたらしい金本が肩を回す。赤星は全員の顔を見てから、もう
一度探知機に目を落とした。

396 :174(8/8):2005/09/12(月) 21:17:55 ID:erlS+mj/0
「あっちです」
 赤星が指をさし、一番先に金本がそちらに足を向けた。
 が、すぐに立ち止まる。赤星が示した方向に、すでに人の気配を感じたからだ。
 カサ、カサ、と草葉を踏みしめる足音。4つの点が固まった場所に近づいてくる
黄色い光。
 4人の間に緊張が走った。
 その時間が何秒間だったのか、何十秒だったのかは分からない。知らず、赤星は
息を止めていた。
 ガサッ――と、木々の合間に垂れ下がった繁みがかき分けられる。
 ユニフォーム姿の人影が現れ、その男は4人を見た。
 的場寛壱(背番号99)だった。
「……お疲れ様です」
 恐らくはこの場にはそぐわない、だが一番聞き慣れた挨拶。
 険しい顔で凝視してくる4人に、的場は心持ち身を引きながら頭を下げた。
「遅い」
 最後の一人の登場に、金本は一言、そう吐き出した。

 今ここに5人の仲間が揃った。
 そこにユダが潜むことを、勿論、誰一人知るよしも、想像する余地もなかった。
 その時は。

397 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/12(月) 22:49:12 ID:CAQV0CQ10
おおおお、ゴレンジャー来たあああああ!!
職人さん、乙です!

的場が合流できててホッとしました。
しかしゲームに乗った秀太が仲間だったとは・・・。
いつかまた事情が明らかになると思うんで楽しみです。

398 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/12(月) 23:21:46 ID:QmSweMUK0
おお、秀太!そうきたか!と思って、秀太登場シーンを読み直してたら
いまさらながら若干矛盾点を発見

35章
両肩に一つずつカバンがかかり、その間には、ゼロが二つ並んでいる。
田中秀太。いつも明るくチームを盛り上げていた、3年上の先輩。

60章
その男は、何故か三つのデイバッグを両肩に担いでいた。
田中秀太(背番号00)だった。

伏線だったらスルーしてください

399 :924:2005/09/12(月) 23:53:00 ID:PexxsBCi0
>>398
すみません、自分のミスで35章には
秀太が持って行ったカバンの数が一つだけとも二つとも
両方に解釈できる描写が混在していました
・中谷が見た秀太は二つのカバンを持っていた
・居間には中谷のカバンだけが残っていた
としておきながら、最後の方では中谷がわざわざ
荷物を入れるリュックを見つけてくる、
即ち両方持って行かれたことになっているという……アホですな

念のため174氏にご確認した後、
保管庫さんに訂正をお願いすることにします
ご指摘、ありがとうございました

400 :174:2005/09/13(火) 00:35:34 ID:UVevgtig0
>>398
ご指摘ありがとうございました。
>>399
メール確認しました。
自分の方こそ続きを書くにあたってじっくり読んでいたつもりなのに、
気付かずに勝手に解釈してしまって申し訳ありません。
その場で気付けば良かったのですが、後々になってからお手数を
おかけすることになって本当にすみません。

401 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/13(火) 04:14:53 ID:Oy2++AzIO
このスレ初めて見たけどすげええええ!
過去のから全部読ませていただきます。
ゴレンジャーの今後の動きから目が離せないです。

402 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/13(火) 22:15:33 ID:+hUkPruP0
とうとうゴレンジャーが!
職人さん、乙です!

403 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/13(火) 22:44:14 ID:eyNMoIEfO
ていうか何この神スレ
戻って見るのが辛いのが惜しいorz

404 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/13(火) 22:53:20 ID:vpWuPNOc0
誰か過去ログ全部持ってる人いない?
にくちゃんねるにもない

405 :312-315:2005/09/14(水) 00:40:58 ID:l/JjN4KW0
>>3 にある保管庫さんじゃだめなの?
全職人さんの作品読めるよ

406 :代打名無し@実況は実況板で :2005/09/14(水) 00:42:53 ID:l/JjN4KW0
うぉ、なんか名前がヘンになった…

407 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 01:23:42 ID:jJWxpa8b0
巨人が劣化している、、。

408 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 01:31:33 ID:7WWYsvX70
>>405
保管庫は見たよ
レスとか含めての流れで読みたいんだよなー
やっぱないかな

409 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 16:43:20 ID:bfAvddQq0
>>408
ttp://www2.axfc.net/uploader/7/so/No_2616.zip.html
PASS : 目欄sage無し

dat落ち直前の数レスは取得できてないかもしれない

410 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 19:01:01 ID:ZgeE0Ey00
>>409
横からもらった。THX!

411 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 19:06:49 ID:ZgeE0Ey00
連投すまん
さっそくログ読んでるんだが、515氏って他球団ファンだったんだな
キャラがみんなすげー"らしい"から意外だった
515氏もう戻ってこないんかなあ

412 :924(1/4):2005/09/14(水) 20:40:08 ID:1Tl88Bfx0
>>396より
71.失われて行くもの

茂みの向こうは隠れていて見えなかったが、急斜面だった。そこに
猛スピードで突っ込んで行ったものだから、自分でも事態を把握できないまま、
「あっ」と声を立てる間もなく転がり落ちることになった。
「……って」
全身を地べたに強く打ち付けられたが、さいわい枯葉が積もったやわらかい
土の上だった。中谷仁(背番号66)はすぐに身体を起こして斜面を見上げた。
静かな森の中、頭上の木々がさわさわとが風に揺れている。

立ち上がろうとしたが、急に目の前が暗くなるような感覚に襲われた。
わき目もふらず走りに走っている間は気付かなかったが、ひどく息が
上がっていた。これ以上は走れそうにない。中谷はもう一度いま来た方向を
仰いだ。喜田剛(背番号55)が追ってくる気配は――ない。
幾分安堵をおぼえた中谷は、ゆっくりとそばの大きな木の脇に座り、
ぐったりと幹に背中をもたせかけた。
彼自身は知らないが、禁止エリアまで実にあと100メートルという所まで
来ていた。あのまま走り続けていたら、命はなかっただろう。

――お前は生きてたって仕方ないだろ?
ふらつく頭の中で喜田の言葉が無遠慮に何度も何度もこだまする。
彼が自分を殺そうとした事実以上に、投げつけられた冷たい言葉の数々が
どうしても抜けないとげのように深く心に食い込んでいた。
中谷は耐え切れず両手で耳を押さえ、ぐっと目をつむった。
「やかましい! だまれ!!」
大声を出せば誰かに見つかるかもしれない。だが、そんな恐れは頭から
きれいに消え去っていた。
「お前かて――お前かって人のことが言えるんかよ!?」

413 :924(2/4):2005/09/14(水) 20:42:31 ID:1Tl88Bfx0
目の前にいない相手に向かって中谷はありったけの声を振り絞り、
言い返した。確かに喜田は大砲として期待されているが、一軍への切符は
つかみあぐねている。年齢的にも崖っぷちに差し掛かりつつある頃だ。
自分がドラフト1位だったおかげで生きながらえているならば、7巡目という
下位で入団した彼は、切られる時には簡単に切られるだろう。
「今のまま行ってたら、お前もクビや!!」
わめきながら、中谷は次第に悲しくなった。心ないセリフを自分に浴びせた
喜田と、同じように応酬する自分。仲が良いと思っていたのに、
人間こんな状況に陥るとこのように人が変わるものか。

いや、そうではない。変わったのではなく、ただ普段は隠していた本音が出た
だけなのかもしれない。チームメイトとはいっても、結局はライバルなのだ。
たとえ直接にポジションを争うわけではなくとも、同じように野球を職業と
する者として、活躍する者へのねたみ、脱落してゆく者へのさげすみは誰の
心にも多少なりとも存在するはずだ。わが身を振り返っても、今よりずっと
若くまだ将来に希望のみを抱いていた頃、毎年のように解雇されて行く
選手たちをどのような目で見ていたか思い出してみればいい。寂しさと
同情だけではない。どこかにあざける気持ちがなかったといえば嘘になる。

(……一緒やな。お前も俺も)
われ知らず口元に冷たい笑みが浮かぶ。いまいましいまでに傲然と自分を
見くだしていた喜田が、ひどく哀れに思えてきたのだ。自分の心を突き刺した
彼の言葉、あれは実は、彼自身が誰よりも実感している焦燥の裏返しでは
なかったか。
「ふ……ふふ……ははは」
いつの間にか、中谷は声を出して笑っていた。
哀れで、そしてみじめだ。彼も、この自分も同じように。
そのことが妙におかしくてたまらなかった。

414 :924(3/4):2005/09/14(水) 20:44:14 ID:1Tl88Bfx0
笑い続けるのも空しくなった頃、ふと、もう一人のある同級生の顔が脳裏を
よぎった。彼は喜田のように同じ穴のムジナではない。まぎれもない
成功者として、本当の高みから自分を見おろすことができる男だ。
同期生でもある彼とはチーム内でのつきあいが最も長い。98年に自分は
ドラフト1位、彼が2位で入団した。いつか自分はチームを支える扇の
要となり、エースとしてマウンドに立つ彼の球を受ける。それが当時の
自分たちの夢であり、タイガースを応援してくれるあまたのファンの夢でも
あった。あれから7年が過ぎ、その夢は半分だけ実現した。
今や彼はタイガースのエース、どころか球界を代表する投手の一人にまで
なった。いつまでもファームから抜け出せない自分とは雲泥の差だ。

(井川――お前は今、どうしてる?)
彼も今はこの小さな島のどこかで陰惨きわまりない殺し合いのフィールドに
立たされている。球界きってのサウスポー、二億円プレーヤーもこうなれば
形無しだ。プロ野球選手として数々の栄光を手にした彼も、芽が出なかった
自分も、結局は同じ悲惨な末路をたどろうとしている。だが、そのことを
さっきのようには笑えなかった。ただ、無性に井川に会いたい気がした。

いつからだったろう?チーム内では最も馴染みがある井川との間に距離を
感じ始めたのは。自分が早くに結婚して寮を離れたこと、活躍の場が一軍と
二軍に分かれたことも大きかった。だが、物理的なへだたり以上に大きかった
のが精神的なへだたりだった。押しも押されもせぬ大投手になろうとしていた
彼は、二軍でくすぶり続ける自分などもはや相手にしていないように思えた。

(けど、それは違ったな)
そう、知らず知らず見えない壁を築いていたのは、実は井川ではなく自分の
方だった。甲子園優勝捕手。ドラフト1位。過去の栄光が輝かしければ
輝かしいほど現在の自分が情けなく思える。対照的にトップ選手への階段を
駆け上がって行く友の姿がねたましく映る。そう感じてしまう心の醜さを
自覚させられるのがいやで、自分の方こそが井川を避けていたのだ。
そして井川はといえば――。

415 :924(4/4):2005/09/14(水) 20:47:53 ID:1Tl88Bfx0
2年前、矢野が故障で長期離脱を余儀なくされ、正捕手を欠いたチームが
次第に迷走しつつあった頃、中谷にも一軍からお呼びがかかった。
合流した時、真っ先に声をかけてきてくれたのが、井川だった。先発ローテに
入って2年目、名実ともにタイガースのエースに成長しつつあった
『バッテリー、組めたらいいな』
井川はそう言って笑った。10代の頃と同じ、屈託のない笑顔だった。
やや戸惑いながら、つられて自分も笑った。
『そうやな。俺も頑張るわ』

彼に返したあの言葉は本心だった。井川の変わらない笑顔を見ていると、
入団したばかりの頃が思い出された。当時の夢だった一軍でのバッテリーが
かなうなら、今だけで終わりにはしたくない。今からでも、少しでも井川に
追いつきたい。確かにそう思ったのだ。
しかし、結局はチャンスをものにすることはできず、井川とのバッテリーも
実現しなかった。やはり、自分はもう駄目なのだろうか。なまじ一軍に上がった
ことにより、焦りはさらに深くなった。あの時を境に、再び自分は泥沼に
はまり込んで行った。

(ほんま、アホやな。俺は……)
後悔は家族に対してもだ。野球でうまく行かないいら立ちは抑えようとしても
いつしか妻に向けられた。だから喜田に言われたように、何より大切だった
はずの彼女と娘さえも失おうとしているのだ。
妻は今、どうしているだろう。こんな夫でも、少しは心配してくれている
だろうか。ことによると、いっそせいせいしているかもしれない。
だが、そうであっても文句を言う権利など、自分には無いのだ。
(恭子……ごめんな。……もう、遅いかもしれんけど……)
中谷は力なく木にもたれたまま目を閉じ、心の中でそっと妻に詫びた。

【残り41人】

416 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 22:39:19 ID:oAAeuL/G0
職人さん乙!
中谷…・゚・(ノД`)・゚・。

417 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/14(水) 23:38:50 ID:jIDDXQg/0
中谷って結婚してたんかー

418 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 10:56:41 ID:tYvKVKg+0
結婚してたし・・・たしかもう離婚もしてたような

419 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 21:20:16 ID:QLQ75Gzk0
ほしゅ

420 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 21:56:24 ID:nZlFZB0E0
保守

421 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 23:56:02 ID:+EjW8lvh0
ほしゅ

422 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 04:06:42 ID:r/uokNI10
中谷タン・・・

423 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 11:29:07 ID:ttM1Hcj30
いつ圧縮くるかわからないのであげ。


424 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 13:51:51 ID:sMxcoevGO
今後ジェフがすげえ活躍してくれる希ガス
まぁ希望的予測なわけだが
おかげで試合中のジェフへの期待も前より大きくなっている漏れw

425 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 17:33:52 ID:a63vehEX0
保守

426 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/16(金) 23:50:11 ID:8A6fiQ6L0
リアルで活躍してない選手についても描写が丁寧で
すごいと思う。読んでいて引き込まれる。
こんなに人が減らないバトロワも珍しいけどw

427 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/17(土) 03:20:18 ID:kRQP+84C0
作家さんたち、どの選手にも愛情があるから殺すに殺せないのかも。


428 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/17(土) 12:38:26 ID:6h3+TaH0O
好きな選手が死んでしまうシーンは書くのも読むのも大変だよな〜
だからこそ感動的なのだろうが。

ゴレンジャーは今後岡田たちに戦いを挑むのか?どうやって?
美しく派手に散っていく姿を想像して今から泣けるよ(ノД`)

429 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 01:31:51 ID:8IYjf0ph0
今は伏線を張っていて、その分減るときは一気に減るんじゃないかという怖さもある

430 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 03:46:20 ID:sPVz4Xbl0
リン上がってきたなぁ
ここの影響で、前より感情移入して応援するようになってしまった
これでもしアリアスもいたらテレビの前で泣いてたと思う自分ヤバス

431 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 14:05:01 ID:hNYawmkVO
>>430
お ま い は お れ か ?
リン超がんがってほしいよな

あと虎バトのおかげで苦手な関本がちょっといい奴見えてきたw

432 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 21:00:00 ID:aHXIJ4fi0
捕手[`ー」ー]

433 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/19(月) 02:27:53 ID:MNsZuGPF0
★ゅ

434 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/19(月) 04:31:21 ID:0GWB9dn30
>431
俺は関本の公式サイトに行ってから、ちょっとファンになったよ。
(もともとは投手オタ)
騙されたと思って、一回見てみな。

435 :代打名無し@実況は実況板で :2005/09/19(月) 19:58:19 ID:etLbfhka0
ゴレンジャーが好きじゃー活躍が楽しみだけどできれば全員残って欲しい

で、○○って誰の事だろうと今から気になる!

436 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/20(火) 18:23:22 ID:oY4mwNx50
ほしゅ

437 :174(1/4):2005/09/20(火) 23:51:24 ID:1WId/EsH0
>>415
72.イキテ

 それはえらく神聖な儀式のように思えた。
 呼吸をすることすら憚られるような厳かな空間で、林威助は息を潜め、静かに
ウィリアムスの黙祷を見守った。
 豊かな自然に囲まれたそこは今は静まり返り、川のせせらぎだけが、自然が産み
出した琴楽器のような軽やかな音を奏でていた。とてもではないが、先程まで
血生臭い争いが繰り広げられていた場所とは思えない。
 ただ、凛とした空気に混じって鼻孔を刺激する、僅かに鉄臭い匂いだけが――先程
までの出来事が夢ではないことを伝えていた。
「Could you help me?」
 手伝ってくれないか?――祈りを終え、アリアスの両脇に手を差し込み抱え上げ
ようとしたウィリアムスが聞いてくる。
 ついぼんやりとその様子を眺めていた林は慌てて頷き、アリアスの足下に駆け寄
った。一人でも引きずることは出来るだろうが、アリアスに対してそのような扱い
をしたくないのは、ウィリアムスも林も同じだ。
 そっと2人で遺体を持ち上げ、足下に気を付けながら川縁の岩場から離れる。
 抵抗のない身体。足を持った掌に伝わる温もりのなさに、再び林の視界がぼやけた。
 視界の悪さに、林は一度瞼を閉じ、涙を振り落とした。頬に零れたものに、ウィリアムス
は気付いないわけはないだろう。だが、こちらには視線を向けずに、ただ黙々と
地面を見つめてアリアスを運んでいた。
 林にはそれが有り難かった。
 哀しみの涙など、本当は流したくないから。

438 :174(2/4):2005/09/20(火) 23:51:44 ID:1WId/EsH0
 近くの木の陰に遺体を安置し、両手を組んでやる。白人特有の明るい色の白い肌
は、今や彫刻のように青白い。
 ウィリアムスの手によって整えられた死に顔は、凄惨な頭部の致命傷にさえ目を
瞑れば、おおよそ安らかな寝顔のように見えた。
 その傍らで、もう一度、ウィリアムスは十字を切った。
 林も見よう見まねで十字を切った。
 自分はキリスト教徒ではない。敬虔なキリスト信徒であるアリアスの死に対して、
林はどう祈るべきか、誰に願うべきかまだ判断が付かないでいた。
 結局、彼の神に祈ることに決めた。
 ただ安らかな眠りを――ジョージ・アリアスという罪なき魂が救われるよう――
祈るだけだ。
 ただそれだけが、今林に出来るアリアスにしてやれる唯一のことだった。
(ソーリー……)
 何度となく繰り返した謝罪の言葉を、再び胸の中で紡ぐ。
 あれだけ近くにいたのに何も出来なかった。
 同じように殺されかけたのに、今ここに生きている自分にすら罪を感じ、林は
慌ててその思いを振り払った。
 それは、助けてくれたウィリアムスにも、死んだアリアスにも失礼な気持ちだと
思ったから。
 祈りを終えたウィリアムスが、じっとこちらを見つめてくる。
 真っ直ぐと見据えてくる、青い瞳。
 アリアスの優しい色を思い出し、再び緩みだした涙腺を抑える為に林は瞑目した。
「You can cry」
 泣いていいのだと――ウィリアムスが言ってくれた言葉に、林は首を横に振った。
 これ以上は泣きたくなかった。
 泣かないと決めたはずなのに。
 哀しみの涙に意味はない。泣いてアリアスが帰ってくるならば、己の中の水分が
なくなるなで泣いてやったっていい。
 遺体から少しだけ離れた木の下に座り、しばらくはウィリアムスと会話を交わした。
状況が状況なだけに、それほど楽しい話題ではなかったが、それでも誰か信頼できる
人間と言葉を交わせる時間は、林にとってほっとする時間だった。

439 :174(3/4):2005/09/20(火) 23:52:09 ID:1WId/EsH0
 このゲームについてどう思う? とウィリアムスは聞いてきた。もちろん馬鹿馬鹿
しい、憎らしい、と言ってしまえばそれまでだが、彼が欲しがっている答えはそう
いったものではないように感じた。
 こんな馬鹿な殺し合いはあってはならない。ゲームに乗るつもりはもちろんない。
誰かに殺されるのも嫌だ。自ら命を絶つ気もない。ただなんとか生き抜いて――生きて
このゲームから抜け出す方法を見つけたいと、林は自分の思う内を語った。
 ウィリアムスは決して己のことは語ろうとはしなかった。時に頷き、時に考える
ように視線を落とし、真剣な表情で林の言葉を聞いていた。
 会話が途切れた一瞬の沈黙を縫うように、川のせせらぎが耳に舞い戻ってくる。
 鳥の囁き。風の声。葉の擦れる音。
 林は自分が生きているのだと感じた。
 生きていれば、美しい音も聞けるし、美しい物も見れる。
 死後の世界というのがあるならば、そこはもっと美しい場所なのかもしれない。だが
林はどうしても死んだ後にあるのは真っ暗な闇だけのように思えて仕方がなかった。
 そんな風に思うくせに、アリアスが天国に行けるよう祈るのは矛盾しているのかも
しれない。
 考えれば考えるほど後ろ向きな結論が出てしまいそうで、林は考えるのをやめた。
「How can I say...."live" in Japanese」
 ぽつりと、分かりやすい口調で、ウィリアムスが聞いてくる。日本語では、これを
なんと言うのか――指で地面に書かれたスペルを、林は目で追った。
(エル、アイ、ブイ、イー……)
 live
 その単語にはいくつか意味がある。
 生活。住む。暮らす。
「生きる……?」
 思い付いた一つの答えを返す。
「イキル……」
 ウィリアムスが復唱する。タベル、タベテなど小さく呟き、何かを確認していた
ウィリアムスがやがて顔を上げた。真っ直ぐ、林を見つめる。静かな微笑み。
 その唇から、拙い日本語が紡がれた。
「”イキテ”クダサイ」

440 :174(4/4):2005/09/20(火) 23:53:59 ID:1WId/EsH0
 生きて下さい。
 その瞬間、林の目から涙が溢れた。
 生暖かい水滴が頬を伝う。
(何で――)
 なんで――優しい青い目は、こんなにも温かい涙をくれるのだろう。
『外人』
 藤原の言った冷たい単語が、林の脳裏に反芻される。
 生きて欲しい。
 真剣に、林はそう思った。この人には、生きて欲しい。
「...you too...」
 貴方も――涙に震える声で、林はそう返すことしか出来なかった。
 応えるように、ウィリアムスはもう一度微笑んだ。――口元に笑みを浮かべては
いたが、その瞳は悲しそうだった。
 その意味を、その時林は理解することが出来なかった。
「Where are you going?」
 どこにいくのか?――林の問いに、ウィリアムスは「somewhere」(どこかに)など、
冗談とも取れる曖昧な答えを返した。
「Can I go with...」
「No」
 一緒に行ってもいいか――と聞こうとした林の問いかけは、皆まで言う前に
ウィリアムスに拒絶された。
 何故――とは聞けなかった。
 その青い瞳に、何か秘めた決意を見てしまったからかもしれない。
 多分彼は、自分とは違う道に進もうとしているのだ。そこに林はいてはいけないのだ。
 その答えを、林はあえて探ろうとはしなかった。
「Take care」
 気を付けて――
 そう言って、二人は別々の方向に歩き出した。


【残り41人】

441 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/21(水) 02:02:44 ID:QITzKpyIO
新作キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
職人さん乙です。
ウィリアムスに毎回泣かされっぱなしだ。・゚・(ノД`)・゚・。

442 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/21(水) 02:58:59 ID:+Ec9SzJ10
・゚・(ノД`)・゚・

ところで、阪神公式のトップにウィリアムスの写真が出てますよ。

443 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/21(水) 22:24:37 ID:gfjx00H90
保守

444 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/22(木) 00:48:04 ID:DXu488aF0


445 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/22(木) 01:08:15 ID:HlOW5PSZ0
age

446 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/22(木) 17:10:42 ID:XLDf0+TM0
hosyu

447 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/22(木) 22:42:02 ID:DMC9tfAN0
職人様に感謝しつつ保守

448 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/23(金) 02:30:13 ID:6lKkWTVO0
>>440
73.後悔先に立たず

『江草、それは危ないって!』
『でもスギ……!』
『考えてみ、今までにもう十何人死んどんのやで?……殺されてんのやぞ?!』
『だから、だからこそ、安全に隠れられる場所を探すべきなんじゃないの?』
『それは確かにそうやけど』
『もうこれ以上狩野は動かせないだろ。移動も一人の方が目立たないよ』
『……おい、江草』
『俺が探してくる。探して、見つけてくるから』
 背番号15を見つけた時、江草が躊躇しなかったわけではない。
『そんならオレが行く。オレが行って、近くを調べてくる』
『狩野をほっとくわけにいかないだろ?スギは狩野を見てて』
『あんな、お前……』
『大丈夫だよ。さっきは取り乱したけど、俺だって自分の身くらい、自分で守れる』
 ただ、太陽は江草と歳も近かったし、同じ投手ということで比較的仲も良いほうだ
ったから、彼の中に「まさか」という一片の油断があった事は否めない。
『大丈夫。それより、狩野の心配してやれよ』
 言い出したのは、江草のほうだった。
 心配そうな顔で何度も喰い下がって、しかし結局、杉山はザウエルP220を江草に
手渡した。江草が言い出したら聞かない性格であることを、彼はよく知っている。
『約束せぇよ。絶対、無事に、帰って来るって。じゃなきゃ行かせへん』
 ……そんなに心配するなよ。
 まるで今生の別れのような顔をする―――このシチュエーションではそれが容易
に現実になりうるのが恐ろしいのだが―――杉山の生真面目さが少し可笑しくもあ
り、そしてひどく切なくもあった。
 前川の遺体。佐久本の遺体。どちらも真っ赤な血をぶちまけて倒れていた。彼ら
の凄惨な色彩は、死への恐怖を確実に煽り立てる。
 怖い。あんな風になりたくない。
 死にたくない。
 ―――しかし恐怖とは別に、ある種の感情が湧き出てきた事も、事実だ。

449 :542(2/5):2005/09/23(金) 02:31:31 ID:6lKkWTVO0
(もう……疲れたとも、言わなくなった)
 若手投手たちにとっては絶対的と言っても過言ではなく、例の喰えないオッサン投
手二人―――ああ、そのうち一人はもう、この世にはいないのだ―――でさえ頭が
上がらないらしい、かの正捕手をして「締まりがない」「お人好しが顔に出とる」と言
わしめた、よく言えば愛想の好さそうな杉山の顔。それがここへきて、毅然とした、
強い貌になっている。
 彼はもう、弱音や苦しさを外に出そうとはしなくなった。柔い部分を、江草や狩野に
見せようとはしなくなった。
(俺はあいつに助けられてばっかりだ)
 薄い胸板。痩せ型の、骨ばった背中。
 自分よりも若い『18』という数字。
 ―――こんなにも大きく見えるなんて。
(俺だって、お前や狩野を守りたいんだ)
 矜持と言うには、遊び心が足りない。見栄という言葉では安すぎる。
 ただひたすらに、切実な『情』がそこにある。
(お前に助けられてばかりじゃ、申し訳ないし……何より、カッコ悪いだろ?)
 躊躇を振り切れた一つの要因は、そこにあった。
 自分を待っているであろう二人のために、信頼出来る仲間を探すのが悪い事だと
は思えなかったのだ。彼らを想うあまりの懸命さと僅かな焦りとが、江草本来の前
向きな思考回路に流れ込み、結果的に判断力を鈍らせたという事になる。
「太陽さん?」
 振り向いた彼の顔は憔悴しきっていた。目の下は青くくすみ、白目はすっかり充血
して潤んでいる。薄く開かれた唇は乾いてひび割れていた。
 ほんの少しだけ、何か嫌な予感がする。
「太陽さ……」
 ささくれた江草の唇が、唐突に固まった。
 太陽がぼんやり立ち尽くす草葉の向こう、枝葉を広げた針葉樹の陰に、二つの人
影が佇んでいる。離れていてもそれと解るストライプのユニフォーム、上半身血だら
けの男と、しゃがみこんだ青年。
 なんて事だ。

450 :542(3/5):2005/09/23(金) 02:32:47 ID:6lKkWTVO0
「ちょっ、藪さん!井川さん!」
 甲高い声に、井川がまず顔を上げた。江草の顔を認め、次いで太陽の背中を認
識した彼の顔に、さっと緊張の色が走る。
 井川は聞こえるか聞こえないかの声で一言二言呟き、素早く姿勢を変えて片膝を
ついた。心なしか藪を庇うような体勢で腰の後ろに手を遣り、視線をこちらに当てた
まま、無言で反応を窺っているが、それ以上のアクションは起こそうとしない。
 武器の存在を知らしめているのだ。
(敵だと……思われてる)
 首筋がざっと粟立つ。井川の身体の周りを、警戒の空気が包んだのは明らかだ。
視線は鋭く、そして四肢の神経には隙がない。一方の藪はじっとしたまま、視線を動
かそうともしなかった。血に染まった上体を木に凭せ掛け、長い脚を投げ出し、俯き
加減で沈黙している。それはまるで。
(もしかして……そんな、まさか)
 一瞬、頭を掠めた嫌な単語を即座に否定する。
(違う、きっと生きてる。生きてるはずだ―――早く、助けなきゃ)
 ―――もしここに杉山がいたとすれば、彼は江草を力づくででも制止しただろう。
そしてよく状況を理解しろと言い、逃げる事を選択しただろう。
 しかし江草の衝動は、理性を遥かに凌駕していた。それは彼の性善説的な性格
から来るものでもあったし、チームメイトという、仲間に対する純粋な親愛の情が作
用した結果でもある。
(助けなきゃ、藪さんを助けなきゃ)
 冷静なつもりでいて、江草自身、自分が何をしようとしているのかを全く理解してい
なかった。ただ、見せ付けられた瀕死の人間と彼を守ろうとする仲間の存在、そして
直ぐ近くに置いて来た二人の存在は、彼にとって紛れもない現実だ。
「太陽さん、太陽さん!」
 江草は太陽の袖を強く引っ張った。―――何をぼうっとしているのだ。彼のあの惨
状を見て、この人は何も思わないのか?助けようと思わないのか?―――焦燥感
を持て余し、表情の薄い太陽の顔を見て更に焦れる。
 ―――苛つきかけて、ふと、気付いた。
(……『何も思わない』?)
 それはつまり。
 すぱっ。

451 :542(4/5):2005/09/23(金) 02:34:01 ID:6lKkWTVO0
「え、」
 声は単なる反射でしかなかった。
 自分の頬を掠めたものを、そしてそれによって自分の肉体にもたらされた痛みを
正確に把握するまでに、江草の脳はきっかり数秒を要した。時間としての数秒が長
いか短いかは、一般的には個人の価値観によるだろう。ただここで、江草の生命と
いうものを主格として置いたとするなら、数秒は所謂ぎりぎりのラインだったと結論
付ける事が可能だ―――
「う、わあぁぁぁぁッ!!!」
 理屈を捏ね回すまでもなく、絶叫は非常に端的だった。頬から流れる血。鋭い痛
み。太陽の手に握られた、長くて銀色できらきらひかる悪意と苦痛の塊。
 迂闊な自分を呪う事よりも、強がりな己の性格を後悔する事よりも、混乱のほうが
圧倒的だった。
 圧倒的で、そして致命的だった。
(……!)
 傷ついた自分。傷つけた太陽。極度の警戒をぶつけた井川。死にかけの藪。
 それらは全て、現実だ。
 現実なのだ。
「あ……あ、……」
「江草!」
 井川の声など聞こえるわけがない。童顔を引きつらせて勢い良く飛び退いた江草
は、震える足を無理矢理後退させながら、太陽の顔を凝視した。のっぺりした顔。
据わった目。人間らしい表情に絶縁状を叩きつけたような貌が、太陽の顔にとぐろ
を巻いている。
(殺される……ッ)
 頭からは、腰に挿した銃の存在など吹き飛んでいた。明らかな混乱が身体を満た
してゆくのを解っていながら、しかし彼はそれを処理する有効な手段を持ち合わせ
ていない。
 リアルタイムで襲いくる死との対峙のプレッシャーは、ささやかな気概をも、呑み込もうとしていた。
 まぶたを過ぎる赤。杉山の貌。
 大丈夫だ、と宥めすかしたはずのもう一人の自分が金切り声を上げる―――

452 :542(5/5):2005/09/23(金) 02:35:10 ID:6lKkWTVO0
 パン!
「江草ァ!」
 流される寸前。
 乾いた音に耳を穿たれ、弾かれたように破裂音と怒鳴り声の音源を見た。井川が地面に膝をついたまま、黒い銃を抜いている。その手を空に掲げている。そして彼の視線は、江草と太陽に注がれていた。
「……い、が……」
 掠れた声で名を呼びかけて、はっとする。
 太陽の貌が視界に存在していない。
「あ……」
 展開に振り回されてぐるぐるになっていた脳味噌も、流石に状況を理解した。
 要するに太陽の顔もまた、江草と同じように不意の発砲音へ―――井川たちへと向けられていたのだ。この瞬間、捕食者たる太陽の注意は、江草というターゲットから完全に逸れていた。
 金縛りが、解ける。
「江草、逃げろ!」
 井川が叫ぶまでもなかった。

【残り41人】

453 :542:2005/09/23(金) 03:15:03 ID:6lKkWTVO0
すみません、5レス目に改行を入れるのを忘れていました。
お見苦しい文になってしまって申し訳ありません。

454 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/23(金) 06:58:38 ID:3xg2gXJFO
新作キタ━━(━(━(-( ( (゚∀゚) ) )-)━)━) ━━ !!!!!
職人さん毎度乙です!

太陽怖すぎる…ガクブル

455 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/23(金) 07:51:03 ID:lQL7wfVy0
542サマ、乙です!

江草杉山組を応援?してる自分的には、「後悔先にたたず」
って題名見た時点で江草終わりかと思い、心臓バクバク涙ウルウルものでした。
相変わらずの丁寧な描写、恐れ入ります。



456 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/23(金) 23:39:05 ID:cvlLoaI50
職人さん乙です。
江草ここで死んじゃうのかと思ったよ…。
イガーありがとう。・゚・(つД`)・゚・。

457 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/24(土) 00:09:32 ID:eKB0ZBFH0
職人さま、乙です。
えぐ、お願いだから無事に逃げ切って二人のもとへ帰って・・・
でないと、えぐに何かあったら
おすぎが復讐の鬼になりそうで・゚・(つД`)・゚・

458 :代打名無し@実況は実況板で :2005/09/24(土) 02:06:40 ID:6nsCnwSX0
どんな方向であれ、今後の展開に期待

459 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/24(土) 05:28:23 ID:T4eNcdrm0
イガーありがと!
江草、お前ほんまええ奴やのぉ。

460 :924(1/6):2005/09/24(土) 13:50:52 ID:ZoEz6b9F0
>>452より
6人目(1)

こんな所にいる場合ではない。早く、仲間のもとに帰るのだ。
戻って、どうしても伝えねばならないことがある。
だが――どうにも身体が動かない。
ひょっとすると、自分には意識がないのか?
……

さあっと吹いた強い風が鬱蒼とした森の木々を揺らした。はらはらと
こぼれるように散った木の葉はやがて地面を彩り、人知れずそこに横たわる
中村豊(背番号0)の背中にも舞い降りた。

昨夜は、真っ先に名前を呼ばれて体育館を出るはめになった。事態をよく
把握することもできず、誰かと相談する暇もなく放り出された。武器として
与えられたものといえば、鉄製のフライパンが一つ。中村が選んだ道は、
(隠れる)
ただ、それだけだった。適当な民家に入り、勝手口を除く戸と窓すべてに
鍵をかけた。誰かが来た時、ここが禁止エリアになった時は裏から逃げる。
さもなくば、絶対にここを動かない――はずだった。

今日の午前中のことだ。いきなり、玄関の戸を叩く音と声が聞こえた。
『ごめんくださーい』
心臓が縮み上がるかと思った。まるで普通によその家を訪ねる時のような
調子だ。その何気なさがひどく不気味だった。
『誰か、いますよね? 金本さんと、藤本です』
『もしよかったら、ここを開けてわしらの仲間になってくれ』
『いるのは分かってるんです。お願いします!』
立て続けに呼びかけが飛んでくる。顔から脂汗が噴き出してきた。

461 :924(2/6):2005/09/24(土) 13:52:10 ID:ZoEz6b9F0
なぜ自分がいると分かる? なまじ鍵をかけたのがまずかったのだろうか。
だが、あの声は確かに金本と藤本のようだ。
(二人ってことは……)
一人しか生き残れないとされているこのゲームに乗る気のある人間が、
複数で行動するだろうか。何よりあの二人は、誰もが信頼する兄貴分と、
その一番の弟分なのだ。中村は意を決した。

足音を忍ばせながら玄関に近付くと、格子のはめ込まれた引き戸の
すりガラスに透けた二つの影のうち、背の低い方が戸を叩いていた。
『……ほんまに、金本さんと藤本なんですか?』
おそるおそる問いかけると、戸を鳴らす手が止まった。
『そうじゃ。そっちは誰じゃ?』
間違いない、金本の声だ。
『――中村です。中村豊です』
『ユタカさん? 僕ら、やる気なんかないです。開けてもらえませんか?』
今度は藤本の声だった。やる気なんかない――その言葉を信じ、鍵を
はずして戸を引くと、顔をほころばせた二人が立っていた。

藤本は上半身が黒いアンダーシャツ姿で、彼のユニフォームは並んで立つ
金本の左腕に巻きつけられており、ところどころ赤茶色に染まっていた。
両者とも肩に銃をかけている。
『なんで分かったんですか? 俺がここにいるって』
二人の笑顔に安堵して尋ねると、金本が小さな黒い機器を差し出した。
『これじゃ。この探知機のおかげでな』
『誰かいると黄色い光がつくんです。今、僕ら二人でアジトになる所を探して
いてこの家を見つけたんですけど、中に人がいるって分かって』
藤本が後を受けて説明する。金本は探知機をポケットにしまうと、
意味ありげな視線をこちらに向けてきた。
『どうじゃ。お前もゴレンジャーに入らんか』
『ゴレンジャー? なんですか?それ』
もちろん、ゴレンジャー自体は知っている。自分も小さな頃好きだった
ヒーローだ。だが、今のような切羽詰まった時にその名が出てくるとは。

462 :924(3/6):2005/09/24(土) 13:53:15 ID:ZoEz6b9F0
『このゲームをぶっ壊すために結成した正義の味方の集まりじゃ。
他にも赤星と秀太と的場がおる』
金本は得意げに言ったが、横から藤本が茶々を入れた。
『アホみたいな名前でしょ? まあ、金本さんの頭じゃ仕方ないですけど』
突然、藤本の頭上でピコン!と音が鳴った。
『やかましい。サルは黙っとれ』
『ほんまのこと言っただけやないですかぁ!』
肘鉄を食らわせてきた藤本に対し、金本は右手のピコピコハンマーを
振りかざす。その様子に、ふっと心がなごむ。呆れるよりも感心させられた。

(この二人は――特に金本さんは――強いな)
ゲームを壊すという心意気も、子どものヒーローごっこのような人を食った
チーム名も、身の上に起こったただならぬ出来事――それは彼の左腕を
見れば明らかだ――を微塵も感じさせない明るさも、何もかもが金本らしい。
絶望的な事態に陥ってもなお普段通りでいられるこの人は、本当に強い。
それに比べて、自分はどうだ。
『でも……俺なんかが入っていいんですかね』
遠慮がちに言った瞬間、コントのようなどつき合いを繰り広げていた二人が
ぴたりと動きを止めてこちらを見た。
『なんでそう思う?』

『情けない話ですけど、昨日からどうしたらいいか分からなくて。だから
じっとこの家に隠れてたんです。こんなんで役に立つかどうか』
『なら、余計に一人は心細いじゃろ。わしらと一緒に来んか?』
『そうですよ。だいたい金本さんだってこんな偉そうに言ってますけどね、
一人じゃ何もできないからゴレンジャーなんて考えたんですよ』
再び金本のハンマーが藤本を襲う。が、今度は器用にかわされた。
『お前は黙っとれ言うとるやろが。――とにかく、こっちも仲間は多い方がええ。
協力してくれんか?』
『ユタカさんが来てくれたら、みんなも喜びます。僕からも、お願いします』
逃げ回りながら藤本が頭を下げた。

463 :924(4/6):2005/09/24(土) 13:54:09 ID:ZoEz6b9F0
『ほんまにいいんですか? こんな頼りないのが一緒で』
『不安なのはみんな同じじゃ。じゃけえ、みんなで知恵を絞って協力して、
一緒に帰ろうやないか』
(帰る――)
この人と、その仲間たちと一緒なら、できるかもしれない。どす黒い雲で
覆われていた心に、強い光が差したような気がした。
『俺みたいなのでよかったら、よろしくお願いします』
『よし、決まったな。6人目のゴレンジャー誕生じゃ』
金本はにっこりと笑った。

家にあった包帯や薬を使い、藤本がユニフォームで応急処置を施した金本の
傷の手当てをした後、他のメンバーが待つ場所に連れて行かれた。道すがら
金本と藤本はゴレンジャー結成のいきさつを面白おかしく語ってくれたが、
負傷の理由については言葉を濁したままだった。

『遅いんで心配しましたよ。本当に良かった』
案内された森の中の小さな洞窟から真っ先に飛び出してきたのは、赤星だ。
『金本さん、腕――どうしたんですか!?』
『藤本も、その胸の血!』
あとから続いた的場と秀太が驚いて声を上げた。
『あ、僕のは違います。金本さんの手当てした時、このユニで……』
藤本は説明しかけたが、金本がさえぎった。
『話は後じゃ。それより、新しい仲間ができてな』

促され、二人の後ろについていた中村は前に出た。なんとなく転校生のように
面はゆい気持ちで「よろしく」と挨拶すると、藤本が言ったとおり三人はとても
喜んでくれた。
『で、アジトじゃが、ユタカがおった家がよさそうでな、そこに決めた。
これまでのことは向こうで説明するけえ、移動してくれ』
金本が言うと、三人は慌しく荷物をまとめ始めた。

464 :924(5/6):2005/09/24(土) 13:55:11 ID:ZoEz6b9F0
アジトに到着すると、金本は約束どおり左腕の怪我について話し始めた。
下柳との出会い、中林の襲撃、下柳の応戦、自分たちの撤退、そして二人の
最期。中林にとどめを刺そうとして藤本に止められたことも、金本は隠そうとは
しなかった。もう一人の当事者である藤本はそのあいだ一言の補足も入れよう
とはせず、他の4人も一様に息をのむような表情で聞き入っていた。

『まさか、あの中林がそんなこと……』
金本以外で初めて言葉を発したのは、的場だった。正直、中村には中林の
ことが入団数年目の若い選手という以外ほとんど記憶にない。だが、的場は
二軍暮らしが長く、このメンバーの中では中林を一番よく知っているはずだ。
衝撃が深いのも無理はない。
『でも、僕は中林が悪いとか、おかしくなったとは思えへん』
一切の説明を金本に任せていた藤本が、ここで口を開いた。
『中林はシモさんと寄り添うように倒れてたんです。まるで共通の敵と戦って
やられたみたいで、とても撃ち合って殺し合った二人には見えなかった。
それに、あいつは涙を流していて、最後にかすかに言ったんです。
"ごめんなさい"って――僕には、確かに聞こえました』

『……じゃあ、なんで金本さんたちを襲ったりしたんだろうな』
秀太が首をかしげたが、中村には理解できるような気がした。
『怖くて不安で、どうしようもなかったのかもしれない』
誰に言うでもなくぽつりと洩らすと、皆が一斉に中村の方を見た。
『いや、俺がそうでしたから。武器がフライパンなんて役に立たないもの
だったんで隠れることにしましたけど、もし銃なんかだったらヤケクソ起こして
誰か襲っていた可能性も――無いとは言えません』
無論、まったくの推測であり、中林の心の真実が分かるはずはない。
それでも、そう思えて仕方がなかった。
『あ、今は違いますよ。こうやってゴレンジャーに入れてもらって、頑張ろうって
思てます。みんなに会えて、ほんまに良かった』
だから、中林ももっと早く皆と会えていたなら、今頃は仲間だったかもしれない。
中村が続けると、皆が静かに何度もうなずいた。

465 :924(6/6):2005/09/24(土) 13:56:33 ID:ZoEz6b9F0
『それで、その後、どうしたんですか? シモさんと中林の、その……』
しばしの沈黙の後、やや躊躇しながら赤星が金本に尋ねた。
『とりあえず、目立たん所に並べて寝かせてきた。埋めようかとも
考えたんじゃが、できれば連れて帰った方がええと思ってな』
答えながら金本は傍らに置いてあった二丁の銃を引き寄せ、厳粛な面持ちで
皆に見せるように掲げた。
『これは、シモと中林の武器じゃ。みんなも手に取ってみてくれ。二人はこの
銃で撃ち合って――死んだ』
金本は隣に座る赤星に銃を渡した。赤星は神妙な面持ちで受け取った。

『何もできんまま二人を死なせてしもうたくせに、こうして遺品を取ってくる
なんぞ、ひどい話だと思われるかもしれんが……藤本とわしはあの二人に
約束した。絶対にこのゲームをぶっ壊す。何があっても、お前らをこんな目に
合わせたこのゲームを潰してみせる。この武器は、そのために役立てると』
中村に銃が回されてきた。下柳の方はマシンガン、中林のそれは
M1カービンなるライフルだった。手に取ると、どちらも非常に重く感じられた。
銃自体の重さではない。下柳の、中林の、金本と藤本の――様々な思いが
こもっているゆえだ。

『シモと中林だけやない。昨日死んだ4人、そして佐藤さんもじゃ。理不尽に
死んで行った皆の魂にほんの少しでも報いるためにも、これ以上の犠牲者を
出さんためにも、力を合わせてこのゲームを壊さんといけん』
口調は静かだったが、金本の険しい顔はいつのまにか真っ赤に染まっており、
心なしか震えているように見えた。内に秘められているものは、
すさまじいまでの怒りにほかならないだろう。
『それが、今こうして生き残っている者の務めやと思うとる。――みんな、
これからよろしく頼む』
その金本の言葉に対し、ゴレンジャー全員が決意のこもった目で力強く
「はい」と返事したのだった。

【残り41人】

466 :924:2005/09/24(土) 13:59:30 ID:ZoEz6b9F0
長くなりそうなので(1)と(2)に分けます
連続させようとは思いませんので、
次の話を仕上げておられる職人さんは
ご遠慮なく投下なさって下さい

467 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/24(土) 19:14:59 ID:UW9kJ+Nd0
職人さん乙!

468 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/24(土) 19:44:28 ID:SItjGJ/d0
保守!

469 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/24(土) 23:43:48 ID:u/Ua89nG0
職人さん乙です。
豊さん合流できてよかったよー(ノД`)
(2)もワクテカしながら待ってます

470 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/25(日) 15:07:41 ID:/dIIPxT10
hosyu

471 :924:2005/09/25(日) 21:51:33 ID:PHZNXVph0
すみません、昨日の話の章番号を忘れていました
>>460-465は74章です

472 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/26(月) 19:42:39 ID:WToyQ6P90
保守

473 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/26(月) 20:41:24 ID:NRD+u+K70
ほしゅあげ

474 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/27(火) 01:03:59 ID:TQVVah8VO
職人さん毎度乙です。
豊さんよかった!すごくほっとしますた。
鉢&フジモンがでてくると場が和む(´∀`)
でも秀太が裏切るのか…orz
とにかくゴレンジャーがゲームをぶっ壊すのを期待しつつ★ゅ

475 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/27(火) 20:36:59 ID:TQVVah8VO
またまた★ゅ
モナと桧山んとこもなにげに気になってます。
次はどこの話なんだろな〜

476 :174(1/4):2005/09/27(火) 21:04:23 ID:SusoVgf00
>>460
75.ひと休み

「あー重もてぇ。重てぇよー」
「うっさい。こっちまで重くなる」
「ぜんっぜん重たくないだろ、お前」
 歩きながら、重たいの肩が痛いのと文句を言い続けていた金澤を、関本は呆れ顔
で振り返った。不満そうに口を尖らせた金澤の顔が目に入る。
 ようやく立ち止まった関本に、金澤は汗を拭いながら膝に手を置いた。
「重いー。ちょっと休憩」
 のんきなことを言い、どかりとその場に腰を下ろす。当初は関本を置いていく勢
いで進んでいた金澤だが、もうそんな体力はないらしい。カバンを脇に放りだし、
大きく伸びをする。
 座り込んだ金澤がしばらく動きそうにないので、関本も仕方なしに腰を下ろした。
 見上げると、晴れやかだったはずの空は灰色の雲に覆われ、どことなく湿った
空気を運んで来ていた。雨が降るのだろうか。
 雨が降れば、動きにくくなることは確かだ。地面がぬかるめば跡が残り、見付かる
危険性も高くなる。あまり歓迎したい天気ではない。
 こんな時に、こんな悠長なことをしていて良いのだろうか。関本の脳裏に疑問が
過ぎる。
 確かに、当てもなく彷徨ったところで目的の人物に会える可能性は低い。
 焦っても意味がないことも分かっている。
 だが、今こうしている間にも殺し合いが続いているのかと思うと、関本は気が気
ではなかった。
 気ばかりが焦る。
『お前は打とう打とうと気持ちが前に行き過ぎるんだよ』
 そう言ってくれたのは、2年前の田淵チーフコーチだ。一軍で打席に立つチャンス
をもらえだした頃、打ちたい気ばかりがはやって結果が伴わなかった。思い切りの
良いバッティングと気持ちが行き過ぎたバッティングは違う。往年の大打者に教わった
言葉は、今でも関本の中に生きている。

477 :174(2/4):2005/09/27(火) 21:05:05 ID:SusoVgf00
(今も一緒やな……)
 早く会いたい。行きたい。球種も分からないまま、気持ちだけでバッドを振り回
しているような状態。
 落ち着こう。と、自分自身に言い聞かせる。
「さっきから重い重いって……お前、その中何入ってんねん」
 手持ち無沙汰になった関本が、金澤のバッグに目をやった。確かに重そうだ。
 無理矢理口を閉められ、いびつに歪んだデイバッグの端から、にょっきりと
何かが顔を覗かせている。が、それは黒い布のようなもので丁寧に包まれており、
正体は分からなかった。
「お前こそ、やたら軽そうだけど、武器何なんだよ?」
 およそ食料や飲料水といったものしか入っていない関本のバッグを不審そうに――
というよりは不満そうに――眺め、金澤が逆に聞き返してくる。
 腰に差したグロッグ17が福原の形見であることは、もう金澤は知っている。
「俺のはコレ」
「どれ……って何ソレ」
 関本が指さしたものをのぞき込み、金澤が首を傾げた。左腰にぶら下げられた
シザーケースは、金澤に武器として認識されていなかったらしい。
「シザーケースって、美容師がハサミとか入れるのに使ってるヤツ」
 説明すると、金澤の口元が、笑いを堪えるように奇妙な形に歪んだ。
「プッ。それ武器じゃないじゃん」
「俺が知るかよ」
「マジ笑える」
「うるさい」
 笑う金澤を睨み付ける。言い返すと、改めて自分の武器のしょぼさに気恥ずか
しくなった。とはいえ、凶悪な武器を持たされても全く嬉しくないが。
「ハサミ以外にもいろいろ入ってんだなー」
 小馬鹿にしておきながらも、興味があるらしくシザーケースを覗き込む金澤。
「そうそう、これがシザーでこれがトリマー、これがレザー……」
「うわーいらねー」
 次々と出てくる七つ道具を紹介する関本に、金澤が素直な感想を漏らす。

478 :174(3/4):2005/09/27(火) 21:05:29 ID:SusoVgf00
「これが……」
「あ、それ分かる。クシだろ」
 関本が取り出した道具の名前を言う前に、自信満々に口を挟む金澤。
「ブー。コーム」
「クシじゃん」
「まあ俺もそう思うけど」
 説明書で手に入れた知識をひけらかしてもしかたがない。関本にもよく分から
ないが、ただの呼称の違いだろう。フェイスブラシは逃げまどっている時に落と
してしまったが(はっきり言って必要ない)あれを見せたらこの男は「はたき?」
とでも言ったのではないかと関本は予想した。
「ふーん」
 一通り説明をさせて置きながら、金澤は最後に興味のなさそうな相づちを打った
だけだった。
(コイツ……)
「俺の武器もたいがい使えねーと思ったけど、お前のよりは数段マシだな」
 関本の内心のむかつきを余所に、金澤は自分のバッグをぽんぽん、と叩く。
「お前のは?」
「俺のはこれ……って出すのめんどくさいんだよな」
 そう言いつつも、金澤は自分のバッグを開けた。会話が途切れて関本に先に進もう、
と言われるのが嫌だったのかもしれない。
 にょき、と取り出されたそれは、1メートル近くはあるかと思えた。細長い形に
一瞬刀か何かかと思ったが、その割には形がいびつだった。
 金澤が慎重な手つきで黒い布を取り去り、姿を現したそれに関本は顔をしかめた。
「バズーカってヤツ?」
 明らかに肩に担ぐように出来た、筒型の重火器を見て、関本は自分の持っている
知識の中で一番近い物の名称を口にした。昔漫画で見たことがある。それはもっと
大きかった気がするが。
「そうそうバズーカ砲? なんか英語の難しい名前あったけど、忘れちまった」
 それを肩に担ぐ真似をしながら、金澤が適当に答える。必要ないと分かっていつつ
全ての道具の名称を覚えた関本とは正反対である。

479 :174(4/4):2005/09/27(火) 21:06:12 ID:SusoVgf00
「弾も何個か入ってたけど、馬鹿デカいしクソ重いし……」
 金澤が口を尖らして文句を言い募らせた。
「使いものになんねーよ、こんなもん」
 確かに、自分達戦う意志のない者に必要なのは、接近戦での正当防衛に使える武器
くらいだ。
 無差別殺人でもする気ならば、人が多そうなところにでもぶち込めば効果はある
だろうが……
 必要ないくせに重いものは、関本の武器以上に使えない気がした。どちらの武器が
よりマシか、などという争いは実に低レベルだったが。
「捨てるか?」
「いや、もし誰かが見つけたらヤバイだろ」
 殺傷能力は半端ない高いだけに、万一ゲームに乗った人間に見付かりでもしたら
取り返しのつかない事態になるかもしれない。
 いっそ穴でも掘って埋めてしまおうか――
 そこまで考えたとき、ガサリ……と背後の繁みが動く音がした。
 ばっと振り返り、関本は音のした方を睨み付ける。
 金澤もバズーカ砲を下ろし、繁みを見た。その顔から、すっとふざけた色が消える。
 一気に場の空気が張りつめる。関本は音を立てないように少しだけ腰を浮かし、腰の
グロッグ17に手を回した。
 沈黙。それきり、物音が途絶えた。気のせい? そんなわけはない。
 関本には『分かった』。恐らく、金澤も『分かって』いるはずだ。それは、彼が
一度も「そこ」から視線を外さないことからも明らかだった。
 分かりやすい人の気配。
 息を潜め――だが潜め切れていない人間が、そこにはいる。
「……誰かいるのか?」
 ガサガサガサッ
 金澤の問いかけに、答えの変わりに大きく繁みが揺れた。


【残り41人】

480 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/28(水) 01:49:48 ID:jDQc//dv0
職人さん乙です。
チンポーとピヨの凸凹コンビの会話面白いw
繁みの中…危ない奴じゃないといいなぁ…。

481 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/28(水) 10:45:34 ID:eFQFnf07O
職人さん毎度乙です〜。
チン様もなごみ系キャラだなw
そういや関本って矢野・金本探してたな。
どちらかにつながる人だといいなぁ

482 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/28(水) 19:11:23 ID:Aeyq+7lt0
保守

483 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/28(水) 21:47:08 ID:9ieRUP1k0
チンポー(・∀・)バズーカ!!

484 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/29(木) 03:01:26 ID:gw43QlnK0
出てくるのは誰???

485 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/29(木) 11:03:09 ID:kb/S4HjZ0
矢野

486 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/29(木) 11:08:06 ID:8Oia99fvO
今日はこまめに捕手しとかねーと危なそうだな
つーことで優勝直前★ゅ

487 :sageスレ博士:2005/09/29(木) 11:19:34 ID:BhN9FD450
フムフム・・・



















sageスレ認定Aランク・・・・ここにもこのようなスレがあったとは・・フムフム

488 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/29(木) 15:29:18 ID:8Oia99fvO
昼の★ゅ

今年の球児の活躍を考えると、リレー版であまりにも早く逝ってしまったことが汚水
ジェフとクボタンはなかなかカコイイ

489 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/29(木) 21:26:43 ID:8Oia99fvO
優勝記念★ゅ

490 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/30(金) 00:50:11 ID:WC4ZLEDN0
hosyu

491 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/30(金) 01:03:10 ID:ZI6Kvz3N0
保守!


492 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/30(金) 02:35:26 ID:WC4ZLEDN0
優勝も決まったことだし、
試合のない日は保管庫へゴー!だな。

493 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/30(金) 11:23:07 ID:JGN+CPDS0
保守 リレーの矢野はどうなるんだああ

494 :代打名無し@実況は実況板で:2005/09/30(金) 18:54:08 ID:EarBDNra0
保守

495 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 00:45:26 ID:PTWTmwQV0
ほしゅ

496 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 00:52:23 ID:qvxnJ8Px0
ほしゅ

497 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 05:26:32 ID:DGE5/5tT0
阪神優勝おめでとうございます!!昔なら阪神が優勝する事は
珍しいと言われていた事なのに、今となっては当たり前のようになりましたねぇ
おめでとうございます。他ファンの自分も感動してしまいました(つД`)
たくさんのファンにも恵まれてる阪神はとても幸せな球団ですよ!
しかし、本当に強い!こんなチームに負けたのなら悔いはないです!
ねらうは日本一ですね!頑張ってくださいタイガース!!

498 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 05:31:21 ID:nv5yYcdZ0
確かに阪神は強かった、けどさ。

>今となっては当たり前のようになりましたねぇ
>今となっては当たり前のようになりましたねぇ
>今となっては当たり前のようになりましたねぇ

499 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 10:35:12 ID:QpP0PkFn0
捕手

500 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 11:37:03 ID:HEBkSwws0
>>498


501 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 16:29:52 ID:hHS+VJAg0
ほしゅ

502 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/01(土) 20:05:46 ID:tLKcTo2f0
hoshu

503 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/02(日) 02:56:53 ID:TSKc8R+/0
阪神優勝おめでとうございます!!昔なら阪神が優勝する事は
珍しいと言われていた事なのに、今となっては当たり前のようになりましたねぇ
おめでとうございます。他ファンの自分も感動してしまいました(つД`)
たくさんのファンにも恵まれてる阪神はとても幸せな球団ですよ!
しかし、本当に強い!こんなチームに負けたのなら悔いはないです!
ねらうは日本一ですね!頑張ってくださいタイガース!!

504 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/02(日) 10:37:26 ID:mKDjBthFO
最近はコピペ厨が保守してくれるんだな

昨日のリンタソスタメンで活躍するのを見てアリアス思い出して泣けた。・゚・(ノД`)・゚・。

505 :924(1/5):2005/10/02(日) 16:24:38 ID:YParQl870
>>479より
6人目(2)

正午の定時放送が終わった。
つい先ほど、金本の言葉に全員が気持ちを奮い立たせたのが嘘のように、
ゴレンジャー6人は沈んでいた。原因は予想をはるかに上回る死者数である。
『まさか、これほどとはのう』
『昨日から合わせてもう16人……佐藤さんも入れると17人ですよね』
『4人って聞いた時も信じられなかったけどなあ』
『中林が人を殺そうとするくらいなんですから、それを考えたら、何があっても
おかしくないと思います』
『それだけゲームに乗った人間がいるってことなのか……』

金本も、藤本も、秀太も、的場も、そして中村も、程度の差こそあれ皆が動揺を
隠せない中、赤星だけは軽くこぶしを作った右手をあごに当て、名簿を
見つめつつ何か考えていた。やがて彼はおもむろに口を開いた。
『いま名前を呼ばれた人たちって、本当にみんな死んでるんですかね?』
その疑問に対し、ボールペンをいじり回しながら秀太が言った。
『でも、シモさんと中林はしっかり呼ばれてたぞ』
『そのほかに本当に10人も死んだのかってこと。殺し合いを煽り立てるために
水増ししてる可能性もあるんじゃないか?』
『中には生きてるのに死んだことにされてる人がいるってことですか?』
向かいから尋ねたのは藤本だ。

『そういうこと』
『そんなの、本人には嘘だって分かるじゃないか』
秀太がまた突っ込みを入れる。
『もちろん本人には分かるけど、生きてるのに死んだって放送されたら
それはそれで混乱するし不安になると思うんだよ。それに、こうみんな散り散り
ばらばらの状態じゃ、他の大多数の人間には本当かどうかなんて確かめようも
ないだろ?』

506 :924(2/5):2005/10/02(日) 16:25:21 ID:YParQl870
さすが盗塁王、と言うべきかは分からないが、放送を何の疑いもなく真に
受けていた中村は感心した。これには秀太も返す言葉がない。
『そりゃ、まあ、そうだけど』
『僕らだってシモさんと中林のことは金本さんと藤本から聞いたけど、
それ以外の10人は確認したわけじゃないんだ。12人死にましたと言われて、
はいそうですかと納得なんてできない』
赤星はなおも熱心に説く。その姿からは放送を鵜呑みにしない冷静さ以上に
12人死亡の事実を認めたくないという願いがうかがえた。

『確かに、嘘かもしれません。でも――嘘だと言い切ることもできません』
やや遠慮がちに藤本が言った。
『僕もゲームに乗った人がそんなに沢山いるなんて考えたくないですけど、
この状況だと的場が言ったみたいに何が起こってもおかしくない。
そもそも殺し合い自体が常識じゃありえないことなんですから』
これまたもっともな言い分だ。赤星の言うことには一理あるが、この狂った
状況においてはどんな不可解な事態も起こり得る。

『とにかく、はよう何とかせんといけんのう』
金本は眉間にしわを寄せ、きわめて厳しい表情だ。何とかするとは、
言うまでもなく、ゲームを壊すことだ。だが、まだ具体的な策は何も
立っていない。今この瞬間にも、どこかで殺し合いが展開されているかも
しれないのだ。ほかに何かできることはないだろうか。
『あの……どうやってゲームを壊すか考えるのも大事ですけど、
それと並行してもっと人を集めた方がよくないですか?』
中村は、頭に浮かんだことを提案してみた。
『ほんまに12人も死んでるなら大変ですし、もし嘘でも赤星の言うとおり
煽られる人も出てくるはずです。このままだと犠牲者がどんどん増えて行く
かもしれない。ばらばらになってるみんなを少しでも探して集めた方がいいと
思うんです』

507 :924(3/5):2005/10/02(日) 16:25:54 ID:YParQl870
ゲームに乗った者がいるとしても、一方で金本たちのように反抗する意思を
持つ者が必ずいるはずだ。また、今朝までの自分のようにどうすればいいか
分からず途方に暮れている者もいるだろう。そういう選手たちを一人でも多く
探し出し、ゴレンジャーに加えることができれば。
『それがいいかもしれませんね。人が増えればゲームを壊すための方法も
いろいろ出てくると思います。』
赤星が賛成してくれた。

『ほうじゃな――よし!』
金本は大きくうなずくと、いきなり立ち上がった。
『ちょっと待ってください! 駄目ですよ!』
両隣にいる藤本と的場が慌てて止めた。
『行くなら早い方がええ』
『そうじゃなくて、金本さんは怪我してるんですから』
『また何かあったらどうするんですか!』
『こんな怪我くらいどうってことはない。お前らに行かせて自分がここに
おるわけにはいかんじゃろ』
二人の制止に構わず、金本は自分の荷物を取り上げ担ごうとした。

『金本さん、俺に行かせて下さい。自分が言い出したことですし』
中村は思い切って願い出た。
『やっぱり、リーダーがみんなと離れたらまずいですよ。金本さんはここに残って
ゲームを壊す方法を考えて下さい』
ゴレンジャーのメンバーは全員が大切な仲間であり、誰も欠くことはできない。
しかし、その中でも金本は特別な存在だ。この人にもしものことがあれば、
誰がゴレンジャーをまとめて行くのか。藤本も的場もそのことを恐れているに
違いなかった。金本は立ったまましばらく黙っていたが、やがて皆の気持ちを
理解したのか、荷物を置いてその場に座り直した。

508 :924(4/5):2005/10/02(日) 16:26:25 ID:YParQl870
『ほうか……。じゃが、ユタカ一人というわけには』
『じゃあ、俺が一緒に行っていいですか?』
軽く挙手しながら名乗りを上げたのは秀太だった。
『秀太、行ってくれるか』
『はい。そのかわり、金本さんたちは僕らが出かけてる間にちゃんと考えて
おいてくださいよ?』
秀太は冗談めかして笑った。

『これ、ユタカさんに預けます。人探しに役に立つはずです』
赤星が探知機を差し出した。
『黄色い光がついたら人がいるってことです。でも、注意して下さい。けっこう
近付かないと表示されないし、誰かってことまでは分かりませんから』
『分かった。ありがとうな』
探知機を受け取って行こうとすると、今度は金本に呼び止められた。
『ユタカ、どっちか持って行け』
彼は右手に下柳のマシンガン、左手には中林のライフルを持っていた。
『いや、いいですよ。そんなの俺にはとても扱えません』
『何があるか分からんのじゃ。使えんでも、持ってるだけで威嚇になる』
金本は二丁の銃をぐいと中村の顔の前に突きつけた。

『いえ、ほんまにいいです。俺なんかが持っても荷物になるだけです』
『ユタカさん、それじゃ、これを持って行って下さい。これなら軽いし、使いやすいと思います』
脇から声をかけてきた藤本の手のひらにはコルトパイソンが乗っていた。
『けど、それはお前のやろ。いいよ』
『どれも持って行かんなら、行くことは許さんけえ』
にらみつけてくる金本はまるで鬼のような恐ろしい形相をしていた。中村は
一瞬ひるんだが、それは金本がどれほど自分を心配してくれているかと
いうことの表れだった
『分かりました。じゃあ、これを……』
中村はライフルを選び、肩にかけた。

509 :924(5/5):2005/10/02(日) 16:27:13 ID:YParQl870
人目につかぬよう、中村と秀太は裏口から外に出た。
『それじゃ、4時くらいには戻りますから』
時計を確認しながら秀太が言った。
『気をつけて行って下さい』
『たくさんの仲間を待っとるからな』
不安と期待の入り混じった言葉をかけてくる残りのメンバーに対し、中村は
軽く自分の胸を叩いてみせた。
『はい、まかしといて下さい』
あれほど他人に遭遇することを恐れ、この家に意気地なく隠れていた
数時間前までの自分を思うと、我ながら驚くほどの変化だった。勇気を
くれたのは、このゴレンジャーの仲間たちだ。
自分も、少しでも役に立ちたかった。

それから――。
秀太と一緒に出かけて、それから、どうなった?
予定どおりなら、今頃は新しい仲間を連れてアジトで待つゴレンジャーの
もとへ帰っているはずだったのに。
(……秀太が……)
ああ、そうだった。思いもよらないことが起こったのだ。
(まさか、秀太が……)

【残り41人】

510 :924:2005/10/02(日) 16:28:50 ID:YParQl870
また章番号忘れた……orz
>>505-509は76章です。すみません

511 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/02(日) 19:12:53 ID:4D1fiPwD0
職人さん乙です!
うわああぁ…怖えよ、秀太…

512 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/02(日) 20:16:20 ID:13s+pY9r0
またこれ先が気になるわあ

513 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/02(日) 20:19:41 ID:EGuSt4+Y0
ユタカ…・゚・(ノД`)・゚・。


514 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/03(月) 08:22:15 ID:lwH0xd3V0
hosyu

515 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/03(月) 18:56:16 ID:XXvWS/8uO
職人さん毎度乙です。
秀太はこのあとどういう経緯でゲームに乗っていくんだろう…。
そしてユタカは大丈夫なんか?

516 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/03(月) 21:28:18 ID:F/n6iXgb0
保守

517 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/03(月) 23:58:38 ID:eOGrHwBD0
ほしゅ

518 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 01:20:25 ID:OG9zZJRZ0
ほしゅ

519 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 02:37:56 ID:6wycwcrh0
ユタカ・・・武器を奪われるだけで、無事でいてほしい。
けど、どうなってるんだっけ? 保管庫で確認しておこうかな。

520 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 06:14:13 ID:6wycwcrh0
ついでに保守っとく

521 :174(1/4):2005/10/04(火) 11:58:13 ID:pfn6lYI10
>>509
77.過剰防衛本能

「はぁ……っはぁっ……!」
 息が上がる。藤原通はひたすら木々の合間をすり抜け、全力で林を駆け抜けてい
た。時折盛り上がった木の根につまずくが、それでもスピードを緩めることはしな
かった。
 鼓動の音は耳まで達していた。こめかみと脳のあたりに、もう一つずつ心臓があ
るかのような、激しい心拍音。脳が止まれと命令している。これ以上走るのはお前
の限界だと。 
 しかし藤原は立ち止まらなかった。
 理性の命令すらも拒絶するのは本能的な恐怖だ。1秒でも早く、1メートルでも
遠くまで逃げたい。
 怖かった。
 先程の出来事が、何度も脳裏でフラッシュバックする。
 何を言っているのか分からない早口の異国語。問答無用で打ち込まれた銃弾。
 あれはマシンガンだ。あんな物で撃たれたらひとたまりもない。青い目の殺戮者
が、マシンガンを携えて襲いかかってきたのだ。
 あれは敵だ。
(逃げなきゃ――殺される!)
 外人が外人を助けに来た。
 やはり林は奴らと同類だったらしい。
(畜生……!)
 年齢も近くて、二軍で一緒にやってきたヤツだから助けてやろうと思ったのに。
 危うく騙されるところだった。藤原は己の甘さを悔やんだ。
 いいやつだったのに。
 極限の状況は、こんなにも人を変えてしまうのか。藤原は悲しかった。だが悲しさ
よりも騙された悔しさが勝った。

522 :174(2/4):2005/10/04(火) 11:59:15 ID:pfn6lYI10
 やっぱり外人なんて信用出来ない。そもそも生まれ育った文化も思想も違うん
だから、相手が奥底で考えていることなんて分かりもしない。
 その証拠に、あいつは問答無用で撃ってきたじゃないか。武器らしい武器も持って
いない藤原相手に、マシンガンなんてふざけた武器で。アリアスと藤原を囮にして、
自分を殺すつもりだったのか?
 もしかして自分をおびき寄せようとしていたのかもしれない。外人が3人も同じ
場所に集まっていたという事実に、藤原の中にそんな疑念が沸いた。
 林を囮に自分をおびき寄せて、後ろからウィリアムスが殺す。完璧じゃないか。
なんて残虐な連中なのだろう。
 そう思うとアリアスを殺した自分の判断は正しかった。林はもしかしたら殺し
損ねたかもしれないが、あいつならまた後からでも殺せる自信はある。
 そう考えていくうちに、少しずつ藤原は気持ちが落ち着いてきた。
 もう心臓は一つに戻っていた。少しずつスピードを緩め、やがて駆け足程度に
落ち着く。止まってしまったら動けなくなりそうだから、それでも立ち止まること
だけはしなかった。
『殺す』
 自分が自然に使っているその言葉に、もはや藤原は違和感を感じていなかった。
 当たり前だ。ここは殺し合いの戦場だ。もう何人が殺され、何人が殺している
と思っているんだ? 
 恐ろしかった。殺さなければ殺されるのだ。
(誰だ? 誰が信用できる? 誰が信用できない?)
 沸騰した脳内で、藤原は自問自答した。
 バッグに入っていたのは何の変哲もないベルト一本。何もない。力もない。知恵
もない。武器もない。虫けらだ。
(俺は虫けらだ!)
 虫けらに情けをかける人間がどこにいる?

523 :174(3/4):2005/10/04(火) 12:00:10 ID:pfn6lYI10
 虫けらの背番号は『2』。
 いわゆる『良い番号』は、この場合災いでしかなかった。
 凄惨な佐藤コーチの死を見せつけられ、ろくに己の中で状況を整理出来ないまま
平田のノーテンキな声に送り出された。
 デイバッグの中を探ると、出てきたのはベルト一本。
 どうにもならない。自分はこのまま誰かに殺されるのかと思うと恐怖で頭が
おかしくなりそうだった。どうする? どうしたらいい? 藤原は考えた。
 このままでは殺されるだけだ。スタートの人数は56人。全員が藤原のような
くだらない武器を持っているとは考えにくい。
 強い武器を持っている人間は弱い者を殺そうとするだろう。藤原だ。
 先輩達は自分が生き残るためには縁のない後輩なんて簡単に殺すだろう。藤原だ。
 まず人間の心理として殺すなら関係のない人間だ。
 二軍の先輩はともかく、一軍で活躍している彼らは、ロクに上に上がったことの
ない後輩など覚えてないかもしれない。藤原だ。
 まず狙われるのは自分な気がした。
 俺だ。俺だ。俺だ――
(俺が殺されるに決まってる――!)
 彼の中に渦巻いていたのは疑心暗鬼だった。
 誰だ。誰が信用できる?
 自分と違う人間はダメだ。自分と価値観の違う人間なんて信用できない。
 自分と違う人間なんて信用出来ない。
 信用。信用。信用。その言葉が呪詛のように藤原の頭を駆けめぐる。
 まず外人は問題外だ。藤原がほぼ丸腰なのが解れば真っ先に襲ってくるだろう。
そういう意味では、向こうが気付いていない状況でアリアスを見つけられたのは
ラッキーだった。あやうく、林に騙されて殺されそうになったが。
 次は一軍にいる先輩達だ。彼らは自分とは全然違う。
 レギュラーを張って、第一線で脚光を浴びて活躍している彼らは、自分のことなど
見下しているに決まっている。そう――それこそ虫けらのように。
(殺される――俺なんか、絶対殺される)
 殺される前に殺さなければ。
 藤原の過剰な防衛本能は、猜疑心と劣等感を取り込み、色んな正論を履き違えて
タチの悪い正当防衛論を膨らませていた。

524 :174(4/4):2005/10/04(火) 12:00:52 ID:pfn6lYI10
(大丈夫だ。大丈夫――)
 藤原は冷静だった。自分でも驚くほど冷静だと、藤原自身は思い込んでいた。
自分より冷静な人間など、今この島にいないのではないかとすら思う。
 冷静な藤原は考えた。この恐ろしい殺し合いの島から、どうやって逃げ出せばいい?
 簡単だ。
 信用出来ない人間はみんな殺して、信用出来る人間だけでなんとか助かる方法を
考えればいいのだ。
 それが藤原の出した結論だった。
 虫けらにだって命はある。虫けらだって生きたい。虫けらだって、生きる為には
人も殺せる。
 走り続けながらも、藤原は周囲に注意深く目を配っていた。どちらにしろ、人を
見つけることだ。黙って殺されるのを待っているつもりはない。
(仲間が欲しい――)
 一人は危険だ。誰か。誰か信用出来る人間が欲しかった。
 外人は信用できない。
 一軍の先輩は信用出来ない。
(こうやって信用できない人間を排除していけば、いつか行き着くはずだ)
 だが藤原はまだ気付いていなかった。
 こうやって信じられる人間を狭めていくことで、いずれ誰も信じられなくなると
いうことに。


【残り41人】

525 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 18:43:23 ID:gNPx8vOj0
ほしゅほしゅ

526 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 20:29:22 ID:LsQnYuqPO
職人さん毎度乙です。
藤原通テラコワス…。
ウィルとリンタソがんがれ!

527 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/04(火) 21:00:21 ID:w3Nwajl80
174さん描写力あるなあ…

528 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/05(水) 00:24:07 ID:VRhYIxWk0
職人さん新作乙です。
藤原はこのままどうなってしまうんだろ…ワクテカしながら待ってます

529 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/05(水) 08:32:41 ID:moNyK69L0
おお、続き来てるー。

530 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/05(水) 10:07:06 ID:9ppDa9150
言ってることもやってることも無茶苦茶なのに、
藤原が哀れに思えてきた

531 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/05(水) 11:56:48 ID:zivU160c0
すごい思考展開。藤原の末路が怖い…

532 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/06(木) 00:25:21 ID:bQiHkpQIO
ほしゅ

533 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/06(木) 02:20:55 ID:2CFPbyX30
藤原のめちゃくちゃ加減がリアルでコワス・・・

534 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/06(木) 04:44:36 ID:2CFPbyX30
捕手っとくで

535 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/06(木) 13:37:30 ID:xvLNxjCk0

Yahooトピックスで投票中!

最近話題のキャラクター。あなたが好きなのはどれ?
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/

トラッキーorモナーに投票よろ。




536 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/07(金) 01:30:56 ID:wIb+1UyP0
まとっ的場が…

537 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/07(金) 18:37:35 ID:31qtOn+p0
保守

538 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 01:17:32 ID:CFBvN6cZ0
続き期待

539 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 14:41:55 ID:lp1S+RIi0
保守

540 :924(1/3):2005/10/08(土) 14:51:06 ID:EGe7nm4+0
>>524より
78.予想外の困惑

久保田智之(背番号30)は途方に暮れていた。目の前に転がる桜井広大
(背番号51)の話を聞いていると、間違いなくタイガースに入団してからの
記憶はすっぽりと抜け落ちている。先輩がどうとか言っているので、
おそらくは高校1年か2年くらいに戻ってしまっているらしい。
「言うとくけど、俺の家はカネなんてあらへんからな」
「いや、だから……そうじゃなくて……」
どうやら、桜井は自分が誘拐されたと思っているようだ。彼にしてみれば、
まったく見知らぬ場所で見知らぬ男に拘束されている状態なのだ。
そう解釈するよりほかにないだろう。

「……あのな、桜井。話せば長くなるんだが……俺たちは今、すごく危険な
状態にあるんだ」
「俺"たち"ってなんやねん。この状態で危険なんは俺だけやろ」
「お前は誘拐されたわけじゃないんだ。俺もお前に何かしようって気はない。
というより、お前を守ってやりたいと思ってるんだ」
「守る? それやったら、なんで俺は縛られてんねん。ほどいてくれや」
「……それは……」
久保田は片手を額に当てた。返答に窮するのは、いったい何度目だろうか。

「その……なんて言うか、ほどいたら、お前は逃げるだろ? けど、ここを出ると
危ないんだ」
「逃げへん。逃げへんから、ほどいてくれ。ていうか、何がどう危ないのか
さっぱり分からへん」
久保田はやれやれといった風にため息をつくと、立ち上がり、桜井に背を
向けて廊下へ通じるふすまに手をかけた。

541 :924(2/3):2005/10/08(土) 14:51:48 ID:EGe7nm4+0
「どこ行くんや」
「……疲れた。……ちょっと待っててくれ」
「おい!! このまま放って行くんかよ!」
どなってくる桜井に構わずふすまを閉め、久保田は足早に二階へと上がった。
下からはまだしばらく桜井の騒ぐ声が聞こえていたが、やがて観念したのか、
静かになった。

久保田は何もない和室の畳の上にごろんと仰向けに寝転がり、また一つ
大きなため息をついた。
(これはこれで厄介だな……)
桜井を拘束した目的は、この恐るべきゲームに乗った彼を止めることだった。
だから、思いがけず本人がゲームについてきれいさっぱり忘れてしまったと
なれば、好都合には違いなかった。場合によっては戒めを解いてやっても
いいかもしれない。しかし、彼をどう扱うかは依然として大きな問題だ。

自由になれば、桜井はきっと逃げようとするだろう。島のあちこちにはやはり
仲間を殺して生き延びる道を選んだ者がいるはずだ。そういう連中と
遭遇すれば、どうなるか。危険なのはそれだけではない。やみくもに逃げれば
禁止エリアに引っかかる可能性もある。ここが小さな島だと気づけば、
脱出するために海に入るかもしれない。
何も分からないままこの家から出すことは、避けねばならない。

では、本当のことを説明すればいいのか。
――今は2004年で、お前は阪神タイガースの選手で、チーム全体が
殺人ゲームに巻き込まれている。
これはまぎれもない事実だ。事実だが、これほどメチャクチャな話を
信じるとは思えない。いや、仮に信じられても困る。少なくとも、常軌を逸した
殺し合いの真っ只中にいることを桜井に知らせるのは不安だった。
せっかく何もかも忘れているというのに。
(どうしたらいいんだ?)

542 :924(3/3):2005/10/08(土) 14:54:44 ID:EGe7nm4+0
考えに詰まってふっと目を閉じた時、階下から突如として桜井の叫ぶ声が
聞こえてきた。明らかに切羽詰まった、ただならぬ声だった。
(もしかして、誰かが――?)
久保田ははね起き、ポケットの拳銃を確認しつつ急いで階段を駆け下りた。
「どうした!?」
ふすまを開けると、部屋の隅で桜井がもがいていた。ほかに人はいない。
「桜井! 何があった?」
久保田は慌てて駆け寄った。桜井は何かをこらえるような苦しそうな顔を
こちらに向けた。
「俺、トイレ行きたいんやけど……」
「……トイレ?」

考えたような事態でなかったことは良かった。だが――忘れていた。
その重要な生理現象について完全に忘れていたことに久保田は気づいた。
とにかく桜井の身体の自由を奪っておかねばならないと小宮山と二人して
一生懸命になった結果、胸のあたりから足首までこれでもかというくらい
ぐるぐる巻きに縛り上げてしまったのだ。この状態では、いかんともしがたい。
「なんとかしてくれ! 漏れる!!」
桜井はわめきながら激しくのたうちまわった。

「えーっと……」
久保田は迷った。とりあえず、腰から下だけは解いてやる必要がある。
だが、両手が使えないとなれば、自分が手伝ってやるしかない。
それは勘弁してほしい。では、全部ほどいてやるのか? 大丈夫か?
(小宮山……早く帰ってきてくれ)
思わず窓の外を仰ぐ。灰色の雲はいよいよ重く垂れ込め、ざわざわと
不気味な風が吹いていた。

【残り41人】

543 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 16:29:25 ID:g9aUquQ50
続きキタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━ !!!!!
職人さん乙ですー。

544 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 18:42:50 ID:fmuFRPH70
保守!

545 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 20:45:57 ID:3Sgp4ZCi0
hoshu

546 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/08(土) 22:15:10 ID:mnpQhAoY0
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
何があったかと思えばトイレかよ。桜井ワロスw
クボタンがんがれ〜。

547 :924(1/5):2005/10/08(土) 23:08:52 ID:3blQKTNh0
>>542より
79.帰らない仲間

気がつくと、いつの間にか外では雨が降り始めていた。
「……おかしいですよ。捜しに行ってもいいですか?」
いい加減しびれを切らし、赤星はついに立ち上がった。
「待て、赤星」
6畳の部屋の中央に置かれた長方形の古びた木製のテーブルを囲み、
"ゴレンジャー"の面々はゲーム潰しの策を練っていた。制止したのは、
正面に座る金本だった。
「けど、いくらなんでも遅すぎませんか? 縁起でもないことは言いたく
ないんですけど、ユタカさんと秀太に何かあったんですよ。そうとしか
考えられない」
一瞬、他の三人の顔色が変わった気がした。先ほどから誰もが胸の内に
かかえながらも口に出すのは控えていたことだ。

『4時くらいには戻ります』
そう言い残して中村と秀太が新たな仲間を集めるために出かけたのは
昼過ぎだ。約束の時刻をもう一時間以上もオーバーしている。
「僕も、二人が心配です。赤星さんと一緒に自分も行きますから」
申し出たのは、赤星の右隣に席を取っていた的場だ。
「朝は金本さんと藤本が、昼はユタカさんと秀太が出かけたんですから、
今度は僕らの番です。行かせて下さい!」
語気を強め、赤星は頼みこんだ。だが、金本は静かに首を横に振った。
「……それはやめといた方がええ」
「どうしてですか?」
赤星は軽い違和感をおぼえた。金本は当然、賛成してくれるものと思っていた
からだ。なぜ止めるのか。

548 :924(2/5):2005/10/08(土) 23:09:26 ID:3blQKTNh0
「わしらも今朝は遅くなったがちゃんと戻ってきた。あいつらは必ず帰ってくる。
わしは信じとる」
信じている、と言いつつも金本の表情は厳しいものだった。
「そりゃ、僕だって無事に戻ってきてほしいし、そう信じたいです。でも、この
状況じゃ何が起こるか分からない。金本さんたちだって、中林に襲われた時は
危なかったって言うじゃないですか。頼みますから、行かせて下さい」
赤星は立ったまま金本に向かって深々と頭を下げた。

「ほんとにこんなことは考えたくないんですけど……二人とも戻って
こないってことは、ユタカさんと秀太さんの両方に何かあったか、片方に何か
あってもう一人が離れられないのか……。僕からも、お願いします」
的場も真剣な目で訴えた。しかし、金本の返事はあくまで冷淡だった。
「捜しに行く言うても、どこに行ったか分からんのじゃ。昼間ならまだしも
今の時間、それも雨まで降ってきた。外に出て捜し回るのは危ない」
朝には率先してアジトを探しに行き、中村と秀太が出かけた人探しにも
最初はみずから行こうとした金本とは思えない言葉だった。

「金本さん、二人が帰ってくると信じてるって言っておきながら、外に出るのは
危ないって、矛盾してませんか」
赤星は違和感を通り越して軽い怒りを感じていた。
「その危険な外に二人はいるんですよ? それもどんな状態か……
ひょっとすると怪我してるかもしれない。危ないなら、なおさら捜しに行くべき
じゃないですか?」
だが、金本はなおも首を縦に振ろうとはしなかった。
「……これ以上何かあったら大変じゃ。今は探知機もないんじゃ」
「金本さんらしくない冷たい言い方ですね。二人が心配じゃないんですか?」
「赤星さん、それは……」
さすがに言い過ぎだと思ったのか、的場が両手をかざして宥めるような仕草で
自分を見上げてくる。それでも構わなかった。

549 :924(3/5):2005/10/08(土) 23:09:55 ID:3blQKTNh0
「ユタカさんと秀太を見捨てるんですか?」
答えようとしない金本に対して挑発の意味もこめ、さらに辛辣な言葉で
畳みかけた。金本は一瞬ぴくりと眉を動かしたが、変化はそれだけだった。
苦渋に満ちた顔つきで、身じろぎもせず黙ったままだ。
赤星は耐えられなくなり、なかば救いを求めるように左隣の男に目をやった。
先ほどから一言も話すことなく、テーブルの上で組み合わせた自分の両手を
静かに見つめている。
「藤本、お前はどう思う? 黙ってないでなんか言ってくれよ」

「僕は――」
声をかけられて藤本は我にかえったように二、三度ぱちぱちと瞬きしたが、
再び視線を落とし、ゆっくりと答えた。
「僕は、今は動かん方がいいと思います」
これも赤星には思いがけない返事だった。
「お前まで、そんな!」
「――赤星さん、金本さんがユタカさんと秀太さんを心配してないとか、
見捨てるとか、本気でそんなこと言うたはるんですか?」
藤本は姿勢を崩さずに顔だけを上げ、まっすぐ赤星を見た。

「そんなわけない。金本さんはたぶん、誰よりも心配したはりますよ。
できるんなら今すぐ捜しに飛んで行きたいってのが本音やと思います。
けど、そんなこと、僕らが許さへんでしょ? 昼間みたいに、赤星さんかて
止めるでしょう?」
穏やかだった藤本の声が徐々に強くなる。
「自分が出て行ったらみんなに心配かけるって、今の金本さんはそのことを
よう分かったはると思うんです。でも、だからって他の誰かを行かせるのも
心配やし、二人が帰ってきた時のことを考えると全員で出かけるわけにも
いかない。それやったら、待つって言うしかないと思う。違いますか?」

550 :924(4/5):2005/10/08(土) 23:10:24 ID:3blQKTNh0
藤本は強い光をたたえた眼で赤星を見据えた。赤星はたじろぎながら
思い出していた。アジト探しに出かけた金本と藤本が戻らなかった時、
どれほど動揺したか。昼間、金本が人探しに出かけようとした時、どんなに
必死で止めたか。
金本に視線を移すと、彼は先ほどと変わらない様子で微動だにせず
座っていた。だがよく見ると、眉間に刻まれたしわはいよいよ深くなり、
頬のあたりが小刻みに震えている。

「頼む、赤星! このとおりじゃ!!」
突然、金本はテーブルの上に両手をつき、深々と頭を下げた。
これには赤星も、そして藤本と的場も目を丸くした。
「お前に言われたように、わしは冷たいのかもしれん。大事な仲間を、
ユタカと秀太を見捨てようとしとる薄情者なのかもしれん。けど、これ以上
このメンバーに何か起こったら――」
金本はテーブルに頭をこすりつけた。
「何か起こったら……わしはもう……どうしたらええのか――」
その声は痛々しくかすれ、最後はほとんど涙声になっていた。

「金本さん……」
赤星は自分の考えが足りなかったことを後悔した。中村と秀太を捜しに行く、
そのことに必死になるあまり、待つ者の不安を忘れてしまっていた。
自分と的場が捜しに行ったとして、もし何かあったら、ゴレンジャーは二人に
なってしまうのだ。
「……頭を上げて下さい。分かりましたから」
赤星はそっと片手をのばし、金本の肩に触れた。
「金本さんの気持ちは、よく分かりましたから」
その言葉に金本はようやく顔を上げた。目は赤く潤み、今にも涙が
あふれそうだった。

551 :924(5/5):2005/10/08(土) 23:11:13 ID:3blQKTNh0
「すまん、赤星……すまん」
目をこすりながら再び頭を下げて詫びようとする金本に対し、赤星は優しく
両肩に手をかけた。
「いえ、僕の方こそ、すみません。もし……もしもですけど、このまま二人が
戻らなかったら、朝になってから捜しに行っていいですか?」
金本は何度もうんうんとうなずいた。
「……もちろんじゃ。もし、一晩たってもあいつらが戻らんかったら、
その時は……そうしよう」

「案外、大丈夫かもしれませんよ。ひょっこり帰ってくるかもしれない」
藤本が場の雰囲気を変えようとしてか、つとめて明るい声で言った。
その調子に合わせて的場も提案した。
「今のうちに着替えとか探しときませんか? この雨ですから、二人とも
濡れて帰ってくると思います」
「……そうじゃな。あとタオルとかもいるな。誰か一緒かもしれんけえ、多めに
用意しといた方がええ」
金本は勢いよく立ち上がった。やっと普段の彼に戻っていた。

こうして4人は中村と秀太、そして新しく仲間に加わる誰かのために手分けして
家の中を探し回り、服やタオル、ハンガーなどを準備した。みな先ほどまでの
不安を忘れたかのように笑顔も交えながら動いていたが、赤星はひどく
胸騒ぎがしてならなかった。
二人の身に予想だにしない何事かが起こったのではないか。
なぜか、そんな気がするのだ。

【残り41人】

552 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 00:06:12 ID:fHCVUhth0
クボタン・・・人生最大のピンチかもしらん。
桜井タンが本当に記憶喪失になっていることを祈るよ。

金本さんの広島弁、妙に場面にマッチしててスゴス。

924さん、続き楽しみに待ってます!

553 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 11:59:55 ID:rZP64CVrO
新作2つもキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
職人さん毎度乙です。
クボタンがかなり心配。
そしてゴレンジャー…金本に泣かされたお。・゚・(ノД`)・゚・。
ますます秀太がなぜ…という怒りが強くなりますた。

554 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 12:10:27 ID:tmYZVvXe0
職人様方は皆プロですか?
いつも楽しみにしています。

555 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 12:40:07 ID:GQ/s1u+00
http://www.flickr.com/photos/aoisola_bluesky/37361034/

556 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 12:40:54 ID:5XWsPD4y0
このメンバーに何か起こったときに金本がどうなるか、とても期待している

557 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 19:16:46 ID:xTtDKt6z0
個人的に金本は基本ヘタレと思ってるから、腐肉みたいな部分が出るほど
金本らしさが際立ってきてると思う
しっかり者キャラの藤本と当初から引き立て合ってて上手い
>>556と同じく期待してるが、そんな事態になって欲しくない気持ちもなきにしもあらず

558 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/09(日) 22:58:49 ID:AkSHVg1Y0
職人さん乙です。どんどん目が離せなくなっていくな…

559 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/10(月) 13:28:42 ID:SYaYWNGh0
みんなが秀太を信じて心配してるのが悲しい
なんで裏切ったのかなあ・・・
いつか理由が明らかになると思うんで、楽しみにしてます

560 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/10(月) 21:54:37 ID:ghjZC0Cl0
保守

561 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 00:27:12 ID:nyUn0Qh00
ほしゅ

562 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 14:39:00 ID:pU2sdaJ0O
★ゅ
豊は秀太にやられたんだろうかorz
続きが23しく気になるお

563 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 18:58:25 ID:V+E7wAKR0
ほしゅ

564 :174(1/3):2005/10/11(火) 20:01:42 ID:LG4/0Olj0
>>551
80.強襲者

「三東!」
 ガサリと、繁みから出てきた男に、金澤が声を上げた。
 相好を崩し、バズーカ砲を置いて歩みよる。
 同級生の三東洋(背番号37)だった。そのことに、関本も張っていた糸を一瞬
弛める。
 しかし怯えたような目でこちらを凝視する三東は、金澤の言葉にも何らアクション
を起こさなかった。ただ強ばった顔で、金澤を睨み返している。
「三東じゃねーか! 無事だったのか? 良かった……」
 警戒心を抱いているらしい三東に、敵意がないことを見せるように金澤が両手を
開いて近づく。
「待て金澤!」
 無防備に近づく金澤を、関本は制止した。
 様子がおかしかった。
「え?」
 立ち止まり、金澤が振り向く。もう三東は目の前にいた。 
 蝋人形のように、動かない三東が。
「ああああアアアっ!?」
 唐突に雄叫びを上げた三東が、金澤に襲いかかった。
 その手にあるのは――白い柄の短刀。
「うわっ!?」
 咄嗟に横に避けた金澤のすぐ脇を、銀の刀影が一閃する。
「やめろ! 三東!」
 掴みかかってきた――というよりは飛び付いてきた、と形容する方が正しい三東
が、目標を見失い一度体勢を崩す。が、すぐさま柄を持ち直し、金澤に斬りかかった。
「俺たちは敵じゃない!」
 声を上げ、説得を試みようと、金澤が三東が振り上げた腕を掴んだ。身長の高い
金澤に腕を掴み上げられ、三東の攻撃が一瞬緩む。

565 :174(2/3):2005/10/11(火) 20:02:05 ID:LG4/0Olj0
 その顔を見て、金澤がぎょっとした。
 無理もない。血走った目と、強ばった顔。剥き出した犬歯。
 人を殺そうとする者の顔だ。
 鼻息も荒く歪んだその表情は、鬼の形相というのに相応しい鬼気迫るものだった。
 人を殺そうとする時、人は人ではなくなるのかもしれない。関本はそう思った。
 ちらりと、関本の頭を秀太の顔過ぎる。あの時の彼の顔は、少し、この三東と似て
いたかもしれない。
「アアアアアアッ!」
「金澤! 危ない! 逃げろ!」
 金澤が臆した隙に、武器を持った腕を塞がれた三東が足を振り上げた。
 鳩尾を狙った膝撃ちを辛うじて避け、金澤が握った腕をねじり上げた。
 三東の顔が苦痛に歪む。
「ウワァァァッッ!!」
 途端、堰を切ったかのように、三東が無茶苦茶に暴れ出した。
 もう一方の腕で金澤に掴みかかり、左右に激しく身を捩りながらその身体を押した。
「逃げろっつったって……っおわっ!?」
 獣のように雄叫びを上げる三東の勢いに押され、金澤が仰向けに倒れこんだ。
 金澤に馬乗りになった三東が、迷いなく握りしめた短刀を振り上げる。
「――っ」
 金澤が目を瞑った。
(駄目だ――!)
「やめろぉぉぉぉぉ!」
 叫んだときには、関本はグロッグ17を抜いていた。 
 ――パァン! パァンパァン! 
 追い立てるように三発、森の中に銃声が響く。関本は三東の隣の木の幹に向かって
発砲した。
「ヒィッ!?」
 三東が息を飲んだ。短刀を振り上げたままの体勢で硬直する。腕から先が痙攣でも
起こしたように震えた。
 その手から、握られた短刀が滑り落ちた。
 ――ドスッ……
 重い音を立て、重力に従って真っ直ぐに落ちた刃。

566 :174(3/3):2005/10/11(火) 20:02:29 ID:LG4/0Olj0
「う……」
 金澤が喉の奥で呻く。
 仰向けに地面に押しつけられた金澤の、耳の先から約1cmにも満たない場所に、
凶悪な輝きを放つ刃が突き刺さっていた。
 金澤の首から上の部分から、血の気がすっと下がる。
 だが、恐怖心に捕らわれている暇はなかった。
「っくそぉ……!」
「グッ……!?」
 舌打ち、金澤は刀を避けて転がり、武器を持たない三東の腹を膝で蹴り入れた。
 身体をくの字に折り曲げて、三東が苦悶する。
 必死にその下から這い出す金澤。よろよろと、おぼつかない足取りで関本の元に
戻ってくる。
「金澤!」
 名前を呼んでも、反応がない。血の気の失せた顔で俯く金澤を、慮ってやる余裕
は今はなかった。
「金澤! 行くぞ!」
 その手を強引に引っ張り、関本は金澤のデイバッグとバズーカ砲を担ぎ上げた。
 三発も銃声を響かせた今、ここに留まるのは得策ではない。
「畜生、しっかりしろよ!」
 動かない金澤に、吐き捨てる。かなり無茶なことを言っているのは分かっている。
 ただ今は、こんな時に判断力を失っている相棒に苛立った。
 空気の抜けかけた風船人形のような金澤の身体を半ば引きずるように、関本は
振り向きもせずに駆け出した。
 ぽつ――と、金澤を引く手の甲に、冷たい滴を感じる。
 雨が降り出していた。


【残り41人】

567 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 20:16:26 ID:muW5sa2x0
新作キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

568 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 22:23:24 ID:pav886sy0
age

569 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/11(火) 23:41:07 ID:aKOzXbNG0
職人さん、乙です。
三東、ついに壊れた……?

570 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/12(水) 06:59:03 ID:mh1eEcDj0
作家さん乙!

そっか、同じ日の午後の話が続いているんですねー。
あっちこっちでドラマが!

571 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/12(水) 20:31:53 ID:dZrkrNXVO
職人さん毎度乙です。
三東怖すぎ…。チン様精神的に立ち直れるんだろうかorz

572 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 00:39:26 ID:IlipNKCj0
三東、何がきっかけで壊れたんだろう?

573 :542(1/6):2005/10/13(木) 01:27:02 ID:TdgPW9AY0
>>566
81.マリオネットの殺意

 少しは躊躇してくれるだろう―――銃口を太陽に向けたのは、半分はブラフのつも
りだった。だが彼はあっさりと、その希望的観測を裏切った。
「ク、ソ……」
 井川は思った。江草はちゃんと逃げられるだろうか。太陽がここで自分と格闘して
いるのだから、その確率は高いと言えるだろう。大丈夫だ、きっと―――
「ち、くしょ」
 呻いて、蹴り飛ばしたトカレフの行方を見る。
 撃った事もない拳銃を上手く扱えるなどとは思っていなかった。だが自分が撃った
弾丸は外れ、病み上がりの太陽がMAX140Km/hで投げつけた石ころが自分の利き
腕に当たるというのは、幾ら何でも運が悪過ぎるのではないか?
「どいつも、こいつも……ッ」
 取り落とした銃に跳びついてきた太陽の身のこなしは恐ろしく素早かった。大して
長くもない自分の脚が、銃を掴んだ太陽の右手を的確に蹴り上げたのはひとえに
本能のなせる業だったのだろう。そのまま二人で組み合ったまま上になり下になり
を繰り返し、最終的には井川の背中が木の幹にぶつかった所で止まった。
「太陽、お前もかよ!」
「俺だって死にたくないんだよ……!」
 搾り出した声につられ、太陽が握った包丁の刃先が揺れる。それが落下する光景
が頭を過ぎって井川は心底ぞっとした。尻餅をついて応戦する不利な体勢で、必死
に太陽の右手首を捻り上げ、肘を力の限りに突っ張る。
「っ、く……」
 鼻の先、ほんの数センチの距離。ぶるぶると震える切っ先が否応なしに神経を磨
り減らした。少しでも力を抜いた途端、自分の顔は切り裂かれる―――凄惨な想像
に背筋を震わせる。汗が冷たい。
(こういう時に頼りにならねぇんだから!)
 数メートル先で沈黙する藪も、その腕の先に転がった拳銃も、自分を助けてくれそ
うにない。同時に、太陽に加担する事もなさそうなのがせめてもの救いだったが。
「―――この、大馬鹿野郎ッ!」
 息を荒げて毒づくと、右腕に喰い込んだ太陽の指に力が籠もった。

574 :542(2/6):2005/10/13(木) 01:28:13 ID:TdgPW9AY0
「……ああそうだよ。馬鹿だよ。井川お前死にたいか? 死にたいわけねぇだろ」
「だからって、仲間を殺すんかよ」
「じゃあどうしろって言うんだよ!」
 どうしようもない。それが現在、井川が返せるただひとつの答えだ。みんなその事
を解っている。解っていて、そこからどう行動するかが、その人の為人なのだ―――
そんな説教じみた答えは蓋し、誰も必要とはしないだろう。
「お前だって、さっき俺を……撃ったじゃ、ないか」
「……太陽」
「みんなそうだ、みんな結局……殺そうとするんだよ」
 だから彼は、自分も殺す側に廻ると言うのだ。
(畜生)
 誰だ、太陽をここまで壊した奴は。
(太陽―――)
 同い年だった。それなりに仲も良かった。色んな事を話した。笑いあった。
 大事なチームメイトの一人だった。
 その全てが過去形にされてゆく。全てが壊されてゆく。
(どうしてだよ、どうしてなんだよ)
 苦しさと怒りが、井川の胸の中に極彩色の地獄絵図を編んでいた。赦しがたい。
赦されるべきではない。太陽をこんなにした奴らこそ、死ぬべきなのだ。断罪される
べきなのだ。
「だから……」
 呟いて、ふっと、太陽の顔が明確な悲しみの色に染まる。
(―――?)
 疑問符を浮かべかけて、次の瞬間に井川は理解した。彼がこのあと継ぐであろう
言葉。太陽の殺意の狭間からするりと流れ出した深い藍色の悲しみに、その続きは
刻まれている。
『だから、赦してくれよ』
 ―――赦すとか赦さないとか、そんな事にこだわってどうすんだよ。本当に馬鹿な
んだから、お前は―――
 殺るか殺られるかの瀬戸際だ。なのに、井川は純粋な同情と親愛を覚える。ここ
までやらなければならない太陽が可哀想だった。可哀想で、哀しかった。
 ……かちゃん。

575 :542(3/6):2005/10/13(木) 01:29:31 ID:TdgPW9AY0
(え?)
 ひどく鈍い、それは金属音。
「……さ……ん……」
 太陽の声でも、自分の声でもない。
 その場にいるもう一人の、低い独特の声。
 弾かれたように井川はそちらを見て―――ある意味、後悔した。
「―――」
 男はもう俯いてはいなかった。長い右手と浅黒い顔とを真っ直ぐこちらに向けて、
彫像のように身動き一つせず、ぴったりと硬直している。左手を不恰好に添えた右
手の先、些か器用貧乏の気のある指に視線を留めるに至り、井川の顔からざっと
血の気が引いた。彼が、まるでビーフシチューを食べるためにスプーンを持つような、
何気ない手つきと当たり前の表情で扱おうとしているものの正体。
 ひとを殺すという事の持つ本当の意味。
 ここに来て初めて、井川は悟った。悟らざるを、得なかった。
 ひとフレーズ、藪が小さく、何かを唇から落とす。
「―――」
 小さな破裂音。
 それは井川に、およそ痛みと関係するものをもたらさなかった。与えられたのは、
目の前で展開している誤魔化しようのない現実と、白く消し飛んだ思考だけ。
「―――」
 彼はもう一度、同じ言葉を呟いた、ようだった。同じ動きをする唇から投げ出された
僅かな言葉を拾おうとした井川の目の前で、大きく瞳を開いた太陽が、小さく口元を
痙攣させながら、左右の黒目と白目をおかしな方向へ動かして、怨めしそうな貌を
作る。誰にその怨みを向けているのか、何にその憾みを抱いているのか、井川には
解らない。ただそこに、万斛の恨みとひとしずくの安堵とを認めただけだった。それ
だけだった。
「……」
 太陽の大柄な身体が大きく傾ぐ。
 翳の落ちた彼の貌は、もう苦しさを刻んではいない。先ほどの怨恨の貌が嘘のよ
うに、静かな表情を纏って、井川の伸びやかな腕を掴んだまま、ゆったりした動作で
横倒しになっていった。太陽は最期の言葉を遺さなかった。遺す暇も与えられなか
った。しかし井川には、確かに彼の声が聞こえたような気がした。

576 :542(4/6):2005/10/13(木) 01:30:48 ID:TdgPW9AY0
 『ごめん』
 井川は軽く混乱していた。
 剥き出しの殺意を見せ付けておきながら、そんな事を言い遺して死ぬのはひどい
(彼は実際に声に出して言ったわけではない。しかし井川の耳には確かに聞こえた
のだから、それは即ち太陽が言った言葉と看做すべきだ。少なくとも井川の意識の
中ではそういう事なのだ)。自分の脚の上に寝そべる死体―――死体と呼んだのは
井川が冷淡なのではなく、状況の異常さによるものだ―――は、さっきまでそれが
生きていた事を疑わせるほど冷たかった。
(どうしてなんだよ……)
 井川は間違いなく混乱していた。彼のマイペースな思考を横殴りにしたものは、殺
された人間についての衝撃に加えて、殺した人間についての衝撃である。
 軟らかい土の上、膝を畳んだ奇妙なポーズで横たわる同級生の即頭部には、小
さくて不気味な穴が一つ開いていた。彼が枕した黒い土の上に、ゆっくりと暗色の水
たまりが広がっていく。てらてらと不健康そうに光る血液が地面にしっくりと融合する
のを呆然と見遣りながら、ふと井川は、その光景が融けたミルクチョコレートをたっ
ぷりまぶしつけた、胸が悪くなるほど甘いガナッシュケーキに似ていると思った。
 事切れているのは明白だったから、確かめる気にもならなかった。
 彼の頭の直ぐ横で、黒いシューズを履いた自分の爪先が血に浸され始める。足を
ぐっと引き寄せると、顔を斜にして瞬きもせず空を眺めていた太陽の身体が、ごろん
と地面に転がった。太陽は無神経な仕打ちに抗議もせず、がらんどうの瞳で鼻先に
揺れた草の葉脈を見つめる。
 井川は掴まれたままの右腕を何度か揺すったが、絶命してなお、彼は捕らえた手
を離そうとはしない。その哀しい仕草と執念にまた背骨をきりきり軋ませ、脱力した
体勢で、自分を「助けた」男に視線を投げつけた。
「……?」
 藪は座り込んだままで、右手も掲げたままだった。トカレフの銃口は真っ直ぐこち
らを向いていたし、あまり目つきの良くないその目元も、二人の方向を向いている。
だが決定的に、先ほどとは何かが違うのだ。何か、言葉で言い表す事の出来ない
あやふやな概念で説明されるものが、そこに沈んでいる。

577 :542(5/6):2005/10/13(木) 01:32:38 ID:TdgPW9AY0
 頬に小さく刺激を受け、反射的に空を見上げた。樹々の間から見えるそれは紫に
濁った不吉な鉛色だったが、何故か不快には思わない。ぽつ、ぽつ、と自分たちに
降り注ぎつつあるものを理解して、井川はああ、と思った。何もかも流して欲しい。こ
んなささやかな滴りではなく、どしゃ降りの豪雨となって、血も死体も憎悪も悲嘆も、
何もかも流してしまって欲しい。全てなかった事にして押し流して欲しい。―――柄
にもなく、そんな事を思う。
 目を瞑って顔をパッチワークの空に向けていると、次第に強くなる雨が火照った額
や頬を冷やしていった。
 鎮静された頭をゆっくりと元の位置に戻す。顎を引き、藪の顔を見る。見計らった
かのようなタイミングで、また彼が呟いた。
「―――」
 今度は、井川にもその輪郭が理解出来た。同じ単語。何を言ったのかを朧げなが
ら理解し、どうして今そんな単語を、と少し訝しく思う。
(……あれ?)
―――そして唐突に、ある事実に思い至る。
(あの時、確か)
井川の頭に、ある光景がフラッシュバックする。感じた違和感。奇妙なリンク。
(そうだ、確かあの時)
 気付いていたのは自分だけだったのだろうか。そんなはずはない。確かめたわけ
ではないが、あの体育館で目醒めた時に違和感を覚えた人間は、自分以外にも恐
らくいたはずだ。
(あの時あの人は―――)
 肚の奥底で、重く冷えた塊が疼きだす。その事実の意味するところに思考の糸を
伸ばそうとして、背筋にひんやりした感触が這うのを感じた。考えてはいけないと、
理性が警鐘を鳴らす。だが井川は考えずにはいられない。本当の事を追求せずに
入られない。井川は賢い男であり、同時に不器用で愚かな人間でもあったのだ。
「どういう事だよ……」
 ひとりごちる。誰かの返事を期待していたわけではなく、井川の中では既に、ぼん
やりとした像が徐々に形を成しつつあった。耳の奥で鳴り出したディスコードに微か
な苛立ちを覚えながら、正気に戻ったのか戻っていないのか未だに不明な先輩の
名を呼ぶ。

578 :542(6/6):2005/10/13(木) 01:33:51 ID:TdgPW9AY0
「藪さん」
「……」
 まぶたを腫らし、上半身を赤く染めた彼は何も見ていない目で井川を見る。井川に
はそれが憎むべきもののように思えた。労わるという選択肢は、この時の井川の心
中には棲んでいなかった。
「何なんだよ。……畜生、一体何なんだっぺ」
 腹立ち紛れに腕をぶんと振る。その拍子に、井川の腕を掴んでいた太陽の手が
ずるりと滑り落ちた。完全に沈黙したかつての友。井川は太陽の横顔を見ていられ
なくなり、再び藪を見た。銃口から立ち昇っていたはずの煙は雨と共に地面へ還り、
彼の顎の先や手首、肘の先からは、した、した、と水滴が不規則に落下する。
 何も変わらない。何ひとつ、いい方向には変わっていない。彼は拒絶するばかりで、
こっちの言う事など聞いちゃいないのだ―――
 しかし罵りかけた刹那、そのビー玉のような虚ろな目が、激しく色を変えた。
「―――」
「!」
 今度は確信だった。彼が呟き続けるひとつの単語は、井川の中にひとつの確信を
生んだ。それを補完すべく、また彼の名前を呼ぶ。二度三度と、殆ど怒鳴り声に近
い音量で呼びかける。彼の目が僅かに動き、それを直視して井川はまた悟る。彼の
言葉の意味を理解する。数メートル越しの対話が煩わしくなって、井川は立ち上が
り、数歩彼のほうに進んだ。つられるように藪が顔を上げた。
 真正面から彼の顔を覗き込んだ。―――そうして、見た。
「えっ……?」
 あっと思う間もなく、彼の細いまなじりから、大粒の涙が落ちる。
「―――」
 雨足が強くなりつつあった。底冷えする夕暮れのうす暗がり。仄見える彼のまぶた
は、ひどく腫れている。その角膜は、たっぷりと塩水を含んでいる。
 雨は暫く止む気配もなさそうだった。

【残り40人】

579 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 02:52:47 ID:N8yufObk0
お、俺が一番乗りか?
職人さんGJです!
御大に動きが〜!イガーは何に気づいたんだろう…

580 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 06:18:10 ID:IlipNKCj0
作家さん乙!!!

目の前で太陽が死んでしまうなんてイガー!・゚・(つД`)・゚・


581 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 15:04:21 ID:tOT38j970
何ヶ月かぶりにこのスレ見つけて読みましたよ〜。
すごいすごい、一気に読んでぼーぜん自失状態。
ゴレンジャーが状況を打開してくれることを切に願う。
鉢を支えてるのはフジモンなのかもしれないな。すごいらしくていいコンビに泣けた。
秀太・・・中豊が気になって仕方ない。読むのが怖い・・・。

582 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 19:08:27 ID:OXPMQVPRO
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
職人さん毎度乙です。
御大何て言ってんのかわっかんねぇ。気になってネムレナサスorz

583 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/13(木) 22:20:10 ID:Aro6c1BN0
ほしゅしときます。

584 :代打名無し@実況は実況板で :2005/10/14(金) 01:42:52 ID:qoXj90p90
ほすほす

585 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 07:50:25 ID:kxWdVfhe0
hosyu

586 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 08:35:19 ID:kxWdVfhe0
もいっちょ

587 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 09:59:51 ID:3AT8oupg0
542氏、お待ちしておりました。
自分完全にあなたのファンですw

続きも楽しみにしていますので、お体には気をつけてくださいな。

588 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 17:59:30 ID:gTzx2l5k0
保守

589 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 20:02:27 ID:kxWdVfhe0
御大、何言ってるんだろう?

しかし、ここのイガーはほんとほれぼれするほどカコイイな。

590 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 21:56:28 ID:RKk5uKAL0
ほしゅ

591 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 22:24:29 ID:BtjRtlku0
藪を拾って看病して叱咤して、片岡に襲われて命からがら逃げて
壊れた藪に途方に暮れつつも窮地の江草を逃がして、親友だったはずの太陽に襲われて
助かるかわりに親友は目の前で自分が救った男に殺されて・・・

なんか、希望も絶望も持ってない井川が一番貧乏くじ引いてる気がする。

592 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/14(金) 22:35:00 ID:y/g6lDHf0
井川世代の面々は、萱島と庄田が殺されて
太陽もこんな形で死んでしまって
藤原はおかしくなってるし喜田はマーダーだし
まともなのは井川と中谷だけか…

593 :924(1/4):2005/10/14(金) 23:54:51 ID:qDAU4YOF0
>>578より
82.誰のせいでもない

民家の一室で桟原将司(背番号40)は今まで一度も手をつけなかった
牧野塁(背番号35)のカバンを開いていた。パンは三つとも残っており、
水もほとんど減っていない。今朝の定時放送から自分が目覚めるまで
約2時間。牧野はその間に死を決意していた。わざわざ残しておいて
くれたのだろうかと思うと、また胸が痛む。

(牧野さん以外にもっと誰か一緒やったら……)
今更ながら他に仲間を作っておかなかったことが悔やまれる。今、一人が
心細いというだけではない。そうすれば、自分だけでは止められなかった
牧野を死なせることもなかったのではないか。
体育館で誰にも声をかけられなかったのは後悔のきわみだが、その後も
一度ならずチャンスはあったのだ。

たとえば出発直後、自分のすぐ前に出発した矢野輝弘(背番号39)が
たたずんでいるのを見つけた。投手陣、特に自分も含めた若い投手にとって、
彼ほど信頼できる人物はいない。ホッとしたが、矢野はこちらに気づく様子も
なく何か考え込んでいるようだった。その顔は、今までに一度も――どんな
苦しい試合の時にさえも――見たことがない厳しいものだった。
何となく話しかけるのが憚られ、結局そのまま素通りしてしまった。

二度目は、牧野を攻撃していた三東を追い払ってすぐのことだった。体育館の
方から複数の人間がこちらへ向かってきたのだ。急いで牧野とともにそばの
茂みの陰に隠れてやり過ごしたが、今にして思えば出て行って助けを求めた
方がよかったのではないか。あの時はとっさに隠れてしまったが、複数で
行動する者がゲームに乗る気になっているとは考えにくいからだ。

594 :924(2/4):2005/10/14(金) 23:55:23 ID:qDAU4YOF0
もう少し勇気があったなら、他に道連れができていたかもしれない。
特に矢野は、自分がそうであるように牧野もまた彼を慕っていた。
矢野がいてくれれば、何もできなかった自分とは違い、牧野を救えた
可能性が高い。
(俺は……なんのために牧野さんを助けたんやろ)
突き詰めれば、牧野を死に追いやった原因は三東洋(背番号37)が負わせた
傷だと言える。三東さえあのような暴挙にでなければ、と思わずには
いられない。怒りとは少し違う。なぜ?という疑問。だから三東を見つけ出し、
わけを訊こうと決めた。だが、固かったはずの決意は大きく揺らいでいた。

本当は自分こそが牧野を死なせた。今はそう思えてならなかった。
牧野を禁止エリアとなる洞窟に連れて行ったのも自分なら、彼が死を選んだ
のも自分の足手まといとなることを嫌ったためだ。寝過ごして禁止エリアの件を
聞き逃したのも大きな失態だった。こんな自分が三東に何か問える立場に
いるのだろうか。
(ていうか、俺なんかこのまま生きてたって仕方ないんと違うか?)
考えれば考えるほど、桟原は思いつめて行った。

(そやから、もう……これは返します)
自分には牧野がくれた遺品を受け取る資格はない。もはや、必要とすることも
ないだろう。ペットボトルとパンを戻そうと、桟原は牧野のカバンを開いた。
ふと、一番底にあった名簿に目が止まった。
「え――?」
中表に折りたたまれた紙片の裏面、つまり外側の面を埋め尽くすように
何かが書きこまれていた。慌てて名簿を取り出し、開いてみる。
そこには、まるで幼児が書いたごとく稚拙で読みづらい文字で次のように
記されていた。

595 :924(3/4):2005/10/14(金) 23:57:05 ID:qDAU4YOF0
 サジへ
 おまえが目をさましても、きちんと話すことはできないから、今の内に
 かいておく。ここは安全だとおもったが、じきに禁止エリアになる。うごけば、
 だれかに出くわすだろう。今朝までにもう4人が死んだらしい。
 信じたくないが、やる気になってるやつがいるということだ。おれはこのとおり
 右手がつかえない。何かおこったとき、必ずおまえにめいわくをかける。
 だから、これでお別れだ。
 
 でも、かんちがいしないでくれ。べつに、おまえのためにそうするんじゃない。
 このケガではどうせ生きのびられないし、もし生きてかえれたとしても、もう
 野球はできないだろう。まえに話したように、おれはプロになりたいと
 思ったことはなく、ただ何となくこの道に入った。それでも、いつのまにか
 自分にとって野球はかけがえのないものになっていた。いつかプロを
 やめても野球はつづけたかった。それがむりな今、このままもどっても
 仕方ない。そういうわけだから、おまえが気にすることは何もない。
 
 おれは三東をうらむつもりもない。きのうもいったが、むしろ、もうしわけ
 ないと思っている。あいつはたぶん、まがさしただけだ。おれには他人ごとと
 は思えない。自分も一歩まちがえば、ああならなかったともかぎらない
 からだ。だけど、わけのわからない内にあいつにおそわれ、おまえに
 たすけられたおかげで、おれはここまで正気でいられた。
 そう思えば、おまえだけでなく三東にも感謝していいくらいだ。

 サジ、おまえにはいくら礼をいってもいいたりない。たすけてくれて、本当に
 ありがとう。恩をあだでかえすようですまないが、おれの分まで生きてくれ。
 何もかも、おれが自分でえらんだことだ。三東のせいでもなければ、
 おまえのせいでもない。だれかのせいだとしたら、こんなばかげたゲームを
 しくんだやつらだ。
 もし、どこかで三東に会うことがあったら、あいつをたすけてやってくれ。
 また野球ができるように、ケガはするなよ。

596 :924(4/4):2005/10/14(金) 23:58:18 ID:qDAU4YOF0
一つ、また一つと両の眼からこぼれるしずくが紙の上に丸い染みを作る。
ミミズがのたくったような字と平仮名が多いのは、利き手ではない左手で
書かれたためだ。自分が何も知らず眠りこけていた間、牧野は懸命に
この文章をしたためていたのだろう。

(やっぱり……やっぱり、三東さんに会わんとあかん)
目と鼻をぬぐいながら、桟原は思い直していた。やはり、なんとしても三東を
捜し出すさねばならない。彼のしたことについて問いただすためではなく、
牧野の気持ちを伝えるためにだ。今度という今度は、絶対に迷わない。
自らに言い聞かせつつ「遺書」をたたんでポケットにしまった時、
玄関の方で戸を開ける音がした。

感慨にふける暇もなく、現実に引き戻される。桟原は素早く膝を立て、
そばに置いてあった木刀に手をかけた。
「すみません、誰かいませんか?」
音に続いて、今度は声が聞こえた。桟原は息を潜め、耳を澄ました。
(あの声は――?)
「誰も、いないんですか!?」
明らかに切羽詰まったような、ただならぬ声だった。そのことが妙に
引っかかり、つい立ち上がった。

廊下に出ると、先ほどから降り始めた雨の音を背に、男がひとり立っていた。
桟原はゆっくりと近付いた。
「――あ、お前か。……どうしたんや?」
相手を認め、笑顔を作りながらなるべく穏やかに声をかけたが、次の瞬間、
全身から一度に血の気が引いた。彼の胸の前で構えられた小さな銃の先が、
こちらを向いていることに気づいたからだ。

【残り40人】

597 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 00:35:21 ID:khx+IbKN0
1番かな?
誰だ〜!桟原に銃を向けているのは〜!

598 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 00:40:42 ID:XfCCj3KU0
職人さん乙です
牧野ぉ・・・泣かせるんじゃないよ。・゚・(つД`)・゚・。

599 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 00:49:59 ID:h/pi+GO00
銃向けてるやつなんとなくわかるけどええ〜どういうことや〜

600 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 01:51:04 ID:WOuMrFrNO
職人さん毎度乙です。
牧野…リアルに泣けますた。・゚・(ノД`)・゚・。
サジキピンチか?御大の発した言葉と共にこっちも気になる〜

601 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 02:21:27 ID:sd2FbfrO0
新作キテタ。・゚・(ノД`)。・゚・。!!
な、泣ける…職人さん乙です。サジガンガレ!

602 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 02:43:22 ID:jJDINO/H0
牧野さん・・・塁なんていう名前だから
野球の道に進んだのかなあ?
サジッキー、死んじゃいやだ!

603 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 02:48:36 ID:Y600nIQu0
彼はどうして銃を向けるんだ??
どういう展開になるにしろ、続きが気になる・・・

604 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 03:45:27 ID:jJDINO/H0
え、みんな、誰だか見当ついてるの?
俺、ぜんぜん分かんないよ!

605 :代打名無し@実況は実況板で :2005/10/15(土) 04:05:08 ID:Wc5fhjtZ0
はわわわわ…
自分の行動を後悔する人、壊れるだす人、色々出てきてる…
職人さん方、毎度GJです

606 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 04:10:26 ID:c0Y64zf80
http://www.geocities.jp/htbr_2004/images/team_black.jpg

話が進むにつれて混乱してしまって困ったので・・・
自分テラアタマワルス(´・ω・`)

607 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 16:18:34 ID:tLmkFUbj0
保守

608 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 16:39:13 ID:lp5nANXo0


609 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 21:28:10 ID:1ESEJg2L0
>>606GJ!!
いろんな話が同時進行だからよくわかんなくなるが
こういう図になってると頭整理できて嬉しいです。

610 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 22:53:42 ID:2HN8KMjd0
>>606
乙です!わかりやすくて助かります。

611 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/15(土) 23:55:20 ID:4NlHPaGJ0
保守

612 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 01:01:54 ID:WUxem+ry0
>606 もう削除した? 見れなかったよ。。。

613 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 01:06:25 ID:uAK5Bu5E0
>>612
自分は普通に見られるよ、今でも。

614 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 04:53:08 ID:WUxem+ry0
なぜだか分からないけど
「このページは準備中です」と出るよ(泣)

615 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 06:28:43 ID:WUxem+ry0
落ちたら嫌だから保守しとく

616 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 09:10:23 ID:CG6gIcOfO
昨日の圧縮はすごかったみたいだな…億バトは最終書き込みから5時間で落ちたみたいorz
さすがコバマサ劇場はこんなところにまで影響w
今日もこまめに★ゅしなくちゃな。

御大が何言ったのかがまったく見当がつかないんだけど、勝手に想像すると夢が広がりんぐw

617 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 09:45:07 ID:WUxem+ry0
さすが劇場主>コバマサ


618 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 12:34:42 ID:45a5nY8k0
保守

619 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 13:56:27 ID:s1eEmZm40
阪神の殺し合いスタート?

620 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 17:42:27 ID:Xle2YcG/0
>>606の画像がみれん人、URLコピーしてアドレスバーにペースト汁
自分はそれで見れた

621 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 20:08:47 ID:CG6gIcOfO
今日もスレ乱立しそうなので★ゅ

622 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/16(日) 21:51:44 ID:Kl+hk3Ea0
>>620
ありがとう、それしたら見ることが出来た。


623 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 02:02:18 ID:V/tbmqEg0
おお、ほんとだ! 620タン、情報ありがとう!
それと、あらためて606タン乙!! めちゃ分かりやすい。

624 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 05:47:57 ID:V/tbmqEg0
hosyu

625 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 15:05:49 ID:V/tbmqEg0
hosyu


626 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 15:20:21 ID:nN4t02GZO
今日もこまめに★ゅしなくちゃな
コーチ陣の動きもそろそろ期待してます。
でも秀太とかいろんな話が気になる〜(ノ∀`)

627 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 18:03:23 ID:QU5k0U+c0
保守

628 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 21:39:47 ID:wQPhcppS0
捕手

629 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 21:47:46 ID:NzGqE6Bl0
             ,,-y  、‐f              r-、    _,--,、    ,、_  __,....,_  _,...、
     _  ,r~―-、 .| .y i、 ''li             ゙l, `"゙゙゙゙゙ ̄^   \   ,} {`i;:r,;'ニ (;;;;、` , r'
    / /  \  li ヽ, ゙'y \_,/ .            \ _,,―ー'''/  .,r'" .  {i'  i:.'ー<.・)}:ム ヾi,
.,,,、.,,i´ .,/   ^i、  'i、``~     r-,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,―ー.  `゛   .丿  .,/    ノ // -r /:::ミ ('ーヽ
{ ""  ,/`     ヽ `'i、      .゙l、         `i、     丿  .,/`    i゙ i:/ /二./ /',=、__ノi/
.ヽ、 丿       li  .\      `--‐'''''''''''''''"'''''''''''゙     ,/′ 、ヽ,,、  ヽ ヽ! {:::} //::::''´`'7!/
  ゙'ー'"        ゙'i、  ‘;;--、                 / .,/\ `'-,、 ヽ、__ヽ!l::i:::::ii;;;;;;;|,ノ
              ヽ    ゙`'i、              ,/ .,,/   .ヽ  \   `ヽ、`ー""ヽ
               ゙ヽ_.,  _ノ             _,/゙,,/′     ゙l   ,"     `'ー-'''"
                  `~               ゙‐''"`        ゙'ー'"
                    /'''ー、
                      /   〈
                     / . /\\
                 ./ /  _,,\`-、
               ,/ ∠-‐'"_,,,.. -\ .\、
             ./ /   ̄´ __,,,,.. .ミi、 .`'ー..、
            .∠-'''ン--''''゙゙"'/! .┌-┐  /-........ノ
               \ ┌┐ / ! ,!  l  /
                !└┘/  | ゙‐'″ /
                `ー""  │.|\_./
                        .l .!
                     .{, |
                     . ヽi


630 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 21:54:59 ID:TawKVuM+0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ミ
  /   ,――――-ミ
 /  /  /   \ |
 |  /   ,(・) (・) |
  (6       つ  |
  |      ___  |   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  |      /__/ /  < もはや戦争だよコレ!
/|         /\   \__________

631 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 22:16:21 ID:V/tbmqEg0
↑ これ誰? 長谷川ワールドの人? Fな人?

632 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/17(月) 23:01:00 ID:N5ELWT5z0
http://megaview.jp/view.php?v=168400
プゲラw

633 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 00:49:56 ID:xcO1PXty0
ホシュ

634 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 05:11:26 ID:sj4eS3U20
日シリ期待あげ

635 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 06:31:49 ID:sj4eS3U20
ごめん、「あげ」てなかった。
保守っとく

636 :トカゲ@:2005/10/18(火) 19:02:52 ID:6JItd4bc0
金本好きな人集まれ



637 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 22:06:29 ID:sox22oI20
保守

638 :174(1/5):2005/10/18(火) 22:10:05 ID:q4z5vlrW0
>>596
83.嘲笑者

 全力で走ったのは5分程だろうか。2人分の荷物と、1人分の半分の体重を抱え
ての全力疾走には限界があった。少し拓けた場所を発見し、関本はようやく立ち止まった。
 三東が追いかけてくるかもしれない。だが、あの程度の武器しか持っていない
三東ならば初めから警戒さえしていれば逃げられるだろう。休息が必要だ。関本は
大きく息を吐いた。。
 果たして三東は狂ってしまったのだろうか。そうは思えなかった。あの男の目は、
狂人のそれではなかった。それなら、さすがに気付いたはずだ。
 あれは怯えているような――緊張しているような――警戒しているような――そんな眼だ。
(なんで……)
 理解の及ばない三東の行動に憤りを覚える。何故攻撃した? 金澤を殺そうとした?
(金澤に敵意なんて欠片もなかったじゃないか――!)
 あるいはそれが理由だとしたら。誰かを殺すことが目的だったら? 敵意がないから
殺せると思った?
 考えても詮無いことだ。三東の気持ちは、三東に聞かなければ分からない。
 一瞬降ったと思った雨は止んだのだろうか――ぐずついた雲に覆われた空を見上げ、
関本は掌を広げた。
 数秒待つと、ぽつ――と皮膚に吸い付く水滴が現れた。やはり降っているらしい。
まだ小雨なのが救いだが、この空模様ではこれから強くなっていくだけの予感がした。
 今後の天気を憂えていると、俯いたまま関本に引っ張られていた金澤が、突然無言
でその手を振り払った。
「金……」
 声を掛けようとした関本を拒絶するように、金澤は顔を背け、ふらふらと木々の
生い茂る方へと足を向けた。
 追いかけようかとも思ったが、少しそっとしておくことにした。
 逃げるわけでもなく、金澤は少し森の中に進み、ぽつりとあった岩に腰を下ろした。
そのまま動かない金澤の背中に目を配りながら、担いでいた荷物を下ろし、関本は
金澤のバズーカ砲をデイバッグの中に片付けた。
 少しでも雨を凌ごうと、金澤の姿が見える位置を選び木の根に身を寄せる。

639 :174(2/5):2005/10/18(火) 22:10:46 ID:q4z5vlrW0
 あたりは薄暗い。分厚い雨雲に覆われているのもあるが、太陽が落ちかけている
のだろう。間もなく、ここは暗闇になる。
(夜の森は危ないか――? それとも、夜の民家は危ないか――?)
 雨が降るなら、少なくとも屋根のある場所に落ち着きたかった。今から洞窟か
小屋を探して間に合うか? 地図を頼りに民家に降りた方が早いかもしれない。
 バッグから地図を取りだし、現在の位置を確認する。といっても闇雲に森の中を
走ってばかりだから、正確な位置は把握しきれないが。
 2人の現在地は、だいたいH−6かG−6辺りと思えた。18時から禁止区域に
なるG−7に近い。多分大丈夫だと思うが、出来るだけ離れていることには越した
ことはない。
 地図の西側に、めぼしい避難場所がないか探す。民家は少し遠いように思えた。
 体育館のすぐ北側にある山に、展望台の印があった。
(展望台って屋根あったっけ?)
 思い出せない。なければ、山の中腹まで登るだけ骨折り損ということになる。
 さらにその山を通り過ぎれば、川があり池に繋がっていた。池? 湖だろうか。
正確な縮尺は分からないが、比較的大きそうだ。
(湖の畔のロッジ――ってそんな都合良くいかないか)
 えらく素敵な風景を想像したが、このバカンスとは無縁そうな田舎じみた孤島
には縁遠い物のように思った。
 少し遠いが、南か東に行けば民家がある。どっちでもいい。後で金澤に選んで
もらおう。どうせ、荷物が重くて移動にブーブー言うのはあいつなのだから。
 そこまで考え、関本は地図を畳んだ。
 荷物をまとめ、水を飲み、ついにやることがなくなる。
 まだ金澤は座っていた。
 関本は大仰にため息をつき、重い2人分のデイバッグを引きずりながら、ゆっくり
と金澤に近づいた。
「大丈夫か?」
 背中に向かって声を掛ける。
 わざと自分に背中を向けている金澤に、正面から回り込むのは失礼な気がした
からだ。
 金澤は応えない。
 無理もない。信じて近づいた相手に、突然刃物を持って襲いかかられたのだから。

640 :174(3/5):2005/10/18(火) 22:11:22 ID:q4z5vlrW0
(信じて――)
 まさか相手が殺意を持って自分に向かってくるなど、想像もせずに。
 関本は知らず拳を握った。
 秀太に銃口を向けられたことを思い出す。
 確実に感じた死の恐怖、そして、裏切りへの強い衝撃。
 秀太に憎しみはない。だが『何故』という悲しさがあった。
『お前には分かんないだろうな』
 そう言って笑った彼は、その結論に達するまでに何を捨てたのだろう。
(分かりたくないッスよ……秀太さん)
 それは、とても大きいモノを捨てなければ辿り着けない場所な気がした。
 とても大切なモノ。とても大きいモノ。
(俺は何も捨てたくない)
 何も。仲間も。家族も。命も。――人としての心も。
「三東は悪くない」
 ぽつりと、しかしはっきりとした口調で、唐突に金澤がそう言った。
「え?」
 聞き取れなかったわけではない。だが突然の言葉に、その意味が理解できなかった。
 三東は悪くないと、この男は言った。鬼のように顔を歪ませ、確かな殺意と刃物
を持って襲ってきた相手を。
「あいつはただ、怖かったから俺に向かってきただけだ」
 それが、出会い頭の強襲からこの数分の間に、金澤が出した結論であるらしい。
 その声は平坦だったが、その中に込められた思いの強さは、関本には痛いほど伝
わってきた。
 まっすぐと前を向いた金澤の背中を見つめる。
 身長188センチの熱血漢の背中が、えらく頼りなく見えた。
「俺が無神経に近づいたから……」
 必死に三東を擁護する金澤に、関本は見てないと分かっていても、何度も頷いた。
 ぽつ――ぽつぽつ――
 雨が葉を打つリズムが、少し早くなった気がした。

641 :174(4/5):2005/10/18(火) 22:12:16 ID:q4z5vlrW0
 頭上を覆う枝葉が、2人を冷雨から守る。葉に溜まった雨粒が、時折その重量に
耐えきれずに滑り落ちた。
(冷てぇ……)
 頭上に落ちたその大粒の滴が、頭皮から染み透る。
「突然暴れ出したのも、俺が腕を捻ったから痛かったからだ。あれで余計にパニック
起こして……俺のせいだ――」
 分かったから、そんなに自分を責めないで欲しかった。
「三東は悪くないよ」
 ぽんっ、と、目の前の後頭部に手を置く。
「お前も悪くない」
「…………」
 黙り込んでしまった頭をぽんぽん、と何度も叩いた。
 意識したつもりはないが、彼が慕う正捕手が、よく彼らにこうやっていたことを
思い出す。
(よく出来ました。ってか)
 人を信じることが出来て。
 それが、このゲームにおいて正しいことかどうかは、分からないが。
「なぁ……関本」
 呟いた声が少し震えていたことや、鼻をすすった音が聞こえたことは、本人には内緒だ。 
「難しいな……」
「ああ……」
 なんて難しいんだろう。
 人を信じることは。
 片方が信じるだけでは成り立たなくて。
 成り立たないとどんどん崩壊していって。
 いつか全部なくなってしまうかもしれないなんて。
「あいつ大丈夫かな……あんなんで」
「…………」
 関本は答えられなかった。理由もなく、突然金澤を襲った三東を思い出す。
 あの程度の武器で、あんな風に闇雲に人を襲っていたら、命を落とすのは時間の
問題だろう。
 あんなことがあった後でも、三東のことを心配する金澤が切なかった。

642 :174(5/5):2005/10/18(火) 22:13:23 ID:q4z5vlrW0
 秀太は今どうしているのだろう。矢野は。金本は。早く会いたかった。
 早く、早くしなければ。
(どんどん……壊れていってる)
 人の死の数だけ、いろんなものが壊れていってる。
 それは信頼関係であったり、善意であったり、人の心であったり。
 この崩壊現象を、堰き止めることは出来るのだろうか。
 自分に出来ることは、せめて自分だけは己を見失わないでいることだけだ。
(俺は捨てない――)
 何も捨てない。生きる希望も、チームメイトも。目の前の金澤だって捨てるものか。
(福原さん、あなたの遺志も)
 絶対に、捨てない。
「あっはっはっ」
 場違いな笑い声が響き、関本の心臓が飛び跳ねた。
 ぽつ――と、関本のつむじに、葉の筋に水滴の溜まった一葉が雫を落とした。


【残り41人】

643 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 22:42:19 ID:7SbkD0lZ0
人数見た限りだと誰か生き返ってる?

644 :174:2005/10/18(火) 22:48:19 ID:q4z5vlrW0
すいません人数減らし忘れました・・・orz


つ【残り40人】

残り40人ここに置いときますね

645 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 22:54:02 ID:agM0emxe0
新作だー!! 乙です!

金澤も関本もいいやつだなあ……。
って、笑ってるのは誰だ!?

646 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/18(火) 23:19:30 ID:7z0CbtUk0
新作乙です。
この話の中の三東はある意味幸せ者だと思いました。

647 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/19(水) 07:29:54 ID:sZMc9JLV0
なんかさあ、みんなカコイイな。

648 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/19(水) 14:52:32 ID:z2Fn6OJFO
職人さん毎度乙です。
金澤はいい人すぎて今後が心配だ。
いきなり笑い出したのはもしかしてチン様?精神崩壊しちまったのかも…orz

649 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/19(水) 20:24:31 ID:tKxYRMgk0
保守

650 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/19(水) 21:44:02 ID:QkpCfp2p0
939さんの進行状況が更新されてたよ。

651 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 04:28:12 ID:I11b8nKq0
作家さん、保管庫管理人さん、939さん他皆さん乙です!
俺は読むことしかできないけど、このスレ、すごく楽しみにしてます!

652 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 08:12:53 ID:I11b8nKq0
保守

653 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 18:51:19 ID:SXVsMVVt0
捕手

654 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 20:42:53 ID:3IiQtbqu0 ?##


655 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 20:44:36 ID:Q62CzlsS0
今年のセリーグ新人活躍度
1、中田(D)
2、石井裕(D)
3、鈴木(D)
4、橋本(T)
5、野間口(G)
6、能見(T)
7、梅津(C)
8、松岡(YS)
9、亀井(G)
10、森(C)
11、那須野(YB)
抜けてるのいる?


656 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 20:54:07 ID:iqB9A6iL0
ほしゅしときます

657 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/20(木) 21:05:13 ID:oyeIHvY10
ちらっときいた所によると、
よそうでは阪神が4−1で勝つと言うのがおおいよ
うですね!!!すっごく嬉しいです☆初戦の
せんぱつは井川投手かな?絶対ぜーーーったいが
んばって欲しいです!
しったかぶりするようで恥ずかしいけど、やっぱ
り最初に買っておくと、むちゃくちゃもりあがるし、さ
いごのさいごまで楽しませて欲しい><これからも
ずっとずーっと応援するよ^^



658 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/21(金) 00:26:40 ID:qkdCQqoU0
↑ こんなに下手なのも珍しいな。ま、がんがって精進しろや。

659 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/21(金) 11:51:30 ID:TUTIp+7/0 ?##


660 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/21(金) 18:33:52 ID:AvmVXSUJ0
保守

661 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/21(金) 23:06:43 ID:m0kk/Umc0
ほしゅ

662 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 06:09:14 ID:YXYRc70X0
三東、あの後一人でいて大丈夫なのかなあ。
雨も降ってるし、心配だ。。。

663 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 14:00:39 ID:kfp33H6J0
御大の言った言葉は?
サジキの所に来たやつは?
関本たちの側で笑ってるのは?(金澤かもしれないが)

あー、続きが気になる

664 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 14:50:19 ID:t0oKxqdk0 ?##


665 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 18:02:56 ID:aynjgHpg0
保守

666 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 20:59:08 ID:w1xgsebhO
日シリで荒れそうなんで★ゅ

667 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 23:35:32 ID:JxekXwWM0
木戸さんの足元にいたの誰だよキニナルよぽしゅ

668 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/22(土) 23:59:58 ID:YXYRc70X0
どの作品も連続ドラマみたいだな。
続きが激しく気になるお〜〜〜

669 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 01:14:01 ID:Nbgi1irG0
三東、みんなのキモチに気付くことができればいいな。
牧野、サジ、金澤、関本・・・
みんな敵じゃないんだよ。。


670 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 03:22:54 ID:gekLPj6P0
にわかに三東を心配するスレになってるなw

671 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 04:53:37 ID:LftMdBfW0
12 345 67
阪 神 ●● ○○○ ●○ 
ロッチ ○○ ●●● ○●     台本に書いてあるもん

672 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 12:59:40 ID:oZfHJsxL0
今岡と桧山のつづきが気になるー

673 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 17:41:32 ID:iGE8WytS0
保守

674 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 20:38:51 ID:U/OMmv2uO
★ゅ
日シリのおかげで岡田への怒りがリアルに募ってるから
ここ読むのにも気合いが入るw
ゴレンジャーが何とかゲーム潰してほしい。

675 :924(1/3):2005/10/23(日) 21:30:41 ID:pVbfzltQ0
>>642より
84.失踪

「しばらく、やみそうにないかな……」
雨を避けるために民家の軒下に駆け込んだ小宮山慎二(背番号60)は
恨めしそうに空を見上げ、つぶやいた。仲間を探しに行くと勇んで出てきた
ものの、誰にも出会えてはいなかった。帰ると決めた時刻までにはまだ
間がある。しかし、雨が降り始めたら戻るというのが久保田智之(背番号30)
との約束だった。

『必ず約束は守れよ。絶対、戻って来いよ』
ほとんど脅迫と言っていいほどの勢いでしつこいくらいに何度も念を
押してきた久保田の真剣かつ不安げな表情が思い出された。今頃は自分の
返りを心配しながら待ってくれているだろうか。このまま収穫なしに帰るのは
本意ではないが、約束をたがえるわけにはいかない。
雨脚は次第に強まりつつあった。

「うーん……」
小宮山は身体の向きを変え、引き戸のガラスの割れ目からそーっと
民家の中をのぞきこんだ。内部は暗く、よく見えない。
(これで――最後にしておこう)
この家で誰にも出会えなければ、あきらめて久保田のもとに返ろう。
そう決めて小宮山は引き戸に手をかけ、開けてみた。

この危険な状況でシューズを玄関先に脱いでおく者はまずいないが、
いちおうそこから確認してみる。やはりと言うべきか、いくつかの古びた靴や
サンダルが転がっているだけだ。
「すみません。誰か、いませんか? ――小宮山です」
静かに戸を閉め、奥に向かって呼びかけた。

676 :924(2/3):2005/10/23(日) 21:31:35 ID:pVbfzltQ0
「今、仲間になってくれる人を探してます。もちろん、殺し合いに乗る気なんて
ありません。ここにはいないけど、久保田さんと桜井さんも一緒です」
そう続けて小宮山はしばらく待ってみたが、人が出てくる様子はなかった。
今までにも何軒かの家を訪ねては声をかけてみたが、応じる人間は
現れなかった。無人だったのか、警戒して出てこなかったのかは分からない。
だが、家の中にまで入って確かめる勇気はなかった。いくらゲームに乗る気が
ないと訴えてみても、相手が信じてくれるとは限らない。うかつに踏み込めば、
「敵」とみなされ大変なことになる可能性もある。だから、次の言葉を
最後に立ち去るようにしていた。

「信じてもらえないかもしれませんが、本当にやる気なんて無いんです。
俺はもう行きますけど、もし仲間になってもらえるなら、声をかけて下さい」
言い終えた小宮山は、誰が見ているわけでもないが軽く礼をした。
隅にあった傘立てから一番地味な青い無地の傘を失敬し、小宮山は外に
出た。戸を閉め、傘をさして歩き出したが、ゆっくり数歩進んだところで
立ち止まり、振り返ってみる。先ほどの家から誰か出て来てくれないか、
あるいは2階からでも様子をうかがっていないか確かめるためだが、
それも期待はずれに終わった。

「ま、仕方ないな。――うん」
気持ちを切り替えるために大きくうなずくと、小宮山は雨の中を駆け出した。
こうなれば、一刻も早く久保田の待つ家へ戻るのみだ。桜井はまだ気を
失ったままなのだろうか。そのことも気になり、脚を速めた。

途中で道を間違えかけたが、やがて桜井と久保田に遭遇した神社が
見えてきた。そこを通り過ぎれば、もう少しだ。やがて見覚えのある家が姿を
現し、小宮山は安堵したが、正面に来たところで妙なことに気づいた。
どういうわけか、玄関の引き戸が開け放たれているのだ。
いやな予感がした。

677 :924(3/3):2005/10/23(日) 21:32:30 ID:pVbfzltQ0
「久保田さん、小宮山です。今、帰りました」
焦燥を抑え、玄関から大きな声で呼びかけたが、返事はなかった。
「久保田さん?」
小宮山は居間に駆け込んだ。ふすまは開いている。ちゃぶ台の上に自分が
残して行ったペットボトルがそのまま立っている。奥の小さな床の間にカバンが
二つ、ゴミ箱が一つ、そして救急箱が一つ。久保田は――いない。

桜井が寝かされていた隣室をのぞいてみたが、こちらの部屋も無人だった。
「久保田さん! いないんですか!?」
ゴミ箱を足に引っ掛けて倒しながら小宮山は廊下に走り出た。階段を
駆け上がって二階の部屋を確認したが、やはり誰もいなかった。
「どういうことだよ……」

再び居間に戻ると、先ほど蹴倒してしまったゴミ箱の中身が散乱していた。
小宮山は片付けようとして、それがバラバラになった荷造りひもと
粘着テープの切れ端がひとかたまりになって放りこまれたものだと気づいた。
明らかに桜井の身体を縛っていたものだ。ひもをつまみ上げると、結び目は
そのままで、刃物か何かで切られた形跡があった。
(久保田さんが解いたのか?)
自分が出かけている間に何が起こったのか。桜井を自由にしてやったのが
久保田だとしたら、なぜ彼はそうする気になったのか。
そして、荷物を残したまま二人は一体どこへ行ってしまったのか。

不安と疑問で頭が混乱しかけたその時、表の方でがたがたと戸を引く音が
した。小宮山ははっと顔を上げた。
「久保田さん!?」
それが久保田であってほしいという思いから、他の誰かなら、という恐れは
消し飛んでいた。カバンのポケットに入っている拳銃を備えることもせず、
小宮山は居間から飛び出した。

【残り40人】

678 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 21:43:22 ID:bRTrS6YS0
ここはお笑いを兼ねた球団の本スレですか?
二兎を追うものは一兎をも得ず。
どちらかにしなさい。

679 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 22:07:52 ID:RFE4PobS0
>>675-677
職人さん乙です。小宮山は誰にも会えなかったのか
クボタンと桜井あの状態で何処消えたんだよ(´д`||i)
玄関に来た誰かがやる気じゃないといいけど…

680 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 23:01:21 ID:NVjRUQPA0
とりあえず捕手

681 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 23:37:17 ID:hCb4iLUL0
小宮山のとこに来た誰かも気になるけど
サジキに銃向けてるのが小宮山じゃないとすると……

682 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/23(日) 23:51:05 ID:EL5q0SwJ0
シーズン中から思ってたんだけど、なんか悲惨な負け方した日にかぎって
よく新作が投下されてる気がする。

しかしサジキと対峙してんのは小宮山だと思い込まされたなあ。
他の該当者って奴しか思い当たらないんだけど、何がどうなってそうなってんだろう。

683 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/24(月) 00:47:22 ID:IeioCaKY0
ばんび!慌てるな!!!

684 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/24(月) 09:05:26 ID:fvv+rsKyO
職人さん毎度乙です。
時間軸がよくわからんようになってきた…。
桟原のところに現れたのは小宮山じゃないと思ってはいたけど
もしかしたらこのあと訳あって流れ流れて桟原のとこに行っちゃったのかも試練。
それにしてもクボタンが心配だ(ノД`)

685 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/24(月) 17:59:33 ID:qYeYzSAg0
保守

686 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/24(月) 21:45:57 ID:WmGHPnca0
捕手

687 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 00:10:44 ID:U8mddEc40
ほしゅ

688 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 02:00:14 ID:fd7+iZe0O
ここでも試合でも久慈さんもそろそろ見たいっす的★ゅ

689 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 02:46:15 ID:bMm2y+uY0
ベテランの技で若手を手懐けていく久慈タン・・・

しぶいショートも見たいなぁ

690 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 16:34:51 ID:fd7+iZe0O
>>689ハァハァ
その後ゴレンジャーと合流してゲームを潰す、と。
矢野さんたちとも合流してほしいなぁ。

日シリでも久慈さんのいぶし銀の守備が見たいものだ。

691 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 21:12:46 ID:fd7+iZe0O
糞スレ乱立だろうから今のうち★ゅっとく

692 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 22:12:49 ID:M9Xn25Qq0
ほしゅ

693 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 22:20:57 ID:FtnopkR50
ほしゅ

694 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 22:36:23 ID:iq9fGq2B0
久慈さんの職人さん、元々寡作だったけど長い間見かけないね。
ゴレンジャーの職人さんも、もう復活は望めないのかなあ・・・
鳥谷の職人さんもちょっとご無沙汰気味だし。
色々お忙しいと思いますが、また書いて下さるならいつも待ってますんで。

あ、もちろん、コンスタントに投下して下さってる職人さん方には
本当に感謝しておりますです。

695 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/25(火) 23:44:24 ID:x0qU/W1b0
保守

696 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 01:27:44 ID:VPrwKD1TO
見守るスレにあった中継ぎ課とかのネタ系虎バトかなりワロタw
ああいう笑えるのも今年バージョンで見てみたいな。

697 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 05:18:07 ID:IEx9FUcF0
もしも、だけど
今から書きたい作家がいたら、2005年メンバーで書いてみたりして。。。

698 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 13:53:20 ID:VPrwKD1TO
>>697
それはネタ系のをってこと?
保守がてら誰かやってはくれないかな(他力本願)

>>696のネタバトで伊藤課長がかなり強かったんで(オリバト優勝とかあったし)
何かの間違いで飛び入り参加にならないかワクテカw
でもまぁゲーム潰しに行ってほしいんだけどな。

699 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 15:45:59 ID:qMzhJqHy0
保守

700 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 18:58:13 ID:VPrwKD1TO
700ゲト

701 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 20:06:47 ID:jSejOe5t0
ほしゅ

702 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 20:07:54 ID:jSejOe5t0
下がりすぎのため上げます

703 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 20:32:52 ID:TE8HbUjT0
さすが在日クオリティ!!!!!
笑いを知ってる半珍は、今日も10点献上で
最悪の日シリ記録更新!!!

704 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 22:19:59 ID:VPrwKD1TO
★ゅ
日シリ残念だったが久慈さん出てきてよかった

705 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 22:23:27 ID:qMzhJqHy0
保守

706 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 22:35:48 ID:qMzhJqHy0
保守

707 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 23:21:05 ID:SMDrIfHm0
ほす

708 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/26(水) 23:42:26 ID:68JXCEdm0
あえて静かな下の方のスレで吐露しとくかな。

30数年阪神ファンやってきて、こんなに阪神を恥と思った事はない。
日本シリーズの歴史をも汚したようなチームを
来年「優勝して欲しい」なんて応援はできん。

709 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 00:20:57 ID:SydKkxyC0
ほしゅ

710 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 00:39:19 ID:gOp+yhSX0
>>708
あなたがそう思うなら応援しなければよろしい。人それぞれだよ。
俺は来期は世代交代・育成支持派だったけどすげー優勝したくなってきたぞ。

711 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 00:49:13 ID:ZiYL+JzQ0
今回のシリーズ、バトロワになぞらえたら
出発前に全員死亡、みたいな・・・ウワァーーーン

何はともあれ職人様方、続き楽しみにしています。



712 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 01:45:25 ID:Dot1Jbti0
>>710
同じく。
テンションいっぺんは思いっきり落ちたけど、そのあとやたらやる気湧いてきたw
今年の日シリを笑い話にできてしまうような怒涛の活躍を、来年以降またやってやればいいだけの話。
俺は何があっても、いつまでも阪神を応援すんぞー

そして新作楽しみにしてます。頑張ってください職人さん方!

713 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 03:37:03 ID:u98i3oeS0
(* ・x・)人(´-ゝ-`)ノ<作品待ってます。捕手

714 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 05:55:32 ID:D2QliUqX0
m9゚(゚^Д^゚)゚。プギャーーーッハッハーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒーーーーー

715 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 13:06:42 ID:82myzHjhO
★ゅ

716 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 19:11:37 ID:82myzHjhO
もいっちょ★ゅ

今年版虎ネタバト見てみたいw
星野王子みたいなキャラは誰なんだろうw

717 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 21:31:33 ID:uoUGX+i70
おいらも保守。
文才ないんで書けないかわりに
書いてくれる皆様を応援しまつ。

718 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 21:52:24 ID:YveikGVd0
星野王子=能美

719 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/27(木) 23:58:25 ID:82myzHjhO
>>718
ノウミタンが星野王子かあ。納得w
あと現在の中継ぎ課に期待。
お約束の桧山地雷原でモナのエンドレスダンシングwww

720 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 00:33:00 ID:jKMUiqUF0
 

721 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 02:55:04 ID:OPbX1pRc0
〔⌒ 〜 ⌒〕楽天へ…(ノД`)。・ ゚・。*゚。
ガンガレ!ほしゅ

722 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 07:03:16 ID:ZZA2JcUx0
星野王子=美しいものしか見たくない、だっけ?
このスレの能見タンとたしかにキャラがダブルね〜。

723 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 07:03:52 ID:ZZA2JcUx0
しまった、このスレじゃないや。
能見タンの応援スレッドのことな。

724 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 19:56:05 ID:hH3ChDwj0
保守

725 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 22:59:15 ID:uvDhWFMp0
http://www.gochomuseum.net/neko/imgbbs/img/33609.jpg

726 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/28(金) 23:46:33 ID:lCHK0K4P0
ほしゅ

727 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/29(土) 03:14:31 ID:mT4PmYXw0
|ヽ´」`|人[`ー」ー]ノ<ベテランのほしゅ


728 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/29(土) 08:55:05 ID:ZQqJD4it0
久慈タン・・・来期も現役かな。
激しく気になるっす。

729 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/29(土) 17:40:55 ID:mT4PmYXw0
〔`・∀・´〕人(`_ノ´)ノ<鳴尾浜でがんばった二人のほしゅ


730 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/29(土) 17:58:53 ID:CkBUp6zY0
http://www.venus.dti.ne.jp/~nekoneko/niki/d20050609.htm
阪神ファンの感情を逆なでする発言を発見しました、

731 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 00:57:43 ID:NPit78d70
(* ・x・)

732 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 00:58:28 ID:EB0gNFje0
(´゚ぺ`)<ほ、ほしゅ!

733 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 01:24:42 ID:gy4f8ouq0
つttp://www.geocities.jp/htbr_2004/flash.html

最近ちょっと本業の方滞っててすいません……

734 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 01:51:17 ID:QsFXX5ho0
>>733
ちょ、おま・・・・
夜中に泣かすな・・・・

735 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 02:53:19 ID:Ucqa0F560
>>733とバッハは天才

アリアスとリンが英語表記なのがいいな。全部めちゃくちゃいいな
アリアスの笑顔に泣いた

736 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 03:06:51 ID:5pzhz2OS0
>>733
。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン!!!!!!!!!!!!
なにこれなにこれなにこれなにこれ!!!!!!
すごいすごいすごい天才だ・・・
今この時期にこんなの見せられて泣かずにはいられないよ・・・。・゚・(つд∩) ・゚・ 。

737 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 03:41:11 ID:EB0gNFje0
【  ̄ヘ ̄ 】<ほしゅだよ
と、書きに来たら神が舞い降りてましたよ!
親友コンビ ゚・。* 。 +゚。・.。* ゚ + 。・゚・(ノД`)
的場に始まり的場に終わるとこも泣ける。カンイチ…

738 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 08:14:40 ID:S8opar3u0
>>733
鳥肌立った・・・
ベリーサンクス!!!!!

739 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 09:35:13 ID:IjzeSFnL0
>>733
ああああ、これ見たら桧山と今岡がどうなったのかめっちゃ気になってきた

740 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 14:12:49 ID:JwzfrTsJ0
>>733
おおおおおお乙です。マジ泣きました。・゚・(ノД`)・゚・。
BGMの選曲も素晴らしい!

741 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 17:45:58 ID:PE3szRl80
>>733
す、すばらしいっ・゚・(ノд`)・゚・
ついでにほしゅ

742 :保管庫”管理”人:2005/10/30(日) 18:18:05 ID:tYi1oTTC0
>>733
すげー…。選曲も何もかも全部すごい!
感動しました(;´д⊂ヽ

リンク貼らせてもらいました。
不都合があれば取り下げますので…。


最近保管作業が遅れ気味で申し訳ないですorz


743 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 20:42:27 ID:qXv4OSS0O
ほしゅ


止まってるなぁ
何か書きたくなってきた

744 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 22:48:09 ID:XBLwLQM90
>>743
>>733見たらそんな気するよね

745 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 22:50:45 ID:IjzeSFnL0
>>733
あらためて見てみたら的場の写真、自分がうpしたやつだったw
いかん、感動するとこなのにあのシーンかと思うとつい笑いが●●●

746 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 23:10:12 ID:gy4f8ouq0
>>742
あんなんで宜しければ是非お願い致します。保管庫運営、いつも有難うございます。

>>745
無断で使ってしまってすみません。もしアレでしたらクレジット入れますので……
一軍に比べると寛壱はマトモな写真が殆どなくて、フォルダ漁ってて見つけたあの写真が
探してたイメージにぴったりだったので使ってしまいました。
他の選手の写真も自分で撮ったものが幾つかある以外はあっちこっちから
無断で拝借してきたものなので、クレームがつかないかと戦々恐々しています……

747 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/30(日) 23:19:52 ID:zA346PZw0
ほしゅ

748 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 02:40:53 ID:Hmf8zYGU0
書いてみたくなって、ちょっと思いついた1シーンを書いてみたんだけど
需要ってあるかな?
自己満足だからなかったらなかったでいいんだけど

749 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 03:02:51 ID:63LoKYSF0
>>748
何のワンシーン?現行リレー?

需要とか気になるなら、とりあえず暫定板に投下してみるのも手かと

750 :748:2005/10/31(月) 03:06:04 ID:Hmf8zYGU0
>>749
リレーじゃなくって、全く新しい設定
暫定板も考えたんだけど、一応聞いてみたかったから

751 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 04:16:50 ID:63LoKYSF0
>>750
新しいやつか!てことは2005年版?
読みたい

752 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 04:36:35 ID:u8mD3AVe0
あふぇ

753 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 05:16:26 ID:+1DFtNyy0
(丶´_ゝ`)<ほしゅするお

>>750
自分も読んでみたいです

754 :743:2005/10/31(月) 08:18:12 ID:s9sD6axvO
こんなん書いてみました
反省はしていない


「…今年は散々やったのう」
静かに、誰かの声が暗がりから響いた

「も、申し訳ありません」
同じく暗がりから、酷く恐縮したような声がした
「俺も日本シリーズでは負けたけど、四連敗はせんかったわ」
暗がりから、星野オーナー付シニアディレクターの声がした

岡田監督のもと日本シリーズに出場した阪神タイガースは、プレーオフで勝ち上がった千葉ロッテマリーンズにまさかの四連敗を喫した


「さて岡田君」
ぎい、と椅子を軋ませ、久万元オーナーが声を発した
「敗れたとはいえ我々は君のことを大きく評価している」
続けて星野が口を開く
「そこで我々は…」
集まった全員の声が揃い、悪魔のような「ゲーム」の始まりを告げた

755 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 16:09:43 ID:RQNmVhJS0
今年版だと能見とかハシケンが出てくるのか。面白そうだ。
でも一人でやるんだったら若虎BRみたく、専用保管庫作って
そこで連載した方がいいような希ガス

756 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 17:38:26 ID:hLQE2upJO
俺も書いてみたいなぁ
小説書いた事ないのが致命的だが

757 :743:2005/10/31(月) 19:08:00 ID:s9sD6axvO
1人でやれるとは思って無いのでリレーになるとありがたい

758 :保管庫”管理”人:2005/10/31(月) 19:36:36 ID:b/f2nT5r0
ややこしくなるなら、文章を直にメールしてもらうとかで保管しましょうか?

759 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 23:23:50 ID:hLQE2upJO
名前蘭に注意がきすればいいかと。

嗚呼妄想が膨らんでいくお…

760 :代打名無し@実況は実況板で:2005/10/31(月) 23:57:30 ID:+QvAnO120
もうすぐ日付変わるが( ゚∋゚)<トリックオアトリート ほしゅ

2005年ver.リレーに、>>759同様いろいろ想像してしまう

761 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 00:55:06 ID:G9p+lNL10
>>754
ショボ

762 :748:2005/11/01(火) 01:01:27 ID:+YKDUQvv0
自分は出来れば一人でやりたいなぁと思ってるから、
保管庫つくろうかな

763 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 01:03:14 ID:G9p+lNL10
>>762
どうぞお好きに

764 :748:2005/11/01(火) 01:07:03 ID:+YKDUQvv0
能見もハシケンも出てないけど
プロローグじゃないけど

765 :748:2005/11/01(火) 01:07:37 ID:+YKDUQvv0
「あ、矢野ちゃん」
オフィスビルと言うものにおよそ縁のない生活を送ってきた矢野は当然その内部の様子を知るはずもない。だから、ドアの向こうに応接セットとテレビが現れたことにもびっくりしたし、尚且つそのソファの背もたれから下柳がひょい、と顔を出したので、さらに驚いた。
「シモ」
「なに、そんなバカみたいに口開いて」
だが下柳は特に動じる様子もなく、寧ろぽかんと自分を見つめている矢野の顔を見て笑う。
それから下柳は、まぁ座ればと言うように自分の向かい側のソファを指差した。テレビからは日曜の昼らしく、ゴルフの中継が流れていた。
「ちょっと無用心じゃないの。中にいたのが俺だったから良かったものの、やる気のある奴だったら矢野ちゃん、死んでたかもしれないよ」
「そういうシモこそ、こんなとこで何のんきにテレビ見とるねん」
「いや、疲れたなぁと思って」


766 :748:2005/11/01(火) 01:08:39 ID:+YKDUQvv0
そうして大きなあくびをひとつ。こんなときにと怒るべきなのかそれとも平然としている下柳を見習うべきなのは判断つきかねて、
結局矢野はああそう、とだけ答えた。単純に疲れた、と言う言葉には同意できる。同い年で頼りになるひとりと出会えたことで緊張の糸が途切れたのだろうか、急にどっと身体が重くなったような気がした。
「もう年なんかなぁ」
「なにそれ、馬鹿にしてんの?」
ぽつりつぶやいた言葉だったが、どうやら下柳は自分の「疲れた」という言葉への返事だと受け取ったらしい。ギロリ睨まれて矢野は苦笑いした。
「何言うとんねん、俺の話や」
「あぁ・・・・年取ったんじゃない?」
「あほ、俺ら同級生やろうが。俺が年取ったっちゅーことは、お前も年取ったっちゅーことや」
そうだ。気がつけば矢野、下柳、金本らは球団所属選手の中でも最年長になっていた。周りはみんな後輩だらけで、今ではドラフトで入団した中日より、そのあと移籍した阪神での選手生活のほうがずっと長い。
「外様」の自分だが、気持ちの上ではすっかり生え抜きのような気分でいたし、ファンもそんな風に見ているものの方がずっと多いだろう。
「確かに周りは若いヤツ多いしなぁ」
下柳もおそらく矢野と同じようなことを考えていたのだろう。矢野もまた、下柳の周りの「若いヤツ」・・・・・杉山、藤川、江草ら投手陣の顔を思い浮かべていた。みんな今年の阪神を勝利に導いてきた貴重な戦力で、
球界一の投手陣だと自負している。テレビや新聞や雑誌など様々なところで彼らの評価が高まっていくのを見るのが嬉しかった。「自分が育てた」というつもりはないが、彼らの「矢野さんのおかげ」という言葉は心の底から嬉しかった。
若者が成長していく様を一番近いところで実感できるのが嬉しかった。彼らが成長していく中で少しでもその助けが出来ているのなら満足だと思った。
「あかんな、なんか年々疲れが取れにくなってる気ぃするわ」
「ジジくさ」
下柳はちょっと笑って、それからテレビのリモコンを取り上げた。画面はゴルフ中継から、グルメ番組に切り替わる。下柳と矢野はしばらくそれを、見るともなしに眺めていた。


767 :748:2005/11/01(火) 01:09:21 ID:+YKDUQvv0
スレ汚しスマソ

768 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 04:18:44 ID:817In9zt0
おおー、2005年版も面白そうじゃん。
期待しつつ保守。

769 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 06:20:09 ID:yiC0n+Gi0
>>768
釣りだと思うけど




本気で言ってるわけじゃないよね?




770 :743:2005/11/01(火) 07:35:58 ID:s7UJpNhnO
>>761にGJと言われるくらいの文章書きたい

で、二回目
やっぱり反省はしていない


赤星憲広(53)は家の布団にくるまって、静かに体を休めていた

シーズン中の無茶が祟って、体はボロボロ。秋期キャンプを療養のための時間にあて、今年中のトレーニングを封印した。もう気持ちは来期に向いているが、それでもまだ頭をよぎる、あの試合―

激闘を制してプレーオフを勝ち上がってきた千葉ロッテマリーンズに、歴史的大敗を喫した日本シリーズ
何であんなに大差がついたんだろう?
試合勘が戻っていなかった、と、球団のOBや元監督などが言っていた

試合勘?
目に見えない「それ」はそんなに重要だったのか?

―やめよう。もう終わったことだ

赤星は、もう何度目かわからないくらい繰り返した寝返りを打った
―来年。来年リベンジすればいいんだ―
訪れるか分からない「未来」に気持ちを切り替えながら、赤星はゆっくりと眠りについた

771 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 07:48:08 ID:tpRqpbRM0
>>770
参加するなら空気ぐらい嫁。反省しろ
ややこしいから他所でやれって流れになってるだろ
リレーにしたいらしいが、この流れで誰が参加しようと思うんだ?

772 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 08:11:50 ID:1kIzXE/+O
今まで単独職人さんのもここでやってたじゃん。
2005年版リレーだけ別にやれってのはおかしいんじゃないか?
個人的にはリレーが二つあると混乱するから、2004版が終わるまで待つべきだと思うけど。


773 :743:2005/11/01(火) 08:18:31 ID:s7UJpNhnO
確かに軽率だったな

住人の皆様申し訳ありませんでした

774 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 08:19:12 ID:ToQF4Zof0
単独さんは名前欄さえ固定してくれたらまだわかるけど
1つのスレでリレー二本同時進行は正直ややこしすぎる

775 :748:2005/11/01(火) 10:57:09 ID:lPNvKXHF0
いろいろ妄想してたんだけど
2004年版が終わるまで待つことにします
スレ汚しスマソ
職人さんも変な空気作ってしまってごめんなさい

776 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 11:45:01 ID:j6cBYEjw0
どうしても2005年版リレーがやりたいなら、したらば掲示板を借りてきてはどうだろう?

777 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 14:53:21 ID:xgBTu9U50
あげ

778 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 15:12:13 ID:dnKEGB/vO
2004版が終わるころには2006年版が始まるはずw

779 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 16:27:28 ID:ZNZOktyI0
全く人が減らないバトロワだし
2008年くらいまでかかったりしてw

780 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 17:40:00 ID:dnKEGB/vO
選手に愛着ありまくりだからねぇ
2005版バトロワで中谷書きたくて仕方ない。
最後にな。

781 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/01(火) 19:30:45 ID:tOROQMsu0
現在進行中のリレーの続きを期待してます。

782 :924(1/3):2005/11/01(火) 23:55:51 ID:uquO3XWJ0
>>677より
85.消えた記憶

ここは、どこなのだろうか。
雨に打たれつつ、桜井広大(背番号51)はひとり集落の中をさまよっていた。
一見してかなりの田舎だと分かる。もう夕方で、雨のせいか道を歩く人も
いない。どこかに交番でもあればよいが、見当たらない。
もし見つかったとしても、これまでの経緯をどう説明すればよいのだろう。
気がつくと、見も知らぬ家で縛られた状態で転がっていたのだ。それまで
何をしていたのか、具体的なことがまるで分からない。頭にぼんやりと霞が
かかったように、記憶がひどくあやふやだった。

何より、あのことをどのように話すかが問題だ。
桜井は立ち止まり、ずっと右手に握ったままの拳銃を見つめた。元は自分を
拘束していた男が持っていたものだ。モデルガンなどではなく本物だと
いうことは、つい先ほど証明された。
自分も、おそらくは相手もその瞬間、何が起こったか理解できなかった。
突然の発砲音と、驚いたように目をみはった男の表情と、飛び散った赤い血。
憶えているのは、それだけだ。
あとは知らない。ひるんだ男をはねのけ、振り返らず走った。
(あいつは――死んだんやろか?)

ぶるっと一つ大きく身を震わせた後、桜井は頭を振った。いや、自分は
撃つつもりなどなかった。あれは、もみ合っているうちに起こった事故だ。
(もし俺のせいでも、正当防衛やろ?)
自分は理不尽に監禁されていたのだ。だから、逃げ出した。そうしたら、
あの男は追いかけてきた。また捕まれば、殺されていたかもしれないのだ。
自分は悪くない。桜井は繰り返し自らに言い聞かせた。

783 :924(2/3):2005/11/01(火) 23:56:44 ID:uquO3XWJ0
こうしてはいられない。とりあえずは、どこか適当な家でここがどこなのか
尋ねるのが先決だ。そう思って再び歩き出し、角を曲がった時だった。
不意に視界に入った異様なものに、桜井は立ちすくんだ。
10メートルほど先の路上に何かが転がっている。
「まさか……」
おそるおそる、桜井は近づいた。

それは、考えたとおりのものだった。仰向けの状態で横たわる一人の男。
雨に洗われつつあったが、頭を中心におびただしい血の跡をとどめていた。
安藤優也(背番号16)のスタンガンに倒され、新井智(背番号49)がはずみで
放った銃弾によって殺された石毛博史(背番号48)だった。
「う……わああああ!!」
桜井は悲鳴をあげ、脱兎のごとく駆け出した。

やっと監禁状態から逃げられたと思ったら、今度は死体ときた。それも、ただ
死んでいたわけではない。どこからどう見ても殺されたに違いなかった。
(いったい、なんやねん!?)
でたらめに走り続けた桜井は、挙句、水たまりに足を取られて派手に転んだ。
胸から膝にかけて泥にまみれたが、不快に思う余裕さえなかった。

水たまりに膝と手をつき、ぜえぜえと息を吐きながら、桜井はまた一つ奇妙な
ことに気づいた。自分が逃れてきた男は、なぜか野球のユニフォームを
着ていた。白地に黒のストライプ模様で、胸には「Tigers」と書かれていた。
(タイガースって、阪神のことか?)
今、路上で無残に死んでいた男も同じユニフォームを着ていたのだ。
単なる偶然とは思えない。だが、この事実が何を意味するのかは
皆目わからない。

784 :924(3/3):2005/11/01(火) 23:57:33 ID:uquO3XWJ0
(誰か、助けてくれ……)
立ち上がった桜井は、ふらふらと近くの民家に足を進めた。とにかく、まともな
人間に会いたかった。呼び鈴を押したが、壊れているのか音がしないので、
ドアを乱暴に叩いてみた。しかし、中から人が応じる気配はない。
あきらめて隣の家を当たることにする。同じように戸を叩いて呼びかけて
みるが、反応は得られなかった。さらに隣の家でも同様の結果に終わり、
桜井は次第に不安になった。

そういえば、もう辺りは暗いというのに、見たところどの家にも灯りが
ついていないのだ。もしかすると、この村は無人なのだろうか?
ぞっとしつつ、さらに隣の家に向かった。試しに引き戸に手をかけると、
鍵はかかっていない。ノックするのももどかしく、そのまま戸を開けた。
「すみません、誰かいませんか?」
わらにもすがる思いで呼ばわったが、家の中は静まりかえっている。

「誰も、いないんですか!?」
いら立って声を荒げると、ようやく奥のふすまがガタガタと音を立てた。
桜井は安堵しかけたが、すぐにまた新たな戦慄に襲われた。現れたのが、
またしてもタテジマのユニフォームを身に着けた男だったからだ。
(どうなってるんや……。勘弁してくれ……)
右手が無意識のうちに銃を構えていた。

「――あ、お前か。……どうしたんや?」
相手はにこやかに声をかけてきたが、逆効果だった。こちらには憶えのない
はずの男が自分を知っている。そのことが恐怖を増幅させた。
(もう、わけが分からん……)
カチ、と引き金に指をかける。
自分を狙う銃口に気づいた相手――桟原は、またたくまに顔を引きつらせた。

【残り40人】

785 :924:2005/11/02(水) 00:04:35 ID:qCDBCUq40
フラッシュ拝見しました。素晴らしい……
939氏、本当に乙です。

2005年版も面白そうですね。
能見ハシケンなどはもちろん、辻本がどうなるかとか。
が、2004年版はまだ先が長そうなので、
終わるまで新たなリレー作品が始まらないというのは
現行の書き手の端くれとして申し訳なく、また残念に思います。
何かいい方法があれば良いのですが……

786 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 00:05:11 ID:7hbu+p2J0
続きキタキタキター!
うは、桜井やったんか…サジーどうなるサジー

787 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 00:54:06 ID:7CLIItlk0
リレーの新作来てた!924氏乙です。
くぼたんは大丈夫なのか!?

個人的に、2004リレーはこのままじゅっくり進んでよいかと。
2005版は…スレ的にはあまり混沌としないほうがいいのかな。

788 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 01:49:31 ID:NvbTGnvS0
くぼたん・・・orz
924サマ、乙です

しかし人減らないねwww

789 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 10:00:40 ID:ZPKkploz0
桜井タンの回想によるとクボタンが追ってきたみたいだから
命は大丈夫と思いたい。
けど、サジッキー、つくづくついてないなあ。どうなるんだ?

790 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 13:45:07 ID:qeDHhgaf0
新しいの、書きたかったら書きゃいいと思うけど
混沌とするのもまたよし

791 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 20:41:58 ID:dZXsM2WlO
職人さん毎度乙です。
クボタン。・゚・(ノД`)・゚・。
そしてサジキ最大のピンチだなorz
桜井の場合記憶を取り戻しても危ないし厄介な奴だ。

今回の展開で謎が少し解けてすっきりした。
あとは御大の発した言葉と、秀太がいつ裏切り豊はどうなったのかが気になって仕方ない。

792 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/02(水) 23:58:16 ID:FvHQkJ470
ほしゅ

793 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 00:25:26 ID:d8AE0h8LO
あげ

794 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 03:55:42 ID:Qh+gv/Ir0
(´-ゝ-`)ほしゅ

795 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 17:49:22 ID:bt/z3t840
保守

796 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 21:39:31 ID:0Tvkep8u0
ほしゅ

797 :542(1/5):2005/11/03(木) 22:05:00 ID:V4taFK5Y0
>>784
86.マイノリティの造反

 一通りもがいて、暴れて、それでも身体は拘束されたまま。
 ぜいぜいと息を切らし、葛西稔(背番号82)は昨日の情景を思い出していた。
『監督、こんな馬鹿な事は止めさせて下さい』
 セッティングの済んだ本部。今から思えば無駄な足掻きに過ぎたのだろう。それ
でも葛西は必死だったのだ。
『解ってるんスか? 自分のやってる事が何なのか、アンタ解ってるのか?!』
『!』
『そ、れじゃあ、佐藤さんは……』
『待って下さい! ……待ってくれ!』
 そして結果はこの有り様だったわけだが―――奴らの捨て台詞通り、殺されな
かっただけマシなのかも知れない。
 何を言っても理解されなかった。
 どれだけ説得しても、どれだけ言葉を尽くしても、彼らは翻意しなかった。
 あいつらは鬼畜だ。文字通りの鬼畜生だ。人の道を完璧に踏み外している。
 理解不能。意味不明。―――狂っている。
 これを狂気と言わずして何と言うのだ!
(どいつもこいつも、クソ野郎ばっかりだ)
 思い出す。先刻の事を。引っ立てられて連行された部屋。ずらりと並べられたモ
ニタの中で、一番大きく、一番鮮明な画像を写すスクリーンが目を引いた。
 大写しにされた、恐ろしく平らでのっぺりとした既知の顔。
 血液の飛沫が頬に付着した、現選手会長の顔……
『―――』
 頭が。
 真っ白になった。
 彼の顔に付いているのは何だ。彼のユニフォームを染めているのは。
 彼の傍らに倒れているのは。彼の手を赤く汚しているのは。
 今この画面に写っているのは、誰だ?

798 :542(2/5):2005/11/03(木) 22:05:51 ID:V4taFK5Y0
『人間の血ィはやっぱり、赤いんやなぁ』
 能天気な声は平田のものだった。
 噴出する血飛沫がモニタに映り、座り込む選手の顔に切り替わる。死んだ名前と
殺した名前。ぽかりと目を見開いた死体。武器と硝煙。震える後姿。血。肩を寄せ
合う人影。逃げる者と追う者。暴力。
 涙。
(アツさん……遠山……)
 つい数日前に会った、かつての、そしてこれから同僚になるはずだった二人。
 まだ阪神に籍を置いていない彼等だけでも、この殺人計画とは無関係のまま、
人間の世界で生きていて欲しいと思った。だがその一方で、何処かで助けて欲し
いと思わなかったかと問われれば―――否だ。
 自分一人の手に負える事態ではない。だから彼らを巻き込みたくない。
 でも、頼りたい。助けて欲しい。
(ずるいよな、オレも)
 直感の鋭い伊藤と勘繰り屋の遠山。不自然な点を残しておけば何かしら気付い
てくれるかも知れない。台本には登場しない星野仙一(元背番号77・現SD)の事も
些か気懸かりだったが、彼の事だ、どうせ裏で一枚二枚は噛んでいるか、或いは
いずれ何かの形で手を打ってくるに違いない。手腕については信用出来る人物だ
―――信頼出来るかと問われると返答に窮するが。
 溜め息をつく。身体の自由が全く利かない。どうにかしたいのにどうにもならない
歯痒さに、葛西の中で次第に焦りが大きく膨らみ始めていた。こんなところで転が
ってなんかいられない、自分がどうにかしなければならないと、その一心で必死に
足掻く。その最中に、
「葛西」
 恐ろしく唐突な声が聞こえて、飛び上がらんばかりに心臓が跳ねた。
(―――?!)
 一瞬で四肢を硬直させ、そろそろと首を捻る。
 ぶら下がった裸電球の薄暗い光の下、突然現れたアクターは葛西の顔を覗き込
むように屈んでいた。イレギュラーな登場人物。台本に書き込まれたその名前。
 黒いグラウンドコートを無造作に羽織り、帽子を手にした胡麻塩頭の福原峰夫
(背番号85)。

799 :542(3/5):2005/11/03(木) 22:08:48 ID:V4taFK5Y0
 彼は整った面輪を傾げ、傍らに膝をついてこちらを見ていた。葛西より十ほど年
嵩だが、きりっとした眉と鼻梁、目元に力のあるちょっとした男前だ。
(俺を、殺しに来たんスか?福原さん)
 冷静になった途端、こんな発想をする自分に可笑しくなった。
 葛西は笑った。ドライに笑ったつもりだったが、実際にはひゅうひゅうと掠れた息
の音が漏れるばかりだ。それでも笑い続けた。笑うしかなかった。
「おい、しっかりしろ、葛西」
 壊れた鳩時計のように力なく笑い続ける葛西の肩を揺さぶり、福原。
(しっかりしろ、だって?)
 あまりに滑稽だ。台本のページを間違えているんじゃないか?
 返答代わりに鼻で笑ってやろうとしたが、彼は大真面目だった。実直そうなその
目が憎らしくて堪らない。
「しっかりして、それでどうすんですか。次は何なんスか。あいつらを殺して来いと
 でも……命令しますか? それとも俺はもう要らねぇから、ここで死ねって?」
 どうせ殺されるのなら、これくらい言っておいてやらねば気が済まない。いいや、
こんな子供じみた悪態如きで済むのなら警察なんて要らないだろう。
「黙って聞けよ、葛西」
「だから一体何なんです!」
 駄々っ子をあやすような口調に、慰撫されている、と気付いて軽く激昂する。短
気と熱さは葛西の専売特許だった。
「さっさと言えばいいでしょう!勿体付けずに―――」
「お前、あいつらに何か言ったのか」
 いきり立つ葛西をいなし、ぐっと顔を近づけて福原がぼそぼそと囁く。
「……え?」
 きっかり、一呼吸。
 それはある種、腹が立つくらいの迂遠な言い回しだったが、却って葛西の苛立ち
を鎮めるのには効果的だった。怒りを生産していた部分に冷静さが供給され、彼
の言葉がぐるぐる頭の中を巡る。
 脳裏を過ぎる、二つの懐かしい顔。
「あいつらって、」
「惚けなくていい。―――伊藤と遠山が、何か気付いたみたいだぞ」
 カラカラの咽喉がひとつ、貪欲に鳴った。

800 :542(4/5):2005/11/03(木) 22:10:00 ID:V4taFK5Y0
「あいつらに何を言った?どこからどこまで喋った?」
 興奮が静かに身体を満たしてゆく。びりびりと全身が総毛立ち、肺が痛くなる。
 口が巧く動かない。唇を硬直させてもどかしげに見上げると、福原は何度か瞬き
をして首を振った。諦めの意味ではなく寧ろ、労りを含む仕草だった。
「いや。やっぱりそれは後でいい。とりあえず今は聞くだけでいい」
「……」
「いいか葛西、よく聞けよ。オレは、この計画をどうにかして止めるつもりだ。お前
 だってそうだろ?だからこんなトコでこうやって転がってる」
 本気なのか、それとも芝居を打っているのか。
「ばらばらに行動しても無理だ。でも、複数なら解らん」
 敵か味方か。
 逆光の中の福原の顔を、目の奥に宿る一筋の糸を見つめる。いつもと変わりは
ない、いつもと同じ顔。しかしその同じ顔が、そこに湛えられた激情によっていつも
とは比べ物にならないくらいに切実な貌になるのだ。
 沈黙にぽつり、そんなに見んな、穴が開きそうだ、と彼が表情を緩めて呟いた。
葛西は思った。彼はどんな思いで死んでゆく選手たちを見ていたのだろう。どんな
思いで、彼らの悲鳴を聞いていたのだろう。葛西には解らない。解らないが、福原
の簡潔な言葉に横たわる響きがそれを髣髴とさせて、苦しかった。
「なぁ、葛西」
 ―――こんな貌、演技で出来るのならアンタは大した役者だよ。
「オレはさ、あいつらを助けたいんだ」
「俺もです」
 傲慢な脚本家。ザマはない。全てが思い通りになると思ったら大間違いだ。
「死なせたくないんだよ」
「ぁたり前じゃ、ないスか」
 一言一言、発する度に福原の顔が歪んでいく。それは咽喉を、唇を、耳を塞がれ
た人間の貌だ。彼は言葉を紡げず、受け取ることも出来ない。しかし叫んでいるの
だ。それでも彼は叫ぶのだ。どんなに叫んでも聞こえないのに、どんなに叫んでも
届かないのに。
「オレの選手、殺させてたまるかよ……」
 人間がいた。
 ああ、やっと言葉が通じたのだ―――

801 :542(5/5):2005/11/03(木) 22:10:38 ID:V4taFK5Y0
 肩を抱えられて起こされるまま、つと目を閉じる。
 渋滞する頭に浮かんでいたのは伊藤と遠山の顔だった。心なしか、こちらを見て
いるその視線に呆れと僅かな怒りが含まれているような気がして、その二対の目
を真っ直ぐに見る事が出来ない。
(アツさんも遠山も、何で怒ってるんやろ)
 ……俺が想像してる顔なんだから、そりゃ俺の方に理由があるだろう。
 葛西は苦笑を漏らした。二人の性格は知りすぎる程に知っている。今の自分を
見たら二人ともきっと、口々に好き勝手を言うに違いない。
『葛西、お前ホントにアホやなぁ』
『もうちょっと血管太くしないとぶっ倒れるんじゃねーか?』
『あー解る解る。葛西って血圧関係脆そうやからねぇ』
 ほら、こうだ。こっちが怒り出す限度をちゃんと心得ていて、葛西が黙っているう
ちは嬉々として茶々を入れてくるのだろう。舌戦では分が悪い。
 でも、そうやって言いたい放題言って、それでも最後にこう言うのだ。
『ちゃんと相談しろよなー。子供じゃねぇんだから。ねぇアツさん?』
『そうそう。俺たち元同僚ってだけじゃなくて、トモダチでしょ。忘れちゃったの?』
 ―――眉を寄せて、仕方なさそうに笑って、そう言うのだ。きっと。

【残り40人】

802 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 22:16:28 ID:YKGJTU0PO
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!新作あげ

803 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/03(木) 22:56:47 ID:Qh+gv/Ir0
ミネヲとかさいたんキタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*!!!
職人様乙です。ミネヲカコイイなぁ

804 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/04(金) 00:08:24 ID:8FVH1WZxO
新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
職人さん毎度乙です。
コーチ陣に期待してたからうれしいな(´∀`)福原さんカコイイなぁ

805 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/04(金) 14:23:20 ID:8FVH1WZxO
★ゅっときます
ジェフにも超期待

806 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/04(金) 17:31:03 ID:5yKZSwwX0
保守

807 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/04(金) 21:35:07 ID:2qinYtfb0
うおお峰夫むっちゃかっこいい!!
よかった、ノってる側の人間じゃなくて…!マジで嬉しい。
職人さん、これからも期待してます!

808 :615(1/6):2005/11/04(金) 21:49:59 ID:mEKgj4Eu0
>>801続き

87.迷路

「……わからないんです」
つとめて平静にと自分に言い聞かせて出した声は、やはりまた、震えた。
真っ直ぐに覗き込んでくる矢野の視線に、揺れそうになる目を鳥谷は必死で押し
とどめる。
「答えになってへんぞ」
それは自分でもわかっている。しかし本当になんと答えるべきか、どんな顔をした
らいいか、全くわからなかった。
自分は今疑われている。
それも人を殺したんじゃないかと、プレー中、チームの中心にいる人物に問われて
いるのだ。
『桧山を殺したんか?』
頭の中で投げかけられた言葉を反芻してみる。
殺してはいない。
殺してはいない―――が、疑っている人に素直にそう言って信じてもらえない場合、
それは本当に殺していないことになるのだろうか……?
殺した事実はなくても、「こいつが殺した」と思われていれば同じことではないの
か?そんな時どんな態度を取ればいい?なんて言えばいい?それはなんのために?
信じてもらうために?誰から?なにを?信じる……信じるってどういうことだ?
考えれば考えるほど言葉の輪郭がぼやけること。
気がヘンになりそうなこと。
桧山が出て行き、矢野が目を覚ますまで、鳥谷はずっとその意味を考えていた。

809 :615(2/6):2005/11/04(金) 21:50:33 ID:mEKgj4Eu0
何の前触れもなかった。
矢野の枕元に並んで座っていた桧山が不意に立ち上がり、隣室でゴソゴソとなにか
していたかと思うと、そのまま真っ直ぐ裏口に向かう足音が聞こえて鳥谷は部屋を
飛び出した。
「桧山さん?」
呼び止めたその手に矢野の武器である中国刀が握られているのを見てぎょっとする。
「……何してるんですか?」
肩にバッグをかけ、帽子を目深にかぶった桧山は何も答えずきびすを返した。
「待ってください!」
「外がどうなってるか探ってくるわ」
鳥谷は思わず桧山の腕をつかんだ。
「別に今からじゃなくてもいいじゃないですか。矢野さんが目、覚ましてからでも」
「俺の考えや。わかってくれ」
「……俺のこと疑ってるんですか?」
「そうやない」
「なら、どうして!?」
「……」
桧山は表情を変えずに、自分の腕をつかんだままの鳥谷の左手をとんとたたいた。
「ちょっと様子見に出るだけや。すぐ戻る」
「それなら俺が行きます」
「あかん、お前は矢野さんみててくれ。チームにとって大切な人なんやから」
鳥谷は強くかぶりを振った。
「じゃあ余計、ここにいるのは桧山さんじゃないと駄目だ!矢野さんの力になる
 べきなのは俺じゃなくて、桧山さんです」

810 :615(3/6):2005/11/04(金) 21:51:02 ID:mEKgj4Eu0
自分と桧山が別々の道を示した時、最終的に矢野が信じるのは桧山の方だろう。
二人はもうずっと同じチームでやってきた仲間で、年も近く、優勝も経験している。
「俺はまだ、そこまで……」
プロとして信頼を得ているプレイヤーではない―――。
情けなく悔しいことだが事実だ。しかし、こんな事態とは言え、自分の力の無さを
口にすることだけははばかられた。
「大丈夫や。みんなお前のことは認めてる」
簡単にそんなことを言われて、瞬間的にカッとした。同時に図星を指されて腹が
立ったことにまた情けなさがつのる。
「顔上げろ」
鳥谷はゆっくり視線を桧山の顔に戻す。桧山の表情はずっと変わらない静かなもの
だった。自分はきっと眉間に醜いしわを寄せているに違いない。
「適当に言うてるんとちゃう。自信持て」
もう一度、左手をとんとたたかれる。鳥谷の意志を無視して、桧山の腕をつかんで
いた指が勝手に離れた。
「矢野さんのこと、頼むぞ」
「……戻ってきてくれますよね?」
「必ず戻る」
難しい顔をしている鳥谷をなだめるかのように、桧山はうなずきながら少し笑った。
その笑顔に鳥谷の胸がずきりと痛む。
「信じてくれよ」
はっきりと言った桧山は裏口を開け、すうっと吸い込まれるように扉の向こうに
消えた。

811 :615(4/6):2005/11/04(金) 21:52:10 ID:mEKgj4Eu0
―――桧山が遠いところへ行った。
理由もなくそう思った。
右手を持ち上げて胸にあてる。心臓がずきずきと痛んだ。
痛い。胸が痛い。なぜかは桧山の心がわからないのと同じ様に、わからなかった。


「鳥谷?」
自分でもどこを見ていたかわからない焦点が、すっと寄り集まって矢野の顔を確認する。
この人は自分の言葉を信じるだろうか。それが桧山の言葉なら、自分が言っても
信じるだろうか。
「……信じるってなんですか?」
「え?」
「信じろってなにをですか?」
「どうした」
「桧山さんが……」
「おい、しっかりしろ」
矢野の手が鳥谷の腕をつかんだ。熱があるからだろう、つかまれた腕がじんわりと
熱くなる。自分の手も桧山に熱を伝えたのだろうか。
「鳥谷」
全ては最初に言った「わからない」に戻ってしまう。それでは答えとして認められ
ないのだから、最後は自分の知りうる事実を話すしかない。
鳥谷は大きく深呼吸をし、信じる、信じないをとりあえず横に押しのけた。
「桧山さんが出て行った時のことを話します」

812 :615(5/6):2005/11/04(金) 21:52:37 ID:mEKgj4Eu0
ありのままを話し、鳥谷の言葉が途切れた後も、矢野は何も言わなかった。
窓から見える外の様子が気になる。雲はだんだん黒さを増しているように感じた。
雨はいろんな事に対してますます視界を悪くさせそうだ。できれば降って欲しくない。
「お前は?」
唐突に矢野が口を開いた。
「お前はこれからどうしたい?」
数時間前に、同じ質問を桧山にもされたことを思い出す。
「矢野さんが眠っている時、同じことを桧山さんにも聞かれました。『お前は
 どうしたい』って」
「で、なんて答えたんや」
「生きたい」
「……」
「桧山さんは、『俺も同じや』と」
矢野は視線を布団の上に移し、しばらく黙った後、ぽつりと言った。
「お前は間違ってへん」
予想外の言葉に鳥谷は少し驚いた。
「俺みたいな役に立たへんのにつき合わせて悪いな」
なに言ってるんですか、と言いかけてやめる。
「……早く熱下げてください」
「そうするわ」
矢野はバツが悪そうに八重歯を見せて笑い、枕元のジャージに手を伸ばした。

813 :615(6/6):2005/11/04(金) 21:53:05 ID:mEKgj4Eu0
結局なにもわからないままだ。矢野は何を感じたのか。自分への疑いは晴れたのか。
誰を信じていいのか、なにを信じていいのか、信じることがどういうことなのか。
なにもわからない。
それよりも。
(もっと現実のことをしっかり考えないと)
―――生きるために。
矢野が布団にもぐりこむのを手伝いながら、矢野の体調が早く良くなって欲しいと、
桧山が早く帰ってくればいいと、鳥谷は強く願った。

【残り40人】




時間軸を脳内操作しながら読んでください
うまいこと流れてなくてすんませんね

814 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/04(金) 22:00:16 ID:4BD017p10
なんかいっぱい新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!
615氏、久しぶり!

815 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 00:03:59 ID:2qjirMI50
久々に鳥谷!!

ついでにほしゅ!

816 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 11:45:57 ID:GsFXxLH80
保守!

817 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 14:00:51 ID:vNBfgQZ7O
鳥谷久々にキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
職人さん毎度乙です。
久慈さんの話もワクテカして待ってます。
久慈さん。・゚・(ノД`)・゚・。

818 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 14:45:26 ID:ZWb7O0i20
下がりすぎのため上げ

819 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 18:16:17 ID:mwf0dnC70
hosyu

820 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/05(土) 18:55:30 ID:l25JaSZe0
福原コーチ、かっくいいなあ
2002年のドラゴンズのバトロワでも一人首脳陣を裏切って選手を助ける役回りだった

821 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/06(日) 01:41:25 ID:FwAPxCm/O
★ゅ
気になるところがイパーイありすぎて混乱しそうだ('A`)
新作くる前に頭の中整理します

822 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/06(日) 16:00:59 ID:FwAPxCm/O
もいっちょ★ゅ

823 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/06(日) 20:08:08 ID:w26rNpQc0
保守

824 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/06(日) 23:32:30 ID:DdJr8kOk0
おすぎと狩野の様子が気がかり保守

825 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/07(月) 10:40:55 ID:xaoH0e7PO
朝の★ゅ

826 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/07(月) 17:07:29 ID:piefwaSU0
ほしゅ

827 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/07(月) 23:16:22 ID:xaoH0e7PO
夜の★ゅ

828 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/07(月) 23:38:56 ID:En4ySetH0
そういやゲームに参加させられた和田さんはどうしてるんだろ?

829 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 04:28:20 ID:G0rs85rn0
浅井が気になる…ほしゅ

830 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 10:39:42 ID:2EyA/Sl60
浅井タンといえば、
やのどんで
矢野さんが中村獅童さんのことを「うちの浅井似の」と言ってたのがツボで爆笑しちまった。

831 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 20:32:34 ID:adPGE/p6O
浅井好きなのに浅井のとこ読み飛ばしてたorzあとでじっくり読みます。
獅童…似てるか?w

832 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 21:38:14 ID:G0rs85rn0
お、浅井好きがいた!(・∀・)人(・∀・)ナカーマ!
獅童のほうが目つきが鋭いと思うなぁ。
浅井は白雪姫の「おとぼけ」に似てる気がする…ごめんわかり難い例えで

833 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 22:09:30 ID:uRv+/JlO0
浅井ってクドカン(脚本家)に似てない?

834 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/08(火) 23:02:45 ID:xJ09uc2P0
浅井ってここでは新井に撃たれて倒れてるところまでだったけど
怪我してるのかしてないかも分からない状態だっけ
久慈さんが介抱とかしてくれてるのかなあ

835 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/09(水) 10:37:01 ID:WW/POpwVO
>>832「おとぼけ」がわからんorz
>833クドカン似てる!
>>834傷ついた浅井を介抱する久慈さん…ハァハァ

836 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/09(水) 17:38:03 ID:9fTDsYyg0
久慈タン
なごみ系の顔だよね〜

837 :832:2005/11/09(水) 19:43:34 ID:iWm9J3PB0
>>835
「おとぼけ」は7人の小人の中の一人。ようは、眠そうな顔立ち。
試合でどんでんがカメラに映るとだいたい前にいて、つらい時にはなごむよ
>>836
久慈さんは色男顔に見えるわ…。おかしいな、自分

838 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/09(水) 22:54:33 ID:iEP4935O0
一見なごみ系なんだけど、よーっく見ると目が笑ってないというか、勝負師の目だと思う>久慈さん
和やかな雰囲気の中にも、キレがあるというか
まあ、ああいう職業に長いこと就いてる人って大抵そうだと思うけど

839 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/09(水) 23:26:08 ID:IK/OUe1e0
あー、わかる。
久慈さん、顔立ちは勝負師だけどアウトライン(輪郭・体型)が癒し系。。

などとスレ違いの話題で保守


840 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/10(木) 05:43:47 ID:ANckQNo60
(´-ゝ-`)人(0^ε^0)人(* ・x・)ノ
話題の二人と、IDに小宮山が出たので3人でほしゅ

841 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/10(木) 12:01:07 ID:lf7woJbG0
久慈さん、人気あるんだな〜

842 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/10(木) 13:50:53 ID:yv/JdKR+0
他所のファンだが、久慈さんは好きだな。

843 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/10(木) 20:07:40 ID:CghnoCeZ0
保守

844 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/10(木) 23:27:26 ID:OX11O5fQ0
今岡と桧山の続きがすごく気になる
どっちも揺れてる状態なのでどうにでも転びそう
まったく先が読めない

845 :174(1/5):2005/11/11(金) 00:01:24 ID:xdroTn6E0
>>813
88.回想・揺れる心

 日はまだ高い。
 木々の合間から突き刺す光は強い。帯を引いた木漏れ日が幾重にも注ぎ、木々の
生い茂ったそこを明るく照らし出していた。
(夜の方が好都合だったな……)
 田中秀太は枝葉の合間から見える青空を見上げ、そんなことを思った。
 いい空だ。こうやって山を登っていると、ハイキングにでも来たのかと錯覚する。
今自分の身に降りかかっていること、全てを忘れてしまえればどれだけ心地よい日
だろうか。
 右手は、数メートル先が急な傾斜になっているらしい。少しだけ木々の感覚が広
い場所から覗くと、山下に民家や畑が望めた。無人の孤島。遠くには太陽に晒され
白く輝く海が見えた。
 こんな山の中に人はいるのだろうか。行く方向を決めたのは自分だが、今更そん
なことを思う。中村豊には確か、人の集まりやすいと思われがちな民家にはやる気
のあるヤツが居座る可能性が高いから、逆に怯えている者は山の方に逃げ込んでい
るんじゃないか、とかそんなことを言ったはずだ。その場で考えた適当な理屈だ。
「秀太」
 後方から声をかけられる。
「おい秀太って!」
 もう一度呼ばれ、秀太は立ち止まって振り返った。
 見ればライフルを背負った中村豊が、探知器を片手にこちらを睨み付けてくる。
「お前もまじめに探せよな」
 中村の前方を歩きながら、先程からぼんやりと空や景色を眺めていた秀太に気付
いたのだろう。腰に探知器を持っていない方の手を当て、学校の先生が宿題をさぼった
生徒を叱るような顔でそう言った。
「探してますよ」
 こちらも宿題忘れの常習犯のような口調で、しれっと応える。

846 :174(2/5):2005/11/11(金) 00:03:10 ID:xdroTn6E0
 嘘だ。
 秀太は誰も探してはいなかった。
 正確には、人捜しをしている余裕などなかった。
 ただ中村を伴いながら、ひたすら己の中の葛藤を消化するために歩いていた。
「ほんまか〜?」
 首を捻り、不満そうに呻く中村。
「ほんまですって」
 まったく自分を疑った様子もなく先輩風を吹かす男に、言い訳がましくそう言って笑う。
 笑う。
(まったく、笑ってばっかりだ)
 なんでこんなに笑ってるんだろう。秀太は自分が不思議になった。
 自分が置かれた立場を考えると、笑ってられるわけがないのに。
(この人達のせいだ)
 何の屈託もなく、自分を信じるから。
 何の疑念も抱かず、自分と接するから。
 ゲーム開始前、一度は固く心に決めたものが、彼らと時間を共にするにつれ揺らぎ
出している。
(俺は、この人達を殺さなきゃいけないのに――)
 自分の選択は間違いだったかもしれない。
 最初金本にゴレンジャーに誘われたときは、好都合だと思った。
 願ってもない誘いだ。秀太は二つ返事で応えた。
 生き残るためには、自分以外が死ななければならない。
 彼ら全員を、秀太一人で殺すのは不可能だ。
 一番手っ取り早いのは、殺し合わせること。
 大勢いれば、ちょっとした拍子に互いに不信感が芽生え、軋轢が生じることもある
だろう。やりようによっては、殺し合わせることも可能だった。
 一緒に行動していれば、タイミングを見計らってその「ちょっとした拍子」を作る
ことも可能だろう。
 あるいは、メンバーの一員として入り込み、隙を見てまとめて殺す――のは難しい
だろうから、一人ずつおびき出して殺す。
 彼らと合流する前に、そこまで計画したじゃないか。
 そして今現に、中村豊と二人っきりでいる。

847 :174(3/5):2005/11/11(金) 00:03:31 ID:xdroTn6E0
 中村豊を殺す。そして自分は適当に言い訳をして、何食わぬ顔でゴレンジャーに
戻り、次の計画を練る。
 完璧な計画。
 のはずだった。
(何をやってるんだ? 俺は)
 ゴレンジャーを離れ、かれこれ一時間は経っているだろう。赤星に借りたレーダー
は中村に任せきり。人を捜すわけでもなく、ただ無駄に時間を過ごしている。
 そんな自分に対して、苛立ちが募る。
(いつまで迷ってるんだ!)
 殺すか。殺さないか。
 あるいはここに誰かがやってきて、イレギュラーでも起こさないかと願っている自分
がどこかにいる。
 迷う必要なんてないはずだ。否、迷う資格などないのだ。
 選択肢など、最初から自分には用意されていなかったのだから。
(何を、迷ってるんだ? 俺は)
 秀太は黙って中村豊を見つめた。
 遅れてきた『ゴレンジャー』。おどおどと隠れ家に顔を見せた新参者は、おそらく
それまで何も出来ずに、怯えて潜んでいたに違いなかった。
 そんな彼が、堂々とこのゲームに立ち向かおうとしている。
(何を――)
『こりゃ、秀太! ちんたら歩くな!』
『勘弁して下さいよー。もう足動きませんよ〜!』
『軟弱なやつじゃのぅ。赤星を見てみぃ、もう向こうまでいってしもたわ!』
『あいつは別格じゃないですか〜』
『言い訳すな! そんな性根だから万年秀太なんじゃ!』
『わはは、万年秀太!』
『意味分かんないですよそれ! 藤本も笑うな!』
『まぁまぁ、秀太さん落ち着いて。しゃべるより足動かした方がいいですよ。
あ、赤星さんが戻ってきた』
『金本さん! あっちに洞窟がありました! 小さいけど、5人でしばらく潜む
には十分かと』

848 :174(4/5):2005/11/11(金) 00:03:51 ID:xdroTn6E0
『よっしゃ! でかした赤星! 行くぞ、藤本、的場』
『金本さん! 俺! 俺忘れてますよ!』
『よし、逃げるぞ!』
『イエッサー!』
『えええ〜〜っ!?』
 どたばたとした足音と笑い声が響く。洞窟までの数十メートルの駆けっこ。
 最下位の自分がへとへとになりながら入り口に辿り着くと、みんなニヤニヤ笑い
ながら自分を迎えた。
 ぐったりと座り込んだ自分に、褒美と言って投げて渡してくれたのは、金本の飲料用
の水だった。
 限りがあるものなのに、あの人は
『とっとと飲め、干からびられたら敵わん』
 藤本が笑った。赤星も的場も笑った。
 そうだ。笑っていた。
 自分も、みんなも。
(この人達のせいだ)
 目の前の中村豊を睨み付ける。
 さっきから無言で見つめてくる秀太に、疑問符を浮かべた顔で、こちらを見返す中村。
 多分、自分は彼と同じだ。『ゴレンジャー』にあてられて、馬鹿みたいに前向きに、
生きようとしている。
 ただ決定的に違うのは――
(俺は、殺さないと)
 そうだ。まずはこの人を殺さなければ。
 引き金は自分で引かなければいけない。 
 このゲームに乗り、生きて帰ると決めたのだから。
 そう、あの夜、自分の進むべき道に杖を倒した、その時に。

849 :174(5/5):2005/11/11(金) 00:04:20 ID:xdroTn6E0
「さっきからどうしたんだ? お前」
 様子のおかしい秀太に、中村が心配そうに聞いてくる。
「顔色悪いぞ。具合でも悪いのか?」
「――大丈夫ですよ」
 近づいてきた中村から距離を取るように、一歩下がる。曖昧な笑みを浮かべて返す
と、中村は不審そうな顔をしたが、それ以上は近づいてこなかった。
「? ならいいけど――しんどいなら、早めに切り上げて帰ってもいいんやで?」
 あくまで自分を気遣ってくる中村に苦笑する。
 信じられることが、こんなに辛いなんて思わなかった。
(本当に、どこまでも馬鹿な人達だな)
 少しでも疑ってくれたらもう少し楽だったかもしれないのに。
 信頼なんて崩れるのは簡単だと思ってたけど、崩すのって意外に難しいんだなと思った。
 彼らに限り、との注釈付きだが。
「ってかふらふらこんな山の中上がってきたけど、道分かってんのか?」
 地図を広げた中村が話題を変える。
(ああそうか。だからか)
 秀太は納得した。
「これで2人で遭難して帰れなくなったりしたら、笑い話にも――」
 だから、自分が選ばれたのか。
(俺は姑息な人間だから)
「帰る必要なんてありませんよ」
「え?」
 地図から顔を上げた中村豊の惚けたような表情が、ブローニング・バックマークの
照門越しに見えた。
『背番号00 田中秀太』
 一番始めにその名を呼ばれ立ち上がった。
 ずっしりと重いデイバッグを平田から受け取った時、何事かを視線で促してきた
平田に、秀太が小さく頷いたことに――
 気付いた者は、その場には誰一人いなかったはずだ。


【残り40人】

850 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 00:30:25 ID:oeyB/HRo0
職人さん乙です。
ちょ…秀太、そんな事考えてたのか・・・
ゴレンジャーの描写が楽しそうなのが余計に辛いな

851 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 01:46:42 ID:+9DCSQXf0
しゅ、秀太・・・おおおお豊あああああああ
切ない・・・この金本組が阪神で一番好きだからこそ切な過ぎる。・゚・(つд∩) ・゚・ 。

852 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 01:54:21 ID:GJYfGx+LO
選ばれたって…
てか平田って

えぇーっ!?


853 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 03:39:31 ID:VPRmFTgm0
新作!職人様乙です。
いろんな選手がいろんな事情(裏)を抱えてて、いやもうホント深いね…

豊が心配でしょうがない。ハラハラ

854 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 14:55:59 ID:RnHlboSIO
職人さん毎度乙です。
ついに秀太の謎が明らかに…。
秀太の心情や対極的なゴレンジャーの面々の愛すべき姿とか…
マジで泣けますた。・゚・(ノД`)・゚・。
174氏個人的に大ファンなんで、これからも力作期待してます!
その他の職人さんたちも待ってます(・∀・)ノシ

855 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 17:48:10 ID:caOOvyQN0
チンカス共今日もドーム行って応援しとけやっ!
にゃははは〜


856 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/11(金) 22:20:09 ID:sCYvyZ570
保守

857 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/12(土) 00:01:24 ID:4jSa5Ibd0
新作乙です
秀太も苦しんだんだなあ・・・でも裏切りは悲しい

858 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/12(土) 00:04:40 ID:GJYfGx+LO
ジョーカーキタコレ

ああああ秀太ぁぁぁああぁ

859 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/12(土) 16:34:18 ID:QAQzCQWXO
秀太はこのあと何か事を起こしてゴレンジャー離脱してマーダー化するのか…
豊テラアブナスorz

860 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/12(土) 22:09:53 ID:eLTHDWeG0
ほしゅ

861 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/13(日) 01:57:31 ID:tXlPWQ9TO
桟原と牧野の話を追って読み返して改めて泣けた。・゚・(ノД`)・゚・。
秀太のを今読み返すと複雑な心境になる。裏にはかなりの葛藤があったんだな…。

862 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/13(日) 17:17:59 ID:ljYVytxh0
ほしゅ!

863 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/13(日) 19:51:53 ID:m3qMNoeg0
ほしゅ

864 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/14(月) 03:13:54 ID:XxKbn+AN0
さらにほしゅ!

865 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/14(月) 14:01:12 ID:CCCTf6yG0
続き期待

866 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/14(月) 16:50:09 ID:LjKyJiFV0
危険なのであげ

867 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/14(月) 17:17:05 ID:ZOYNQHFT0
ほsh

868 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/14(月) 23:06:24 ID:6ObomOHm0
保守

869 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/15(火) 12:00:08 ID:8iWFbuCZO
現実では「波風立てぬ」が座右の銘なモナさんが2人も殺ってて恐ろしい
桧山との出会いで生まれ変わることを信じる

870 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/15(火) 23:09:22 ID:PEzohmGJ0
保守

871 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/15(火) 23:09:57 ID:75O0SN+k0
いつもどおりの桧山なら今岡を止めてくれると思う。
けど今は自分でもよくわからない不可解な行動取ってるし
死ぬ覚悟まで固めてしまってるからどうかなあ。
章タイトルが「運命を打ち砕け」だから期待したいんだけどね。

872 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/16(水) 00:08:28 ID:uLBVyoTq0
いつも楽しませて頂いてます
感謝しつつ保守

873 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/16(水) 05:41:29 ID:KHpzLHnuO
名前欄に2005版とかつけたら出来そうじゃね?ベイスレみたいに

874 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/16(水) 10:41:48 ID:3xRJsJRSO
>>873
確かに今年入ってきた人でノウミタンみたいにキャラが立っている人もいて面白いかも試練が
個人的にはこのスレでは2004年版を最後まで読んでから新たなものに移行してほしいな

875 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 00:12:23 ID:IXvM51nM0
>>871
モナもだが桧山って行動が想像できんから怖い
今後どうなっていくのか心配だ・・・。
裏切り者は秀太だけではないかもわからんしそっちも怖い

876 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 07:01:36 ID:0ZtIVrbc0
能見タンのキャラって、やっぱり星野王子系?

秀太と平田のアイコンタクト、想像したらコワス・・・!

877 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 13:19:36 ID:nVSmaZ8s0
そういえば濱中ってあれからどうしてるんだろう
気になる

878 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 19:54:26 ID:2tUkrLe70
続き期待しつつ保守

879 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 20:52:33 ID:rjJvO8at0
ほしゅ

880 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/17(木) 23:48:58 ID:4KZElSuQ0
濱中も長い間出てきてないな
会いたい人って誰なんだろう

881 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/18(金) 00:36:32 ID:ySqkhobQ0
濱中の会いたい相手って勝手に今岡だと思ってた
で、今岡の会いたい相手が金本って来た時に
こりゃ面白くなるぞって勝手に一人で盛り上がってた
本当は誰なんだろなー

882 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/18(金) 13:24:12 ID:/o6Oziew0
今岡か赤星あたりかな、と見当をつけていた

883 :174(1/7):2005/11/18(金) 22:06:26 ID:t4vIz/P00
>>849
回想・最後の晩餐

田中秀太が球団事務所から連絡を受け、甲子園に赴いたのはゲーム開始の前夜の
ことだった。
(こんな遅くに何の用だろう……)
 夕食の後、家の電話が鳴った。妻から受けとった受話器から流れてきた球団職員
の声は、ただ監督からの急用だと、いうことを告げて切れた。
 こんな緊急の電話が、良い知らせである気は到底しない。
 ほとんど2軍暮らしが続いた今シーズン、自分にも常に付きまとっている『トレード』
という言葉がより密度を増して重苦しくのし掛かってくる。首筋が薄ら寒くなる秀太
だった。
 だが、トレード通告ならわざわざ夜に呼び出したりするだろうか? 普通なら球団
から電話一本でしまいなはずだ。あるいは、もっと別の話か――
 考えたところで答えが分かるわけではない。岡田に会えば、嫌でも知らされることだ。
次々に思い浮かんでくる最悪な結果から目を逸らして、秀太は関係者通路から入って
すぐの甲子園主催者本部に向かった。
「岡田監督は二階です」
 そこには見覚えのない職員らしき男が1人いただけだった。促され、階段を上って
監督室に向かう。どうも空気がおかしい。オフのこの時期に(しかもこの時間だ)何
をこんなにドタバタすることがあるのか――慌ただしくすれ違う職員の表情は硬く、
また緊迫した雰囲気が漂っていた。
 監督室に通じる廊下で、秀太は立ち止まった。秀太が向かおうとしている部屋の
前に、黒ずくめの男が2人、まるでガードマンのように直立していたのだ。
「あの……」
「田中秀太様ですね」
「はぁ」
 声をかけると、そのうちの一人に固い口調で問われ、曖昧に返す。
 もう一人が慇懃にドアを開け、中に入ることを促される。
 おかしい。政治家か企業の重役にでも面会するような、堅苦しい雰囲気に首を傾げる。
「失礼します。田中秀太ですけど――」
「おう、入れ」

884 :174(2/7):2005/11/18(金) 22:06:57 ID:t4vIz/P00
 聞き慣れた声が返ってくる。秀太が静かにドアを開けると、予想通りの顔がそこ
にはあった。
 ソファに座った岡田の手前の背の低いテーブルに、マクドナルドのお持ち帰り用
の紙袋が転がっている。
 それがえらく、今の自分の胸中からすると軽薄な物に思えた。
「まあ座れや」
 向かいの席を勧められ、大人しく従う。すると後をついて入ってきた男2人がドア
を締め、秀太が座ったソファの後ろ両脇に控えた。どうにも居心地が悪い。
「今日は、お前に頼みたいことがあるんや」
 急に呼び出してすまない、程度の謝罪もなく、唐突に岡田は話を切り出した。
「明日から始まるある催しで、お前には主催者側として動いてもらいたいんや」
「催し……ですか?」
 そんな話は聞いていない。しかも明日とは、随分と急な話ではないか。
「まあ、あれや。びっくりイベントみたいなもんや」
 招待者側には直前まで知らされない、サプライズパーティみたいなものだろうか。
「どんなイベントなんですか?」
 己の異動に関わる話ではなくてとりあえずほっとする。イベントの司会者等なら、
秀太に頼むのも納得がいった。そういう場の盛り上げ役には適任だという自覚はある。
それならば、こんな直前ではなくもっと早く話を持ち出してくれたら良いものだが。
 岡田は手元のフライドポテトを数本摘んで口に放り込み、シェイクで一度流し込
んでから口を開いた。夕飯を食べたばかりだが、見てると少しお腹が空いてくる。
「まあ簡単に言うと、殺し合いのゲームやな」
「は?」
 意味が分からない。秀太は空気の抜けた風船のような声を返した。
「説明すると長くなるんやけど、しゃーないな……。実は手塚新オーナー直々に、
ある命令が下ったんや」
 そこから始まった話は実際長く、また全く要領を得ない分かりにくいものだったが――
「ま、そういうことで、お前には一参加者に扮してゲームに参加してもらって、
ゲームの進行を手伝ってもらいたいと思うんや」
 締めくくられた言葉は、ここに来るまでに秀太が考えたいかなる最悪な結末より
も最悪なもので、まったく想像の範疇を超越した『抜擢』だった。
「そんなもの……受けられるわけがないじゃないですか……!」

885 :174(3/7):2005/11/18(金) 22:07:22 ID:t4vIz/P00
 乱暴にテーブルを叩き、秀太は立ち上がった。
 激昂する秀太とは対称的に、見上げてくる岡田の目は、まるで退屈なバラエティ
を見ながらポテトチップスでも囓っているかのように魯鈍としたものだった。 
「受けてくれんのか?」
「当たり前ですよ! このゲーム自体、おかしいですよ! 冗談じゃありません!
 考え直して下さい! 正気ですか――!?」
 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、秀太のすぐ後ろから、耳を劈くよう
な破裂音が聞こえ――部屋の奥の窓硝子が割れた。
 向かいにいる岡田の後方――監督室の窓硝子に、一瞬で蜘蛛の巣のようなひびが
走り、パラパラと白い粉を上げて砕けた破片が床に落ちる。
「――」
 その様子に、秀太は声も出せないまま硬直した。
 それが後ろに控える黒服の男のうち一人が撃った銃弾によるものだと悟った瞬間、
秀太の背中に言いようもない寒さが押し迫った。
「……あいつと同じこと言いよるなぁ」
 本来ならば驚くべきその状況に、岡田はのんびりと首を傾げた。
 まいったな、と言うようにぼりぼりと後頭部を掻いてソファに背中を沈める。
「もうちょっと、頭のイイヤツやと思ってるんやが」
 俺か? 俺のことか?
 突然発砲した男に言及しない岡田に愕然とする。銃は違法物ではなかったか? 
日本では、銃刀法違反の罪で逮捕されるはずではないのか? 自分の常識すら疑う
ほど、岡田は平然としていた。平然と、フライドポテトをつまみ上げる。
 秀太は悟った。悟ったと言うよりは、身をもって実感したという方が正しい。
 岡田の言うゲームは本当なのだ。
 これが当たり前の世界を、岡田は今用意しているのだ。
「みんな……皆さん、これに賛成したんですか?」
 恐る恐る口を開く。無駄な詮索は身の危険を招くかもしれない。だが、聞かずに
はいられなかった。
「丁寧に話したらみんな分かってくれたわ。まあ佐藤が……ひとり、あかんかったけどな」
 投げやりな台詞。そこに含まれたいくつもの情報が、秀太にリアリティを伴って
今己の身が置かれている恐怖を植え付けていく。
「まさか、佐藤さんに、何か……」

886 :174(4/7):2005/11/18(金) 22:08:04 ID:t4vIz/P00
 喉がカラカラだった。かさついた唇で、声を絞り出す。
「お前は知らんでええことや。ま、この話を受ければの話やけど」
 その言葉は、裏を返せばこの話を受けなければ否が応でも知ることになると――
暗にそう言っているように秀太には聞こえた。
 ガクガクと膝が震える。全身から冷たい汗が噴出するのを感じた。
 窓の外は暗い。銃弾に貫通された、小さな丸い穴。その黒々とした口を中心に、
刻まれた蜘蛛の巣が何か違う世界へと誘うように手を広げていた。
 氷入りの冷水を浴びせられたかのように、脳が冷え込んでいく。秀太は急速に現状
を理解していった。
 このゲームは冗談ではない。岡田は自分達に殺し合いをさせようとしている。そして――
『あかんかった。』
 その言葉の意味を明確に悟り、軽く脳が揺れる。膝は限界に達し、とうとう秀太
はソファに倒れこんだ。
(佐藤コーチ……まさか……)
 穏やかだが厳しい男の顔を思い浮かべる。彼はもう、この世にいないのだろうか。
「お前も食うか?」
 ソファに身を沈めた秀太に、岡田が手を付けていない紙袋を差し出した。
 赤と黄色と白の三色印刷をされた紙袋。
「ほら、甲子園のすぐ側にマクドがあるやろ。あそこで今日はこのセットが安かったんや」
 頼んでもいないのに、袋からハンバーガーとポテトを取りだし、目の前に置く。
これは彼なりの、突然呼びだした部下に対するもてなしのつもりなのかもしれない。 
 よくある何とかデーというやつだろうか。そんな時を狙ってわざわざ買わなくても、
マクドナルドなど安いものだろうに。
(特にこの人にとっては)
 一球団の監督が、いくらなんでも庶民臭すぎではないだろうか。
 その庶民臭さと、彼が口にするゲームの現実味のなさに、余計に混乱させられる。
「なんで俺……なんですか」
「首脳陣会議で、お前が一番適任や、という話になった」
 ようやく口に出した秀太の疑問に、岡田はあっさりと答えた。
「うちのチームには馬鹿正直なやつも結構多いからな、せっかくおもろい役を与え
てやっても、演じきれなかったら意味ないやろ」

887 :174(5/7):2005/11/18(金) 22:08:27 ID:t4vIz/P00
 進行役になれということは、人を騙せと言うことだ。一般の参加者を演じきり、
かつゲームを着々と進行させるためのあらゆる小細工を行っていく――そう誰にでも
務まる役目ではない。
 選ばれたことを光栄に思うべきだろうか。少なくとも自分は首脳陣から、『馬鹿』
ではないと思われているらしい。
 後輩の関本や金澤に比べれば、確かに自分は『ずる賢い』人間だと思う。
 だがそれが、この状況で誉められた能力なのかと言われれば、答えに窮するしか
ない。知らない方が良かったのか、どうなのか――それは、今の時点で判断できる
ことではない。ただ、知りたくはなかった、という気持ちはある。
「お前はそれで賢いから、身の振り方は分かってるやろ」
「…………」
 答えない秀太に、岡田は「なんや、まだ迷っとんのか」と言いたげに耳の穴に指
を入れて息を吐いた。
「……お前のところは、奥さんと子どもは男女一人ずつやったな」
「なっ……」
 ぽつりと呟いた岡田に、秀太の顔色が変わる。
「家族は関係ないでしょう! そういうことなら、今すぐ帰らせてもらいます!」
 立ち上がり、出て行こうとする秀太。
 黒服の男のひとりがドアの前に立ち、行く道を塞いだ。懐に手を入れた大柄な男
に立ち塞がれ、身がすくむ。
「無駄や」
 男に半ば無理矢理席に戻された秀太に、岡田はシェイクを手渡した。
 秀太は荒っぽくそれを受け取り、勢いよくストローをすすった。カラカラに乾い
た喉に、冷たくて甘い液体が痛いくらいに染みた。ストロベリーシェイクだった。
「お前が家を出た時点で、もう手配はしてる。雇ったのがちょっと荒っぽい連中やが、
今んとこ手荒な真似はせんようによう言い聞かせてるから大丈夫や」
 ストローに口を付けたまま睨み付ける秀太から離れ、岡田は引き出しから電卓を
取りだしてまた戻ってきた。
「もちろん、これは監督命令やなく、要請や。見返りはそれなりに用意する」
 電卓を打った岡田から提示された額は、一般人よりも金銭感覚の水準が高いで
あろうプロ野球選手の秀太にしても、およそ想像もつかないような金額だった。
「はったりやと思うか? だがこれは上の人間からの提示や。いっちゃん上のな」

888 :174(6/7):2005/11/18(金) 22:08:50 ID:t4vIz/P00
 一番上、というのが誰のことを差しているのか秀太には確信が出来なかった。
この計画にどこまでの人間が関わっているのか、それは秀太の想像の及ぶ範囲では
ないように思えたのだ。
「お前がわしらの要請を受け入れるなら、最後の生き残り枠の選手とは別に、お前
の命は保障する。帰ってきたら、好きにしたらええ。働かんでも一生遊んで暮らせ
るやろう。野球選手を続けたいなら、お前の行きたいところに行きたい額で行かせ
たるわ。それとも、レギュラーを保障して欲しいか? おまえさんが大成したら、
嫁さんも、子ども達も、喜ぶやろうな」
 それは――仲間という屍を犠牲にした天国への道案内だ。
 岡田の声を聞きながら、秀太は目の前のテーブルに視線を落とした。横倒しに
なったフライドポテトのMサイズが目に入る。
 それにしても、最後の晩餐がコレというのはしけすぎている。
 秀太は二つほどポテトを摘んで、口に放り込んだ。塩辛い味が口に広がる。
「お前が断っても明日からゲームは始まる。一般の参加者としてや。さっき言った
ような特典はなんもない。仮に生き残って帰ってこれたとしても、コレ」
 すっと、岡田が自分の首を人差し指で横になで上げた。
「家族も、どうなるかわからへんなぁ……」
 秀太は目を瞑った。ゆっくりと、心臓が腹の方に落ち着いていくような、静かな感覚。
 秀太は考えた。
(何を迷っている?)
 迷う必要などないはずだ。
 方や莫大な報酬と地位、方や身の安全の保障のない家族。
(この依頼を受けたら、どうなるのか――)
 さて、どうなる?
 秀太は目を開けた。顔を上げると、したり顔の岡田監督が座っている。
 甲子園。監督室。岡田監督。マクドナルド。黒服の男。銃弾。殺戮ゲーム。
 日常が非日常へと変わっていく。

889 :174(7/7):2005/11/18(金) 22:09:34 ID:t4vIz/P00
 非日常こそが、日常へと移っていく。
 その狭間に今自分は立っているのだと、秀太は自覚した。
 目の前に扉は一つしかない。日常という部屋から、非日常という部屋に移ると、
そこは日常へと変わるだろう。
(ただ、それだけのこと)
「どや?」
 もう一度問いかけられたとき、秀太の答えは固く決まっていた。
 口の中で、半分噛んだフライドポテトがかさついた感触を残していた。


【残り40人】

890 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/18(金) 23:17:36 ID:nbF2UzxY0
うおおぉぉぉΣ(゚Д゚;)
それで秀太があんな事に・・・。
職人さん乙です。

891 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/19(土) 00:16:04 ID:9MZ+ESX50
秀太ああぁぁぁ!!!!
どんでん鬼すぎる・・・

892 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/19(土) 00:54:02 ID:7a9QSmoS0
職人様乙です。
しゅ、秀太…つらいな。

純粋に殺しに走ってる参加者は此処にはいないのかも…と、読んで思ったよ。

893 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/19(土) 01:16:36 ID:Dc6owD6HO
職人さん毎度乙です!
秀太がこんなことになってたとは。・゚・(ノд`)・゚・。
ゲームを潰すゴレンジャーにユダが入り込み、且つゴレンジャーもユダも仲良しだから
今後も様々な心の葛藤が繰り広げられるんだろうな。
考えるだけで胸が痛む…。

それにしてもマクドのポテトつまむどんでんワロスw

894 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/19(土) 02:23:53 ID:KU+uzDzJ0
やばい、どんでん超ムカつくw

895 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/19(土) 13:54:39 ID:EK0/OAne0
ほしゅ

896 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/20(日) 00:20:00 ID:mfxBCowZ0
保守

897 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/20(日) 00:30:24 ID:uuyQVsVf0
下がりすぎのためいったんあげ

898 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/20(日) 02:38:04 ID:UO7ASG3k0
秀太ぁ。。。
チーム内のムードメーカーだったおかげで
こんなことになってたとは。。。

899 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/20(日) 20:50:33 ID:SLZiCniC0
yano

900 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/21(月) 00:23:36 ID:zmbN3lFu0
900

901 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/21(月) 17:55:03 ID:UGRFdXsN0
保守

902 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/22(火) 02:31:22 ID:wsUEK5e/0
どんでんボイスでマ↑ク↓ド→が耳に聞こえてきそうなリアルさだなあ
あそこの冷めたポテトはあんまりおししくないけどw

903 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/22(火) 19:21:12 ID:UJktL14H0
ほしゅ

904 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/22(火) 21:59:30 ID:gPK8m7+r0
マ↑ク↓ド→ってどうやって発音するんだろう・・・・・。
関東人のオイラには想像出来ない

905 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/22(火) 23:55:06 ID:lLauQgGX0
マ↓ク↑ド→  じゃないのかw

906 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/23(水) 00:35:11 ID:nHspzxwJ0
age

907 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/23(水) 04:00:26 ID:GgL9Ig/+0
>>905
関西ならその発音だとオモ

908 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/23(水) 19:22:10 ID:EAJ/bcJ80
保守

909 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/23(水) 21:49:45 ID:ADf2SaRB0
ああ・・・・続きが気になるねぇ
クボタンは死んじゃったんだろうか

910 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/23(水) 23:03:02 ID:j2k1qQmf0
死んでも話の中ではっきり書かれるまでは
残り人数に反映されないんだっけ?
だったらクボタンや豊が死んでしまってる可能性もあるのか・・・

911 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/24(木) 01:01:24 ID:uroefzVw0
ローカルトークがリアルだw
あそこ阪神が勝ったらナゲット100円なんだよな

912 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/24(木) 01:49:59 ID:ET+3jB2Y0
そろそろ数減らんかの…と血も涙もないことを思ってしまう

913 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/24(木) 20:42:51 ID:guauB5kR0
>>912
確かに血も涙もないがなんかわかるw

914 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/24(木) 21:42:00 ID:ABHLH6O/0
殺人鬼になるのは大体桜井、三東だね
おじいちゃんやモナさんがなるのもあったけど
三東は男前だからヒールが似合うよな

915 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/24(木) 23:24:37 ID:Cll/wzhY0
桜井はマーダー以外のキャラが想像できないな
今は記憶なくして混乱してるけどこの先どうなるんだろ
三東は49氏版だと正義感溢れる熱血漢、若虎BRでは冷酷な殺人鬼だった
リレーでは実はまだ誰も殺してないんだけど妙に怖い

916 :914:2005/11/25(金) 00:26:12 ID:zPWOTN/60
>915
 あああ、三東そうだっけか
 若虎BRの三東が強烈ですっかり殺人鬼のイメージ化してた
 江草の左腕にナイフ突き刺すシーンとかオソロシス

917 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/25(金) 21:49:27 ID:ky15HUbj0
>>889
90.ユダの哀愁

 ブローニング・バックマーク。
 扱いやすいその小型の銃は、いい選択だと言える。至近距離なら、その精度は
かなり高い――はずだ。
「冗談だろ?」
 中村豊が引きつった笑顔を浮かべる。地図を畳みポケットに突っ込み、こちらに
顔を向けたまま後ずさりする男に、秀太は引き金を引いた。
 ――パァン!
「うわっ!?」
 ずるっ、と小石に足を取られ尻餅をついた中村のすぐ上を銃声が掠める。
 秀太は舌打ちした。向こうの悪運が強いのか。こちらが悪いのか。
「マジで……?」
 こけていなければ確実に頭を打ち抜かれていたであろう中村が掠れた声を上げる。
血の気の引いた顔が、愕然と秀太を凝視した。
 慌てて立ち上がった中村は背中に回していたライフルを手にして秀太に向かって
構えた。手にしていた探知機を、後ろ手に放り投げる。
 探知機は弧を描き、中村豊の後方にある茂みの中へと落ちた。持っていたら邪魔
だと判断したのだろう。
「やめろ! 秀太やめろ!!」
 身を守るように、無茶苦茶に長躯の銃創を振り回す中村豊。
「ちっ……」
 後ずさる中村豊との距離を狭める為に、秀太も銃を向けたままじりじりと近づくが、
ブンブンと身体ごとライフルを振り回す中村に、焦点が定まらない。
 出来るだけ近づきたかったが、ライフルの凶悪な銃口がそれをはばんだ。
 中村本人は撃つ気はなさそうだが、こんな扱いをしていたらいつ暴発するともし
れない。
 まだ使ったことのない銃だ。距離があると当てられる気がしない。銃声を聞き咎め
られる危険性もある。無駄打ちは避けたかった。

918 :174(2/5):2005/11/25(金) 21:51:19 ID:ky15HUbj0
 中村が一歩下がっては秀太が一歩近づく、コメディのような距離の取り合いが続く。
(ちょっと待て――)
「くるな! くるな!! くるな!!!」
 足下も確認せず、だんだんと後ろへ下がっていく中村豊に、秀太はあることに気
付き声を上げた。
「中村さん、そっちは……!」
「――!? ウワァァァ!?」
 切り立った傾斜に足を踏み入れた中村豊が、引きつった顔で足下を見る――
 秀太が目撃した中村豊は、そこまでだった。
 意せずして空間を踏んだ足が泳ぐ。
 助けを求めるように伸ばされた手を、当然掴めるほどの距離でもなく――
 空を切った両手が、遠ざかる悲鳴と共に視界から消えた。
「死んだ……か?」
 静かになったそこで、一人取り残された秀太は小さく呟いた。
 いや、まだだろう。微かにうめき声が聞こえた。
 だがかなりの高さがあった山肌を、中村豊が転がり落ちていったことは間違いない。
 死んでいなくても、重症を負ったり、気を失っている可能性はある。
 殺さなければ。
 そう、殺さなければ戻れない。生かしたままだと、中村が金本たちに合流する恐
れがある。このままアジトに帰るわけにはいかない。
 殺して、何事もなかったかのように戻らなければ。
 中村? 知らない、はぐれてしまった――と。
 そこまで考え、秀太ははたと気付いた。
(どこに?)

919 :174(3/5):2005/11/25(金) 21:52:06 ID:ky15HUbj0
 何処に戻れるのだろう。
 取り残された山中で、秀太はそんな疑問に行き当たった。
 中村を殺して、何食わぬ顔で、彼らが待つ場所に?
 きっと心配してる。自分がユダだなどと爪の先ほども疑っていない彼らは、純粋
に秀太と中村の帰りが遅いことを心配しているだろう。探しに行こうと言いだして
いる者もいるかもしれない。
 こんな状況で、狂いそうなほどの状況で、彼らは普段と変わらぬ会話をして笑って
いた。自分も笑っていた。
 己の置かれた立場を思い出したくなかったのかもしれない。
『気のせいちゃいますよ。そろそろボケが……』
『なんじゃとこのサル!』
『音大きいですって!』
『何やってんですか、全く……』
 くだらない会話。くだらないワンシーンが、何物にも代え難い愛おしい者のように
映像となって脳裏を過ぎる。
 もしかしたら、あの悪魔の要請を受けてからこれまでで――
 一番「生」というものを感じられたのは、彼らとこんな風に軽口を交わしていた時
ではないだろうか。
 サァ――と、風が音を立てて過ぎった。
 手の中のBuck Mark.22が震えた。自分の手が震えているのだと気付くのに少し時間が
かかった。
 手だけじゃない、体中が震えている。
 自分が手に掛けたことの大きさに、地震の後の津波のように、時を置いて恐怖が迫
り上がってきた。

920 :174(4/5):2005/11/25(金) 21:56:10 ID:ky15HUbj0
 戻れる――だろうか。
 秀太は問いかけた。誰とも知れない誰かに。己か、あるいは自分の運命を弄んでいる誰かに。
 どこに?
 金本たちの元に? 元の世界に? 元の自分に?
 その全てが不可能な気がした。
 この引き金を引いてしまった瞬間、戻れる場所など、どこにもなくなってしまった
のではないのか?
『……お疲れ様です』
『"ごめんなさい"って――僕には、確かに聞こえました』
『いま名前を呼ばれた人たちって、本当にみんな死んでるんですかね?』
『――みんな、これからよろしく頼む』
 彼らは、彼らがいたからこんな世界でも正気を保っていられたのだろう。
 皮肉にも、それは秀太にすら、封印したはずの人としての心を思い出させてしまった。
(俺はもっと早く狂うべきだったのに――!)
 それは張り裂けそうな心の叫びだった。振り子が気が狂ったかのような勢いで左右に
大きく振れている。このまま折れて壊れてしまった方が、本当は楽なのかもしれない。
 ――嫌だ。
 こんな孤島で、仲間を裏切って、人を殺そうとして。
 それで帰る場所がないなんて、迷子の子供のように、背中を丸めている自分が自分
の中にいる。
 こんなのは嫌だ。
(俺は戻るんだ! せめて、元の家に戻るんだ!)
 妻も子供も待っている家に帰れば、自分を取り戻せるはずだ。
 幸せも、日常も、戻ってくる。自分には、家庭という帰るべき世界がある。
 戻る場所がないなんて、そんなのは気の迷いだ。
 そう自分に言い聞かせた。
 中村豊はまだ生きているだろう。斜面を見下ろして、少し下に降りて、動けない身体
を打ち抜けば終わる。
(終わる。終わるんだ)
 ――出来なかった。

921 :174(5/5):2005/11/25(金) 21:57:42 ID:ky15HUbj0
 手にしたブローニング・バックマークの先を無理矢理ポケットに突っ込み、秀太は
一目散にアジトとは逆方向に走り出した。その際に、ひらりと足下に落ちた白い紙
片に秀太は気付けなかった。
 ゴレンジャーに戻るという選択肢は捨てた。
 まだ狂い切れていない自分では、これ以上彼らを欺ける自信がなかった。
 むしろ、これ以上彼らの側にいるべきではない。
(嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ――)
 人を裏切り、引き金を引く度に、一つずつ大切な心を失っていく気がする。
(何で――)
 何故こんなことになってしまったのだろう。
『どや?』
 あの時、本当は自分はどう答えるべきだったのか。
 最後に感じた疑問を己の中から抹消し、秀太は今度こそ本当に、自分の進む道に
杖を倒した。
『お前みたいなアホは、なんだかんだでチームに必要なんじゃよ』
 山を駆け下りる秀太の脳裏に、いつか金本に言われた言葉が響く。
 あれは優勝した年だっただろうか。ベンチに座ってることが多かったけど、そう
言ってくれる人たちがいたから自分に誇りが持てた。
 やめてくれ。必要としないでくれ。俺は。俺は。
 生き霊のようにまとわりつく仲間達の笑顔も、励ましの声も、秀太は振り払った。
(俺は、そんな大きな人間じゃないから――)
 自分のエゴでしか動けないんだ。
 そこに落とした地図と共に、秀太は人の心を捨てた。


【残り40人】

922 :174:2005/11/25(金) 22:00:08 ID:ky15HUbj0
すいません。タイトルは
90.回想・ユダの哀愁
でお願いしますorz

923 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/25(金) 22:00:55 ID:zPWOTN/60
>922
乙です!!!

ああ・・・・・・・・豊
そして秀太 カワイソウニ つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

924 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 00:48:40 ID:HUgv2Efq0
>>922
乙です。

秀太…涙で画面が見えないよ。・゚・(つД`)・゚・。

925 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 00:57:22 ID:4GnlSNcy0
二人ともかわいそうだ。。。

秀太が完全にゲームに乗っていないのが辛いのぉ。

926 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 01:07:22 ID:sxlpZouK0
こうして人の心を捨てた秀太が、そしてマーダーに、か・・・
ようやく繋がった。たくさんの葛藤があったんだなぁ・・・カナシスギルヨ
職人さん乙です

927 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 01:32:12 ID:p/zeg1eE0
。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン秀太ー

928 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 03:33:15 ID:bLseHGJg0
秀太が秀太が・・・

929 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 16:48:01 ID:c8M8nVPv0
職人様乙です。
…こんなにも悲しい気持ちになるマーダーは、はじめてかもしれん。。
豊はまだ死んでないようで、すこしほっとした

バトロワ読んでるくせに、死んで欲しくないと思ってしまう俺って…

930 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 20:26:06 ID:opkpwORF0
秀太…。
ついでにほしゅあげ

931 :924(1/5):2005/11/26(土) 21:35:33 ID:DEbEU2LN0
>>921より
91.二軍監督の言い分

パキン、とシューズの下で音がした。ハッとして足元を見る。慎重に慎重に歩を
進めていたつもりだったが、前だけを見ていたため、小枝を踏みつけたのだ。
小さな音だったが、静けさに包まれた森の中では"標的"を振り返らせるには
十分だった。しまった、と葛城育郎(背番号33)は舌打ちしたが、すぐに気を
取り直した。ショットガンを構えた体勢を崩さず、できるだけ平静をよそおった
声で相手に告げたのだ。
「そのまま動かんといてください。変な真似したら、すぐ撃ちますよ」

自分の置かれた絶望的な状況を悟った木戸克彦(背番号70)の顔が
みるみるうちに青ざめてゆく。何か言おうとしているが、口がパクパク動く
だけで言葉にならない。拳銃を握った右手はどうすることもできず、腿の横を
ふらふらさまようばかりだ。その狼狽ぶりは葛城にいささか残酷な満足感を
与えた。背後から狙い撃ち、何も分からぬまま死なせなくて良かった、と。
その前にたっぷり恐怖を味わわせてやった方が、より溜飲も下がるという
ものだ。それに、言ってやりたいことが山ほどある。

「ま……待ってくれ!」
「木戸さん、俺は殺し合いに乗る気はないです。けど、こんなゲームを仕組んだ
やつらと監督やコーチみたいにそいつらの犬になった連中は絶対に許せん」
木戸がようやく絞り出した悲痛な声を無視して葛城は言い放った。
「特に木戸さん、あんた、二軍監督でしょう? 俺なんかは今年トレードで来た
ばっかりのよそもんや。けど、ほとんどの選手は、特に若いやつらはみんな
自分の子どもみたいなもんでしょう? それを、よくも、よくもこんな……
あんたら、それでも人間か!?」
人でなし、鬼、悪魔、卑怯者、人間のクズ……。胸にたまったすべての鬱積を
晴らすかのように、葛城は口汚く木戸を罵った。

932 :924(2/5):2005/11/26(土) 21:36:38 ID:DEbEU2LN0
「……違う、葛城。違うんや。俺は……」
怒涛のごとき言葉の攻撃を黙って受け止めていた木戸は、まるで今にも
泣き出すかと思うほどに顔をゆがめた。
「違う? 何が違うんです?」
ありったけの罵詈雑言を吐き尽くし、一息ついた後、葛城は尋ねてみた。
この期に及んでどんな言い訳を繰り出すのか、聞いてやるのも一興だ。
「こんなこと言っても信じてもらえんかもしれんが……今回のゲームの計画に
関わってたのは一軍のスタッフだけで、俺や二軍のコーチ連中はまるで何も
知らされとらんかった。これはほんまや。嘘やない」
おろおろと木戸は言ったが、葛城は鼻で笑った。自分は反対したがどうしようも
なかった、とでも言うならまだしも、何も知らなかったとはあきれかえる。
信じてもらえないかもしれない? まったくもって、そのとおりだ。

「嘘つかんといてください。じゃあ、なんであんたは武器持ってこんな所に
いるんですか? そこに転がってるのは、何なんです?」
問われて木戸はばつが悪そうに足元を見たが、すぐにまた弁明を開始した。
「こいつは、俺がやったんやない。この辺を歩いてたら見つけて、びっくり
してたんや。なんなら、ここに来て確かめてくれ」
倒れているのが誰なのか気になったが、もちろん、葛城はそんな言葉に乗りは
しなかった。うかつに近づいて不意打ちでも食らわされてはたまらない。
「――まあ、いいでしょう。もう一つの質問に答えてくださいよ」

「……俺は昨日、和田や八木と一緒に球団社長の野崎さんから突然
呼び出されて、このゲームを止めるように頼まれた。それまでは、ほんまに
何も知らんかった」
自分に向けられた銃口と葛城の顔とを落ち着きなく見比べながら、木戸は
これまでのいきさつを語り始めた。和田と八木、それに野崎――意外な名前を
聞き、葛城は少し興味を持った。
「いうても、殺し合いなんて現実にありえん話や。正直、野崎さんの必死な
様子を見ても最初は信じられんかった。けど……」
そこまで言うと、木戸はつらそうにうつむいたが、葛城は続きを急がせた。
「けど、なんです?」

933 :924(3/5):2005/11/26(土) 21:37:18 ID:DEbEU2LN0
やや躊躇する素振りを見せた後、木戸は再び語りだした。野崎の手配した
ヘリでとるものもとりあえず島に来たこと。学校内のモニタに映し出された
選手たちの殺し合いに驚愕し、事の重大さを認識したこと。三人で岡田に
ゲームをやめてくれるよう掛け合ったが聞き入れられず、薬を打たれて
眠らされた挙句ゲームに参加させられたことを。特に、モニタで見たという
数々の惨劇の話は具体的でリアリティに満ちたものだった。

葛城は相変わらずガンの照準をぴたりと木戸に定め、相手が妙な動きを
見せた時にはいつでも引き金を引けるよう神経を集中させていたが、心の
中では迷いが生じつつあった。嘘だとしたら、とっさにこれだけの話を作り
上げられるものだろうか。
「ゲームを止めるつもりが、なんの役にも立てないどころか、このザマや。
お前ら選手には、ほんまに申し訳ないと思ってる」
木戸は軽く頭を下げ、話の最後を結んだ。彼の言葉の端々からは、選手を
見守ってきた二軍監督としての無念さがにじみ出ているように思えた。

「けど、俺は今でもなんとかしたい。バラバラになったが和田と八木、それに
お前みたいにゲームに反対してる選手と協力できたらと……。信じてもらえん
なら、仕方ないが……」
葛城の逡巡をさらに煽らんばかりの台詞を付け加えると、木戸は観念したかの
ように眼鏡の向こうに奥まった両目を伏せ、それきり黙ってしまった。葛城は
少しずつ焦りはじめた。木戸は釈明を終えたらしい。後は自分が判断をくだす
のみだ。しかし、この引き金を引くべきか否か、結論はまだ出ていない。

――それ、撃ってみせてくれませんか?
不意に、濱中の笑顔と明るい声が頭にちらついた。まるで邪気を感じさせない
様子で近付いてきた男は、自分に佐久本を撃たせるという恐ろしい策謀を
めぐらせたのだ。そのことを思えば、木戸を簡単に信じるわけには行かない。
自分はまたしても、だまされかけているかもしれないのだ。
もう、だまされるのは沢山だ。
葛城は引き金に指をかけ直した。

934 :924(4/5):2005/11/26(土) 21:38:00 ID:DEbEU2LN0
だが――と、頭の中でもう一人の自分の声がする。
濱中の言葉に乗せられて何気なくショットガンを試し撃った結果、佐久本を
殺してしまった。自分の軽はずみな行動が取り返しのつかない事態を招いた
こともまた事実だ。今、怒りと疑いにまかせて目の前の男を撃ってしまって
いいのだろうか。もし木戸の言が真実であったならば、自分は再び後悔する
ことになりはしないか?
(俺は……)
ショットガンを支え持つ両手が鈍くしびれてきた。
木戸はじっと葛城を凝視し、 "審判"を待っている。

「……行ってください」
どれほどの時間が経っただろうか。ショットガンを木戸に向けたまま、葛城は
静かに言った。
「そのまま、行ってください」
もう一度繰り返したが、木戸は唐突な言葉の意味をつかみあぐねたらしく、
きょとんとした表情でこちらを見返してきた。

「木戸さん、残念ながら今の俺はあんたを信用できません。けど、あんたの
言うことが嘘やと言い切れる自信もない。だから、俺の前から消えてください」
「葛城……」
「早く行ってください!!」
木戸は何か言いたげだったが、ショットガンを突き出して威嚇すると、くるりと
背中を向けて一目散に走り出した。

935 :924(5/5):2005/11/26(土) 21:39:27 ID:DEbEU2LN0
構えていたショットガンを葛城が下ろしたのは、木々の間に木戸の姿が隠れて
完全に見えなくなり、遠ざかる足音も聞こえなくなってなおしばらく経った後の
ことだった。葛城はそのまま木戸が消えた森の奥をぼんやりと見つめた。
(これでよかったのか?)
もう二度とあんな後悔はしたくないという気持ちが発砲を思いとどまらせた。
だが、木戸への疑念が消えたわけではない。最初に疑ったとおり彼が
主催者側の犬ならば、自分はとんでもない人物を逃がしてしまったことになる。
(本当に、これでよかったのか――?)

答えが出せぬまま、葛城はゆっくりと木戸がいた場所へと足を向けた。
もう一つ確かめておくことがあったからだ。
そう、木戸の足元に倒れていたあの選手だ。木戸は自分の仕業ではないと
言ったが、あれはいったい誰なのか。
茂みをかき分けると、タテジマのユニフォームを来た男が転がっていた。
葛城は思わず顔をそむけた。背を上に倒れ伏した姿は、いやでも佐久本を
思い出させる。そして目の前の死体の有り様は、佐久本の何倍も悲惨な
ものだった。

上坂太一郎(背番号43)の死が告げられたのは、朝の放送の時だった。
血の乾き具合を見ても、今しがた殺されたのではないことは明白だ。
何か硬いもので頭をめちゃくちゃに殴られたらしく、銃による殺害ではない。
「……ちくしょう」
口から小さくもれた悪態が何に対するものなのか、自分でも分からなかった。

【残り40人】

936 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 22:20:34 ID:atJID3Oc0
イクローってば・・・・

937 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/26(土) 22:22:02 ID:cK1JWmcm0
良かった・・・・・。
木戸さん助かったね

938 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/27(日) 18:44:45 ID:gK3yVlzT0
(`_ノ´)

939 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/28(月) 18:29:29 ID:G9hMvpdm0
保守

940 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/28(月) 18:30:07 ID:vvGufAPlO
>937
山田だったら×

941 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/29(火) 19:14:28 ID:/F9od/C+0
保守

942 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/30(水) 00:52:21 ID:qA73wuJQ0
1赤星(中)
2今岡(二)
3金本(左)
4清原(一)
5桧山(右)
6片岡(三)
7鳥谷(遊)
8矢野(捕)
9投手


943 :代打名無し@実況は実況板で:2005/11/30(水) 22:39:25 ID:wq14/TEI0
ほしゅ

てか落ちずに1000いきそうだな。奇跡に近い。

944 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/01(木) 03:15:07 ID:OSSW8sBB0
落とさないよう、保守

945 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/01(木) 22:40:40 ID:sOoggAFQ0
1000までいきますように保守

946 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/02(金) 02:04:19 ID:AYrrapuq0
保守

947 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/02(金) 16:55:34 ID:bihP+RpbO
次スレって立った?

948 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/02(金) 19:11:56 ID:RseT/sz60
立ってない。チャレンジしたけど駄目だった…

949 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/03(土) 00:20:21 ID:eSGpxrgE0
次スレにはちょっと早いような・・・
でも最近立てるのが難しいらしいし
もう準備した方がいいのかな?

950 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/03(土) 21:13:54 ID:g5XQXpDE0
保守

951 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/04(日) 00:44:38 ID:j7MNWOBx0
保守

952 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/04(日) 18:42:38 ID:eSNTFKuP0
ほしゅー

953 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/04(日) 20:39:54 ID:6u4I+k9I0
保守

954 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/05(月) 12:53:49 ID:kcHNWwBS0
昨日の虎バンの下さんとラガーを見てなんとなくここを思い出した
久し振りに保守

955 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/05(月) 18:45:44 ID:Ul5dgsT0O
幾重の荒波に耐えて1000までいきそうですごいですな。
ここ見てリアル秀太まで応援したくなってきた。

956 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/05(月) 20:30:34 ID:dVUw0fvi0
保守

957 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/05(月) 23:01:12 ID:KPlobg6n0
最近新作きてないのでなんか物足りない・・・
職人さん、急に寒くなったので体調にきをつけて
またワクワクする話を見せてください!!

958 :924(1/4):2005/12/06(火) 00:06:51 ID:+rUdrEPm0
>>935より
92.桐蔭とPL

(アホや……。ほんま、俺はアホや……)
こう思うのは今日に入って何度目だろう? それももう最後かもしれない。
まっすぐこちらを向いた銃口に視線を貼りつけたまま、桟原はのこのこと
出てきてしまったことを悔やんだ。助けを求めるような声を放っておけなかった
のだ。まさか、こんなことになるとも思わずに。

「……ちょ、ちょっと待ってくれ、桜井。俺はやる気なんてあらへん。ほんま」
言ったところで、相手がやる気ならどうしようもない。先ほどの呼びかけが、
隠れている人間を引っ張り出すための手段だとしたら、こんなものは空しい
命乞いだ。だが、桜井は震える声で意外な台詞を口にした。
「あんた……誰や。なんで、俺のこと知ってるんや……」

「へ?」
思わず桜井の顔を見返す。焦点のぼやけた目はどう見ても普通ではないが、
殺意がある人間とも少し違うように感じられる。そこに望みがある気がした。
「だ、誰って……俺や、桟原。わ……忘れたんか?」
相手を刺激しないよう、極力やさしく問いかけてみる。

「さじき、はら?」
桜井は数回小声で繰り返すと、目を見開いた。
「――って、桐蔭の!?」
「トーイン?」
「大阪桐蔭の……」
「あ? ああ、そ、その桐蔭な。……そら、まあ、そうやけど」
大阪桐蔭は、桟原が通っていた高校のことだ。意味は分かったものの
唐突な言葉に戸惑いながら肯定した瞬間、銃を持つ桜井の右手が
あやつり人形の糸が切れるようにカクンと落ちた。

959 :924(2/4):2005/12/06(火) 00:07:25 ID:+rUdrEPm0
(た……助かった……?)
桟原が息を詰めて桜井の次なるアクションに注意を払っていると、彼は下を
向いてふーっと息を吐き、小さく「よかった」と口にした。
「え? そ、そうやな、よかったな。なんか分からんけど。ははは……」
なぜ相手が銃を下ろしたのかわけが分からないまま、桟原は相槌を打ち、
硬直した頬を無理やりつり上げて笑顔を作ってみせた。
もう4年ほど前になる。桟原が大阪桐蔭高のエースだった当時、一学年下の
桜井は同じ大阪府の強豪校・PL学園高にいた。桜井の記憶に残る存在で
あったことと、珍しい苗字とが、桟原にとっては幸いだった。

「桟原さん、ここ、どこなんスか? なんで、あんたまでそんなタテジマのユニ
着てるんスか?」
ほっとした表情を見せたのも束の間、桜井は急いた様子で尋ねてきた。
「なんでって……当たり前やろ、阪神の選手やねんから。お前も着てるやんか」
再三のおかしな問いにいぶかしみながら答えると、桜井は驚いた顔で泥に
まみれた自分のユニフォームをまじまじと見つめた。
「なんで? なんで、俺らが阪神の……」

いきなり出てきた高校の話といい、タイガースのこともゲームのことも
知らないかのような言葉といい、これはまるで――。
(まるで記憶喪失やな……)
それ以外に桜井の不可解な言動を説明できる理由を思いつかなかった。
何かの冗談か演技という可能性もあるが、そんなフリをする必要もない
はずだ。となれば、やはり本当に忘れてしまっているのだろう。
たとえそうでも、驚きはしなかった。今の自分たちは、世間一般の常識や
倫理がおよそ通用しない極限のバトルを体験させられているのだ。特に気の
弱い人間でなくとも、何かのきっかけで壊れてしまう可能性は高い。
(そうや、三東さんみたいに)

960 :924(3/4):2005/12/06(火) 00:07:57 ID:+rUdrEPm0
あの光景は悪い夢ではなかったかと今でも思う。青い月明かりのもと、牧野に
乗りかかって刀を振るう凶暴な姿。日ごろ仲良くしていた先輩の、おそろしい
変貌。牧野はあれを「魔が差した」と解した。三東は、このゲームに狂わされた
犠牲者なのだと。桜井の身に何が起こったのかは知らないが、彼もまた
三東とは違った形で壊れてしまったのかもしれない。

「お前、ほんまに全部忘れてるんか? このゲームのこととか」
「ゲーム? なんのゲームっスか?」
怪訝そうな顔で聞き返してきた桜井を見て、桟原は少し迷った。この残酷な
ゲームについてきれいに忘れているというのは、ある意味幸せなことだ。
果たして、事実を話してショックを与えて良いものだろうか。だが、いずれは
桜井にも自らの置かれた逃れられない現実を再び知る時が来るはずだ。
今、自分が隠したところで、その時は必ず訪れる。

「……まあ、とりあえず上がれや。説明するから」
俺の家ちゃうけど、と付け加えて手招きすると、桜井は靴を脱ごうとした。
「ええねん、脱がんでも。ていうか、脱ぐな」
もちろん、足が汚れるからではなく、何かあった時すぐに逃げるためだ。
「けど……」
「ええから履いとけ。あ、戸は閉めてくれ」
言われたとおり戸を引き、遠慮がちに土足で上がる桜井を横目で見つつ、
桟原はつくづく分からないものだな、と思った。普段見る限りにおいて、この
後輩は神経が図太く肝もすわっており、自分よりよほど強いと思ったのだが、
それでもこのようにおかしくなってしまうのだ。

961 :924(4/4):2005/12/06(火) 00:08:34 ID:+rUdrEPm0
奥の部屋に入って座布団をすすめ、さて何から話そうかと考えた時、桜井が
拳銃以外に何も持っていないことに気づいた。
「お前、荷物はどうしたんや? カバンかなんか持ってたはずや」
「持ってたかもしれないけど……分からないっス」
「しゃあないな。ほな……」
桟原は傍らに二つ並んだ自分のカバンと牧野のカバンを見比べ、自分の方を
桜井に差し出した。

「それ、お前のにしたらええ。パンが一つしか残ってへんから、これやるわ」
牧野のカバンを開け、三つ残っていたパンのうち一つを付けてやる。
「あ、ちょっと待ってくれるか?」
大事なことを思い出し、桟原はいったん渡しかけたカバンから地図と名簿を
取り出した。牧野の残した地図と、今は大切な遺書である名簿には、朝の
放送結果しか記入されていないので、昼の情報を書き取っておく必要がある。

「それは?」
まず名簿の死亡者名に印を付けていると、桜井がのぞきこんできた。
「今の阪神の選手の名簿や。お前も入ってるし、俺の名前もあるやろ?」
桜井はまだ納得できないといった表情だったが、写し終わった名簿を渡すと
食い入るような目で一つ一つの選手名を追い始めた。
「金本って――広島の? それに、なんで片岡さんが……」
「今は二人とも阪神の選手や」

「あ――」
桟原が続いて禁止エリアの位置を写すために地図を開いた時、桜井が不意に
声を上げた。名簿を見ていて何かに気づいたらしい。
「ん? なんかあったか?」
「久保田……」
その名をつぶやいた桜井の顔は、ひどく青白かった。

【残り40人】

962 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 00:44:42 ID:C+CrNUDq0
うおおおおおおおおおおおおおおお!!!
クボタンは・・・・・クボタンは無事なんでっかあああああ!!!

963 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 01:07:32 ID:A/u5K/E70
何か書こうと思ったのに、>>962のパワーに押されて忘れてしまったw

964 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 01:22:06 ID:q6jxNVHF0
>>962
もちつけw

>>958-961
職人さん乙です。
桟原と桜井戦闘にならなくてよかったよ(つД`)
桜井が現実を受け入れられるのかどうか、くぼたんがどうなったのか
これからの展開も気になるー

965 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 01:36:09 ID:ZfSfP8AA0
うわあ、新展開キタワァ!!
職人さん乙です!
サジーと広大、おもしろいことになってきたぞ…
ああ、くぼたん…>>962の勢いがすごいのもわかるよ。

966 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 01:40:49 ID:5aoEMUY70
兄貴は呼び捨てなのにモミーが「さん」付けなとこにPLの上下関係を見たw
職人さんGJ

967 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 01:45:25 ID:IBAUgHNU0
なんっかゾクゾクするわ
ほんとに>>962のように叫びそうになったw

968 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 04:30:03 ID:Y6Xfrnja0
職人さん、すげー!
966タンの目のつけどころもすげー!
とりあえず、桜井タンが戦闘意欲のないサジーに遭遇したのはよかったけど
今度はサジーがヤバス!

969 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 19:54:36 ID:qc0iTPGnO
つうか直後に>962でワロタ

970 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/06(火) 23:12:29 ID:xZ9pkAka0
職人さん乙です。
続きが、続きが激しく気になる!!

971 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/07(水) 10:56:16 ID:5Zk3Hq0D0
職人さん乙ー

972 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/07(水) 23:06:13 ID:mETH9/zP0
落合信者(=虚塵ファン)の巣窟
http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/ana/1121950255/

973 :( ´_ゝ`):2005/12/07(水) 23:38:01 ID:TZdRTiyX0
よし、おまいら俺がageてやる

974 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 01:04:45 ID:K6uIMHbs0
次スレは?

975 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 01:13:50 ID:yHW0d/Ba0
2005日本シリーズ 阪神タイガースが栄光の記録を連発! (すべて事実)

総得点 ロッテ33−4阪神

日本シリーズ史上最少得点
日本シリーズ史上最少安打
日本シリーズ史上最低チーム打率
日本シリーズ史上初本塁打ゼロ
日本シリーズ史上初リード機会なし
日本シリーズ史上最悪チーム防御率
「金本アニキ」、日シリ打率 .077

( ´,_ゝ`) プッ

一方のロッテは最高チーム打率、最良チーム防御率、
(4試合シリーズの)最多安打、最多得点を記録☆

976 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 18:40:48 ID:IbhKbGjN0
ほしゅ

977 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:27:36 ID:wEEbruSO0
次スレたてよか?まだ早いかな

978 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:39:45 ID:wEEbruSO0
立てますた フォローよろしくです

阪神タイガースバトルロワイアル第七章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1134038295/


979 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:41:50 ID:IbhKbGjN0
>>978
おお、ありがとう!GJ!

980 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 05:22:30 ID:KZOSmGRY0
岡田監督をボロクソに言ってた糞女子アナ
http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/ana/1121950255/

981 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 19:40:57 ID:Tg1Tj7PcO
1000スレまであと少し!

つ梅

982 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 19:50:37 ID:Q5B4vDer0
梅津

983 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 21:10:06 ID:31C4bI+9O
うめ

984 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 03:00:36 ID:nc7wxo2k0
(@ω@)つ●<ウンコでうめ

985 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 10:57:32 ID:cFiii1lA0
(゚д゚)ウマー

986 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 12:41:39 ID:5B8OkXutO
おはぎそれ違うw

987 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 13:58:30 ID:ZhsYazBD0
(・`_´・)埋め

988 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 23:34:28 ID:SoQpXTwB0
(e'ω'a)埋めるグサ

989 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 08:51:27 ID:QnP01htq0
(゚д゚)オハギウマー

990 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 09:29:23 ID:XshOMuixO


991 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 11:15:42 ID:FBoQ+kfc0
桧山さんと今岡さんの続きが気になります!!!

992 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 18:42:17 ID:4iWy2Ucw0
次スレ

993 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 07:49:04 ID:Cz6vNj510
umme

994 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:18:50 ID:NYRMcSv20
994

995 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:01 ID:NYRMcSv20
995

996 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:13 ID:NYRMcSv20
996

997 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:24 ID:NYRMcSv20
997

998 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:34 ID:NYRMcSv20
998

999 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:44 ID:NYRMcSv20
999

1000 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 19:19:55 ID:NYRMcSv20
1000

1001 :1001:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


実況は実況板でお願いします。プロ野球板での実況は禁止!
[ 野球ch ] http://live20.2ch.net/livebase/

アンチ行為、他スポーツや球団・選手間との比較はアンチ板で。
[ アンチ球団板 ] http://ex13.2ch.net/kyozin/


444 KB
★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)