5ちゃんねる ★スマホ版★ ■掲示板に戻る■ 全部 1- 最新50  

■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

阪神タイガースバトルロワイアル第七章

1 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:38:15 ID:wEEbruSO0

第一章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1094306095/
第二章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1099708704/
第三章 http://ex7.2ch.net/test/read.cgi/base/1102341356/
第四章 http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1108902838/
第五章 http://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1114253667/
第六章 http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1118662966/


2 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:38:25 ID:wEEbruSO0

保管庫
ttp://kobe.cool.ne.jp/htbr/
若虎BR紅白戦
ttp://homepage2.nifty.com/sorasouyo/wakatora.htm
暫定HTBR板
ttp://jbbs.livedoor.jp/sports/20081/
HTBR保管庫掲示板
http://jbbs.livedoor.jp/sports/21871/

リレー関連

二章スレ939氏による選手一覧・時間表
ttp://www.geocities.jp/htbr_2004/list.html
ttp://www.geocities.jp/htbr_2004/time.html


3 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:38:43 ID:wEEbruSO0
他球団現行スレ

広島東洋カープバトルロワイアル2005
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1130678239/

千葉マリーンズバトルロワイアル第8章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1117500482/

アテネ五輪日本代表バトルロワイアル 第一章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1133540671/

一億円プレーヤーバトルロワイヤル第三章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1133013773/


各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ4
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1113322101/

関連スレ

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ4
ttp://ex10.2ch.net/test/read.cgi/base/1113322101/l50

4 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:39:05 ID:wEEbruSO0
他球団バトルロワイアル保管庫

読売巨人軍バトルロワイヤル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://cdbr2004.hp.infoseek.co.jp/ (2004年版)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
千葉マリーンズバトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/

5 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:40:50 ID:wEEbruSO0
>>3
いきなり間違えますたorz申し訳ない

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ7
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1125897603/


6 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 19:42:08 ID:IbhKbGjN0
>>1
乙です!

7 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 21:34:36 ID:0qJ7ngIX0
おお、新スレ立ってたんだ
>>1さん、乙!

8 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 21:59:06 ID:gSja7tU10
>>1
乙カレー
クボタンどうなったんやろ…ハラハラ

9 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 22:14:53 ID:u3bpNJTs0
>>1
20レスまで保守した方がいいのかな

10 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 22:17:11 ID:KYtvzBqF0
>>1
乙!そして保守!!

11 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 22:24:27 ID:UkWG/py90
>>1
乙!
コレで一安心

12 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 23:21:48 ID:wdfbjlZVO
即死回避
>>1さん乙です〜

13 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/08(木) 23:44:21 ID:sWQB57Cb0
>>1さん乙です!
前スレもここまでよく持ったものだ

14 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 01:18:43 ID:Tg1Tj7PcO
>>1
即死回避★ゅ


クボタンが心配で眠れません。・゚・(ノД`)・゚・。

15 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 03:58:56 ID:uLvUpKhl0
捕手

漏れもクボタンが心配で心配で……

16 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 13:31:08 ID:1+iU+29V0
( ' ь` )

17 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 18:16:33 ID:7qbt6nJ30
保守
久保田も心配だが桜井と桟原もどうなるのか心配だ

18 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 21:43:50 ID:eMivC00Q0
(丶´_ゝ`)人(@ω@ )保守!

19 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/09(金) 23:42:55 ID:FN/SwCnc0
保守

20 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 02:59:56 ID:nc7wxo2k0
捕手
それより秀太・・・

21 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 18:00:59 ID:lBrmiddE0
ほしゅほしゅ

22 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/10(土) 18:36:32 ID:hP4qzz+D0
ほしゅほしゅ
ゴレンジャーはどうなってしまうのかすぃら…

23 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 04:29:00 ID:eVVGaZe/0
期待しつつ保守

24 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/11(日) 16:18:34 ID:kgLLfbUeO
(e'ω'a)保守するグサ

25 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 06:27:12 ID:pWzgrS5A0
(@ω@)「俺の俺による俺のための保守」

(@ω@)「職人さん待ってるぜ」

26 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 17:54:57 ID:eWexmCQK0
保守ってみる

27 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/12(月) 22:41:00 ID:2E61ZJab0
まじめな話、選手に殺し合いをさせる[ネタ]とやらが不快でしょうがない。
なんで平気なんだ?ファンじゃないの?

28 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/13(火) 02:47:49 ID:5TqYcbgA0
完全な創作物として割り切っているから、かな?
同人誌みたいなもんだし

29 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/13(火) 02:49:30 ID:5TqYcbgA0
まあそれに不快なら見なけりゃいいだけだよ
誰も見ろなんていってるわけじゃないし
見る選択も見ない選択も自由だから
あ、同人誌ったって世の中ホモ同人誌ばっかりじゃないから

30 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/13(火) 08:12:01 ID:SqCYpRMG0
>>28>>29
マルチに反応してやんの
流石●ヲタ耐性ねーでやんのm9(^Д^)プギャー

31 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/13(火) 17:12:45 ID:smUQMyx40
>>1さん乙。
これからのゴレンジャーの運命を想像すると夜も寝れません…。
どうなっちゃうんだよう。・゚・(ノД`)・゚・。

32 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/13(火) 23:44:21 ID:pQBlxEH50
藤原が気になるなー
信用できる(と本人が思う)人に会えたらいいけど
そうでない人と会ったら・・・と思うと怖い

33 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 15:48:53 ID:s1yskDT00
モナさんとひ〜やんの続きが気になる^^

34 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 16:43:06 ID:zZB5r0qV0
井川と御大はどうなったの?

35 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 19:24:55 ID:s1yskDT00
桜井くんも気になります!

36 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 22:58:50 ID:WWrAMLxzO
ウィリアムスとゴレンジャーに期待。
そして秀太やクボタンの今後が不安orz

37 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/14(水) 23:53:34 ID:6w33PScN0
和田さんはどうしてるのかなあ

38 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/15(木) 04:05:12 ID:LqY9pnMJ0
前作ってくれたフラッシュ見たらまた泣けてきたよ。・゚・(ノД`)・゚・。

39 :924(1/5):2005/12/16(金) 00:06:21 ID:lA1N5HZn0
前スレ961より
93.久保田の帰還

(見失ったか……)
雨が降りしきる狭い十字路で久保田は立ち尽くした。どの方角に目を
やっても、桜井の姿は見えなかった。ここからは禁止エリアとなったF-2が
近い。逃げ回るうちに足を踏み入れる危険性もある。
だが、今の自分では、とても追えそうになかった。

『――わかった、解いてやる。けど、逃げたりするなよ?』
最初は桜井の振る舞いが、拘束を解かせるための演技ではないかと
思わないではなかったが、それにしては真に迫っていた。ゲームのことを
忘れ、タイガースのことを忘れ、何も分からなくなった桜井が気の毒に
思えたのだ。それこそが間違いのもとだったのだが。

久保田は桜井の荷物にあったはさみでひもを切ってやり、逃げないように
腕をつかむと玄関の脇にある便所へ連れて行った。桜井は特に抵抗する
様子もなく、おとなしくついてきた。
『ほら、ここだ。さっさとやってくれ』
軽く背中を押すと、桜井は中へ入ってぴしゃりと戸を閉めた。久保田は
なんとなくホッとして、一つため息をついた。耳を澄ますと、雨の勢いは
先ほどより少し強まっているようだった。まだ戻らない小宮山のことが
案じられる。雨が降り出したら帰るという約束を、守ってくれるだろうか。

その時、便所の中で物音が聞こえた気がした。
気になってドアノブに手をかけたが、鍵がかかっている。雨音で分かり
にくかったが、耳を近づけると、中ではがたがた音がしていた。
(窓から?)
直感した久保田はすぐさま玄関に走り、外から便所の裏に回りこんだ。

40 :924(2/5):2005/12/16(金) 00:06:50 ID:lA1N5HZn0
『桜井、何やってるんだ!?』
小さな窓から上半身を出した桜井はなんとか抜け出そうと頑張っていたが、
久保田の姿を見ると慌てて身体を引っ込め、窓を閉めてしまった。
『桜井!』
再び玄関に戻ると、桜井は奥に向かって廊下を走り、裏口から飛び出して
行った。久保田も急いで追いかけた。今にして思えば、部屋に寄って
閃光手榴弾を持って行けばよかったかもしれない。しかし逃げる相手を
追うことに気をとられ、とっさにそこまで頭が回らなかった。

ランニングは久保田にとって最も苦手なものの一つだ。全力で走っている
つもりでも、徐々に離されていく。先を行く桜井が角を左に曲がるのが見えた。
あの方向に進めば確かF2にぶつかるはずだ
『桜井、待て! 危ないぞ!! そっちは――』
だが運のいいことに、角を曲がったすぐ先は行き止まりだったのだ。
『くそっ……』
桜井は目の前の塀を乗り越えようとしていたが、久保田は足をつかんで
引きずり下ろした。手荒いやり方だが、手段を選んではいられない。
そのまま路上に転倒した桜井を上から押さえつけた。

『何するんや! はなせよ!』
『桜井、落ち着け。俺だって乱暴なことはしたくない。けど、勝手に逃げると
危ないんだ!』
『はなせ、はなせ!!』
暴れる桜井の左手が久保田の腰に伸びた。まずい、と思った時にはすでに
遅く、ポケットにさした拳銃は抜き取られていた。
『は、はなせ言うてるやろ。でないと、でないと……』
桜井は銃を右手に移し替え、ぎこちない構えで久保田の顔に突きつけた。
『バカ、やめろ!』
久保田は臆せず左手で銃身をわしづかみにした。
『!? はなせって!!』
桜井の叫びと発砲音が響き渡ったのは、ほぼ同時だった。

41 :924(3/5):2005/12/16(金) 00:09:15 ID:K8nDd1sw0
一瞬、何が起こったのか理解できなかった。下でぽかんと口を開けた桜井が
呆然とこちらを見ている。おそらく、自分も同じような顔をしていただろう。
焼けつくような激しい痛みはその後に襲ってきた。銃弾は久保田の左胸の
脇をかすめるでもなく穴をあけるでもなく、えぐるように通り抜けて行った。
「わああああ!!」
突然、桜井は悲鳴をあげ、久保田を突き飛ばした。
「……待て……」
久保田は傷口を押さえ、立ち上がった。走り去る桜井をすぐに追いかけようと
したが、激痛にさまたげられ走れない。振り返ることなく駆けてゆく後姿は
あっという間遠のいていった。そして今、完全に視界から消えてしまった。

傷に目をやると、あてがった右手は絶え間なくあふれ出す血に赤く染まり、
ぬるぬると嫌な感触をおびている。致命的な傷とは思えなかったが、
出血がひどく、放っておけばどうなるか分からない。桜井の行方は心配だが、
これ以上追うのは無理だ。今は戻った方がよさそうに思えた。
(……戻れるのか?)

来た道を引き返そうとして、久保田は立ち止まった。約束どおりなら、小宮山は
今ごろ帰っているはずだ。彼の安否は気になる。しかし、今の自分がどの面
さげて会えるというのだろう。
なんとかしたかった。小宮山も桜井も、どちらも助けたいと思った。
だから、二人と一緒に行こうとした。にもかかわらず、自分は桜井を逃がし、
手傷まで負ってしまったのだ。小宮山になんと言えばいい?

(いや――)
それでも、やはり自分は戻らなければならない。あの家がもぬけのからだと
なれば、小宮山はどれほど動揺するか。彼のことだ。おそらく必死で自分たち
を探そうとするだろう。このまま消えてしまうほど無責任なことはない。
久保田は痛みをこらえ、ゆっくりと歩き出した。ただ、したたり落ちる血を、
徐々に激しさを増す雨がかき消してくれることが救いだった。これなら、誰かに
痕跡をたどられることもないだろう。

42 :924(4/5):2005/12/16(金) 00:10:21 ID:K8nDd1sw0
もといた家にたどり着くと、開け放して行ったはずの戸が閉まっていた。
小宮山が戻っているのだろうか。
「久保田さん!?」
戸を開けるやいなや奥から大きな声とばたばたと慌ただしい足音が聞こえた。
どうやら大丈夫だったらしい、と久保田は安堵した。だが、誰が来たかも
分からぬ先から飛び出してくるなど、小宮山らしいと言えばらしいが
危険すぎる。いや、それも自分が心配をかけてしまったせいか――。

気がゆるんだためか軽いめまいに襲われ、久保田はその場に座り込んだ。
「久保田さん、しっかりしてください! 久保田さん!!」
顔を上げると、小宮山が自分の肩に手をかけて必死に呼びかけていた。
「どうしたんですか!? そのケガ!」
「無事だったのか……。良かった……」
笑いかけようとしたが、その瞬間に傷がうずき、久保田は顔をしかめた。
「久保田さん!」
「……大丈夫だ。悪いけど、救急箱……頼む」
「は、はい!」

久保田は歯をかみしめて気合を入れ、自力で立ち上がった。それを見た
小宮山は奥へと急いだ。遅れて居間に入った久保田は、桜井の手当てに
使った救急箱から包帯や消毒液を取り出す小宮山の隣に腰を下ろし、
ユニフォームの上着とシャツを脱いだ。小宮山が一瞬目をつむる。
無理もない。赤くささくれた傷口は、久保田自身でも見るにたえないほど
生々しかった。

「ああ、悪いな。……後は自分でやる」
久保田は消毒液に手を伸ばしたが、小宮山が制した。
「いえ、大丈夫です。腕、上げてもらえますか?」
一つ大きく息を吸い、小宮山は消毒液の容器からふたを外した。
「久保田さん、何があったんですか? 桜井さんはどうしたんです?」
ガーゼを濡らしながら小宮山は控えめな調子で尋ねてきた。

43 :924(5/5):2005/12/16(金) 00:11:07 ID:K8nDd1sw0
「桜井は――」
言いかけて久保田が口ごもったのは、ガーゼが患部に当てられ痛みを感じた
せいだけではなかった。
「――俺が悪いんだ」
無論、こんな返答で小宮山が納得するわけはない。
「俺が悪いって、どういうことです?」
「……て!」
答える代わりに久保田は大げさに顔をゆがめてみせた。小宮山は手を止め、
申し訳なさそうにほんの少し首をすくめた。
「……すみません」
「いや……」

久保田の思惑どおり、小宮山は怪我人に無理にしゃべらせられないと
考えたらしく、それ以上は尋ねようとせず無言で取り出した。
いずれは何があったかを話さねばならない。すべては桜井のいましめを解き、
彼を逃がしてしまった自分のせいだ。しかし、本当のことを話せば小宮山は
責任を感じるに違いない。どう説明すればいいか――。
自分の傷よりも、久保田はそのことばかりを考えていた。

【残り40人】

44 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/16(金) 00:12:25 ID:I8mnJnvq0
職人さん、乙です!!!

あああ、クボタン無事だったんだぁ ヨカタヨ(´д⊂

45 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/16(金) 02:50:05 ID:B54v1pjg0
を!投下されてた。職人さん、まいど乙です。

ばんびが戻ってきたのにもちょっぴり安心。
しかし左胸の脇をえぐるようにか・・・うわぁ

46 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/16(金) 17:32:32 ID:kEWpnDOh0
職人さん、投下乙です!!

クボタンも小宮山くんも無事で… ヨカッタ…

47 :174(1/7):2005/12/16(金) 23:43:39 ID:U2XW6o/B0
>>43
94.CAN or CANNOT

 まるでお笑い芸人のワンパターンなコントがツボにはまって、テレビの前でコーラ
を片手に笑っているような。
 そんな笑い声がしとしとと雨降る森の中に不似合いに響き、関本は弾かれたように
後ろを振り返った。
 数メートル先の幹の陰から姿を現した男は、金属バットを肩に担ぎ、面白そうに
こちらを見ていた。
(喜田……)
 喜田剛(背番号22)。金属バットで肩を叩きながら、薄ら笑いを浮かべる喜田に
危険な匂いを感じ、関本は半歩後ずさった。ジリッ…と、踏みしめた地面が音を立てる。
(いつの間にいた?)
 先ほどの騒ぎや銃声を聞きつけて来たのだろうか。気付かなかった自分に舌打ちする。
「とんだ甘ちゃんだなぁあんたら」
 笑いを含んだ声が、挑発するように投げかけられる。
 座ったまま喜田を見上げる金澤の襟首を掴み、無理矢理立ち上がらせると、自分の
背後に回らせ、関本は引きずっていたデイバックを握る手に力を込めた。
 一歩、前に進み出た喜田に合わせ、金澤と共に一歩身を引く。
(こいつ、ヤバイ)
 本能的に感じた喜田の危険な香りに、頬に汗が伝う。
 双方の間に、緊迫した空気が漂う。あるいは、緊迫した、と感じていたのは一方
だけだったかもしれない。
 金澤と関本、二人を交互に眺めた喜田の目が、小馬鹿にしたように歪んだ。
「やる気ねーならとっとと死ねよ」
「なっ……!」
 投げつけられた台詞に、言葉を失う。
「あ、間違えた。死んで下さいよ、先輩たち」
(こいつ――)
 ふざけた訂正の仕方をする。その様子に頭にくる、というより、彼の自信に満ちた
口調の裏側に存在する理由を察し、関本は奥歯を噛み締めた。

48 :174(2/7):2005/12/16(金) 23:44:08 ID:U2XW6o/B0
「喜田……おまえ……」
 多分。おそらく。こいつは――
「殺したのか……?」
 誰かを。
 関本の問いには答えず、喜田は変わりに口端を釣り上げ笑みを浮かべた。
 出会ったときから感じていた危機感が、より確かなものとなって関本に激しく
警告の鐘を鳴らす。
 この男は、危険だ。
「誰だ……?」
 そう問いかけたのは、関本の左後ろに立つ金澤だった。思わず、金澤を庇うように
関本は左腕を広げた。庇うつもりか、制止のつもりか、手を伸ばした理由は関本自身
もよく分からない。
「答えろ! 誰をやったんだ!?」
 関本が制していなければ、飛び出しそうな勢いで怒鳴りつける金澤にも、臆した
様子もなく喜田は答えた。
「そんなに聞きたいのかよ。もう死んだやつなんてどーでもいいだろ。……まあ
いいや。上坂さん、あの人アホでしたよ」
 上坂――
 ひとつ年上の先輩だ。ゲームが始まって、早々に名前を呼ばれた男のことを思い出す。
 つまり、喜田はかなり早い段階でゲームに乗っていたことになる。
「中谷も、あの調子なら勝手に危険エリア飛び込んで自爆してるはずなんだけどな」
 喜田の衝撃の告白に、金澤が押し黙る。それに満足したように、喜田は担いで
いたバッドを握り直し、一度軽くスイングをした。
 ヒュン――と金属バッドが音を立てて空を切る。
「枠一個だけなんですよね。――迷惑なんですよ、あんたらみたいなやる気のない
人間が生き残ってるの」
(なんてやつだ……)
 関本は立て続けに、こんな物騒な相手にばっかり出会う己の運の悪さを呪った。
 あるいは、こんな相手にばかり遭遇しておきながら未だ生き延びているのは、
ある意味悪運が強いのかもしれない。
(今回は無理かもしれんけど……)
 関本の首筋を冷たい汗が伝った。

49 :174(3/7):2005/12/16(金) 23:44:40 ID:U2XW6o/B0
「殺せないんだったら、どうせいつか死ぬんでしょ? なんで生きてるんですか?」
 喜田のそれは疑問、というよりは侮蔑だった。
 人を殺せる者が殺せない自分達を嘲笑っている。
(そうか――)
 喜田の言葉に、納得したつもりはない。だが、関本は唐突に悟った。
 ここは『そういう』世界なのだ。
 彼らのいた世界では野球が出来る者が脚光を浴びたように。
 ここでは、人を殺せる者こそがヒーローなのだ。
 敗者に待ち受けているのは、未来のない死、のみ。
 強烈な劣等感を感じそうになり、関本は全身でそれを振り払った。
(惑わされるもんか――!)
 そんなルールはおかしいのだから。
 人を殺せる人間が正しいなんて、そんなことは絶対にあり得ない。
「てめぇ自分が何言ってんのか分かってんのか!?」
「金澤!」
「自分が何したか分かってんのか!?」
 激昂する金澤の肩を掴んで押し戻す。 
「あんた達こそ、自分らの置かれてる立場分かってないんじゃないスか?」
 顔を真っ赤にして怒り出した金澤を面白がるように、喜田が挑発を重ねた。
「殺す! ぶっ殺す!!」
「やってみろよ……」
 金澤の宣言に、喜田が薄笑いを浮かべ、体の前にバッドを構えた。
 二者の間、距離にすればほんの5メートル程の空間に、一足触発の空気が流れる。
(やめろ――金澤!)
 2対1。
 普通の喧嘩なら、数が多いこちらの方が有利だ。
 だが、「殺し合い」というリングで、殺せない者2人と、殺せる者1人。
 そこにある数式は、2:1ではない。
(0+0は、ゼロだろ?)
 人を殺せない自分たちが、人を殺すことを躊躇しない喜田に勝てるだろうか。
 しかも金澤は丸腰で、関本は手負いだ。
 それはえらく危険な賭な気がした。

50 :174(4/7):2005/12/16(金) 23:45:12 ID:U2XW6o/B0
 悔しいが、この世界の戦闘の場において、殺せる人間と殺せない人間の優劣
は明らかだ。
 この場合、銃という武器は何の役にも立たないことを痛感する。
 人の体めがけて撃つことの出来ない人間が持っても、鉛玉が飛び出すがらくた
でしかない。
(殺せない俺が使っても、威嚇くらいにしかならないじゃないか)
 今威嚇のつもりで発砲するのは逆効果だ。それくらいは関本にも分かった。
(畜生……!)
 不甲斐ない自分が悔しい。
 だが、人を傷つけることの出来ない自分を不甲斐ないと思うことは、すなわち負けだ。
 それは、己の価値感がすでに、このゲームのルールに乗っ取られていることになるから。
 二つの価値観がぶつかり合う。
 その狭間で、関本は葛藤していた。
(なんとかしないと――)
 どうする? どうすればいい?
 こんな時、矢野ならどうするだろうか。矢野なら。金本なら。
 こちらの出方を待っているのか、動かない喜田を睨み付けながら、ぐるぐると可能
な限りの早さで脳を回転させ、取り得る策と、その成功確率を考える。
(戦えないなら、逃げるしかない)
「金澤」
 小声で金澤に声をかける。
 関本はデイバッグを肩に担ぎ、右腰のグロッグ17に触れた。撃つ気があっての
行動ではないが、喜田の視線が一瞬そちらに移り、関本は慌てて後ろ手でそれを隠
した。一端、背中のベルトの間に銃身を差し込む。
「俺は右に逃げる。お前は左だ。合図したら一斉に」
「別れるのかよ!?」
「仕方ないやろ」
 逃げる、という選択肢は喜田も予想の範囲内のはずだ。2人で一緒に逃げるより、
不意を突いて一気に二手に散った方が、喜田のスタートを遅らせられると関本は考えた。

51 :174(5/7):2005/12/16(金) 23:45:39 ID:U2XW6o/B0
「これ」
 担いだデイバッグのうち片方、関本自身のバッグを金澤に手渡す。右手で手前から
鞄を渡し、その裏で喜田に見えない角度から、左手でグロッグ17を金澤の背中の
ベルトに挟んだ。
「喜田がお前を追ってきたら、追いつかれそうになる前に発砲しろ。当てるなよ」
 喜田の性格からして、今の状況なら挑発してきた金澤を追うはずだ。
 丸腰だと思っていた金澤に発砲されれば、さすがの喜田も、諦めるか、方向転換
して関本を追ってくるかするはずだ。
 追ってこられたとき――手負いで、重い荷物を担いで、関本がどこまで逃げ切れる
か、そこが勝負だ。
「別れて……どうするんだ? どこで落ち合う」
「そうだな……」
 そこまでは考えていなかった。関本は急いで先ほど見た地図を頭の中に思い描いた。
(分かりやすくて、遠すぎないところで、人がいなさそうな場所)
「……体育館南の山の、展望台に」
 背中に差した銃を担いだバッグの陰に隠し、金澤は小さく頷いた。
 それを確認し、バンッと背中を叩く。
「行くぞ! 金澤!」
 声を上げ、右手に飛び出す。つられたように喜田が右に動こうとするが、ほぼ同時
に金澤が逆方向へと逃げだし、足が止まる。
 痛む脇腹に力を込め、関本は死に物狂いで走り出していた。

 一発。二発。
 銃声が響く。
(大丈夫か?)
 緩やかな獣道を駆け上がりながら、関本は急に不安になった。
 今思えば確実性のない、無謀な計画だったかもしれない。
 とりあえずは予想通り金澤の方を追ってくれたが、果たして喜田はこちらを追って
くるだろうか。
 心配はすぐに杞憂と消えた。それは決して安心できるものではなかったが。
 振り返った先に、金属バッドを持って走ってくる喜田の姿があった。
 必死に引き離そうと走るが、その距離はみるみるうちに縮まっていく。

52 :174(6/7):2005/12/16(金) 23:46:05 ID:U2XW6o/B0
(やっぱ速い――!)
 正確には、自分が遅い。
 脇腹の傷は、すでに痛みすら感じないほど麻痺していた。
 脳の一部がぼんやりと熱を持ったように熱い。遠のきそうな意識を、関本はしがみ
つく思いで引き戻した。
「っ――!? なんやこれ!?」
 目の前に突然現れた光景に、己の目を疑う。
 台風や落雷の跡か、折り重なる倒木が行く手を塞いでいる。
(……俺の人生、山あり谷ありやな!)
 ふざけた口をきく暇も余裕もないが、そんな自虐が浮かんでくる。
「くそっ……」
 迷っている暇はない。とりあえず手前の倒木に足をかけ、足場の悪い道なき道を
よじ登る。もう随分と長い間このままの状態で放置されているのか、倒れた木の幹
の表面は緑色の布でもかけられたように苔生していた。雨露に濡れたそれは、油断
したら足を滑らせそうだ。
 そこまで考え、関本はようやく雨が降っていることを思い出した。
 木々の倒れたそこは、代わりに降雨を遮るものがなく、関本の体を容赦なく濡ら
していた。足が取られそうになるのを、スパイクの歯を幹に食い込ませて踏ん張り、
一歩一歩確実に登っていく。
 ガンッ!!
「うわっ!?」
 金属と金属が打ち合う音がすぐ頭の後ろで聞こえた。
 背中に担いだデイバッグを思い切り下に引っ張られるような衝撃に、思わず仰向き
に倒れそうになる。
「クッ……」
 モロに金属の固い銃身を打ち、喜田も呻き声を上げる。
 喜田が殴ったのは金澤のバズーカ砲だ。知らずに全力で殴ったのだから、金属バッド
を通して伝わる手の痺れは相当なものだろう。
 一旦緩んだ攻撃の隙を縫い、喜田との距離を広げる。這い蹲るようにして倒木の
小山を登り切り、振り返って追ってくる喜田を見下ろした。

53 :174(7/7):2005/12/16(金) 23:46:49 ID:U2XW6o/B0
「悪い!」
 シザーケースの中からありったけの道具を鷲掴みにし、喜田に向けて投げつける。
 そのうちのいくつかをバッドで叩き落とした喜田だが、さすがに飛来してくる武器
全てを防ぐような少年漫画のような技術は持ち合わせていない。
「痛!」
 すぐさま倒木の山を駆け下りた関本の後方から軽い悲鳴が聞こえる。鋏か剃刀に
当たってしまったのかもしれない。心の中で手を合わせつつ、関本は追ってくるで
あろう喜田を巻くために90度方向転換し、急な傾斜になった森林に飛び込んだ。
「うわっ!」
 勢いよく飛び込んだ瞬間、落葉に足を取られ尻餅をつく。
 落ち葉が敷き詰められたそこは、踏ん張ろうとしても、勢いのついた関本の身体を
音を立てて運んでいく。
(逃げろ、逃げろ、逃げろ!)
 半ば転がり落ちるようにして斜面を走りながら、関本はとにかくその場から離れる
ことだけを考えた。
 怪我をしても良かった。服が擦り切れても良かった。とにかく、あの男の目を眩まし、
この場から逃げ延びることが出来れば。
 集合場所の展望台がどんどん遠ざかっていくが、仕方がない。
(金澤――大丈夫だよな? お前は)
 山肌を滑り降りながら、関本は別れた友の無事を祈った。
 喜田の話に逆上して掴みかかろうとしたあの男が、単独で行動し、もしまた同じ
ような場面に出くわしてしまったら――そんな不安が過ぎる。
(気を付けろよ)
 『気持ちが前に行きすぎないように。』
「ですよね、田淵コーチ」
(俺も、あいつも。)
 焦りや、はやりで、大切な優先順位を見失わないように。
 その言葉を雨雲が吸い上げて、雨と一緒に彼に届けて欲しいと願った。
 

【残り40人】

54 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/16(金) 23:56:51 ID:GqvgHP7H0
今日も新作来てた!職人さん乙です!
関本と金澤・・・はなればなれになっちゃったのか・・・

55 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 00:04:53 ID:I8mnJnvq0
職人さん、天才だね!すごい臨場感!

56 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 02:14:45 ID:DH1KSyjh0
おぉ!立て続けに新作来てたー!!
職人様乙です!
クボタン生きてた…バンビと無事再会できてヨカタ(;_;)
でも関本&金澤離れちゃったんだ…このコンビ好きだったので何だか淋しいような。再会できるのだろか…

57 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 04:45:51 ID:HeuwkpbT0
職人さん乙です。
山あり谷あり〜、の部分がすごくセッキーらしいw
描写も言葉の使い方が素敵だなぁ。続きもマターリと楽しみに待ってます。

58 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 10:17:23 ID:sH/aUG430
職人さん、乙です。
ああ、コンビ分かれちゃったのか〜・・・。
セッキーは何だか危ない仲間に出くわしてばかりですねw

59 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 10:22:19 ID:IY4OnCz90
桧山さん・・・・。どうなっちゃったんですか・・・・。

60 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 23:21:31 ID:MMPVt4OT0
伊代野って何やってるんだろ
唐突に沖さん殺してそれっきり・・・

61 :542(1/4):2005/12/17(土) 23:22:37 ID:TE7wU1pX0
>>53
95.不条理の底に沈む影

 人間が継続して眠っていられる平均時間を、誰か教えてくれないだろうか。
「おーい、いい加減、お前起きろよォ……」
 頬をつねる。腹の肉をつねる。太腿をつねる。
「なぁ、聞こえてんだろ? ホントは聞こえてんだろ?」
 そろそろ、限界だ。
「吉野ォ、起きろよ」
 とうとう雨が降り出したようだった。雲行きが怪しくなった時点で移動を決めた安藤
優也(背番号16)の判断は正しかったらしい。決して軽くはない吉野誠(背番号21)を
背負い、歩いて歩いて歩いて辿りついた民家は、かなり荒れていた。焦げ跡の酷い
畳。片付けられずに床に積まれたダンボールの山。傾いたちゃぶ台の上でひっくり
返ったままの湯呑み。雨風はどうにか凌げるが、部屋の中の酷い有様を見てどっと
疲れが沸いて出てきたのは事実である。
「なぁ」
 全く反応をしない相手に、辛抱強く呼びかけを続ける事が、こんなに苦しい事だな
んて思いもしなかった。
「吉野、返事しろよ……これじゃ、死んでるのと同じじゃんか」
 ぽろりと口をついた本音を反芻し、安藤は自己嫌悪に陥る。
 死という言葉はいつからこんなに軽くなったのだろう。いつからこんなに身近なも
のになったのだろう。そして自分はいつから、こんな風に死を口に出来る人間になっ
てしまったのだろう―――問うてみても詮無い事だ。
 だが、それでも。
「どうすればいいんだろうな、俺たち」
 Iではなく、Our。
 この意識が自分の中にある限り、自分は人間でいられる。
 そう信じる事が、安藤にとっての心の拠り所の一つとなっていた。

62 :542(2/4):2005/12/17(土) 23:23:09 ID:TE7wU1pX0
「……」
 自分が口を開かなければ、沈黙が我が物顔でその場に垂れ込め続ける。ガラス
窓を叩く雨粒の音に顔を上げると、薄汚く紙魚の拡がった天井が、いやに圧迫感を
持ってこちらを見ているような錯覚を覚えた。息苦しさに喘ぎながらも、雨漏りはしな
さそうだ、と、とりあえず一つだけ安心材料をもぎ取って、安藤は視線を落とす。
 しとしと、しとしと。
「雨雨、降れ降れ……」
 ため息と手を繋いで口からこぼれ落ちたのは、懐かしい童謡。
「……」
 ため息。
 しとしと。
 ため息。
「暢気な奴だなぁ、お前もさ」
 昏々と眠り続ける彼。訥々と喋り続ける自分。
「こんな状況でよく眠ってられるよな」
 雨が降っている。
 雨が、降っている。
「元気に、してるかな」
 あまり身体の丈夫でない、病気がちの妻。りんごのような頬をした可愛い息子。
 元の世界に置いてきた、全てのものたち。
 今はもうまぶたの裏にしか存在しないそれらが、手の届かないものになってしまっ
た大切なものたちが、幾重にも重なりながら波のように押し寄せてくる。肌寒さと、
耳の奥で低く鳴るサイレンとが、下向きに崩れ落ちてゆく安藤の精神状態を更に滅
入らせていた。
「どうしてなんだよ」
 不安な自分。起きない親友。倒れた男。血の染み。そして他人の手に握られた、
自分たちの命。
 恐るべき宣告をされてからここに至るまで、考える時間は十二分にあった。だから
安藤はずっと考えていた。答えなどきっとどこにもない、虚しい問いだと解っていな
がら、それでも安藤は考えるしかなかった。
 そうしなければ、或いは狂ってしまいそうだ、と思ったのだ。

63 :542(3/4):2005/12/17(土) 23:23:54 ID:TE7wU1pX0
「―――どうして、なんだよ!」
 左手を打ち付けると、衝撃で飛び上がったボールペンが、乾いた音を立ててそこ
へ転がる。髪の毛をぐしゃぐしゃとかき回した。頭を何度も振った。絶望と混乱が咽
喉の奥からせり上がってきて、泣きそうな気分だった。泣き喚いてどうにかなるのな
らそうしたかった。
 ゲームが始まって以来誰とも言葉を交わしていない安藤は、夜の不条理の底に
ぽつんと取り残されたままだ。言葉は虚しく四散するだけ、視線は空を切るだけ。
誰も安藤を意識していないどころか、安藤の言葉は行き場を失ったままで、その声
はどこへも届かない―――吉野ですら、安藤を見棄てたのだ。
 だって、息をしているのに、心臓は動いているのに、こんなにも近くにいるのに、彼
は目も醒まさないし返事をしようともしない。これを見棄てられたと言わずして何と言
えばいい?
 安藤は泣きそうだった。……実際には、涙は出なかったのだけれど。
 目元と口元を歪めながら、埃を刷いた卓上に視線を投げつける。そろそろまた、あ
のふざけた放送がある頃だろう、そう思って広げた地図と名簿。
(俺はこういう奴なんだ)
 ―――新たに、消さねばならない名前があると。
 誰かの死を、つまり仲間の死を、既定事実として受け入れてしまっていた自分が、
確かにそこにいたのだ。
 不条理さに慣れてしまっている。陰鬱な心の奥で警告音が鳴るが、しかしそれも
今更の感が強い。確かにあの時、自分は石毛を『殺した』のだ。吉野を助けるため
に。(そういう大義名分を掲げて、自分が仲間に危害を加えた事には違いない。)
 ボールペンを力なく拾い上げかけて、ふと安藤の耳が、雨音ではない、パシャパシ
ャと水を跳ね上げる音を拾った。
 密やかな音。水を含んだ、重く、尾を曳くような音。水面を破る音。凍りついた安藤にはお構いなく、小さかったそれが徐々に大きく、鮮明に聞こえてくる。
 濡れた人間の足音だ。
 走った緊張を抑えて、やおらスタンガンを握る。荷物をまとめる暇などなかった。ド
アが唐突にどん、と揺れ、次いでがたがたと鈍く軋む。ドアの斜め上方を四角く切り
取ってはめ込まれた曇りガラスに『彼』の後頭部が映ったのを見て、ドアに凭れてい
るのだ、と理解した。
(冗談じゃねぇぞ……)

64 :542(4/4):2005/12/17(土) 23:24:55 ID:TE7wU1pX0
 来訪者に悟られず逃げるのは不可能に近い。出入り口は、目の前の裏口と、廊下
の突き当たりにある玄関の二つ。二人分の荷物と意識のない吉野。気付かれずに
担いで逃げるのは到底無理だ。
 そして吉野を見棄てて逃げる事もまた、安藤には無理だったのだ。
「!」
 ドアが、一際大きく揺らされる。
 咄嗟に駆け寄り、力一杯取っ手を押さえつけた。シリンダー式の古い鍵は当然の
如く壊れていて、ノブを廻せば扉は簡単に開く。彼に敵意がなければそれで済むだ
ろう。しかしそうでなければ……ああ、その先は考えたくない。
 がたん、がたんと扉が悲鳴を上げる。ぎっちりとノブを押さえつけた手のひらが汗
で辷り、心臓はどくどくと音を立て、首筋の動脈が物凄い速度で波打っていた。胃の
腑が冷たい。ドアが開かない事を、鍵がかかっているのだと判断して通り過ぎてくれ
れば一番いい。いや、後生だからそのまま通り過ぎてくれ―――
「おい! 誰か、おんのやろ?!」
 ドアを叩く男の声に、背骨がずるりと冷えた。
 来訪者にアタリをつけ、安藤はひとつ、嚥下する。震える手に力を込めてそっと振
り返ると、黙りこくったままの吉野は湿った密やかさの中に沈んでいた。深々と刺さ
った矢には血と脂の曇りが這っていて、一見すると死んでいるようにしか見えない。
唇から血の一筋でも垂らせば完璧だ。広げた地図も、名簿も、齧りかけのパンも、
全てうすやみの中に沈んでいる。そして自分も、その中で息を潜めて沈んでいる。
「聞いとんのやろ? 開けてくれ!」
 安藤はそれらにもう一度、一通り視線を当てていった。
 そして思った。もう、相手が敵だろうが味方だろうがそれ以外だろうが、拘る事など
ない。命の選択の権利すら取り上げられた自分に残されたのは、想い出と、親友の
『抜け殻』と、生き残るための幾つかのツールだけだ。それらまで喪うのだとしたら
―――もう、自分には何も残らないではないか。
 己が貌の峭刻となるのを自覚し、安藤はドアノブに手をかけた。
 スタンガンのコンパクトなグリップ。濡れているはずの相手の身体。状況を大まか
に分析しながら、深く、深く、肺が軋むまで息を吸い込む。そして―――結論。
(……勝負は、出会い頭だ)

【残り40人】

65 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/17(土) 23:30:19 ID:qvYqBdXe0
うおおおおおおおお!!!また更新来てるぅ!!!
安藤、頑張れぇ!

66 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/18(日) 00:50:02 ID:+zhi33ya0
職人さん、乙です!ここのところ頻繁に投下されてて嬉しいなぁ
誰が来たんだろう…あの人かな…

67 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/18(日) 17:35:05 ID:pETpyO4f0
職人さんのうまさに感激!

68 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/18(日) 20:51:11 ID:Y4PohvPo0
安藤、もしかしてやる気に・・・?
職人さん乙です

69 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/20(火) 00:25:06 ID:D4iznhvb0
誰が来たんだろう?関西弁ってことは……

70 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/20(火) 22:56:37 ID:MZDi3N6X0
ドキドキ…

71 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/21(水) 19:41:06 ID:0AERO4VQ0
保守

72 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/21(水) 19:51:02 ID:XLZuw+SK0
犯珍!  金本=ポンコツ  桧山・片岡=鳴嗚浜要員  浜中=スコアラーへ

桜井=任意引退   矢野=引退&二軍コーチ  今岡=奥さんの仕事を手伝う


あとは超短距離砲ばかりでキャハハハハハハハ  首都圏の球団の天下

大阪は潰れろ  大阪の税金泥棒施設の全て↓  大阪破産は必至

http://www.osaka-minkoku.info/osaka/osaka.htm

「大阪破産」(光文社刊)を読もう ↓

http://plaza.rakuten.co.jp/ginjiroueito/diary/200510230001/




73 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/22(木) 03:30:06 ID:zuTsKzMu0
安藤ガンガレ保守。

74 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/22(木) 12:49:59 ID:w4shzIA80
桧山さんがどうなるか、すごく楽しみです!

75 :  :2005/12/22(木) 12:50:53 ID:apUlRX5i0
ID:XLZuw+SK0って誰だ?!

76 :924(1/4):2005/12/22(木) 23:53:23 ID:OKkozSf60
>>64より
96.許せぬ裏切り

気がつくと、身体じゅうがいてつくように冷たかった。それもそのはずだ。
知らない間に雨が降っていた。昼間はあんなに天気が良かったのに。
そういえば、周囲もかなり薄暗い。どのくらいの時間が経ったのだろう。
「う……」
ようやくにして目を開けた中村豊は、ゆっくりと身体を起こした。全身ににぶい
痛みが走り、思わず低くうめく。

(俺は……)
中村は顔を上げた。したたる雨粒が容赦なく顔面を叩く。木の間がくれに
見える空はやけに暗かった。そのまま首をめぐらせると、頭上高く切り立った
急斜面が視界に入った。
――帰る必要なんてありませんよ。
頭の中で、冷たい声がこだました。

(秀太――)
ああ、そうだ。やっと思い出した。自分の身に何が起こったかを。
(秀太が俺を――)
銃を向けられた時、悪い冗談だと最初は思ったのだ。いたずら好きの
秀太なりの、きついおふざけなのだろうと。だが、相手は本気だった。もし
足を滑らせなければ、初弾は間違いなく頭部に命中し、自分は即死していた。
そして崖から転落していなければ、おそらく二弾目三弾目が見まわれ、
殺されていたであろうことは想像にかたくない。
「なんで……」
中村は濡れた落ち葉の積もる地面に両手をついた。

77 :924(2/4):2005/12/22(木) 23:54:32 ID:OKkozSf60
「なんでや? 秀太……」
あの時は、嬉しかった。人を集めに行くと言った時、秀太が自分も行くと
名乗りをあげてくれたことが、嬉しかった。まさか、こんなことになろうとは。
(俺が――気にいらんかったんか?)
後から来たくせに、でしゃばって人を集めようなどと提案した自分をよく
思わなかったのだろうか。真っ先に中村が思い当たったのがそれだった。
だが、その程度の理由で殺そうとするだろうか。

「秀太……」
中村は、出会ってからの秀太を思い出してみた。洞窟で、アジトで、秀太は
いつもとなんら変わらないように見えた。しかし、出かけてからの彼はどこか
おかしかった。みずから行く方向を決め、先に立って歩きながらも心ここに
あらずといった感じだった。顔色も青く、本当にどこか具合が悪いのでは
ないかと思ったほどだ。もしかすると、秀太は最初から自分を殺すつもりで
同行を申し出たのだろうか。妙な様子は、恐ろしい計画を実行すべきか
どうかという逡巡の表れだったのかもしれない。しかし、たとえ迷っていたに
せよ、秀太が自分の命を奪おうとしたことはゆるぎない事実だ。何が彼に
そうさせたのか。
「なんでや? 秀太……なんでなんや!?」
分からない。どう考えても、理解できなかった。

(許さん……)
中村はぎりぎりと奥歯をかんだ。秀太の不可解な凶行に対する疑問は、
次第に怒りへ変化した。自分を殺そうとしたことが許せない? ――違う。
確かに信じられない出来事であり、悲しかった。だが、それだけなら、
ここまで強い憤りは感じなかっただろう。
事は二人の間だけにとどまらない。秀太は、自分を裏切るとともに
ゴレンジャーの他の仲間たちをも裏切ったことになるのだ。彼の取ろうとした
行動は、皆で力を合わせてゲームを食い止め、ともに生きて帰ろうと約束した
ゴレンジャーの願いとは真逆のものなのだから。かけがえのない仲間に背を
向けたことが許せなかった。たとえ、どんな理由があろうとも。

78 :924(3/4):2005/12/22(木) 23:55:16 ID:OKkozSf60
ここまで"仲間"にこだわるには理由がある。
この地獄において、信頼できる仲間を持たずただ一人あるということが
どれほど堪えがたいか、背番号ゆえにトップを切って放たれた中村には身に
しみていた。だからこそ、金本と藤本を襲ったという中林の苦しみを理解できる
気がしたのだ。真に強い人間は、一人でもなおゲームに立ち向かう気概を
保ち得るだろう。だが、たいていの人間はただただおびえて過ごすか、反対に
ゲームに乗って人を殺そうとするかのどちらかに転ぶはずだ。中村は前者で
あり、中林は後者だった。互いの行動を分けたものは、強力な武器を持って
いたか否かという一点のみであり、根の部分は同じなのだ。

放送によれば、すでに十数人が命を落としており、それだけ殺した者がいると
いうことは容易に推測できる。積極的に殺人を犯した者もいれば、
自暴自棄気味にそうしてしまった者もいるだろう。しかし、中村は思う。
彼らはおしなべて一人きりであったはずだと。一人でいるから孤独と恐怖と
疑心暗鬼にさいなまれ、人として許されない道に足を踏み入れてしまうのだと。
逆に言えば、行動をともにできる仲間がいれば、道を誤る可能性はきわめて
低いはずだと。人探しを考えたのも、そう信じたからだった。

この論理に基づけば、秀太は非常に恵まれていたと言える。体育館で
野手陣の兄貴分たる金本に誘われ、出発してすぐに心強い4人の仲間を
得た。臆病だった自分でさえ、ゴレンジャーに加わり彼らの明るさと熱意に
触れるうちに、忘れていた勇気と希望を取り戻したのだ。それほどの
仲間たちと一緒にいられたにもかかわらず、秀太は裏切った。自分たちを
信頼して送り出してくれた金本を、赤星を、藤本を、的場を――彼らの思いを、
まとめて足げにしたのだ。

79 :924(4/4):2005/12/22(木) 23:56:31 ID:OKkozSf60
(許さん。秀太――俺は絶対に、お前を許さん)
激しい憤怒を胸に、中村は立ち上がった。身体のあちこちが痛むが、どうやら
打ち身だけで深刻な怪我はなさそうだった。時計を見ると、5時をとうに
回っている。こうしてはいられない。ともかく、アジトに戻ることが先決だ。
そして、何があったかをゴレンジャーの皆に伝えねばならない。

深追いしてこなかったところを見ると、秀太は自分が転落死をとげたか重傷を
負ったと判断したのだろう。だが、あいにくこのとおり無事でいる。
もしかすると、秀太はしゃあしゃあとゴレンジャーのもとに帰っているかも
しれない。彼の意図は不明のままだが、他のメンバーが自分のように狙われる
おそれもある。一刻も早く、帰らなければ。

周囲を見回すと、荷物は頭の先に転がっており、ライフルはさらに2メートル
ほど向こうに落ちていた。赤星に借りた探知機は、秀太と対峙した時に
投げ捨ててしまっており、あるとしたら、上だ。しかし、崖と言ってもいいほどの
急斜面は高さもあり、この雨の中でじかに登るのは難しく思われた。登れたと
しても、この暗さでは発見できるかどうか。あの状況なら、秀太が拾って
持ち去った可能性も高い。

悩んだが、今は探知機をあきらめ仲間のもとへ急ごうと、中村はポケットに
手を入れた。ところが、そこに収められているはずの地図が指に触れて
こない。慌ててもう片方のポケットをまさぐったが、同様だった。転落した際に
おとしてしまったのだろうか。
いったん拾い上げたカバンとライフルを地面に置き、中村はしばらくその辺を
捜してみたが、見当たらなかった。もともとどこへ行くかは秀太にまかせ、
自分はただその後をついてきただけだった。地図がなくては、戻れない。
(くそ、弱ったな……)
雨はさらに激しさを増し、辺りにはそろそろと夜のとばりが落ちはじめていた。

【残り40人】

80 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/23(金) 00:04:49 ID:iHwjsX4N0
切ないねぇ・・・・・つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

81 :924:2005/12/23(金) 00:07:40 ID:DxevYANn0
すみません。3/4の1行目
ここまで"仲間"にこだわるには理由がある。

ここまで"仲間"にこだわるには、わけがある。
に訂正いたします。

82 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/23(金) 00:07:54 ID:oIvSe6lQ0
職人さん乙です!
ついに2323しく気になっていた豊さんが…とりあえず無事でよかった!
豊ガンガレ豊
そして秀太はいずこへ…

83 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/23(金) 11:09:56 ID:g0Hw4gpW0
すごいことになってきた・・・・。ますますおもしろい!!

84 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/23(金) 23:57:08 ID:Uk8ALP+a0
豊が無事でよかった!

85 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/24(土) 01:49:44 ID:9oYT1DaH0
職人さん乙でした。
あああ、豊無事だったのか。よかった…。

86 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/24(土) 15:23:44 ID:Lr73QrOw0
豊の怒りはもっともなんだけど秀太の葛藤を思うとすげー複雑・・・

87 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/24(土) 17:01:37 ID:3Nru8O7g0
豊も含めゴレンジャーは秀太の事情を知らないんだよな・・・
すれ違いセツナス

88 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/25(日) 02:00:24 ID:8RrN5cBK0
関本に言った「お前にはわからない」って言葉が重いな>秀太

89 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/25(日) 02:33:53 ID:kavNBvBm0
>>88
読み返すと、ああこのことを言ってたのか、と分かって泣ける
細かい部分が繋がってて凄いと思う

>『お前には分かんないだろうな』
> そう言って笑った彼は、その結論に達するまでに何を捨てたのだろう。
>(分かりたくないッスよ……秀太さん)
> それは、とても大きいモノを捨てなければ辿り着けない場所な気がした。(By『嘲笑者』)

 秀太…辛すぎて言葉が出ないよ…。・゚・(ノД`)・゚・。

90 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/25(日) 23:41:17 ID:obMow4XP0
もし豊が秀太の苦しみを知ったらどうなるだろ
やっぱり怒るかなあ・・・

91 :174(1/4):2005/12/26(月) 04:24:59 ID:nhWyVwjr0
>>79
97.殺せない男

 今度こそ殺せると思ったのに。
「うっ……くっ……」
 繁みの中に転がったまま、三東洋は呻いた。
 金澤に蹴り上げられた鳩尾から湧き上がる、不快感と嘔吐感を必死に堪える。
 それが嗚咽なのか悲鳴を噛み締めている声なのか、三東自身にも判別が付かな
かった。恐らくは両方だろう。おおよそ、それらが混じり合った声が、雨音に混
じり断続的に続く。 
「はぁ、はぁ……ゲホ……っ」
 脇腹を押さえながら、三東は痛む身体を堪えて上半身を起こした。
 足下に転がる短刀を拾い上げる。
「……っくしょう……っ」
 ザクッ
 その刃を垂直に地面に刺し、三東は小さく吐き捨てた。
 ザクッ……ザクッ……
「畜生! 畜生……っ」
 両手で握った柄で、何度も何度も地面を切り刻む。
 金澤は隙だらけだった。
 何故殺せなかった?
(ちくしょう。ちくしょう。)
 声に出すのも疎ましいほど、何度も口の中で叫ぶ。悔しい。情けない。
 あらゆる感情が渦巻き、発散する出口を求めて三東の中で暴れ狂った。
 ――また殺せなかった。

92 :174(2/4):2005/12/26(月) 04:25:49 ID:nhWyVwjr0
「なんで……なんで……っ」
 喉の奥が熱くなる。こみ上げて来る震えを飲み込むと、代わりに滲んだ涙で、
握った先にある白い柄が歪んだ。
「何で殺せないんだよぅ……」
 モザイクのかかった視界の中で、三東は情けなく呟いた。
(俺は駄目なのか)
 どうしようもない劣等感に苛まれる。
『こんなことも出来ないのか』
 誰とも知れない誰かが嘲笑っている。
 それは多分、自分が畏怖してやまない殺人者達の声だ。
 人殺しにもなれない。
 善人にもなれない。
 人を殺したいのに人を殺せない自分は、人としても殺人者としても落ちこぼれだ。
(なんて中途半端なんだ……!)
 なんて情けなくて、愚かな存在なのだろう。
「畜生……」
 ザクッ
 深く地面に刺さった短刀の柄にもたれかかるようにして、三東は前のめりに俯いた。
 自己嫌悪してもしきれない。行き場のない自虐の先にあるのは虚脱感だ。
 押し黙ると、容赦のない雨音が耳を打つ。
 その雨音すら、行き場のない自分を嘲笑っているように聞こえた。
 森の中一人取り残され、先ほどの記憶が鮮明に蘇る。
 そこに映し出される出来事に、三東は次第に憤りを覚えていった。

93 :174(3/4):2005/12/26(月) 04:26:17 ID:nhWyVwjr0
 金澤と関本。同級生の二人は、腹立たしいほどに平和な会話を交わしていた。
(きっとあいつらは何も知らない。何も出会っていない)
 甘い。吐き気がするような甘さだ。
 体育館を出る前の自分と同じように、彼らは危機感も、現実味も感じずに浅はか
に生きているのだろう。
 その証拠に、金澤はろくに疑いもせず自分に近づいてきた。
(あんな奴らが……!)
 金澤を組み敷いた時、今度こそ殺せると思った。
 その瞬間、関本の発砲に肝を冷やした自分が腹立たしい。――関本は、明らかに
狙いを外していたのだから。
 仲間を殺そうとしている人間相手に、温情をかける彼が三東には理解できなかった。
 又、殺せない男の鉛玉に怯えて、獲物を逃したことが口惜しかった。
(人を殺せないやつらがあんなものを持ってるのに……!)
 これほど人を殺すことを羨望している自分が持っているのは、ノコギリと短刀。
 不条理ではないか? 三東は思った。
 彼らは自分の与えられた武器を最大限に有効活用していない。
 そんなやつらに、銃なんて便利な武器を持たせるなんて間違っている。 
(力が欲しい――)
 力が欲しかった。
 強力な武器、人を殺せる力が。
(俺に足りないのは、それだけだ……!)
 それさえあれば、自分は人を殺せるはずだ。金澤や、関本のような甘い人間とは違う。
 人を殺す覚悟は出来ている。自分に相応しい武器さえ手に入れることが出来れば、
誰とも知らない殺人者を畏怖し、コンプレックスを感じることはなくなる。自分こそ
が崇高な人殺しになるのだから。
 そう思うと、三東はすぐにデイバッグの中をかき回した。取り出した地図を、
震える手で広げる。
 どうすればいい? どこに行けばいい?
 武器を持っているのは参加者だけだ。ならば人が行きそうなところをあたるしかない。

94 :174(4/4):2005/12/26(月) 04:26:47 ID:nhWyVwjr0
 死体から取り上げることが出来たら最高だが、なかなかそう上手くはいかないだろう。
生きている人間が、油断しているところを襲い、奪い取る。
 人が集まると言えばやはり民家だろう。だが家に入り込み、相手を襲うには少々
武器が力不足に思えた。気付かれてしまえばお終いだ。
 どちらかというと屋外で、仮眠を取るなりしているところを背後から襲いたい。
 幸いもう日が落ちかけている。やがて夜が来るだろう。大半の人間は、どこか過ごし
やすい場所で仮眠を取るはずだ。
 自分が屋外で夜を明かすなら、どこがいいだろうと三東は考えた。
 草原は見晴らしが良すぎる。森の中は逆に見通しが悪すぎて怖い。南の山に展望台
のマークがある。屋根があるかは分からないが、ここもいいかもしれない。
 そこまで考え、自分の喉がカラカラに乾いていることに気付いた。ここに来てから
ずっと、緊張の連続だ。デイバッグから飲料水を取り出し、三東はペットボトルの中
の水を口に流し込んだ。
「補給しないとな……」
 もう残り少ない容器の中の液体をちゃぷんと揺らし、三東は一人呟いた。
 これだけ降っている雨を飲むことが出来ないんだから、不便なものだ。なんとなく、
昔の人の苦労が分かった気がした。
(水――補給――そうか)
 それは自分だけの問題ではないはずだ。確か――
「……あった」
 地図に記された、南西にのびる川と、その先にある湖。
 喉の乾きを潤し、湖の畔で眠る者がいてもおかしくはない。
 いるかいないかはある意味賭だ。だが、何もせず動かないよりはいいだろう。
(よし……)
 彷徨える殺人志願者は、獲物を求めて歩み出した。


【残り40人】

95 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/26(月) 08:13:02 ID:0WJfVBT90
職人さん乙です。
三東… 何だか哀れだな…

96 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/26(月) 11:28:13 ID:T19KBG8G0
三東さん・・・・。すれちがいとか、いろいろ切なすぎる!!

97 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/26(月) 19:18:54 ID:5RA6yOPG0
三東ぉぉおおおおお!!カワイソウ・・・・ヽ(`Д´)ノウワァァン

98 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/26(月) 23:00:18 ID:+EHBEGYy0
三東って体育館で泣いてたんだよな・・・セツナス

99 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/26(月) 23:29:17 ID:FQSaN7c80
牧野、サジキ、チン様、関本・・・
いろんな人の心配をよそにどんどん壊れて行く三東が悲しい・・・

100 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/27(火) 02:35:12 ID:Pqf4WJCxO
フィギュア代表買収選出 

それをしたのは、阪神

101 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/27(火) 13:52:55 ID:f9qeJE8sO
職人さん毎度乙です。
いつもながら細やかな心理描写に涙。・゚・(ノД`)・゚・。
山東、川に向かうと誰に出会うのか?
今誰がどこにいるかまたわからなくなってるからワクテカです。

もうそろそろウィリアムスカモーン
できれば山東と出会って改心させて保水

102 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/28(水) 18:59:19 ID:Fkr+nMML0
保守

103 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/29(木) 10:40:43 ID:eVMHPAjX0
川だとウィリアムスと林がいた所かな?
でも二人とももう行ってしまってるか・・・

104 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/30(金) 00:46:44 ID:UAGsRorpO
ウィル様に期待★ゅ
あとモナさんvsひーやんにも期待大

105 :代打名無し@実況は実況板で:2005/12/30(金) 23:44:00 ID:UAGsRorpO
今選手別に見返してる。
久慈さんの続きが23しく気になる。モナさんと出会って改心させてほしい…

106 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/01(日) 01:57:52 ID:LfPrbp7EO
あけおめ★ゅ

107 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/01(日) 02:24:52 ID:Fvgc+ueh0
おめほしゅ。

108 : 【末吉】 【696円】 :2006/01/01(日) 23:24:42 ID:EU5JTx5x0
ことよろ保守

109 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/02(月) 05:00:22 ID:Jw5fLqpF0
久慈さんが気になる。保守。

110 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/03(火) 00:51:20 ID:i+Bc6V6cO
★ゅ
このところ死者が出ないけどそれが(・∀・)イイ!!
つかの間の平和かな…。

111 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/04(水) 00:08:01 ID:yAYv2X2I0
怪我人は出てるけど基本的に平和な状態に慣れてしまっているので
いつ誰か死ぬかと思うとすごく怖い・・・

112 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/04(水) 03:46:24 ID:hupz9jNS0
【ABC】サカ敵視の関西メディア【関西J初優勝】29
http://ex12.2ch.net/test/read.cgi/soccer/1133709216/


サカ豚涙目逃亡・・・・wwwww

113 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/05(木) 04:15:14 ID:xWdDV8gB0
あさいほしゅ

114 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/05(木) 19:27:55 ID:AnHt5lry0
かのうほしゅ

115 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/05(木) 21:38:10 ID:ceua+P+q0
まとばほしゅ

…あれ、すがたがみえないぞ?

116 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/06(金) 00:11:46 ID:TMX//zyD0
ほしゅあげ

117 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/06(金) 00:20:21 ID:i3cpTNppO
テス

118 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/07(土) 00:56:36 ID:FpErGlfqO
新作期待★ゅ
鉢vs秀太を想像するだけでテラモエス

119 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/08(日) 01:48:34 ID:NH2f/XwyO
一日一★ゅ
小宮山がんがれ

120 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/08(日) 08:41:52 ID:g1hjtYB90
岡崎タンもがんがれ!
ストーリーには登場しないけどなw

121 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/08(日) 13:36:01 ID:BQkIv/Jp0
今や他11球団のファンからまんべんなく嫌われている珍ヲタ。
しかし珍ヲタとしては、自分たちを嫌っているのは巨人ファンと中日ファンだけだと思い込みたい。

そこで珍ヲタの口癖はこの2言。
「また味噌か」
「虚ヲタ乙」

本当にこの2言しか言わない。ビックリするくらい。 このスレを見てわかるとおり。
今や他11球団のファンからまんべんなく嫌われているのに。

勝ったら暴動。負けても暴動! これでは嫌われない理由がない。
広島黒田の実家のシャッターも破壊! (ソース http://www.h4.dion.ne.jp/~pa_man08/page073.htmlの中段)
それを2球団のファンのせいにして自らを慰める壮絶なオナニー思考。 それが珍ヲタ。 だから嫌われる。

「嫌われてるのは強くなったからだ!」という壮大な勘違いオナニー思考も持ち合わせている。
嫌われてるのは阪神球団や阪神選手のせいではなく、貴様ら阪神ファン(珍ヲタ)のせい。







122 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/09(月) 12:15:37 ID:g5V9AKNF0
御大とか的場とか中谷とかもう阪神にいない人を見てると悲しい
話の中では頑張ってほしいな

123 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/09(月) 13:22:33 ID:L1hgCDpM0
もっと切ない人もイルケドナ…(’ん ’)

124 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/10(火) 13:29:43 ID:kfjTum5cO
お昼の★ゅ
久慈さんに期待。・゚・(ノД`)・゚・。

125 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/11(水) 19:14:14 ID:4X+PNUTKO
一日★ゅ
井川の発した言葉気になるなぁ。

126 :924(1/4):2006/01/12(木) 01:03:05 ID:GM7f9C9Z0
>>94より
98.ちょっとそこまで

(やばいな……)
久保田は居間の隣室に敷かれた布団と毛布にくるまって横になっていた。
脇の傷は相変わらずじくじくと痛むが、小宮山が本棚から見つけた応急処置の
手引書にしたがって止血してくれたおかげもあり、出血は収まりつつあった。
むしろ心配なのは――そう思った時、大きなくしゃみが一つ出た。

思わず毛布を頭まで引っかぶる。胸に巻かれた包帯を除けば今は下着しか
身につけていないから寒いのは当然だが、このぞくぞくするような悪寒は
風邪を引く前触れのように思える。雨で完全に濡れたユニフォームの上下や
アンダーシャツ、ストッキングはしぼって水気を切り、ハンガーにかけて壁際に
吊るしてあるが、当分は乾きそうにない。シューズは中に古新聞を詰めて
枕元に置かれている。今この状態で襲われでもしたら、ひとたまりもない
だろう。そんな考えが頭をよぎり、余計に寒気が増した。

「久保田さん、すみません。たんすとか押入れとか見たんですけど……」
廊下に面したふすまが開き、小宮山が申し訳なさそうな顔をのぞかせた。
「女物と子ども服しかないんです。ここに住んでた人、母子家庭だったのかな」
「ああ、悪いな……」
布団と毛布をはいで身体を起こすと、小宮山はそばに座り、片手にかかえて
いた衣類を広げて見せた。
「一番大きめのでこれなんですけど、無理ですよね」
比較的ゆったりしたサイズのパジャマや上に着るカーディガンなどだった。
が、いかんせん女物だけあって小さすぎる。
「まあ……仕方ないな。俺の体格じゃ普通の男物でも苦しいからな」
久保田は寒さをこらえて軽く笑ってみせた。


127 :924(2/4):2006/01/12(木) 01:03:36 ID:GM7f9C9Z0
「あの、良かったら、これ着て下さい。ちょっときついかもしれませんけど」
小宮山は自分のユニフォームのボタンに手をかけた。
「いや、いい。気にするな。もう少し乾いたらユニ着るから」
その瞬間、またくしゃみが出た。
「ひょっとして、風邪ひいたんじゃないですか?」
「……鼻がむずむずしただけだ。どうってことない」
「怪我はどうですか?」
「ああ、だいぶマシになった。もう血も止まると思う。お前のおかげだ」
「そうですか、良かった」
ほっとした顔を見せると、小宮山は立ち上がった。

「もう少し二階で探し物してきます。ストーブとか残ってるといいんですけどね」
「ちょっとは休めよ。動きっぱなしなんだから」
「俺は大丈夫です。久保田さんはゆっくり休んでてください。いちおう表だけ
鍵かけときましたけど、もし何かあったら呼んでください」
そう言うと小宮山は部屋から出て行った。閉じられたふすまの向こうで廊下を、
ついで階段を駆ける足音が聞こえた。久保田は再び仰向けに寝ると、天井を
見つめてため息をついた。

桜井は今、どうしているだろう。
久保田が横たわっているのは、ちょうど気を失っていた桜井が寝かされていた
場所でもある。だからというわけではないが、彼のことが気になった。記憶を
なくしたとおぼしき言動は、こちらの警戒心をゆるめるための嘘ではないかとも
思ったが、あの慌てようはただごとではなかった。桜井の荷物は居間に
そのまま残されており、取りに戻ってくる気配もない。つまり、彼は地図も
食料も何も持っていないのだ。唯一自分から取り戻した銃にしても、
セットされているだけの弾を撃ち尽くせば、それまでだ。

128 :924(3/4):2006/01/12(木) 01:04:00 ID:GM7f9C9Z0
もし桜井の身に何かあれば――いや、それだけではない。混乱した彼が
意図的ではないにせよ結果として発砲したように、この先誰かを害する
可能性もあるのだ。いずれにしても、何か起これば自分のせいだ。そう思うと
ここで寝ている場合ではないのだが、体調まで崩しつつある自分がなんとも
不甲斐ない。

それにもう一つ、何とかせねばならない問題がある。
桜井との間に何があったかを、まだ小宮山に話していないのだ。桜井を逃した
のは完全に自分のミスだ。しかし、向こうはそうは思わないだろう。特に桜井が
記憶を失った原因は頭の殴打と推測できるだけに、彼は責任を感じるに
違いない。なるべく小宮山の心の負担にならないようどう話せばいいか、
まだ整理はできていなかった。

小宮山の方は、色々と尋ねようとはしなかった。ただ、手当てをしながら
一言だけもらした。
『やっぱり、俺が出かけたりしなかったら良かったですね』
反対を押し切って外出した間にこのような事態になったことに胸を痛めている
らしかった。そして、負傷した自分への気遣い。この二つから、小宮山は
おそらく、自分が話さない限り無理に聞き出そうとはしないだろう。しかし、
彼が本当のことを知りたがっていないわけはない。先ほどから休むことなく
動いているのは、こちらに対する心配と同時に自らの気をまぎらわせるための
ようにも思える。気配りをいいことに、いつまでも甘えていられない。

小宮山は一人でいたあいだ身に降りかかったことについて、非常に言いにくい
ことも含めて詳しく語ってくれた。それだけ自分を信じてくれているからだと、
嬉しく思ったものだ。ならば、こちらも一切を話すべきではないだろうか。
相手がどう思うかは心配だが、隠すことこそが最も信頼関係をゆるがすのだ。
これからのためにも、やはり何もかも話しておかねば。

129 :924(4/4):2006/01/12(木) 01:05:43 ID:GM7f9C9Z0
ようやく決心がついた。
久保田は起き上がり、毛布を引っ張り出して身体に羽織った。
階段の下まで歩いて行き、二階に向かって呼びかける。
「小宮山、ちょっと来てくれないか? ……話があるんだ」
少し待ったが、声は返ってこなかった。そういえば、先ほどから天井を通して
がたがたと聞こえてきた物音が、今はやんでいる。

(……トイレか?)
一旦もとの部屋に戻ろうと居間を通った時、ちゃぶ台の真ん中に置かれた
小さな銃に気がついた。小宮山が常に身に帯びていたワルサーだ。
よく見ると、その下に一枚の紙切れがある。
そこに書かれた短い文を読み、久保田は愕然とした。
「あいつ……!」

 久保田さん
 ちょっとそこまで服をさがしに行ってきます。
 すぐ帰るので、心配しないでください。
 玄関はカギをかけたままにしておきますが、
 もし誰か来たときなんかは、このピストルを使ってください。
                           小宮山

【残り40人】

130 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/12(木) 01:58:40 ID:eotROpy70
職人様乙です!
小宮山、無防備すぎるよ!そこが彼のいいところなのかもしれんが…。それにしても久保田の心労は増える一方だ、ガンガレ〜

131 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/12(木) 04:06:56 ID:n15yj5E70
バンビ……おまいは……orz

132 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/12(木) 15:40:04 ID:WA3Eb7gV0
職人さん乙です。
あああ…バンビ…。武器も持たずに外に出るなんて…。

133 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/13(金) 21:00:28 ID:d9XKV2nP0
職人様乙です
バンビちょっとは考えろ・・・orz

134 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/14(土) 13:47:53 ID:6E3/rsYPO
職人さん毎度乙です!
うわっクボタンが助かったと安心してたらら小宮山がぁぁぁ(ノД`)

135 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/15(日) 14:06:15 ID:WgTOAk+HO
小宮山心配だよ小宮山

136 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/15(日) 20:12:57 ID:wpZP4E0l0
期待あげ

137 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/15(日) 20:37:20 ID:+nPnhtCb0
松永浩美上げ

138 :542(1/6):2006/01/16(月) 02:06:08 ID:H+82v2l90
>>131
99.親愛なる君へ

 ぱららららら。
「……!」
 雨の音ではなかった。
 何故なら、団扇を細かく叩いたようなその音は、決して濡れてはいなかったから。
 ぱららららら。
「かはッ」
 そして空耳でもなかった。
 何故なら、その音と殆ど同時に、自分の身体に明らかな異変が起きたから。
「っあ、う……、ッ」
 膝が笑った。頭のあちこちが白飛びして、がくんと力が抜ける。握っていたスタンガ
ンがぽとりと落ちた。落下する時の束の間の無重力感。胃の下から突き上げるよう
な気持ち悪さが襲ってきて、小さく咳き込んだ。しかし嘔吐感は止まらない。しかも
何故か身体中が熱い。
 安藤優也(背番号16)は呻吟し、その場にへたり込んだ。
 左手で掴んだ取っ手にぶら下がりながら、目の前の扉に爪を立てる。顔面に風を
感じて、ついと顎を上げた。おかしい。こんなところに孔なんてなかったはずだ。指
が入りそうな円い孔。出来損ないのレリーフのように開いた幾つもの孔が、崩れた
三角形を模してそこに佇んでいた。その蜂の巣から外気がひゅう、と吹き込んで、額
から頬を伝った汗を冷やす。
 全くの想定外だった。
 まさか外から、扉越しに狙撃されるなんて―――
「ああ……」
 右の脇腹から下腹部にかけて、じわじわと赤い染みが拡がっていく。手を遣ると温
かな感触が纏わりついた。腹から背中へ、刺すような痛み。痺れるような眩暈。二、
三度、大きく呼吸しようとしたが、どうしても上手く行かなかった。身体の神経が上手
く繋がっていないような気がした。
(ヤバい)
 背筋が、危機感で満たされる。
(これは、ヤバい……)

139 :542(2/6):2006/01/16(月) 02:06:37 ID:H+82v2l90
 激しい痛みを訴える身体を宥めすかして、ぐっと手に力を入れた。縋りついたノブ
が、手の中でガチャガチャと動く。外側からがん、がん、と叩くような衝撃が加わる。
 そこで手が、辷った。
 がん!
「うアッ!」
 がちゃん、と一際大きくドアが軋んで開け放たれ、安藤はそのまま後方に吹っ飛
ばされた。たたらを踏んで後退する暇もなく、膝が折れて板の間に転がされる。背中
を力一杯打ち据えられたような衝撃に肺が縮み、次いで空気が中途半端に耳に抜
けた。
「痛、ッ……」
 こめかみが痛い。鼓膜の奥が痛い。いや、もう、とにかくあちこちが痛くてたまらな
い―――微かに血の味のする唾液を何とか呑み下して、耳の奥にわだかまった空
気を抜く。ツン、と嫌な悪寒。
 突き抜けた寒さに肩をぶるりと震わせると、眉毛の上で生温い液体が滴った。顔
を思い切り顰める。勢い良く開けられた扉の角に額をぶつけたらしい。直ぐにまぶた
と睫毛の間に血が垂れてきて、安藤は激痛に呻きながら顔をこすった。赤いフィル
ムを通した視界の向こうに浮かぶ人影。場違いに優しい雨垂れ。硝煙の臭い。
「ああ、お前やったんか」
 無感動に、しかしやや上がった息でその男は呟く。
 殺戮者の―――或いは狂疾の声音。
「……はは、は」
 肘を突っ張って顔を上げ、降って来た笑い声の出所に視線をぶつけた。
 床に薄く、闖入者の影が延びている。少し傾いだ扉。シューズを履いた足から腰、
腹、胸、頭へと順繰りに辿ってゆく。疲れた顔。うす赤く汚れた腕。携えるは大型銃
―――IMIウージー。
 片岡篤史(背番号8)がそこに立っていた。そして薄く、笑った。
「あんたかよ……」
 癖のある前髪は雨に濡れ、僅かに雫を垂らしている。歪められた口元と目元。こち
らに向けられた銃身が小さく揺れた。
「入れてくれへんつもりやったみたいやから」
 せやから撃ってん。悪いなァ。

140 :542(3/6):2006/01/16(月) 02:07:16 ID:H+82v2l90
 悪いなどとは欠片も思っていない口調で、彼はうそぶいた。土足で上がり框に足を
掛け、顔に貼り付いた雨粒を大きな動作で拭う。ゆっくりと、殊更にゆっくりと、濡れ
た足音を安藤の耳に捩じ込みながら近づいてくる。
「片岡さん、あんた―――」
「ふーん、吉野もおってんな」
 安藤の言葉を遮って、片岡が呟いた。四肢を投げ出して沈黙する吉野誠(背番号
21)を一瞥し、直ぐにあらら、と声の調子を変える。
「何や。吉野、死んでんの?」
 ぞくり。
 無神経に放たれた言葉に、さあっと喉元が冷たくなる。
 起き上がろうとして背を丸めると、げほ、げほ、と咳きが出た。どうやら即死は免れ
たらしい―――水に浮遊するようにふらふらする身体を支えながら、しかし床に出
来た血溜まりを見てぎくりと身体を強張らせる。
(酷い……こりゃ酷いぞ、おい)
 人間の血液は体重の約7パーセントを占める。体内の全血液のうち、30パーセン
ト以上を失うと出血性ショックを惹き起こす可能性があり、50パーセント以上を一度
に出血すると失血死に至る―――頭の片隅で弾き出された数字と現実の出血量を
突き合わせて、安藤の顔からは文字通り、血の気が引く。
「おーい、安藤?」
「な、に……」
「そんな、アホみたいに眺めとっても、流れてもうた血は戻らんで」
 覆水盆に還らず。
「あ、痛いんか。そやろ、痛いやろなァ」
 半ば呆然とする安藤に、まるで追い討ちを掛けるかのように、オレのせいやけど、
とカラカラ笑う。そして付け加えた。オレも痛いねん。笑みを貼り付けた顔のまま、ほ
ら、と血に染まった腕を示す。
 安藤は寒さとひとつの予感に―――それはつまり終焉の予感であった―――指
先から心臓の奥までを震わせた。手足が思い通りに動かない。血が足りない。
「ま、ちょっと退いといて」
 睨めつけてくる安藤の視線にはお構いなく、片岡は大股で屋内へ上がり込んでく
る。取り縋ろうとした腕を容赦なく蹴飛ばされ、安藤は痛みに唸った。やめて下さい、
という掠れた懇願は、彼の耳には届かなかったようだった。

141 :542(4/6):2006/01/16(月) 02:08:27 ID:H+82v2l90
「んー?」
 身を屈めて吉野の顔を覗き込んでから、無造作に、首筋へ指を当てる。
「うわッ、冷た」
 こりゃアカンわ。
 低く呟き、片岡は直ぐに手を引っ込めた。
 事実、吉野の身体はひんやりと冷えきっていた。首筋だけではない。剥き出しの手
首もまるで氷のように冷たかったし、俯き加減の顔は翳が下りている。腹には矢が
突き立てられ、ユニフォームは血で汚れたままだ。
「手間省けたから、ま、ええか」
 爪先で軽く吉野の手を蹴る。抵抗も反応もなく、ただうっそりと沈黙するだけの彼を
見て、納得したように片岡は振り返った。
「おいおい安藤、お前一体いつから死体と一緒に居ってん。気持ち悪うないの?」
 吉野の腕をもう一度だけ蹴り、肩を竦めて別の方向に足を向ける。二人分のデイ
バッグ。両方とも板の間に逆さにして広げ、またひとりごちた。何や、大した武器、入
ってへんな。
「……悪いスか?」
 霞む頭で、辛うじて理性が働く。
「相手が死んでまで一緒に居りたかったんか?」
「親友です。死んだからって、放り出せるわけ……ないでしょ」
「うっわ、気持ち悪いなァ。そんな、死んだ奴に拘って」
 片岡は全く疑っていない。好都合だった。
 安藤はこの後の展開を、白く染まりつつある脳内に思い描いていた。
 ―――その中には自分の死も、折り込み済みだった。
「片岡さんには、解んないスよ」
 そう、アンタにはきっと解らない。
 俺の気持ちも。俺の行動の理由も。俺の真意も。
 ―――頼む、解らないでいてくれ。
「ま、オレかて解りとないけど」
 悟られてはならない。

142 :542(5/6):2006/01/16(月) 02:09:03 ID:H+82v2l90
 片岡は踵を返して扉の前に歩み寄り、おもむろにスタンガンを拾い上げた。安藤
がもう身動きする事さえ苦しくなっているのを承知した、余裕の所作だった。
「入って来る瞬間を狙っとったん? ……残念やったな」
 こちらに向けられたその貌は、頬が少し削げたように見える。
 哂っているのに、何かに追い立てられるような、僅かな怯えを含んだ焦燥が顔一
面にべったりとこびりついているようだった。
 死神に魅入られるというのは、こういう状態を言うのだろうか?
「どいつもこいつも……」
 スタンガンを尻のポケットに押し込んで、大仰なため息をつく。
「ホンマに、ごっつい腹立つわ」
「う、グ……、は」
 血は止まる気配もなく、だらだらと流れ続けていた。腹部から太腿を赤く染め、膝
の周りに血溜まりを作る。耳鳴りがしだした。片岡の唾棄も剥き出しの憎悪も、徐々
にぼんやりぼやけていって、最早はっきりとは認識も分析も出来なかった。
 自分が死ぬであろうという、確実な・動かしがたい確信だけが鮮明だった。
「……安心しィ。直ぐ、吉野と一緒のトコに送ったる」
(ああ)
「まだ殺さなあかん奴がいてるし、あんましグズグズしてられへんねん」
(吉野……)
 ただそっと、彼の名を心の中で呼ぶ。
 蘇る光景。ありありと、まざまざと、その名前の響きが喚び起こす記憶。
 ドローで迎えたアウェイの12回裏、相手の打順はクリーンアップの3番から。チー
ムの勝ちは既になくなっている。とても苦しい場面だ。その場面を乗り切らなければ
ならないのが自分の仕事であり、先発、リリーフと繋いできた投手陣の最後を任さ
れた自分の使命である。負けないためだけに、自分は投げる。勝つためにではなく、
負けないために。
 この場合の勝ちとは何だ?
 勝ちはつまり、自分が殺されずに済み、片岡を殺す、もしくは撤退させるのに成功
する事だ。しかしその可能性はもうない。あり得るのは、引き分けか、敗北。
 では負けとは何だろう。自分が死ぬ事だろうか?
 いいや違う。
 この場合の負けは、自分と吉野が二人とも殺される事だ―――

143 :542(6/6):2006/01/16(月) 02:10:08 ID:H+82v2l90
 ぱららららら。
 何故か思い出した。その音は節分の豆撒きの音に似ていたと。
「……か……は、ッ―――」
 咽喉から血が溢れたのが解った。ごほっ、ごほっと続けざまに咳き込むたび、大量
の血が飛び散る。くの字に折り曲げた身体が痛みに慄いていた。破けたのかと思う
くらい熱くなった咽喉から、大量の血の塊が飛び出した。
「げほッ、げほっ……」
 最期に。紛れもない最期に、家族の顔をまぶたに浮かべる。
 愛する息子。愛する妻。こんなにも愛していたのに、もう直ぐ、愛していたと過去形
になってしまうのだ。俺が死んだらきっとみんな泣くだろう。とても置いては行けない。
置いて行けるわけがない。
 なのに、こんな理不尽な殺し合いで彼らを置いて逝かねばならないなんて。
(それに……)
 倒れた自分の右肩の延長線上にあったのは、眠ったままの吉野の顔。
 薄らいでゆく意識の中で思った。そうだ、コイツも置いて行けないよ。
(コイツをこんなところに置いてくのか、俺)
 サバイバル能力の皆無な奴だ。こんな物騒な世界に置き去りにするなんてそりゃ
無茶な話だろう? ―――それに、そう、これが一番大事だ。
『あと、頼んだぞ』『解ってる』
 もう一度。
 このやり取りをマウンドで交わしたかったのに。
 色濃く翳を纏った吉野の顔がたまらない気持ちを惹き起こす。大の大人なのに、
俯いたその顔が今にも泣き出しそうで、安藤は無性に悲しくなる。
 頼むから、頼むから気付いてくれるな―――
 ぱららららら……
「―――」
 最期に動かしかけた唇は、短い名前をかたどっていた。親友の名前だった。呼ん
でも呼んでも応えようとしなかった、友達甲斐のない、大事な親友の名前だった。
 頼むから死ぬな。生きろ。
 親愛なる、君へ。

【残り39人】

144 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 02:34:41 ID:kPSUy/r90
職人様乙です…
。・゚・(つД`)・゚・。

145 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 02:52:19 ID:6vPm3wHX0
乙です。
涙が止まらない…

146 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 12:56:34 ID:1OryvTSp0
職人様乙です
なんとなく片岡な気はしてたけど・・・
安藤・・・

147 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 17:15:01 ID:UHVGWB7s0
職人様乙です。
嫌な予感はしていたけど…安藤…
。・゚・(つД`)・゚・。

148 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 20:25:03 ID:aJNX0LjF0
うわああああああああああああんどおおおおおおおおおおおお。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン

149 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 20:42:37 ID:eId5mxl40
職人さん乙です。
あんどおおぉぉぉぉ。・゚・(ノД`)・゚・。

150 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/16(月) 23:58:58 ID:3wHSUU260
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん・・・・。゚(゚´Д`゚)゚。

151 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/17(火) 00:17:42 ID:KhT1Ao8bO
職人さん毎度乙です。
安藤。・゚・(ノД`)・゚・。
誰か片岡を止めてくれ!!!

152 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/18(水) 00:43:52 ID:ET4IiN7OO
久しぶりにグロい表現で夜中に読むと背筋がゾクゾクした。
このところは誰も死なないで束の間の平和だったから穏やかに読んでいたんだが。
他のキャラも動き出すかな。
桧山と今岡はどうなるんだろう…。

153 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/18(水) 19:53:46 ID:LODs6HxOO
「辷」の字が読めなくて辞書ひいた
なんて勉強になるスレなんだ…

154 :924(1/4):2006/01/18(水) 23:42:17 ID:mzAUunlp0
>>143より
100.背後から

ちゃぶ台の上に残したメモに、果たして久保田は気づいてくれるだろうか。
もしその前に誰か来たらと思うと心配だが、表に鍵をかけたことは彼にも
告げてあるから、人が開けようとすれば音で異変が分かるだろうし、相手が
入ってくるまで時間は稼げるはずだ。その間に銃を取ってくれることを
祈るしかない。いや、それよりも、久保田が自分の外出さえ知らないうちに
行って戻ってこられれば、一番いいのだ。

久保田は大丈夫だと言ったが、どこからどう見ても寒そうにしており、すでに
風邪を引きかけている可能性がある。とにかく、あのまま下着姿で放って
おいては危険だ。ユニフォームは濡れてしまったから、何か着替えがいる。
あの家に適当な服がないとなれば、どこかの家で調達せねばならない。
自分には、そうする義務がある。留守の間に何が起こったのか、まだ久保田に
話してもらってはいないが、自分が無理を言って出かけなければ、
あんなことにはならなかったかもしれないのだから。

色々と考えをめぐらせながら、小宮山は夕闇せまる集落の中を駆けていた。
傘をさしてはいたが、篠つく雨に足先をはじめ身体のあちこちが濡れつつある。
(この辺にしようかな)
小宮山は足を止めた。目当てとする成人男性の衣服は、女所帯でもなければ
どこの家にもあるものだが、自分たちの潜む民家からあまりに近い所では、
万が一何かあった時にかえって戻りにくくなる気がして、少し離れた所まで
来たのだった。

155 :924(2/4):2006/01/18(水) 23:43:12 ID:mzAUunlp0
この付近のほとんどの家は先ほど人探しに出かけた時に玄関から声をかけて
回ったが、誰かが応じる気配はなかった。しかし、出てこなかっただけで人が
潜んでいないとは限らない。しかもあの時とは違い、今度は家の中まで入って
服を探そうというのだ。そこにゲームに乗った人物がいた時は言うまでもなく、
そうでない人物がいたとしても、危険な侵入者とみなされ避けたい事態を
招いてしまうおそれもある。加えて、夜が近いうえに雨まで降り出した今は、
これまで外で行動していた選手たちが民家に移動しているはずだ。

いざどこかの家に入る段になり、小宮山はにわかに不安をおぼえた。自分が
しようとしていることは、かなり無謀なのではないだろうか。銃は久保田の
ために置いてきた。自分の身を守るものは、肩にかけたカバンのポケットに
入った二つの閃光手榴弾だけだ。
「なんだよ、今さら!」
小宮山は自らを叱りつけた。こうして出てきたのも、銃を持たないのも、自分で
決めたことだ。それに、久保田のことを考えれば手ぶらで帰れるわけがない。

意を決して小宮山は近くの民家に足を向けた。先ほど訪れた時は無人だった
はずの家だ。
「すみません、ちょっとお邪魔します!」
ドアを開けると同時に誰にともなく断わると、まっすぐ二階へ駆け上がった。
いくつかある部屋のうち、まずはすぐ左手の部屋に入ってみた。そこは6畳の
和室だったが、壁際に敗れた屏風があるばかりで、目当てのものはなさそう
だった。次に右手の部屋に入ると、両側に難しそうな書籍で満たされた本棚が
いくつも並んでいた。この家の主の部屋だろうか。奥にたんすがある。
小宮山は駆け寄って引き出しを開けてみた。

156 :924(3/4):2006/01/18(水) 23:43:37 ID:mzAUunlp0
(あった!)
中に入っていた衣類を2、3枚引っ張り出し、男物だと分かって小宮山は目を
輝かせた。中身をすべて床に放り出してその引出しを仕舞い、今度は
下段から順に開けていく。すると、一度中を見た引出しを閉じる手間が
省けるというのを何かで聞いた。全部の衣類を外に出し終えると、続いて
確認作業に取りかかった。さいわい、サイズはLだった。それでも大柄な
久保田には小さいかもしれないが、なんとか着られるだろう。

トレーナー、セーター、ズボンなど多めに衣類を選び出し、靴下や下着などの
小さなものからカバンに詰めたが、大半は入りきらなかった。持てるだけの
服を持って部屋を出ると、足早に階段を下りて玄関へと走った。
(よかった、誰にも遭わなくて)
まだ安心はできないが、最も危険と思われた屋内で人に遭遇せずにすんだ
ことは幸運と言えるだろう。あとは久保田のもとに帰るのみだ。手早くすませる
つもりだったが、予想以上に時間がかかっていた。久保田は自分が出かけた
ことを知って心配しているだろうか。

気持ちははやるが、右手に傘を持ち、左手で服をかかえている状態では
走って帰るのは難しかった。両手で持てればいいのだが、我が身を雨から
守る以上にせっかく手に入れた服を濡らすわけには行かず、やはり傘はさして
おく必要がある。ついでに袋やふろしきのたぐいを探しておけばよかったと
思わずにはいられないが、引き返すとまた時間を費やしてしまう。

少しでも急ごうと足を速めた時、トレーナーが一枚滑り落ちた。慌てて
押さえようとしたが間に合わず、足元の小さな水たまりに叩きつけられた。
「あーあ、もう……」
小宮山は素早くしゃがむと残りの衣類を膝に載せ、左手でトレーナーを拾い
上げた。右手に持っていた傘の柄を肩で支え、両手でトレーナーを広げると、
背中の大部分が濡れていた。これでは久保田に着せられそうにない。

157 :924(4/4):2006/01/18(水) 23:45:34 ID:mzAUunlp0
「小宮山……」
不意に背中の方から予期せぬ声が聞こえた。
(だれ――!?)
一瞬、電流に打たれたように身が震えた。途端に心臓が激しく脈打ち始める
のが分かる。神社で桜井と遭遇した際も同じように声をかけられたが、
その時よりも今の声は近かった。気配に気づけなかったのは、服に注意が
向いていたことと、雨音のせいだろう。だが、悔やんでも始まらない。

(慌てるな。落ち着け……)
自分の上半身は傘で覆われており、頭はもちろん背中の名前も背番号も
相手には見えないはずだ。ということは、相手はもっと前から自分を見つけて
いたことになる。あるいは、つけられていたのかもしれない。そう考えると
ぞっとしないが、今、向こうに自分の姿が見えていないことは好都合だった。
小宮山は静かに両手を離した。支えを失ったトレーナーが水たまりに落ち、
少しずつ浸ってゆく。残りの衣類ももうすぐ使い物にならなくなるだろう。
それも仕方がない。小宮山は肩にあずけていた傘の柄を右手で強く握り締め、
左手をカバンのポケットに突っ込んで手榴弾をつかんだ。

「……小宮山やろ?」
確認するようにもう一度声が聞こえ、小宮山は戸惑った。なぜ、わざわざ声を
かけてくる? 自分を殺す気なら、いくらでも攻撃可能だったはずだ。
もしかすると、悪い予想とは違って敵意を持たない人物なのだろうか。
しかし、桜井も声をかけてきたが――。
「聞こえてるんやろ?」
三度目の呼びかけと、小宮山が迷ったまま振り返ったのはほぼ同時だった。
薄闇と雨の中、2メートルほど後ろに立ってじっとこちらを見ている男がいる。
目をこらすとそれは――藤原通(背番号2)だった。

【残り39人】

158 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 00:17:17 ID:Zlf+gZZy0
職人様乙です!
ってこれ、バンビかなりヤバいんじゃ…。藤原はどう動くのかな?

159 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 18:26:46 ID:mcdGL8ah0
乙です〜

160 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 21:44:17 ID:IiGVjqmTO
やっべえええええええヤツキター
藤原は読めない…
バンビ気を付けろよお〜

161 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 22:02:49 ID:MQwa8aTV0
バンビ・・・・

162 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/19(木) 22:50:15 ID:D9wPGp0h0
う〜ん、藤原の論理だとバンビは信用できる人間にカテゴライズされるはず
でもこいつはどう豹変するか分からんからなあ・・・

163 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/20(金) 00:04:06 ID:oOXftghzO
乙です!
バンビ・・・一番やばい奴と遭遇してしまったな

164 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/20(金) 04:26:24 ID:hVajkeDD0
バンビどうなる! 

165 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/21(土) 10:44:52 ID:F7yvmweB0
うわぁ〜むっちゃ気になる!!
職人さん、乙です!

166 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/21(土) 16:39:38 ID:Jzn2poke0
保守

167 :174(1/5):2006/01/22(日) 14:17:35 ID:XcFPqHAB0
>>157
『信用できる男』

「良かった! 小宮山や!」
 投げかけられた声は、思いの外明るかった。
 ばしゃばしゃと地面の水を跳ねさせながら、藤原が近づいてくる。
 小宮山は思わず身構えた。が、相手は武器らしい武器を持っていない。
 表情がよく分かる位置まで近づいてきた藤原は、顔いっぱいに笑みを浮かべていた。
 ようやく信用できる人に会えた、というように。
「大丈夫か? 元気してたか? 誰にも襲われてないか?」
 久しぶりに会った親戚が孫にでも話しかけるように、矢継ぎ早に質問してくる。
「あ、は、はい。藤原さんこそ……」
 唐突に砕けた雰囲気に、小宮山は拍子抜けして答えた。
「服探してたのか? うわ、全部濡れちまってるぞ」
 足下にしゃがみ込み、小宮山が落とした衣類を拾い上げてくれる。
「あ、い、いいですよ。もう使えないし」
「そうか? まあこの天気じゃ乾かせへんしなぁ」
 言いつつも、やはり気になるのか泥に濡れた服を抱え込んで立ち上がる藤原。
「ユニフォーム汚れますよ」
「ユニフォームは汚してなんぼやん」
「そうですね……」
 あっさりと答えた藤原に、小宮山は思わず笑ってしまった。
 敵意どころか、全く邪気がない。こんなに無防備に近づいてきてしまっていいのか
と、逆にこっちが心配してしまうくらいだ。
 彼が演技をしているようには、とても見えないが――桜井の例がある。藤原が衣服
を持ち上げた隙に、小宮山はざっと全身を確認した。
 膝のあたりや、転んだのか所々が砂で汚れている以外は、目立った汚れはなかった。
勿論、桜井のように血痕が付いているわけでもない。

168 :174(2/5):2006/01/22(日) 14:18:07 ID:XcFPqHAB0
 そこまで確認し、いきなり警戒心が解けた。小宮山の全身から、ほっと力が抜ける。
カバンのポケットに突っ込んだ手を出し、藤原から衣服を受け取った。
 どうしようか悩んだが、持って帰ることにした。せっかく拾ってくれたものを、捨て
置くのは申し訳ない。少し乾けば、使える物があるかもしれない。
「酷い雨やもんな。昼間はあんなに晴れてたのに――」
 両掌を天に返し、藤原がため息をついた。傘を持たない彼の身体は、現在進行形
でシャワーを浴びているように濡れている。
「雨の中立ち話も何だし、俺もう少し先の民家にお邪魔してるんで、そこまで行き
ませんか?」
 藤原通は明るくて、面倒見のいい先輩だ。二軍ではよく世話を焼いてもらったし、
感謝している。
 彼が何の疑いも持たずに自分に声をかけてくれたことが、自分を信用してくれて
いる証拠だと感じ、小宮山はそれを嬉しく思った。
 傘を差し出して誘うと、藤原が目を輝かせた。
「いいのか? すげー嬉しい。お前みたいなやつ、探してたんだよ。一人じゃ心細
かったし……」
「俺も、藤原さんに会えて良かったです」
 勝手な判断になってしまうが、いいだろう。
 久保田があんな状態だからこそ、切に仲間になってくれる人が欲しかった。
 先刻は何の収穫もなく帰って、あまつさえ桜井と二人きりで置いてきた久保田に
怪我まで負わせてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいだが、衣服を探しにきた
ついでに仲間が増えるなら少しは挽回出来る気がした。藤原なら、久保田だって許
してくれるはずだ。
「ほんと、お前が無事で良かったよ」
 道すがら、藤原がしみじみと呟く。
 薄暗い道のりを、足下を気にしながら歩く。たまに水たまりに入ってしまい、ズ
ボンの裾を泥水が濡らした。

169 :174(3/5):2006/01/22(日) 14:18:29 ID:XcFPqHAB0
「藤原さんは、何か怖い目に遭ったんですか?」
 小宮山自身も決して無風の時間を過ごしていたわけではないが、話すと長くなる。
まずは藤原のことを聞きたかった。
 言うのを悩んだ、と言うよりは、どう伝えるか言葉を選んでいたらしい沈黙の後、
藤原がポツポツと話し出した。
「ウィリアムスには気をつけろよ。マシンガンを持ってる」
「……襲われたんですか!?」
 思わず聞き返すと、傘の取っ手を挟んですぐの至近距離で藤原が神妙に頷いた。
「彼がそんなことを……」
 常に一軍にいるウィリアムスと関わる機会はほとんどなかったが、熱血漢のナイス
ガイという印象がある。
 だがその目に怯えた色を見せて話す藤原の言葉が、嘘とは思えない。
「怖いよな。やっぱ、外人なんて信用できないよ」
「そんな……」
 外人だから、などという括り方は少々乱暴なように感じた。
 だが藤原は先輩でもあるし窘めるようなことを言うのもはばかられ、小宮山は口を
 つぐんだ。
 彼がウィリアムスに襲われたのは事実なのだろう。一括りにして嫌悪してしまいたく
なる気持ちは、分からないではない。
 一種の防衛本能だ。理由が必要なのだ。理由がなければ、全員を敵かもしれないと
疑わなければいけなくなる。相手が敵である理由をカテゴライズしてしまえば、誰彼
ともなく疑い、誰を信用していいのか、悪いのか、分からなくなり、常に不安に苛ま
れるという責務から解放される。
 だがそれは同時に、カテゴリに捕らわれて大切なものを見失ってしまうかもしれな
い諸刃の剣だ。
 『外人』に対する憤りを見せる藤原の意識を逸らすように、小宮山は意図的に話題
を変えた。
「やっぱり……一人で行動するのは危ないですね。俺は久保田さんがいてくれたから、
ちょっとは安心して行動できたけど」
 あまりに無茶なことをしようとしたら彼がブレーキを踏んでくれる。守る、守られ
るの関係ではないが、支え合える人間がいるというだけで、安心感も生まれるし、精
神的に強くなれる気がした。

170 :174(4/5):2006/01/22(日) 14:18:52 ID:XcFPqHAB0
「久保田?」
 そういえばまだ言っていなかった。彼らが拠点としている場所に連れて行こうと
しているのに、同行者の存在を伏せているのはアンフェアだろう。騙し討ちをしよう
としていると取られてしまっても仕方がない。小宮山は慌てて言葉を重ねた。
「あ! 言い忘れてたけど、久保田さんも一緒にいるんです! ちょっといろいろ
あって、今は怪我してて、体調も崩してるので休んでもらってますけど。やっぱり
落ち着いてるし、頼りになりますよ」
「お前、久保田なんかと一緒にいるのかよ?」
 だが、小宮山のフォローも、藤原はあまり聞いていないようだった。
 久保田は、藤原の一つ下の後輩なはずだ。疑念の混じった口調で聞いてくる藤原に、
言い含めるように答えた。
「久保田さんは、いい人ですよ」
「…………」
 藤原は答えない。
 俯いてしまった彼の横顔には、先ほどよりも不安の影が落ちているように思えた。
 彼が久保田と確執があったという話も聞かない。
(やっぱりそう簡単には信用してもらえないものなのかな……)
 実際顔を付き合わせたわけでもない人間を信頼するのは難しいのかもしれない。
 こう言っては何だが、久保田自身も誤解されやすいタイプなのは確かだ。
 小宮山だって、簡単に誰でも彼でも信じられるわけではない。安易に信じることで、
裏切られる辛さも恐ろしさも、よく知っている。
 少し神経質になっているだけだ。戦意のない久保田を見れば、藤原も分かってくれ
るだろう。

171 :174(5/5):2006/01/22(日) 14:19:21 ID:XcFPqHAB0
 そこから先は、藤原は何も言わなかった。
 どうしても嫌ならば、やはり行かない、と言ってしまうことも出来ただろう。そう
言い出さなかったのは、内心の葛藤はどうであれ、とりあえずは信じてみよう、とい
う気になってくれたのだろう、と小宮山は思っていた。
(大丈夫、少し怯えているだけだ)
 誰だって最初は人を信じることが怖い。
 でも、誰も信じられなくなるのは嫌だった。
 小宮山は藤原を信じたいし、藤原には小宮山も、久保田も信じて欲しい。
 藤原は信用に足る人物だ。人を殺そうとする人間が、あんな風に小宮山に声をかけて
くるわけがない。無防備に近づいて、落とした衣服を拾ってくれることもないだろう。
 荷物は重くなったが、気持ちは行きよりも軽くなっていた。
 小宮山は意気揚々と、久保田の待つ家へと向かった。
(『仲間』が増えました。)
 その報告を、久保田にするために。 

 そう、小宮山は知らなかった。
 久保田智之という男が、彼にとって『敵』に当てはまるということを。

【残り39人】

172 :174:2006/01/22(日) 14:23:09 ID:XcFPqHAB0
話番忘れてましたorz

101.信用できる男
でお願いします。

173 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/22(日) 15:07:48 ID:P5UkSBUN0
乙です!
うわあああああ・・・ますます気になる!

174 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/22(日) 17:17:32 ID:8Y3IgkjY0
なんじゃ、このスレは

175 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/22(日) 17:18:13 ID:pfl+38gH0
163 名前:代打名無し@実況は実況板で :2006/01/22(日) 17:09:37 ID:8Y3IgkjY0
珍カスのブザマな姿は本当に笑える


176 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/22(日) 17:51:14 ID:0Dd7k0iPO
乙です!やばくなってきたね。これからどうなるんだろう…

177 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/22(日) 18:38:38 ID:8/4HM7Ab0
職人様乙です。
あああ…どんどん雲行きが怪しく…。

178 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 01:48:22 ID:YjNwYqK60
ちょ、くぼたんと藤原って・・・?

179 :514():2006/01/23(月) 12:23:15 ID:cfMHzNGI0
102.光が届かぬ深海の底へ
目の前に立つ桧山の目は、今岡に水を連想させた。
何を話せばいいのか、何を語ればいいのか−−脳は桧山をきちんと認識している
のかすら怪しかった。ただ一つ分かるのは混乱がおいでおいでと手を揺らし誘っ
ている事だけだ。
今岡が黙っているのを見兼ねたのか、桧山が静かに諦めに似た溜息をついて口を
開いた。
「運命なんな、今岡。」
「何が運命なんです?」
「死ぬことも、生きることも……ゲームに参加したんも、こうやって今お前の目
の前に立ってるんも。」
桧山は屈み、Y字型のやや大きめの枝を拾い、手で弄び始めた。
「桧山さんはそれが運命やと思うんですか?」
「さあ。でも、俺にはそれしか思い付かんかった……なぁ、今岡?」
桧山の右手の枝がくるりと空中に円を描いた。お伽話の魔法使いのように、桧山
は自分に魔法を掛けるつもりなのかもしれないな、と今岡はぼんやりと考えた。
「はい。」
「お前、何してんの。」
「……え。」
自分を、今岡を永遠に悩ませるための魔法を。
「お前のユニの血見てる限り……誰か殺したんやろ?」
桧山が一歩、また一歩今岡に近付く。
「……俺なぁ、鳥谷と矢野さんに会ったんや。鳥谷は最初は殺し合う気みたいや
ったけど、今は変わろうとしてる。生きたい、って言うとった。そういやお前に
、ちょっとだけ似とったなぁ。」
(殺さなければ)
唐突に、今岡は衝撃と危機を感じた。このままこの人を生かしておけば自分が崩
壊してしまう、と。
(俺はひとでなくなってしまう)
桧山の言葉は今岡を鈍らせ、内面からの崩壊を呼び込もうと誘ってくる。


180 :514(2/4):2006/01/23(月) 12:25:16 ID:cfMHzNGI0
「矢野さんは……正直ようわからんけど、あの人は復讐する気ちゃうかな。自分
の命散らしてでも。」
桧山の目が今岡を捕らえた。
(呑み込まれる!)
「なぁ今岡、お前は生きることに執着してへんのちゃうか?」
ぱきん
桧山の手により枝が折れ、折れた枝先が地面にぽとりと落ちた。
「俺思うんや、俺にもあの二人にも……全員に役割があるって。自分で分かって
るか分かってないか違いはあるけどな。だからな、きっと俺の役割は、道を交わ
らせて重ならせる事やったんや。」
桧山は気付いている、と今岡は悟った。自分の殺意を。桧山の運命を。だからこ
んなにも饒舌なのだ。
−−『遺言』を語っているから。

「今岡。俺はな、お前に生き残ってくれ、殺し合うななんて言わんよ。でもお前
に死んでほしいとも、思わん。」
桧山が右手に残った折れた枝を投げた。綺麗な放物線を描き枝は宙を横切り、地
面に叩き付けられた。
「だけど今岡、後悔するなよ。俺を、誰かを殺したことを、お前が死ぬ瞬間まで
後悔すんな。考え続けてみろ。」
「−−……桧山さん。」
「運命に逆らってみろ、今岡。逆らって出来た自分の道を誇ってみせろ。だから
。」
桧山は一旦言葉を切った。笑った。死を受け入れたものの笑みだ。
「だから、その覚悟が出来たら、俺を殺せ。この世界の俺の役目はここまでや。

頭から稲妻が走るような衝撃が今岡を打ちのめす。意識から思考が剥離して−−
−今岡は本能のまま、緩慢な動作で銃を構えた。銃口を桧山の胸元に近付け、微
かに震える指が引き金に掛かる。

181 :514(3/4):2006/01/23(月) 12:28:15 ID:cfMHzNGI0
「あぁそうや。……鳥谷に会うたら謝っといてな。」
桧山は薄くまた笑い、顔色一つ変えず今岡を見詰めていた。
一発
仰向けに倒れた桧山が呻く。まだ死んでない。崩れた桧山に近付く。
二発、三発、四発
桧山が倒れまた呻き、顔を歪めた。身体が仰向けなり、銃弾が撃ち込まれる度に
波打っていたが、びく、びく、と震えやがて動かなくなり、−−桧山は死体とな
った。
撃ち抜いた喉や胸元から夥しい量の血液が広がって、とろとろと土に模様を描き
出した。白いタイガースの縦縞がじわじわと、鮮やかに赤く、紅く、染め上げら
れていく。
今岡は自身の頬に触れた。汗が僅かに指を濡らして、汗をかいていたのだと自覚
した。
タイミング良く、ぽつり、ぽつりと雨粒がからだに降り注いできた。このまま降
り続ければきっと桧山の血液は綺麗に流れてしまうだろう。
目の前に横たわる桧山の遺体にも雨が当たり、顔に当たる雨粒が曲線に従い、つ
う、と流れた。
それは涙のようにも見えたけれど、僅かに笑っているような桧山の死に顔には不
似合いで、今岡は笑ってしまった。
(そういえばこの人は、いつだって声を上げて笑っていた。)
「あは、ははは。」
今岡は、試しに声を出して笑ってみることにした。
「ははハハ、く、ふふ、ははっ。」
笑い声は止まらない。
声を出して笑う度に、今岡の中に虚しさが蓄積されていく。
「はは……っは、あは。」
誰も答えはくれない。
死んだらどうなるのか
人殺しとそうでないものの違い
何故殺すのか
何故生きているのかも

182 :514(4/4):2006/01/23(月) 12:30:19 ID:cfMHzNGI0
桧山は何を伝えたかったんだろう。ランプ片手に道を照らしてはくれても、
そこから先どのように進めば良いのか−−桧山はただ笑みを湛えるだけだった。
死の覚悟と引き換えに桧山は今岡に何を残したかったのだろう。何と交わら
せたかったのだろう。

雨の匂いに混じる血の匂いは、野口の血の匂いとは少し違う気がした。
それは人を誘ってやまない甘美な毒のように、今岡の肺から体に染みていき、
今岡を揺さ振った。剥離された思考がまた意識に張り付くも歪んでいく。
ゆらゆらと揺れるのは自身が揺れているのか、意識なのか、こころなのか、
神経なのか。
強くなってきた雨が服をぐしゃぐしゃに濡らして、皮膚を冷やしていく。
今岡は立ち上がる。景色は揺れていた。
体は冷えていくのに、脳内や奥底は温く澱み、今岡を呼んでいた。
『ヒトは死んだらどうなる?』
野口の声
『人殺しとそうでないものって何が違う?』
中村の声
『今岡』
(桧山さん)
『お前、どうしたい』
(どうしたい、なんて)
ああ−−
『運命に逆らってみろ、今岡。』
(俺はあなたが最期に遺した言葉を、理解することが出来るやろうか)


【残り39人】


183 :514:2006/01/23(月) 12:34:06 ID:cfMHzNGI0
すみません、リンク忘れた上に、番号も振り忘れ、あげてしまいましたorz
リンクは>>171です。申し訳ないです。

184 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 15:01:57 ID:L7bkjVzj0
うわあああああああああああひやまああああああああああああああ。・゚・(つД`)・゚・。

185 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 16:41:02 ID:2kuoaO9i0
職人様乙です。
ひ…ひやまあああああああああああああああ。゜゜(´Д`。)°゜。
死ぬ時まで男前で…ああ…。

186 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 18:08:08 ID:19m4Fg140
やばいです・・・・。桧山さん・・・・。号泣です・・・。もう、なんていうか、
最後まで、桧山さんらしい・・・。

187 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 18:29:22 ID:N2+mxccHO
桧山…
ところで残り人数は38人の間違いでいいのかな?

188 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 22:16:10 ID:19m4Fg140
今岡・・・・・。これまでは、桧山に期待してたが、これからは、ゴレンジャーに期待^^

189 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/23(月) 23:54:42 ID:Cp86+7tG0
何か・・・・ひーやんらしい最後だねぇ つД`)・゚・。・゚゚・*:.。..。.:*・゚

190 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/24(火) 05:45:49 ID:11lBMg/s0
おおおおおおおおおおひーやあああああああああああああああん。・゚・(つд∩) ・゚・ 。

最後の最後までひーやんらしくて涙。素敵過ぎるよ・・・。
職人さんうますぎる・・・。
自分の希望はゴレンジャーだから、どうかゴレンジャーが生き残るように(-人-)
特に金本と藤本がやられたら絶望してしまいそう・・・。

191 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/24(火) 17:19:41 ID:HAQiPaKD0
 

192 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/25(水) 00:06:21 ID:sZqI30SC0
桧山なら今岡をこっちの世界に戻せるかと思ったけど
ああああ、なんかますますヤバい方向に・・・
金本なら何とかできるのかなあ・・・

193 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/25(水) 00:22:39 ID:zYRLjDVg0
今岡と金本は会ったら最期って感じだなー
生きるにしろ死ぬにしろ、金本にとっては不幸な再会でしかなさそう


194 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/25(水) 01:56:23 ID:pxxlzIeA0
金本は案外弱いよね。そのバランスを藤本とのコンビで上手く保ってる感じ。
そういう金本の実は弱いところを上手く職人さんは描いてるなっていつも感心してる。

195 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/25(水) 14:17:22 ID:btlxTEOMO
保守

196 :924(1/5):2006/01/25(水) 23:30:47 ID:ro/vqoyx0
>>182より
102.消えない過去

「なんやて? 久保田さんがどうした?」
"久保田"という名に対する桜井のただならぬ反応に、桟原は尋ねてみた。
「俺……」
「お前、久保田さんとなんかあったんか?」
何か言いかけて躊躇するように桜井は口ごもったが、重ねて問うと、
決心したかのように話しはじめた。
「……俺、気がついたらどっかの家でぐるぐる巻きに縛られて転がされてて、
そこに知らん男がおったんです。そいつの背中に30番の背番号とローマ字で
『KUBOTA』って……」

思いがけない話に桟原は地図を横にやり、ボールペンを置いた。これから
状況を説明するつもりだったが、まず相手の話を聞くことにした。
「ぐるぐる巻きて……それ、久保田さんがやったんか?」
「そうみたいっス」
「なんで、そんなことになってたんや?」
「それが俺……なんも憶えてなくて」
首を横に振り、桜井はうつむいた。包帯を巻かれた頭頂部がこちらを向き、
血のにじんだ跡が目に付いた。

「そういやお前、頭に包帯巻いてるやんか。それは?」
「……これも目ぇ覚ました時にはもう巻いてあったんで。なんか、すっごい
ズキズキして痛いんスよ。記憶が飛んでるのは、どうもこのせいちゃうかと」
桜井は顔をしかめながら頭のてっぺんを押さえた。
「なるほどな……」
桟原はあごに片手を当ててふむふむとうなずいた。この男の性格からすれば、
記憶を失った理由としては、恐怖などの精神的ショックよりその方がよほど
納得できる。

197 :924(2/5):2006/01/25(水) 23:33:08 ID:ro/vqoyx0
「で、久保田さんは何があったかとか、お前に話してくれへんかったんか?」
「ぜんっぜん。俺、誘拐でもされたんかと思たら、その久保田ってやつは
よう分からんことばっかり言うんですよ。『俺は敵やない』とか、『お前が逃げ
へんように縛った』とか『ここを動くと危険や』とか。けど、なんで危ないのか、
なんでこんなことになったかとかはホンマなんにも教えてくれへんし……。
俺の頭なぐったんは、あいつとちゃうやろか」
桜井はいまいましそうに言ったが、桟原は今の話に少し安堵していた。

桟原と親しい同僚は同年代の投手が多かったが、久保田もその一人だった。
常にマイペースで、少し風変わりな面もあるが、打ち解けると実に楽しい男だ。
(たぶん、久保田さんは"大丈夫"ってことやな)
もし桜井を殴ったのが久保田だとしても、今の話からすると彼に敵意は
なさそうだ。逃げないように縛ったというのはいささか乱暴な話だが、
あの久保田ならやりかねない。その場面を想像し、つい笑みがもれた。
「……なんか、おかしいっスか?」
憮然とした表情の桜井を見て、慌てて真顔に戻った。

「あ、いや。それで? お前がここに来たってことは――」
「……逃げてきたから」
「縛られてたのは、どうしたんや?」
「それは……色々やってたら、なんとか解けたんで……」
桟原には分からなかったが、桜井の頬がわずかに引きつっていた。
「ほな、久保田さんは?」
「さあ……スキ見て必死で逃げたんで……後のことまでは」
桜井の声は徐々に小さくなった。もちろん彼は嘘をついており、重大な事実を
伏せているわけだが、桟原がそこまで見抜けるわけはない。
「ふーん。それ、いつの話や?」
「たぶん、一時間くらい前やと……」
「お前と久保田さんがいた家がどこかは憶えてへんか?」
「……え?」

198 :924(3/5):2006/01/25(水) 23:33:45 ID:ro/vqoyx0
「分かるんやったら、ちょっとそこに行ってみたいんやけど」
「む、無理っス! そんなん、憶えてません。ほんま、めちゃくちゃに歩いたり
走ったりしてここまで来たんで」
「そっか。しゃあないな」
桜井の慌てようも桟原は特に気にならず、傍らに置いた地図を見た。
この辺りは集落で、民家が多い。その中のどこかに久保田もいるのだろう。
もう外は暗いが、明日になれば探してみてもいいかもしれない。
「もし憶えてても……戻ったら俺、何されるか分からへんし……」
「いや、久保田さんはそんな人やない」
おびえた様子を見せる桜井に、桟原は間髪入れずきっぱりと言い切った。

「久保田さんがお前に『敵やない』って言わはったのは、ホンマやと思う。
たぶん、お前がいなくなって心配してはるはずや」
「そ……そうっスか……」
桜井は肩をすくめ、身を縮めた。心なしか震えているように見える。
「どうしたんや? 大丈夫か?」
「いや、その……ちょっと、寒いだけやから……」
「あー、お前、雨の中うろうろしてたんやっけ? そら、あかんやろ」
桟原は立ち上がった。もっと早く気づいてやるべきだった。目に付いた隣の
部屋のたんすを漁ってみると、うまい具合にジャージが見つかった。
「着替えた方がええ。これなんか、どうや?」

「……どうも」
桜井は恐縮しつつ服を受け取り、ユニフォームを脱いだ。拾い上げると、
濡れているうえにヘッドスライディングの後のように泥が付着している。
(――なんやって?)
あることに気づいた桟原は、ユニフォームを手にしたまま固まった。
「どうかしたんスか?」
その様子に気づいた桜井がいぶかしげな顔を向けていた。桟原は動揺を
懸命に抑えた。
「あ? ああ、このユニ……泥だらけやな。そや、ちょっと洗った方がええな」

199 :924(4/5):2006/01/25(水) 23:34:16 ID:ro/vqoyx0
べつにいいっスよ、と言う桜井の声を無視して桟原は洗面所に走った。
(……冗談やない。冗談やないぞ)
シンクにユニフォームを放り込み、ありったけの流水ですすぐ。泥が少しずつ
ではあるが落ちてゆき、その下に頑固に残るおびただしい汚れが次第に
あらわになった。
(あいつ……)
すーっと背中が冷えてゆく。変色してはいるが、これは――。
(誰か……殺したんか?)
雨の音と、蛇口から勢いよく流れ落ちる水の音が重なって耳に響く。冷たい
しぶきが絶え間なく腕を刺激する。だが、脳はそれらをとらえてはいなかった。
ただ一つ、ほとばしる水にさらされるユニフォームを染めた色に釘付けに
なったまま、桟原は動けなかった。

「桟原さん」
「わわっ!?」
突然呼びかけられ、胸の中で心臓が大きく跳ね上がった。我にかえって
肩越しに振り向くと、洗面所の入り口に着替えた桜井が立っていた。
「な、な、なんや?」
かろうじて返事したが、
「あんまり遅いから、何してはるんかと思って」

「その、あの、えーっと……よ、汚れが、なかなか、お、落ちひんねん」
自分でも呆れるほどしどろもどろだったが、桜井は特に不審に思う様子もなく、
少し申し訳なさそうに言った。
「ほんまに、もういいっスよ。そこまでしてもらわんでも」
「そ、そうやな。このへんにしとこ」
血の染みついたユニフォームの前面を内側にたたみ、両手で二、三度強く
しぼった。桜井が――というより人を殺したかもしれない男が――自分の
背中を見つめているのが気配で分かり、生きた心地がしない。
さっさと行ってくれ、と思いながら四度五度としぼり続けたが、相手は
去ろうとはしなかった。

200 :924(5/5):2006/01/25(水) 23:36:51 ID:ro/vqoyx0
「……なんや? へ、部屋に戻っとけや」
ちら、と後ろを見ながらおそるおそる言うと、桜井はどことなく寂しそうに
目を伏せた。
「独りやと、なんか、不安やから……」
「……はあ?」
陰惨な血のイメージにはそぐわない弱気な言葉に桟原は拍子抜けした。
(そ、そうや。こいつは阪神のことも全部忘れてるから……高校生くらいに
戻ってることになるんか?)
となれば、チーム最年少の小宮山よりまだ下というわけだ。そう考えると
かわいげが感じられなくもないが――やはり怖いものは怖い。なにしろ、
少し前には自分も銃を向けられたのだ。

(俺はお前と一緒なのが不安やっちゅーねん!)
と叫びたい気持ちをぐっと抑えつけ、優しく言ってやる。
「なんや、そんなことか。心配すんな。これ干してくるから先行っとけ。な?」
背中を軽く押して促すと、桜井はこくんとうなずき、親に寝かしつけられる
子どものようにとぼとぼと元いた部屋へ戻って行った。
その様子を見た桟原は二階へ上がり、適当に入った部屋の押し入れに
ユニフォームを放りこんだ。干しているうちにどこかへ飛んで行ったことにでも
すればいい。これを見て、桜井が過去を思い出しでもしたら事だ。

(久保田さんは、それが分かってたんやろか?)
さっきは笑ってしまったが、はたと思い当たった。久保田の行為が桜井を
危険人物と判断してのものだとすれば、彼が人を手にかけた可能性は
極めて高い。いや、きっと間違いない。
(おい、ほんまにヤバいぞ……)
いっそこのまま逃げてしまおうか――。そんな思いが頭をかすめた。

【残り38人】

201 :924:2006/01/25(水) 23:38:30 ID:ro/vqoyx0
すみません、章番号間違えました……。102ではなく103です。

202 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 00:15:24 ID:qrdxakL+0
職人様乙です!
サジッキーどうするサジッキー!

203 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 01:28:45 ID:BIbslF9L0
乙です!!!!
ドキドキ・・・・・

204 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 08:33:49 ID:wCTf56J/0
乙でございます
白桜井かわいいよ白桜井

205 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 12:44:06 ID:7s3xdlJ20
職人さま乙です。
桜井が記憶取り戻したらどうなるんだろう…。

206 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/26(木) 22:09:49 ID:BloNYuqa0
相変わらず珍スレは寒いな

207 :924:2006/01/26(木) 22:21:10 ID:hacy9LZ10
103章に脱落がありました。
4/5(>>199)2段落目の下から2行目
「かろうじて返事したが、」の後に「ひどく声が上ずっていた。」
と補ってください。重ねがさね、すみません。

208 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/27(金) 19:45:05 ID:JKHV0JPfO
職人さん毎度乙です。
サジッキーも災難ばかりだなぁ…牧野さんが見守ってくれてるといいが。
桜井はこのまま記憶を取り戻さないでほしいが、そうもいかないか…

209 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 00:41:35 ID:CW08Wi+V0
サジキといえばいつか三東に会えるのかなあ
その三東はどんどん壊れていってるわけだけど・・・

210 :174(1/10):2006/01/28(土) 02:22:46 ID:WccPN/yH0
>>200
104.聖母の微笑み

「小宮山!? 帰ってきたか!」
 一応ノックして、声をかけてから家に入ると、久保田が慌ただしく玄関まで迎え
に来た。
「ただいま帰りました。すみません、心配かけちゃって」
「心配もなにも……お前! もっと自分のこと考えて行動しろ!」
 開口一番に怒られる。一文字に結ばれた口と、釣り上がった目が、久保田が本気
で怒っていることを表していた。こんなことは珍しい。それだけ、心配をかけて
しまったということだろう。
 出来れば彼が気付く前に帰りたかったが、そうは行かなかったらしい。久保田の
身の安全ばかり考えて動いていた小宮山だが、逆に自分のことを心配しろと怒られ
てしまった。
「久保田さん、あんまり動いちゃ……」
「誰のせいだと思ってるんだ! 武器も持たずに外に出るなんて、何かあったら
どうするつもり……」
「すみません……」
 とにかく謝っておく。久保田が怒っているのは他でもない自分を心配してのものだ。
 心配をかけることで、彼の身体に悪影響を与えてしまうことまでは予想していな
かった。反省しきり、小宮山は頭を垂れた。
「……とりあえず、無事帰ってこれて良かった。何もなかったか?」
 しょんぼりしている小宮山にとりあえず怒りは収めたのか、久保田が息を整えて
聞いてくる。
「あ! それなんですけどね! 久保田さん! 服はちょっと……失敗しちゃった
んですけど、代わりに仲間が出来たんです!」
「仲間?」
「はい、ちょっと待ってください!」
 ぱっと顔を上げ、明るい声で返事をしてから、一端家の外に引き上げる小宮山。
「さっき、藤原さんに会ったんです。藤原さーん」

211 :174(2/10):2006/01/28(土) 02:23:11 ID:WccPN/yH0
「藤原さんに……?」
 もう一度戸を開け、小宮山が外で待っていた藤原に中に入るよう誘う。
 呼び掛けられ、ひょこりと藤原通が戸の影から顔を覗かせた。
「藤原さんも、独りで心細かったみたいで……これから、一緒に行動してもいい
ですよね」
 信用できる相手だ。そういう意味も込めて、小宮山が藤原を紹介してくる。
 当の本人は、おどおどと久保田の様子を探りつつ、戸口の前で顔を出したり引っ
込めたりしていた。実に挙動不審だ。
「どうぞ入って入って! 久保田さんは俺に怒ってただけで、怖くありませんから!」
「人連れてきたなら言ってくれよ……俺、怖がらせたみたいじゃないか……」
 なかなか入ってこない藤原に、怯えさせてしまったかと後悔する久保田。
「藤原さん、すいません。中に入ってくださいよ」
 久保田も呼び掛けると、意を決したように藤原がそろそろと中に入ってきた。
 自分の顔が怖いと言われることは久保田も自覚している。相手はこちらを怖がって
いるのだから、人見知りの子供を相手に接するようにするのが一番近いだろうか。
 出来るだけ努力して優しい笑みを作り、久保田は藤原に向かって右手を差し出した。
「藤原さん、これからよろしく」
「…………」
 久保田の言葉には応えず、藤原は躊躇う様子を見せた。その手を取らず、小宮山
に縋るような視線を向ける。
「えーと……」
 その様子に、逆に小宮山が困って久保田に視線で助けを求めた。
(仕方がないかな)
 軽く鼻で嘆息し、久保田は大人しく手を下ろした。
「俺は安全な人間ですよ」
 及び腰の藤原に苦笑する。
 投手と野手で、一軍と二軍でもある。一つ上の先輩だが、藤原はとあまり接点が
なかったので、まあ仕方がない反応なのかもしれない。人に怯えながら、ここまで
独りで過ごしていたならなおさらだろう。そう久保田は自分を納得させた。
 こういうのは、時間をかけて理解を深めていくしかない。
「玄関寒いでしょう。今お湯沸かしてるんで、お茶でも出しますよ」
 それだけ言って、久保田は先に部屋に引っ込んだ。

212 :174(3/10):2006/01/28(土) 02:23:37 ID:WccPN/yH0
 後ろで何やら小宮山が藤原を説得しているらしい声が聞こえる。見たところ小宮山
のことは全面的に信用しているようだから、彼が橋渡しをしてくれればそのうち心を
開いてくれるだろう。小宮山に負担をかけてしまって悪いが、彼のことだから頼まな
くても尽力を尽くして二人の中を取り持とうとするはずだ。
(危なくない仲間が増えたことを喜ばなければきゃな)
 そこまで考えて、久保田は桜井がどうしているのかひどく気になった。
(大丈夫かな――あいつ)
 『危ない』仲間。仲間というのは語弊があるかもしれないが、それでも彼のことは
心配だった。いろんな意味で。
 今はバタバタしている小宮山が落ち着いたら、桜井のことを話そう。
 久保田はそう心に決めた。

 藤原の説得にも追われていた小宮山だが、まずは久保田の衣服をなんとかしなけれ
ば、と思い立った。
 持って帰ってきた衣服を一通り確認し、かろじて袖の辺りが濡れるくらいで済んだ
衣服を選別する。靴下や下着などは、カバンに詰めていたから無事だった。
 一揃え選び、小宮山は居間の隣の部屋まで衣類を運んだ。
「久保田さんコレ……ちょっと汚れてるのとかありますけど」
「サンキュ。本当だ、袖に泥がついてる。まあこれくらいならなんとかなるだろ」
 ひとつひとつ久保田が身につけていく。やはり少し窮屈そうだが、比較的ゆったり
したものが多かったので、なんとかなりそうだ。
「良かった……」
 これでも大分マシになっただろう。小宮山は胸を撫で下ろした。
「小宮山ー。トイレどこー?」
 廊下の方から、藤原の声が飛んできた。
「あ、はい。えーと、廊下奥の左の――」
 慌てて立ち上がり、部屋を出る小宮山。家に入ってからの、藤原の小宮山に対する
態度は至って自然だ。久保田がいる部屋を避けている以外は。
「ふぅ〜」
 トイレに向かった藤原の背を見送り、小宮山はため息を付いた。
 どうも、藤原が久保田を避けているという部分に気苦労が募った。自分が連れて
きただけに、久保田には申し訳ない気持ちになる。

213 :174(4/10):2006/01/28(土) 02:23:57 ID:WccPN/yH0
 居間を通って久保田の部屋に戻ると、毛布にくるまった久保田が心配そうにこちら
を見上げていた。
「大丈夫か? あの人。なんか来たときから顔色悪かったけど」
「大丈夫……だと思うんですけど。一応休むように勧めましょうか。しばらくはここ
動かないし」
 藤原の身体を気遣う久保田は、彼の態度をそれほど気にしている様子はなかった。
あくまで表面的には、だが。
 そのことに、大分助けられている。
(やっぱすごいなー、久保田さんは)
 懐が広い。そのことに改めて感心し、小宮山は久保田への尊敬の念を新たにした。
 部屋に来てすぐだが、再び藤原のいた方へ引き返す。我ながら落ち着きがない。
 ちょうど、藤原はトイレから出てきたところだった。
「藤原さん、疲れてませんか? せっかく家もあるし見張りになる仲間もいるし、
休んでくれていいですよ。部屋余ってますから」
「せやな、サンキュ。……でも、その前に腹減ったなー。最近まで人住んでそうな
家やし、なんか食うものないかな? ちょっと台所行ってきていい?」
「いいですけど……何もないと思いますよ」
 自分たちも一通り探したはずだ。
「一応だって。台所どっち?」
 言いながら、小宮山が指し示した方に早足に向かう藤原。
 こんなにも気さくな人なのに、久保田の前に立つと途端に萎縮してしまう。信頼
関係というのは難しいものだ。こういう状況では、簡単な接点や相違点で信用し易さ、
し難さが変わってくる。これが『先入観』というものなのだろう。

214 :174(5/10):2006/01/28(土) 02:24:19 ID:WccPN/yH0
「あれ? 藤原さんは?」
 戻ってくると、毛布にくるまった久保田が開口一番訊ねた。
 こちらに連れてくるものだと思っていたのだろう。彼も、藤原との距離を埋める
時間が欲しいのかもしれない。
「なんか、台所に……食えるものないか探してくるって」
「そっか。俺もちょっと探したけど、何もなかったけどな。お茶っ葉の缶くらい」
 おちゃっぱ、と言って思い出したのか、久保田がぽんと膝を打った。
「そういや、お湯沸かしてたんだった」
「人が留守の間に何やってるんですか」
「お茶入れてくるよ」
 台所をあさったり、お湯を沸かしたり。重傷者のくせに忙しなく動く久保田に呆れる。
 やかんの様子を見に言った久保田が去り、小宮山は久保田の毛布を手に隣の居間に
移動した。
 ちゃぶ台の周りに座布団を3つ用意し、先輩が入れてくれるらしいお茶を待つ。
 居間の真ん中にぽつんと置かれた小さなちゃぶ台の上には、小宮山が置いていった
銃とメモがそのままになっていた。
 自分のメモを手に取り、その内容を改めて読み返す。確かに、これでは久保田が
心配になっても仕方がないだろうと小宮山は反省した。
 ガタッ ガタン!
 台所の方から物音が聞こえ、小宮山は立ち上がった。
「久保田さん? どうしたんですかー?」
 棚の上の物でも倒したのだろうか。
 ガン!
 激しい物音、そして言い争う声。
「――久保田さん!?」
 誰かが侵入したのだろうか。小宮山は慌てて立ち上がり、ちゃぶ台の上のワルサーPPK/S
を取った。
 悲鳴が、聞こえた。
 小宮山は台所に走った。
「大丈夫ですか!?」
 ガタン!
 小宮山が台所に辿り着いたとき、唐突に食卓の椅子が倒れた。

215 :174(6/10):2006/01/28(土) 02:24:44 ID:WccPN/yH0
「ぐっ!」
 それと同時に、椅子にもたれていた男の身体が傾ぐ。隙を逃さずにもう一人の男が
飛びかかり、馬乗りになった。
「久保田さん――!」
 仰向けに床に倒れいる男は久保田。馬乗りになっている男は――藤原通だった。
「なんで……っ!」
「げろ……」
「え?」
 男が呼び掛ける。その声が、久保田のものではなかったことに小宮山は違和感を感じた。
「逃げろ! 小宮山!」
 それは、藤原通からの警告だった。
 台所包丁を片手に、藤原が必死に久保田を押さえ込んでいる。久保田が苦しそうに
藻掻いていた。彼は熱がある。怪我をしている。この状況で勝てるわけがない。
「小宮山、早く逃げろ! ここは俺が……!」
 藤原の刃が閃く。
「こ、みや……」
 久保田が呻いた。
「はや……く、に……」
『ニゲロ』彼の口は確かにそう動いた。
「逃げろ――!」
 それはどちらの言葉なのか。
 意味が分からない。
 逃げろ。逃げろ。二人共が口を揃えてそう言う。一体何から逃げろと言うのか?
 ココには二人しかいない。その二人が争っている。
 彼らは、何に対して警告しているのか。
 混乱の中、小宮山は手の中の銃を握りしめた。
(どうしたらいいんだ――!)
 藤原は自分たちを騙していたのか? 
 だがせっぱ詰まった藤原の声は、間違いなく身を挺して外敵から仲間を守ろうと
する男のそれだった。これが演技ならば、アカデミー賞受賞ものだろう。
 だが迷っている間時が止まるほど現実は甘くはない。事態は、クライマックスを迎えた。

216 :174(7/10):2006/01/28(土) 02:25:11 ID:WccPN/yH0
 血が――血が――
 噴き上がる。 
「は……はは……」
 勝者が笑った。
「死んだ……やった、死んだ……」
 ぬらりと、血に濡れた顔が笑った。
(死――久保田さんが……死んだ……?)
 その単語を、えらく不自然なもののように小宮山は受け止めていた。
 目の当たりにする事実は自己の認識許容範囲を大きく超えていて、現実感の伴わ
ない記号として脳細胞に吸収されていく。
 藤原通が、久保田智之の首を切り裂いた凶器を握り締め、笑った。
「コレ」は何だ?
 自分の理解の及ばない生物を目の当たりにした時、人は言いようのない恐怖と、
嫌悪感を抱くものだ。がくがくと膝が嗤う。立っていることすら困難になり、小宮山
はその場に膝をついた。
 固い床を感じた瞬間、全身から力が抜ける。
 ただ呆然と、小宮山は目の前の光景を凝視した。
 彼が馬乗りになった死体の首から噴き上がる赤い飛沫が、天井を濡らしながら霧と
なって藤原の頭上に降りかかる。
 血が――
 室内には血の雨が、降っていた。
 包丁。 
 血。
 死?
 意味が分からない。
「は……」
 いつの間にか笑い声は収まっていた。
 降り注ぐ血の洗礼を受けた髪の先から、朱い雨滴が滴り落ちる。
 気の抜けた炭酸のような、藤原の惚けた横顔。 
 その横顔が、今まで存在を忘れていたであろう訪問者を察し、戸口を振り返った。
(藤原――通――)
 殺人者は笑った。

217 :174(8/10):2006/01/28(土) 02:25:52 ID:WccPN/yH0
 嘲笑ったのではない。微笑ったのだ。
 柔らかく。慈愛に満ちた目で。
「……ぁ……」
 声が出なかった。
 全ての身体機能が麻痺したかのように、動かない。震えさえも、止まってしまった。
「小宮山……よかった、無事で……」
 男がゆらりと動いた。馬乗りになった死体から降り、身体を引きずるように近づ
いてくる。
 近づいてくる。小宮山に。
(やめて――)
 動けない。
「もう大丈夫やから」
 何が?
「あいつは、もう俺が殺したから」
 何のために?
「もう、怖くないから」
 怖いのは。
(俺が――怖いのは――)
 赤い、赤い手が伸びてくる。
(怖い――)
 身体が動かなかった。
 理解の及ばない生き物が目の前にいる。
 撃て。
 撃って、殺した方が良い。
(この男は、キケンスギル――)
 脳裏で警告の鐘が、頭痛を伴うほど荒れ狂う。頻繁に危険信号を出す脳細胞の意志
とは裏腹に、銃を握った右手は、そのまま石膏で固められたがごとく動かなかった。
 ゆっくりと、こちらに伸びてくる手を、小宮山はなすがままに待った。
 このまま、自分は首を絞められて殺されるかもしれない。それならいい。
 それなら、理解出来る。
 だが、その思いに反し、藤原の手は小宮山の頭を撫でた。

218 :174(9/10):2006/01/28(土) 02:26:13 ID:WccPN/yH0
 肩越しに、彼の後ろに転がる久保田の死体が見えなければ、全てが夢だったの
ではないかと思えるような。
「危なかったな」
 まるで先輩が後輩にするように、それは愛情や、慈悲に満ちた手だった。
 微笑っている。
「お前、騙されやすいんだからさ。気を付けろよ」
 首から噴水のように血を吹き出す久保田を背景に、藤原は聖母のように笑った。
「やっぱ、俺がいないとダメだな」
 彼は久保田を殺した。
 彼は久保田から自分を守ろうとした。
 ならば、久保田が死んだのは自分のせいなのだろうか?
 全く形の合わないパズルのピースを組み合わせているような、そんな袋小路に
小宮山は迷い込んでいた。
「俺が、お前を守ってやるよ」
 ぬるり
 頬に触れた手の生暖かさが人の血であると悟った瞬間、視界の縁が暗くなった。
 ゆったりと、その闇は浸食してきて、小宮山の世界を狭めていく。
 見えるのは、藤原の笑顔くらいだったが。
(いや――)
 泣いている。
 藤原通は泣いていた。
 頬を汚す血飛沫を流しながら、自らも赤く染まっていくそれは、血涙のように
見えた。
(何で――)
 頭がおかしくなりそうだ。
 何が彼の引き金になったのかは分からない。
 だが、知ったところで恐らく、それは小宮山には理解できないものだ。
 突然すすり泣きだした藤原の、震える肩に手を置くことも出来ず、小宮山は
ただただ全てが終わるのを待った。全てが夢であるのを願った。
「こ、みや……ま……」
(呼ばないでくれ――)
 俺の名を、呼ばないで。

219 :174(10/10):2006/01/28(土) 02:26:52 ID:WccPN/yH0
「小宮山ぁ……お前は、俺を……っ裏切らないよな……?」
 視界が薄闇に包まれていく。もう、彼の顔は見えない。そのことに少し、小宮山
は安心した。
「なぁ……っ? そうだろ? なぁ……っ」
 泣いて訴える藤原に、答えるべき言葉はない。
 母のような包容力を見せたかと思えば、迷子の子供のように泣いて縋ってくる。
 海の天気のように目まぐるしく表情を変える藤原から、小宮山が得たのは彼が
尋常ではないという認識だけだった。
 絶望的な恐怖に直面したとき、人はこうも狂えるのかと――
「うっ……ひっ……ぅ……っ」
 凍て付くような血の海の中。
 すすり泣く藤原の声を聞きながら、小宮山の意識は暗転した。

【残り37人】

220 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 03:00:53 ID:Zwzy2Jid0
職人様乙です。
ぅあぁ…orz

221 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 09:12:41 ID:aEE51ede0
乙です
藤原は関西弁?標準語?

222 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 11:27:15 ID:aEYeDjBB0
ぎゃあああああああああクボタンが・・・クボタンがあああああ!!
藤原こわすぎる!!!

223 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 20:41:36 ID:JZ7iwe5e0
ヽ(`Д´)ノウワァァン クボタンがああああああああああああああああああ!!!!!!

うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

224 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 20:53:50 ID:KKkx8HKnO
何か感想を書きたいんだが凄すぎて言葉が出ない

…うぉぅ…orzorz

225 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 21:46:41 ID:F+f7YS8QO
職人様乙です!
やばいよ今電車ん中なのに…。
藤原もなんだか可哀相な奴に思えてきた

226 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 22:14:13 ID:lStoI3Jz0
うおおおおおおおおおおクボタン……・゚・(ノД`)・゚・

けど、色んな意味で鳥肌立った!職人さんすげー!!

227 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 23:22:42 ID:DSS7ppm80
職人様乙です。

一言で言うと…クボタン…クボタン…
。゜゜(´□`。)°゜。

228 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/28(土) 23:41:37 ID:BuBldKTc0
クボタンが死んだのは悲しいんだけど
これだけ滅茶苦茶やってるのに藤原がますます哀れに思える
そしてバンビはどうなるんだろ…

229 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/29(日) 01:50:01 ID:e9GUIc+R0
これはやばい、これはやばいいいいいい
怖くて眠れません・・・・

230 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/29(日) 03:09:24 ID:PjtN5VHk0
ぐあああああああああ・・・

231 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/29(日) 12:28:22 ID:+uZtMa060
なんかもう、読み終えてしばらくボー然・・・
ここまでのショックは今岡が野口を自殺させた話以来だわ

232 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/29(日) 12:34:04 ID:+uZtMa060
勿論、いい意味でね
職人さん、乙です!

233 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/29(日) 19:54:36 ID:62xKUmAL0
なんで阪神ファンの起こした犯罪ばっかり報道されるねん!!!
ほかの球団のやつらかって絶対なんか悪いことしとるはずや!!
これは球界の盟主の座を狙うゴミ売りと味噌の仕業やで!
みんなだまされたらあかん!!!

ゴミ売りと味噌は阪神様に敬意を表し、平伏すのは当然のことやのに、
調子に乗って阪神様の地位簒奪を企てるとは許せん!!!
これまで球界の盟主阪神様が目をかけてやった恩を忘れよってからに!!!

234 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/30(月) 15:51:36 ID:K5RxLhAg0
なんかせつないね

235 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/30(月) 17:19:11 ID:lfRwxj+E0
やりきれない・・・マジで・・・

236 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/30(月) 21:14:13 ID:Ifc6ceNd0
職人さん乙です
小宮山、藤原を否定しなければいいけど・・・

237 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/31(火) 01:21:15 ID:D8om3TCvO
orz ←言葉にならない心境

藤原ヤバ過ぎる…

238 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/31(火) 20:28:25 ID:HkK1j8nk0
珍の嫌われスパイラル

1・珍叩かれる
   ↓
2・「虚と味噌(もしくは便器とシャブ)のせいだ!」と珍主張
   ↓
3・誰からも信用してもらえない 
   ↓
4・珍逆ギレ、自演を繰り返し暴れだす
   ↓
ますます嫌われて1に戻る


239 :代打名無し@実況は実況板で:2006/01/31(火) 21:10:40 ID:oujqYSJn0
。・゚・(つxT)・゚・。       ( ' ь` )……

240 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/01(水) 19:52:05 ID:X/Ldhz+60
珍の今年のドラフト戦略

堂上・大隣を徹底マーク

堂上は中日を希望

気にせず強攻、中日と競合

阪神は堂上を引き当て、中日は外れで吉川を獲得

阪神ファンは大喜び

しかし堂上はもちろん阪神入団を拒否

阪神ファンは「堂上なんか欲しくなかった」と言い堂上を叩く

さらに大隣にフラれ、阪神ファンの怒り爆発。逮捕者30人以上

すでに金刃はヤクルト、高崎は中日が内定していたので小嶋に

小嶋「僕は大隣さんや金刃さんのオマケなんですか。じゃあロッテに行きます。」

241 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/01(水) 20:25:58 ID:X/Ldhz+60
村上ファンド、阪神電鉄株保有比率44.49%に

 村上世彰氏が率いる投資ファンドは1日、阪神電気鉄道株の保有比率が1月25日時点で44.49%になったとする大量保有報告書を関東財務局に提出した。1月16日の前回報告時に比べ1.12ポイント上昇した。

 村上ファンドは1月に入り、25日までの全営業日で阪神株を買い進めた。ライブドアショックで全面安だった18日には115万6000株を取得し、25日時点の保有株式は約1億8760万株に達した。阪神電鉄は「買い増しについて村上ファンドから連絡は来ていない」としている。

 阪神電鉄株は1日、東京証券取引所で前日比13円高の995円で取引を終えた。 (19:38)

http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060201AT1D0108J01022006.html




242 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/02(木) 21:45:12 ID:QZEi+aAh0
バンビ気絶しちゃった?
起きたらどうなるんだろ・・・

243 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/03(金) 22:27:49 ID:M65uo5yh0
続きが気になる話が多すぎる
新作を期待しつつ保守

244 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/04(土) 04:22:53 ID:/HfUoFza0
そんなことになろうとは。。。

245 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/05(日) 01:56:32 ID:ateSGsFV0
阪神ファンは数々の前科により
なにかあれば簡単に犯罪を犯す集団と思われている。
だから警察やマスコミも何しでかすかと警戒している。
一般の人間も阪神がまたやらかすのか、確認してみたいと思っている。

そのなか堂々と犯罪するものだから警察も逮捕するし、
マスコミだって簡単に逮捕情報を得られるし、
阪神またやらかしましたよという報道をしたいがために
普通なら報道されないような軽犯罪でも放送する。

そろそろ気付けよ、全てお前らが撒いた種だ。

246 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/06(月) 20:44:50 ID:6YZE3t9m0
保守

247 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/07(火) 19:51:09 ID:iFKp09HmO
クボタンがあぼーんとはテラカナシス。・゚・(ノД`)・゚・。

あとはゴレンジャーとウィル様のゲーム潰しに期待。
矢野さんがゴレンジャーに合流したら面白いことになりそうだな。

248 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/08(水) 07:18:18 ID:iwSI1Jkx0







   珍カスって口からヘドロ吸ってケツから汚染物質垂れ流すってホント?







249 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/08(水) 20:09:10 ID:pqp9v/2G0
ひ〜やんの話を読んで、また泣いてしまいました・・・。

250 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/09(木) 07:56:09 ID:sW6DUMFu0







   珍カスって口からヘドロ吸ってケツから汚染物質垂れ流すってホント?









251 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/09(木) 10:26:29 ID:fo227x3E0
ttp://www.useless-id.com/

252 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/10(金) 23:53:57 ID:+GVI9fWh0
保守

253 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/11(土) 04:25:42 ID:odfpUL2pO
捕手
秀太とゴレンジャー気になるなぁ。

254 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/11(土) 14:50:50 ID:kIMxr2M/O
吉野はいつ目覚めるんだろう。
目覚めたら目の前に安藤の無惨な遺体…想像しただけでorz

255 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/11(土) 19:49:16 ID:yGvgXdRU0
もうすぐ次の定時放送だっけ?
吉野が死んでないと知った片岡がどうするか心配だ・・・

256 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/12(日) 02:25:37 ID:rcwE5MugO
吉野は安藤の仇をうつのかなぁ

257 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/12(日) 02:26:32 ID:rcwE5MugO
sage忘れごめんなさい

258 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/12(日) 09:46:40 ID:OjMbT/Gp0
安藤の話でそろそろ次の放送みたいなことが書いてあったな。
気が付くと午後に入ってアリアス、庄田、太陽、安藤、桧山、久保田と結構死んでる。
桧山が死んだと知って矢野がまた鳥谷を疑わないかとか、
桟原と桜井は久保田の死をど思うかとか、色々気になる。

259 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/13(月) 22:42:27 ID:mLC6FoJL0
さじきはやばいなぁ
大丈夫だろうか。

260 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/15(水) 00:33:34 ID:uZx69+qw0
サジキはどうするのかなあ
今は妙にしおらしい桜井がいつか記憶を取り戻すんじゃないかと思うと怖い

261 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/16(木) 23:09:02 ID:Gqd5jsAg0
保守。
御大が何を言ってたのかが気になる・・・

262 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/17(金) 20:04:48 ID:nSz4N1+cO
>>261を見て御大の発した3文字?がまた気になり始めた。
読んだ直後は気になりすぎてイライラしたなw
職人さん、そろそろネタばれおながいします。

263 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/18(土) 00:55:52 ID:udurluFc0
リレー小説久しぶりに読み直してみた
濱中の「会わなきゃいけない人」が誰なのか、改めてめちゃくちゃ気になってしまった…。
随分間が空いてるけど、続きってまだなのかなー (´・ω・`)

264 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/18(土) 07:11:03 ID:Y4cKf1Ai0
保守っとこう

265 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/18(土) 10:27:53 ID:hr0C+CXT0
濱中がその人に会ってどうしたいのかも気になるなー。
あまり気になる気になる言うと職人さんを急かしてるみたいで
申し訳ないと思いつつもやっぱり気になるw
保守しながら気長に続きを待ってます。

266 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 06:15:01 ID:v7bVdmOD0
みんなと同じで
濱ちゃんの会いたい人、ずっと気になってる。

267 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 09:33:48 ID:8CcUwskZ0
ホッスアゲ!

268 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 11:03:50 ID:i5NaRYbh0
濱中の会いたい人は別れた息子ではないだろうか・・・
俺は葛西コーチと福原コーチのその後が気になるよ

269 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 19:13:16 ID:epqKjXFv0
tes

270 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/19(日) 21:08:36 ID:Jwq180wu0
あー、なるほど。濱中の会いたい人っていうのは
今岡が金本に会いたがってるみたいに阪神の誰かだと思ってたけど
確かにそれ以外の線もあるよね。誰なんだろ???

271 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/20(月) 02:35:11 ID:6Ve3/sTb0
268さん、するどい!

272 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/22(水) 00:35:20 ID:bC3IvVnf0
保守。
江草は無事に杉山と狩野の所に戻れたのかなあ。

273 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/22(水) 11:37:18 ID:VvbQ3xJ00
ほしゅ

274 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/23(木) 12:18:16 ID:CyQk9BaY0


    い つ ま で 荒 ら せ ば 気 が 済 む ん で す か ?




    迷 惑 掛 け て る 事 に 気 付 か な い ん で す か ?



275 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/24(金) 13:59:59 ID:uMMgiWbf0
↑お前だよアホ

276 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/24(金) 23:13:15 ID:pNdJoZbI0
絡むな馬鹿

277 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/27(月) 05:34:58 ID:1ZqnyHv10
捕手

278 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/27(月) 22:06:00 ID:mRsh9RofO
保守

279 :代打名無し@実況は実況板で:2006/02/28(火) 21:43:11 ID:/0dxpcfo0
保守

280 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/01(水) 12:28:21 ID:bEilOAMG0
保守

281 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/02(木) 00:03:36 ID:oDh4fHa+O
何度読んでも、下さんのところと牧野さんのところは涙トマラナス。・゚・(ノД`)・゚・。
二人の遺志を継いだ金本らゴレンジャーとサジッキーをめちゃめちゃ応援している。
ここのおかげでリアルにサジッキーファソにもなりそうだしw

282 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/03(金) 08:12:23 ID:B6981ghXO
★ゅ
モナの今後が禿げ気になる

283 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/03(金) 11:32:37 ID:6SrMTNGl0
保守ね

284 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/04(土) 09:09:20 ID:y4vYLddn0
hoshu

285 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/04(土) 13:42:29 ID:CFISsIqn0
阪神球団がゴールド万サックスに買収

甲子園球場を取り壊し、住宅を建設

オリックスに球団ごと買収

新生「オリックス・ブルーウェーブ」に


日本人としてこれが唯一最良の選択。

286 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/04(土) 14:31:00 ID:tFO4JxzOO
オクスプリング雑魚m9(^Д^)パ・リーグ4位のオリッ糞相手に6失点wwwww
ダメ外人取った珍カスw
こりゃ珍はBクラス決定だな

287 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/05(日) 18:10:09 ID:qmUrqbd70
保守

288 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/05(日) 21:38:32 ID:iU+y5iW10
保守。久慈さん、どうしてるのかなあ・・・

289 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/06(月) 20:17:28 ID:y9vbt4OU0
ほしゅ

290 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/07(火) 23:21:53 ID:4KZEy0Dv0

          (`_ノ´)
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  トン!
       _(,,) 保 守 (,,)
      / |        |\
      | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

291 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/08(水) 06:08:53 ID:cpZ1meXi0
おいらも保守

292 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/08(水) 19:39:39 ID:WnorcXH5O
>>288
リアルでもここでも久慈さんの近況が知りたいよ…

293 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/08(水) 23:11:47 ID:6VzOGyGxO
リアルは楽天じゃなかったっけ?

294 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/09(木) 06:27:22 ID:IPpHLjEf0
保守

293さん、それ本当? 仙台ちょっと遠いけど。。。

295 :174(1/5):2006/03/09(木) 22:39:29 ID:uyUHCIhT0
>>219
105.砂上の城

「熱……」
 熱いと言うよりは、だるい。
 だが口から吐き出される己の息の温度がえらく上がっているように思えて、矢野
はそう呟いた。
「何か飲みますか?」
「そう、やな……」
 すぐ隣で布団を掛けてくれた鳥谷が、その声を拾い上げて聞いてくる。
 もう一度眠るにしても、熱のせいで喉がかさかさして不快だった。
「じゃあ今持ってきますから。安静にしていてください」
 ぺしっ、と絞ったタオルを矢野の額に当て、鳥谷は再び部屋を後にした。
「…………」
 ずり落ちそうになったタオルを手で押さえ、矢野はもう一度息を吐いた。口元に
かかる布団に籠もった吐息が首元に触れた。やはり、いつも以上に温かい。
 動いていないはずなのに、四肢が重たかった。なんとか気丈に振る舞おうとして
いたものの、布団に潜り込むと、いよいよ身体がだるい。思っている以上に熱は高
いのかもしれない。
 額に置かれた濡れタオルの冷たさが、火照った体からじわじわと熱を吸い取って
いくような感覚。
 矢野の身体にゆっくりと睡魔がのし掛かかった。
 額の上に置いた右手が重たく感じられたが、それを除けることすら億劫だった。
脳が命令しても、もう指が動かない。
 先程の彼とのやりとりが、壊れかけのビデオテープのように断続的に再生される。
(ルーキーに騙されるようなら、俺もそろそろ引退考えんとな……)
『分からない』と、まだ幼さを残した顔は虚ろに言った。
 不安と、迷いと、心許なさが混じった声が、ぽつりぽつりと『事実』を紡いだ。
 それが事実という名の虚構なのか、真実という名の事実なのか――
 桧山の話題が出た時、少し震えた声。
 それを矢野は演技かもしれない、と思った。

296 :174(2/5):2006/03/09(木) 22:39:49 ID:uyUHCIhT0
『……信じるってなんですか?』
 だが、彼のあのどこか虚ろな――
 泣くわけでもなく、怒るわけでもなく。
 実際に殺したことを隠している人間ならば、あんな態度は取らないだろう。逆に
涙ながらに否定されても信じきれなかったと思う。それすら見越しての演技ならば――
(元木みたいな選手になれるわ。鳥谷)
 何度もしてやられた嫌らしいライバルチームの選手を思いだす。打者と捕手の
駆け引き、相手の裏の裏をつく心理戦――
 野球というゲームの中で――それでも死活をかけての戦いだったが――そんな
駆け引きに没頭出来ていたころが懐かしい。
 だが恐らくは、彼はそこまで屈折した人間でも器用な人間でもない。
 むしろ孵化を恐れ、殻を被ることを覚えてしまった雛のような弱さや危うさを、
矢野は彼に感じることがあった。
(考えすぎやな……俺も、あいつも) 
 まさかこんな風に、チームメイトと本物の命を賭けて見定め合わないといけない
日が来るとは――
 くだらない。矢野は面白くもないゲームを罵った。こんなゲームに巻き込まれて
いる自分達もくだらない気がした。
 眠かった。眠ってしまいたかった。またあの夢を見るのかもしれないと思うと、
それも恐ろしかった。
 累々と転がるチームメイトの屍。だがあの光景は、今現在進行形で現実のもの
となっている。
 16人の死。また今、死者の名が増えたかもしれない。
(忍……)
 最初の放送で名の告げられた、なじみ深い名前を矢野は胸中呟いた。
 可愛い後輩だった。自分より十も若い彼の死を、まさか自分が聞くことになる
とは思わなかった。
 どうやって死んだのかは知らない。気の優しい彼のことだから、この殺戮ゲーム
を悲観し自ら命を絶ったのかもしれない。抵抗できず誰かに殺されたのかもしれない。

297 :174(3/5):2006/03/09(木) 22:40:10 ID:uyUHCIhT0
(シモ……)
 同い年の投手の、斜に構えたような笑みが浮かぶ。彼がこんなにも早く死ぬとは
思わなかっただけに、死者のリストに名前を聞いたときは衝撃だった。生きていれ
ばどこかで会えると、そのうちひょいと顔を出すんじゃないかと、勝手に思い込ん
でいた。そんな男だったのに。
 息が上がる。込み上げるような胸の苦しさに、矢野は額の上に載せた手を無理矢理
胸に下ろし、シーツを握りしめた。
 矢野が彼らに思いを馳せる度に、うずく熱は高くなっていっているような気がした。
(沖原、球児、筒井、牧野――)
 ぼんやりとした脳裏に、仲の良かった同僚や、自分を慕ってくれた若い投手陣達
の名前が浮かんでは消える。
 あまりにも現実味のないその死は、涙を流すには実感が沸かなさすぎた。
 ただ、彼らがもういないという事実だけが、矢野の中の暗闇を大きくしている。
(俺は……もう何もやってやれない……)
 もう自分は、彼らの球を受け、最後の三振を取ってガッツポールを取ることも、
頭を撫でて誉めてやることも、サヨナラの瞬間抱きついて容赦なく服を脱がしてやる
ことも出来ないのだ。
(佐藤さん――)
 そして、厳しくも優しかったコーチの、惨めな死に様。
(くそったれ……)
 呪詛のように呻く。実際呪い殺せるものなら呪い殺してやりたかった。
 生きていたいわけではなかった。生き残りたいわけじゃない。ただ彼らの無念を晴らし
たかった。無惨に奪われた彼らの命を、せめてその無意味な死を、愚かな独裁者達の魂を
手土産に弔ってやりかった。
 それがどれだけ無意味な行為なのか、矢野自身、分かっていないわけではなかったけれども。
「矢野さん……寝てるんですか?」
 戻ってきたらしい鳥谷の声が、足音と共に聞こえる。
 睡魔はじわじわと矢野の身体を支配し、その意識をも眠りの毛布でくるみだしていた。
(鳥谷……か……)
 矢野は鳥谷を信頼してはいなかった。だが、とりあえずは信じることにした。
 あの、どこか自分に似た目をしたルーキーを。 

298 :174(4/5):2006/03/09(木) 22:40:30 ID:uyUHCIhT0
 隣の部屋で矢野のバッグを探り、鳥谷は水の入ったペットボトルを一つ取り出した。
 タプン……
 透明な水が容器の中で揺れる。
 すぐにはその場を離れず、鳥谷はじっとペットボトルの中の水を見つめた。
『桧山を殺したんか?』
『お前はこれからどうしたい?』
『俺みたいな役に立たへんのにつき合わせて悪いな』
 一連の矢野との会話が、ぐるぐると頭を巡る。
 おそらく自分は、桧山も矢野も信頼してはいない。
 もちろん信じてはいる。彼らは自分を殺さないだろう。
 だが信頼とは、もっと深いところに根ざしている言葉だと思うのだ。
 矢野が、自分を信頼していないように――彼の信頼は、もっと別の所にあるのだ。
(信用することと、信頼することは、また別物だ)
 ならば、自分は誰なら信頼出来るのだろうか。
(筒井はもういない……)
 大切な親友は、早々にゲームから脱落した。
(なら――)
 鳥谷の頭の中にある人物の顔が思い浮かんで――消えた。
 あの人は今何をしているのだろうか
 あの人は今どこにいるのだろうか
「葛城さん……」
 ぽつりと呟く。先輩風を吹かせてどこにでも連れ回す割には、どこか子供っぽい。
だが、だからこそ気安く付き合える。そんな男のことを思い出した。
「矢野さん……寝てるんですか?」
 部屋に戻ると、矢野は布団に横たわったまま目を閉じていた。

299 :174(5/5):2006/03/09(木) 22:40:55 ID:uyUHCIhT0
 決して穏やかとは言い難い寝顔。
 額に浮き上がる汗に気づき、鳥谷はもう一度タオルを濡らした。
 胸元で握られた手が、シーツに皺を刻んでいた。
(孤独だ――)
 鳥谷はそう思った。
 この人は今孤独だ。多分、自分もそうなのだろう。
 この世界で、己の自我を保ち続けるにはどれだけの気力を要するのだろう。
(俺たち……似てるのかもしれませんね――)
 桧山が自分に矢野を託した理由が、何となく分かった気がした。
(託したのか……託されたのか……)
 どちらも、誰かを守るには弱過ぎる。ちっぽけなプライドと自我に支えられた
砂上の楼閣。
 孤独な者同士、今は側にいることが必要なのかもしれない。
 それが、信頼という形の関係ではないにしても。

【残り37人】

300 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/09(木) 22:56:34 ID:ozXDYloW0
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
174氏乙です!

トリーはこれからどうなっていくんだろう…

301 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/10(金) 06:11:34 ID:8s0MO38p0
ほしゅ

302 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/10(金) 11:19:27 ID:vNl4BXFg0
新作乙です!
ここで葛城が出るのかぁ

303 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/10(金) 19:34:21 ID:IwlhJLNlO
職人さん毎度乙です!
福原や下さんを矢野さんが思い出しているところが泣けました。・゚・(ノД`)・゚・。

このあと桧山さんが死んだと知り二人の脆い信用すら失われていくのだろうかorz
その前に二人とも信頼できる相手に出会えるといいんだが…。

304 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/11(土) 19:29:16 ID:iQxe/duuO
赤星って50m何秒ですか?

305 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/12(日) 19:33:20 ID:+L3XPFHmO
>>304

306 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/12(日) 19:45:13 ID:+L3XPFHmO
うわミスったorz
>>304
5.8くらいだったかな…つうかなぜここで聞くのかw

307 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/13(月) 12:21:01 ID:b55M0lGD0
ほす

308 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/13(月) 20:31:15 ID:/gAQ7v7k0
ほしゅ

309 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/14(火) 06:49:48 ID:yelpd33z0
悲しすぎるこの二人・・。ひーやんが死んだって事を知ったらどうなるんだろう。

310 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/14(火) 21:59:12 ID:kAVgXdcc0
捕手

311 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/15(水) 15:59:18 ID:bxsBX6nL0
ほす

312 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/16(木) 14:51:53 ID:YSY0TM/C0
hosyu

313 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/16(木) 15:14:47 ID:uEBXgf+k0
ほしゅ

314 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/16(木) 16:21:22 ID:b9xamHYfO
40万部のベストセラー『嫌韓流』の第2弾

『嫌韓流2』発売中

意外とおもしれーぞ

315 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/16(木) 23:01:58 ID:6LanNfK70
保守

316 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/17(金) 10:09:36 ID:uyB1kKgk0
捕手

317 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/17(金) 22:17:35 ID:gviBzalz0
続きを期待しつつ保守


318 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 00:14:58 ID:qzfgHxAh0
hosyu

319 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 09:15:30 ID:9XGFEXS50
保守

320 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 12:31:34 ID:ffh+5diP0
捕手

321 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 13:58:24 ID:ffh+5diP0
捕手〜

322 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 16:03:44 ID:9XGFEXS50
hosyu

323 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 16:23:36 ID:hGl/ADlA0
捕手

324 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/19(日) 19:17:36 ID:QqQ+yO0O0
保守あげ

325 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/20(月) 14:16:51 ID:sCGI3dKn0
ほす

326 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/21(火) 13:27:11 ID:I5bicvPN0
保守るよ!

327 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/21(火) 16:48:19 ID:Up0t5FU20
ほしゅ

328 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/22(水) 03:17:42 ID:JkL4SKCc0
hosyu

329 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/22(水) 06:14:30 ID:JkL4SKCc0
hosyu


330 :sage:2006/03/22(水) 16:24:17 ID:YuZCm57P0
保守

331 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/22(水) 18:26:07 ID:JkL4SKCc0
hosyu

332 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/23(木) 05:34:39 ID:UIzjdp6V0
hosyu

333 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/23(木) 20:21:53 ID:B9SAmYzwO
\( 〇 ⌒   ▽   ⌒ 〇 )/

334 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/24(金) 01:34:49 ID:IAysZ6//0
矢野さん?

335 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/24(金) 22:11:09 ID:zsk/+wNe0
保守

336 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/25(土) 23:20:11 ID:O338rD660
ほしゅ

337 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/26(日) 01:08:03 ID:8r53H/ue0
ほしゅあげ

338 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/26(日) 15:28:54 ID:Vc1thBqw0
捕手

339 :924(1/4):2006/03/26(日) 23:54:27 ID:sTL2ZH6c0
>>299より
106.それでも

降り続ける雨の音を聞きながら、和田豊(背番号86)は島の集会所の片隅に
横たわっていた。無人島だが電気は通っているらしく、壊れた窓からは
街灯の光が真っ暗な部屋の中に差し込んでいる。
打たれた薬が残っているのか、全身が鈍いしびれに包まれているようで、
とにかくだるくて仕方がない。こうしている場合ではないと思いつつも、身体は
言うことを聞いてくれなかった。目を覚ました時は、ユニフォーム姿でこの
建物の前に倒れていたのだ。喉にはめられた首輪。傍らに置かれた
デイパック。その中には地図、名簿、コンパス、ボールペン、飲料水、パン、
そして鞘付きの果物ナイフが一振り。
即座に、わが身の置かれた状況を悟った。

――君の後輩を、選手たちを、助けてくれ。
震える声で涙ながらに訴えてきた球団社長・野崎の顔を思い出した。
和田はあの時、必ず何とかしてみせますと、木戸や八木とともに言い切った。
ところが、約束を果たすどころか止めるべきゲームの中に放りこまれて
しまったのだ。面目はない。和田は心の底から申し訳なく、また情けなく
思った。同時に、野崎が今どうしているかが案じられた。

――私はもう動けない。止めたくても止められない。
あれはどういう意味だったのだろうか。考えてみれば、わずか3人で直接
現場に乗りこんでゲームの中止を訴えるなど、かなり無謀な話だ。現に、
自分たちの願いは聞き入れられなかった。あの野崎にしては甘過ぎたと
言うよりほかにない。彼は優秀で行動力もある。普通なら、このような危うい
手を打ってくる男ではない。だが、他に手段がなかったのだとすれば? 
もしかすると、あの後、野崎自身も主催者側の手に落ちてしまった可能性も
ある。連絡が付かないという星野や島野たちも、あるいは――。
そこまで考え、和田は目を閉じた。絶望へと向かう思考を止めるためだ。

340 :924(2/4):2006/03/26(日) 23:54:59 ID:sTL2ZH6c0
すると、まぶたの裏には、無数のモニタの中で繰り広げられる悪夢のごとき
光景がよみがえってくる。上坂は憑かれたような形相でカマを振り回し、
誰かを襲っていた。藤川は藪に乗りかかったままみずからの喉をナイフで
突き、鮮血をまき散らしつつ死んだ。海辺を走る筒井は後ろから続けざまに
撃たれ、それでも走り続け、ついに倒れた。下柳は猛然と突進しながら
サブマシンガンを乱射し、自分もまた真正面から放たれた銃弾を浴びた。
路上に倒れていた石毛は顎から頭を撃ち抜かれ、絶命した。撃った新井は
魂の抜けたような顔で座りこみ、銃を取り落とした――。

その中には選手時代ともに頑張った戦友もいれば、コーチとして指導
してきたかわいい教え子もいる。たとえ関わりの薄い選手であっても、
全員がタイガースの未来を託した大切な後輩たちなのだ。
そのかけがえのない彼らの、あまりにも悲惨な姿。
殺す者も殺される者も、一様に地獄の淵でもがいていた。
耐えきれず、和田は再び目を開けた。

その時だった。どこからか、不意に高らかな六甲颪が鳴り響いたのは。
降りしきる雨の音を完全にかき消すほどのすさまじい音量。
重い身体を起こし、和田は辺りを見回した。
『えー、みんな元気でやっとるか? 監督の岡田や』
音楽のボリュームが弱まり、まるで緊張感の欠け落ちた声が聞こえた。
『第3回の定時放送や。今7時ジャストやから、ちょうどゲームが始まって
24時間目やな。まずはお待ちかねの死亡者の発表からや』
発表? 死亡者の? また、誰かが死んだというのか。

(もう、やめてくれ――)
しかし、和田の思いとは関係なく無情なアナウンスは続く。
『12時から7時の間に死んだんは、14番ジョージ・アリアス、15番藤田太陽、
16番安藤優也、24番桧山進次郎、30番久保田智之、64番庄田隆弘、と。
……なんや、たったの6人か。せっかく午前中は12人死んでええペースやと
思っとったのに、どないなっとるんや? ほんま、頼むわ。お前らがさっさと
終わらせてくれんと、こっちも困るんや。』

341 :924(3/4):2006/03/26(日) 23:55:30 ID:sTL2ZH6c0
いかにも不満そうな声だ。監督は死亡者の少なさが気に食わないらしい。
『次に禁止エリアはと……9時に一つ増えるちゅうのは前に言うたはずや。
で、今日はこれ以上増やさんつもりやったけど、お前らがぐだぐだやっとるから
もうちょい追加することにしたわ。8時にE-2、日付が変わって3時にC-8や』
和田はデイパックをつかみ、窓の方へと這った。しびれの抜けない手で
ボールペンと地図を取り出し、街灯の光を頼りになんとか情報を書き込む。

『そや。それとな、新しくゲームに参加したやつらがおるから紹介しとくわ。
3番八木裕、70番木戸克彦、86番和田豊の3人や。条件はお前ら選手と
まったく一緒や。ユニフォーム着て、適当な武器持って、ちゃんと首輪も
付けとる。どっかで見つけたら、遠慮せんでもええぞ。まあ、そんなわけで、
ただでさえ3人余計に増えたんや。もっと気合入れてやってくれ。ほな』
岡田の声はそこで途切れ、再び六甲颪のボリュームが大きくなった。
やがて最後のフレーズが終わり、聞こえてくるものは再び雨音だけとなった。

和田はペンを握ったまま動けなかった。単に何も考えていないだけか、
それともわざとか、どこまでも人の神経を逆なでする岡田のふざけた物の
言い方にも、もはや怒りを通り越して、ただ悲しみしか湧いてこない。
それは、本部で彼の信じがたい姿を目にした時からだ。モニタに映る数々の
惨劇――しかも主役は彼が育ててきた選手たちだ――を顔色ひとつ変えず、
むしろショーでも楽しむかのように眺めていた。
その姿は、和田が抱いていた希望を粉々に打ち砕いた。

先ほど野崎のやり方を甘過ぎたと評したが、それは結果論であって、和田も
ここへ着くまでは何とかなると思っていたのだ。おそらく、木戸や八木も同じ
気持ちであったろう。現場で主催者側の手足として働いている一軍首脳陣も、
本心ではこのような恐ろしい企みに反対しているはずであり、自分たちが
訴えれば、勇気を出してゲームを食い止めるべく手を貸してくれるだろうと
考えていた。特に、あの男ならば、必ずそうしてくれると信じていた。
(岡田さん、あなたは……)

342 :924(4/4):2006/03/26(日) 23:56:16 ID:sTL2ZH6c0
和田がタイガースに入団したのは85年のことだった。ルーキーイヤーに
チームは21年ぶりのリーグ優勝、そして初の日本シリーズ制覇を達成し、
一大フィーバーを巻き起こす。和田は控えに過ぎなかったが、セカンドの
レギュラーだった岡田は不動の5番打者として日本一に大きく貢献した。
同じ内野手として、その姿は憧れであり、目標でもあった。

以来20年、岡田がブルーウェーブに移籍していた数年を除けば、
そのほとんどの間、和田は彼と苦楽をともにしてきた。だから知っている。
タイガースファンでもあった岡田が、誰よりもこのチームに強い愛情を
持っていたことを。その人が、あろうことかタイガースの崩壊に加担し、
選手たちが斃れてゆく様を笑って観賞する日が来ようとは!
(あなたは、人としての心をなくしてしまったんですか?)

和田は名簿を手に取った。死亡者に印は付けていない。与えられた名簿と
地図はどちらもまっさらな状態だった。主催者側が気を利かせてこれまでの
情報を書き記しておいてくれるはずはないが、禁止エリアはともかく、
死亡者については和田自身も書きこむ気にはなれなかった。単に残酷な
現実から逃げているだけなのかもしれない。たとえそうでも、この手で大事な
選手たちの存在を消し去るような真似はできなかった。

誰一人として死なせたくなかった。その願いはかなわなかった。
しかし、あきらめるわけには行かない。今、生き残っている選手たちを一人でも
多く救わねば。そのためにこの島へやって来たのだから。
(岡田さん。それでも――)
何とかしてもう一度岡田に会い、当初の目的を果たさなければならない。
(それでも、あなたを信じたい)
あれは、彼の本心ではないと。
彼のタイガースへの思いは消えていないはずだと――。

【残り37人】

343 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/27(月) 03:03:50 ID:ANb4WyW90
職人さんキタ━(゚∀゚)━!

和田コーチ…・゚・(ノД`)・゚・
そして桧山死んだこと知った矢野・鳥谷組が激しく気になる…!

344 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/27(月) 03:09:26 ID:on9SYWkp0
職人さん乙です

久しぶりに来てみたらひーやんもクボタンも死んじゃってたなんて・・・゚・(ノД`)・゚・
ゴレンジャーはどうなったんだろ

345 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/27(月) 16:33:40 ID:JeFls1Qt0
職人さん乙です!!
本当に切ないなぁ…。和田コーチ…。
思えばドンデンも何でここまでヤバい人間になってしまってるんだろう。
やっぱり何か理由があるのかな?

346 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/28(火) 23:34:26 ID:VnJRGVw90
保守

347 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/29(水) 19:42:19 ID:EfoSqMnnO
職人さん毎度乙です。
矢野・鳥谷組の脆い信用が崩れてしまったんだろうなぁ…。
誤解が誤解を生む展開は悲しすぎる。・゚・(ノД`)・゚・。

348 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/30(木) 05:35:04 ID:AyHvAQtk0
hosyu

349 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/31(金) 03:43:22 ID:h5z+aIaI0
hosyu


350 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/31(金) 22:39:35 ID:4/mWPnfI0
放送がまた色々と波紋を起こしそうですね
豊と秀太が呼ばれなくてゴレンジャーは一安心かな?
でも矢野と鳥谷はほんと気になるなあ

351 :代打名無し@実況は実況板で:2006/03/32(土) 01:06:25 ID:QAzlpVel0
ほんとだね。次の放送が怖い。

352 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/02(日) 14:24:55 ID:jXBX34Zc0
保守
吉野はそのうち目を覚ますんだろうか・・・

353 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/03(月) 12:53:04 ID:k5a8gG+h0
【タイトル】
阪神ファンだが他球団のファンに聞きたい

【本文】

354 :924:2006/04/04(火) 00:14:22 ID:D7ILbm3z0
すみません。今さらですが>>341の2行目を訂正します。
×「9時に一つ増える」→○「6時と9時に増える」
正午に告げられた禁止エリアを一つ忘れてしまっており、失礼しました。

355 :924:2006/04/04(火) 00:22:36 ID:D7ILbm3z0
と、思ったのですが、>>354の訂正は不要でした。
何やってるんだろ自分……orz
重ねがさね、申し訳ないです。

356 :924:2006/04/04(火) 00:25:07 ID:D7ILbm3z0
気をとりなおして、>>342より
107.夢なら

(このまま逃げてしまおうか)
と考えたところで、桟原は肝心なことを思い出した。自分の荷物は下にある。
カバンも、地図も、飲み水も、頼りない武器も、牧野の遺書となった名簿も、
桜井がいる部屋に置いたままなのだ。さすがに、それらなしで逃げるのは
無茶だった。しかし、もうすぐ夜だ。いくらでもチャンスはあるだろう。
気が進まないが、今は戻らねばならない。

重い足取りで階段を降り、部屋に戻った桟原はぎょっとした。机の向こう側に
座った桜井は、所在なげに片手で自分の首輪をいじっていたのだ。
「アホ! やめろ!」
ほとんど反射的に桟原は怒鳴っていた。
「その首輪にさわんな!!」
びくりとして手を離した桜井の喉元を、桟原は息を詰めて凝視した。2秒、3秒、
4秒――そのまま10秒ほどが過ぎたが、首輪は何の変化も起こさなかった。

「あ〜、びっくりした」
ホッとした瞬間に力がぬけ、桟原はその場にへたりこんだ。
「……何なんスか? この首輪」
桜井は当然、わけが分からないといった表情だ。
「とりあえず、絶対にさわるな。えらいことになるんや」
そう釘を刺して桜井の向かいに座り直した時、桟原は気がついた。
(止めんかったら……)

とっさに止めてしまったが、そうしなければやがて首輪が爆発し、自分は
労せずしてこの危険人物から自由になれたはずだ。しかも、相手が死んで
しまえば遺恨の心配もない。
(なに考えてるんや、俺は――)
桟原は自分自身にぞっとした。知らないうちにゲームに毒されてしまって
いるのではないか、と。

357 :924(2/5):2006/04/04(火) 00:29:43 ID:D7ILbm3z0
「桟原さん」
急に名を呼ばれ、桟原はハッとした。
「ん? な、なんや?」
洗面所での時といい、この男は実にいやなタイミングで声をかけてくる。
「俺のユニ、干してきてくれはったんですよね」
桟原は焦った。干すと言ったが、実は二階の押入れの中だ。
「あ、う、うん。さっきな。けど夜やし、この天気やからなあ。乾くまで時間
かかると思うし、当分それ着てた方がええんとちゃうか?」
勘弁してくれ、と心の中で悲鳴を上げる。こちらの考えをいちいち見透かされて
いる気がしてならない。

「桟原さんのユニ、ちょっとだけ見せてもらえませんか?」
「は?」
唐突に思いがけないことを言われ、桟原は思わず訊き返した。
「ユニ、見たいんです。上だけでいいんで」
意図がよく分からないが、桟原はともかくユニフォームの上を脱ぎ、手渡した。
桜井は「Tigers」の文字、背番号、袖口の虎のマークなどを一つ一つなでて
丁寧に確認した。そして、やっと納得したという風にぽつりと言った。
「……ほんまや。阪神のユニや」
「そやから、言うたやろ? 俺らは今、阪神の選手やて」

桜井はユニフォームを桟原に返すと、うつむいて両手で額を押さえた。
「やっぱり……俺はかなり記憶が飛んでるってことっスか?」
「お前は思い出せへんかもしれんけどな、俺らはプロになれたんや。
俺は社会人に行ってたから、高校出てすぐ入ったお前の方が先やった」
「そうっスか……」
顔を上げた桜井は、ほんの少しだが笑っていた。プロになれたという言葉が
嬉しかったらしい。その素直な表情に恐怖をやわらげられた桟原は、
続けて言ってやった。
「お前、けっこう期待されてるんやぞ」
だが、桜井はすぐに真顔に戻った。

358 :924(3/5):2006/04/04(火) 00:32:20 ID:D7ILbm3z0
「そしたら、俺らは今いったい何やってるんスか?」
「それは……」
桟原は口ごもった。自分たちが異常な状況にあるということは、記憶を失った
桜井といえども分かっている。だが、それがよもや殺人ゲームとまでは
思っていないはずだ。少し前には思い切って話してやるつもりだったが、
彼の危険性を察知した今はためらわれる。

「ほんま、どうなってるんスか? どう考えてもおかしいでしょ?」
重ねて問われたが、桟原は答えられなかった。
(ほんまのことが分かったら、こいつはどうするやろ?)
チームをあげての壮絶な殺し合い。生き残れるのはわずかに一人。
すべてを知れば、記憶を失ってなおゲームに乗る道を選ぶかもしれない。
この男なら、やりかねない――。

しかし、迷っている暇はなかった。定時放送が始まったからだ。
(また、こんな時に……)
桟原は舌打ちした。最悪も最悪、一番避けてほしい時だった。
(知らん。もう、どうにでもなれや!)
やけ気味に机の端に置いてあった地図と名簿、ボールペンを引き寄せる。
桜井は突然の六甲颪に驚いてきょろきょろしていたが、桟原を見て同じように
地図や名簿を準備し始めた。

定時放送は耳障りなだけではなく、精神をこれでもかとかき乱す。
聴き終えた時、桟原はぐったりと疲れていた。正午の12人から半減したとは
いえ、死亡者の追加情報はやはりこたえる。特に驚いたのは、桜井と
先ほどまで一緒だったという久保田の死だ。そして木戸二軍監督らの謎めいた
参加と――「またしても」禁止エリア。
(E-2って、ここやないか……。それもあと1時間て、どうゆうことやねん?)
禁止エリア予定地に引っかかるのは二度目だ。よほど運が悪いのだろうか。
だが、今はそれ以上に気がかりなことがある。
何も言わずの上の名簿と地図を見つめている、眼の前の男だ。

359 :924(4/5):2006/04/04(火) 00:35:05 ID:D7ILbm3z0
桜井は久保田の名が告げられた時に一度だけ大きく肩を震わせたが、
特に動揺するような素振りは見られなかった。
妙に静かな表情からは、いま何を思っているかが全くうかがえない。
「あ……あのな、桜井……」
桟原はおそるおそる声をかけた。
「俺、今の聴いてなんとなく分かったんですけど」
視線を落としたまま桜井が口を開いた。ぎくり、と胸の中でいやな音が鳴る。
「……なにが」
「これって要するに、殺し合いってことっスか?」
心臓が――止まるかと思った。あっさりと核心を突かれ、答えようもなかった。

返答できない桟原をよそに、桜井は足元に置いていた拳銃を拾い、両手に持ってそっと顔の前に近付けた。
「この銃も本物やし、ほんまに人が死んでるし」
「え……?」
「ここに来るちょっと前、やっぱり阪神のユニ着た人が道端で死んでたんスよ。
頭とあごから血ぃ流して。あれはどう見ても、殺されたんや……」
背を冷や汗が伝い落ちる。ということは、彼はすでに殺し合いの現実までも
その目で見ていたのだ。まずい。非常にまずい。

「桟原さん――」
銃を見つめていた桜井が目を上げる。桟原は慌てて視線をそらした。
目が合えば、射すくめられてしまう気がしたからだ。
しかし、次に桜井が発した言葉は桟原にとって意外なものだった。
「これって、夢っスか?」
「……は?」
「そうでしょ? 殺し合いなんか、現実にあるわけないし。俺らが阪神の
選手やっていうのも、夢やからそうなってるんでしょう?」
尋ねてくる桜井の表情には、見覚えがあった。
独りでいるのが不安だとおびえたようにもらした、あの時と同じ目だ。

360 :924(5/5):2006/04/04(火) 00:40:21 ID:D7ILbm3z0
「ゆ……夢かもしれへんし、そうやったらええと……俺も思う」
ようやくまともな言葉が出た。夢ならばどんなにいいだろうと、桟原自身も
思わないではなかった。これは、悪い夢であり、目を覚ませば見慣れた
虎風荘の自室で横になっている自分がいるのではないかと――。
「お前はわけ分からへんやろうけど、実は俺もそうなんや。こんなアホみたいな
ことは夢とちゃうんかって、俺も思ってる。けど、夢でもなんでも俺は殺し合い
なんかしたない。殺すのも嫌やし、殺されるのも嫌や。どうにかしてこのまま
元の世界に帰って、またみんなと一緒に野球がやりたい。そやから――」
これが答えになっているのか、自分でも言っていることがよく分からない。
だが、桟原は懸命にしゃべった。

「そやから、お前も一緒に帰ろ……な?桜井……」
もはや方便ではなく、なかば本心から桟原は呼びかけていた。
だが、じっと耳を傾けていた桜井は、不安げな顔のままだった。
「……どうやったら、帰れるんスか?」
「どうやったらて……」
それが分かれば苦労はしない。桟原は再び言いよどんでしまったが、
不意に、忘れていたあることを思い出した。
「とりあえず! この家から移動せなあかん!」
言うやいなや乱暴に地図と名簿とボールペンをつかみ、カバンに突っ込んだ。

「ここはもうすぐ禁止エリアになるんや!」
「禁止エリアって、なんスか? 放送でも言うてたけど……」
「説明は後や。お前もはよせえ!」
言われるままに桜井が荷物をまとめると、桟原は右手で木刀を持ち、左手で
彼の腕を引っ張って玄関へと急いだ。
(俺、何やってるんや? こいつから逃げなあかんのに……)
桜井への恐怖心が消えたわけではない。だが、様々な意味で危なっかしい
この後輩を、今はなんとなく放っておけなかった。

【残り37人】

361 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/04(火) 01:24:22 ID:gJGddg/50
職人様乙でございます
サジッキーお人よしだよサジッキー

362 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/04(火) 20:20:46 ID:j5DFnqe20
職人さん、乙です!!
桟原大丈夫かなぁ…

363 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/05(水) 13:21:50 ID:J405xvB10
乙。
捕手

364 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/06(木) 21:11:37 ID:vQgtFk+y0
ほしゅ

365 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/07(金) 04:57:57 ID:NFOHOAbh0
サジッキーええヤツやのぉ。。。

366 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/07(金) 09:40:03 ID:9/nwmWoY0
職人様乙です。
サジッキーえらいなぁー

367 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/08(土) 20:55:11 ID:/xMzpwGE0
捕手

368 :924(1/3):2006/04/09(日) 00:23:50 ID:6VOWx1mz0
>>360より
108.自分が守る

「どうします? 早く逃げないと」
「わかってる。けど、ちょっと待って」
急きたててくる新井智(背番号49)に対し、久慈照嘉(背番号32)は地図に
視線を落としたまま静かに言った。
「でも、浅井さんを連れて行かないといけないし……」
新井は落ち着きなく傍らのベッドに視線を動かした。久慈は手元を照らす
蛍光灯を、そこに寝かされている浅井良(背番号12)の方にほんの少し
向けて様子を見た。外に光がもれないよう雨戸とカーテンを閉め切り、
部屋の灯りはつけていない。

あの海岸で泣きじゃくっていた新井を落ち着かせた後、久慈は彼が撃ったと
いう浅井の状態を確認した。弾丸はそれたらしくどこにも傷はなかったが、
発砲されたショックがよほど大きかったのか、完全に気を失っていた。
その後、二人で近くの民家に浅井を運び込み、意識の回復を待ち続けている。
だが困ったことに、ここE-2は8時からの禁止エリアに指定されたのだ。
まだ時間に余裕はあるが、新井が心配するのも無理はない。
しかし、久慈には気になることがあった。

「だからこそ、よく考えて逃げた方がいいんだよ」
「でも……」
「まあ、落ち着いて。新井はどの方角に逃げればいいと思う?」
久慈は手にしている地図を開いたまま新井の前に突き出した。
「えーっと……そりゃ、こっちじゃないですか?」
新井は隣のエリアE-3をとんとんと人差し指でつついた。
「休めそうな家がある所って言ったら、こっちの方だけですよね。F-2はもう
禁止エリアだし、E-1とD-2は海の方ですから」
「そうだね。でも、俺はあえてE-3には逃げない方がいいんじゃないかと思う」

369 :924(2/3):2006/04/09(日) 00:26:31 ID:6VOWx1mz0
「どうしてですか?」
「放送で言ってたろ? お前らがぐずぐずしてるから禁止エリアを増やすって」
まだエリアは数多く残っているのに、すぐ隣のF-2が禁止エリアになっている
E-2を、それもたった1時間後に指定してきた理由は何か。
「もう夜だしこの雨だから、多分ほとんどの人はどこかに籠もってるはずだ。
みんなが動いて出会わなければ、殺し合いも発生しない。だから、人の
集まってるエリアをわざと選んだとしか思えない」
そう、逃げようとして動けば、どこかで顔を合わせる確率が高まるように。

「じゃあ、このエリアには他にも誰かが?」
「たぶん、いるんだろうね。もちろん、やる気があるのかどうかは分からない。
けど、E-2以外の場所にいる危ないやつが寄ってくる可能性もある」
「ここ以外から?」
「俺がゲームに乗った人間でこの近くにいるなら、そうするよ。みんなの
動きが鈍っている今、ここからは1時間以内に誰かが逃げ出すんだから。
その時、どの辺にいれば逃げてくる人を見つけられる確率が高いか」

「それは、やっぱり……あ、そうか」
新井も久慈の言わんとしていることに気付いたらしい。
「だろ? 普通に考えると、E-3の方に逃げたくなるよね」
この雨の中、野外で夜明かししたがる者はいない。移動せざるをえないなら、
どこかの家に落ち着きたいと思うのが自然だ。だが、そこを突いてくる者が
いれば――。考えすぎかもしれないが、慎重になるに越したことはない。
万が一にもその気になっている連中に遭遇した時、意識のない浅井を
連れている状態では窮地に追い込まれることは必至だ。

「だから、ちょっと面倒だけどいったんD-2に抜けて、海沿いにD-3へ移動して
どこか適当な家を捜すのがいいんじゃないかな」
「そう……ですね。じゃあ」
「うん、すぐ支度しよう」
久慈は地図をそばの机の上に置き、立ち上がった。

370 :924(3/3):2006/04/09(日) 00:30:54 ID:6VOWx1mz0
手早く自分の荷物をまとめると、久慈は浅井のデイパックから一丁の拳銃を
取り出した。海岸で彼の傍らに転がっていた、ベレッタM92FS。久慈自身の
支給品である金属製棒針セットと比べなくとも、"当たり"といえる武器だ。
久慈は手に載せたそれをしばし見つめていたが、やがてある決意を固めた。
(ごめんな、ちょっと借りるよ)
心の中で浅井にことわり、銃をポケットに差しこんだ。

「荷物は俺が持つから、浅井を背負ってくれるかな?」
新井に頼むと、彼は素直にはい、とうなずいた。
「悪いね。実はさっき運んだ時はかなり疲れちゃってさ。浅井も大柄じゃ
ないんだけど、俺このとおりだし、もう年だしなあ」
久慈は冗談めかして笑いながら三人分の荷物を担ぎ、帽子をかぶった。

一階に降り、玄関の戸を開けると、すぐそばの街灯の光に無数の雨の筋が
白く照らし出されていた。久慈は傘を開いて左手に持ち、浅井を背負った
新井に差しかけた。
「あ、ありがとうございます。……久慈さん、傘は?」
「俺はいいよ。雨もだいぶマシになってきたから」
答えながら、久慈は新井に気づかれないように右手で腰の拳銃のグリップを
握り締めた。この手は、空けておかねばならない。

さっき浅井を新井に任せた時には自分の小柄な体格と年齢を言い訳に
したが、本当の理由は別にあった。もし戦意を持つ選手に出くわした場合は、
自分が二人の盾となって戦う。浅井の銃を借りた時、そう心に決めていた。
今は落ち着いたとはいえ石毛の命を奪った自責の念に苦しんでいた新井に
再び手を汚させたくはない。やむをえない事態になった時には、自分がやる。
(でも、できれば使わずにすみますように――)
人を殺さずゴールに着く方法はきっとある。矛盾するようだが、今でもそう
信じている。自分の思いを確かめ、久慈はそっとグリップから手を離した。

【残り37人】

371 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/09(日) 01:05:20 ID:ebevDLrh0
職人様乙です!
久慈さん…カコイイ!がんがって!


372 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/09(日) 17:58:28 ID:w2xvZIwq0
久慈さん、めっちゃ冷静。んでカコイイ!!!

373 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/09(日) 19:43:30 ID:B5E5nPtC0
職人様投下乙です。
久慈さんカコイイよ久慈さん

374 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/10(月) 18:40:20 ID:iB7X+Obj0
<野球>日本野球、韓国系金本選手フルイニング出場新記録
ttp://japanese.joins.com/article/article.php?aid=74551&servcode=600§code=620
日本プロ野球阪神タイガースの韓国系スラッガー金本知憲(38、韓国名、キム・ジホン)選手が連続フルイニング出場世界新記録を打ち立てた。


キムジホンさん記録達成おめでとう!

375 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/10(月) 21:55:25 ID:lCPME06Z0
職人さま乙です。
ずっと気になってた浅井キタワァ*:.。..。.:*・゚(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*!!!
久慈さんに新井…今後の展開が楽しみです

376 :174(1/6):2006/04/10(月) 23:24:34 ID:PiwQ73sK0
>>370
109.mission

 雨が――
 傷を疼かせる。

「いってぇ……」
 暗い森の中で、田中秀太は一人呻いた。
 雨露を凌ぐために避難した木の根に座り込み、痛みの疼く右手を持ち上げる。
 夜の空気に冷やされた幹と地面が、ユニフォーム越しに秀太を抱いた。背筋を
登った寒さに、軽く身震いをする。
 じっとりとした空気に刺激されるように、熱を持って疼くのは、右手人差し指の
付け根だ。細長く横断している傷は、そこだけ細胞を破壊されたように青黒く変色
していた。
 相手は目を瞑って撃ってきたというのに――己の運の悪さを呪う。
 銃を弾かれた右手は、酷く痛みを伴った。が、動くところを見れば骨折はして
いないらしい。
 シザーを叩き落としたときに受けた左手の切り傷はすでに血も止まっており、
だいぶ痛みも薄れている。
「あのやろ……」
 呻き、秀太は数時間前に、自分を傷つけた後輩との一件を思い出していた。
 今はまだ誰にも会うつもりはなかった。
 細心の注意を払っていたつもりだが、彼に出くわしてしまったのは不運だ。
 その場しのぎの、口から出任せ。
 嘘が苦しいのは分かっていたが、関本はよく秀太の冗談に騙されていたのでいけ
るかもしれないと思った。
 実際、関本は信じかけていたというのに。

377 :174(2/6):2006/04/10(月) 23:25:17 ID:PiwQ73sK0
「クソっ……」
 秀太は毒づいた。左拳を握り、軽く地面を叩く。
 いつ誰と会うかも分からないこの状況で、バッグを3つもキープしたままだった
自分は甘すぎたのだ。
(3つも持ってりゃ、そりゃ不審に思うわな!)
 今、秀太の手元にはデイバッグは一つしかない。
 関本が逃げ出した後、秀太は庄田と中谷のシューズを草むらに投げ捨て、荷を改
めた。3人分の荷物を小さなデイバッグ一つにまとめるのは難があったが、必要性
の低そうな物から捨てていった。戻ってくるかも知れない中谷への嫌がらせのつも
りでシューズも盗んだのだが、とんだ邪魔者になってしまった。
 ふと、膝の上に置いた地図と名簿に目を落とす。
 つい先程、島内に響いた定時放送。追加情報が書き込まれたそれは、彼自身の
犯した罪の証明状でもある。
 名簿に羅列される人物名に刻まれた、いくつもの無機質な横線。
『庄田隆弘』
 その名に引かれた線は、明確に田中秀太の罪を証明していた。
「…………」
 その文字に魅入られるように、秀太は瞬きもせずに見つめた。視線がその一点に
吸い込まれるような、おかしな感覚。
 消された名前。
 消えた命。
(庄田――庄田……どんな顔してたっけか)
 死に顔を確かに見たはずなのに、記憶の中の彼の顔は霞がかっている。
 記憶すら、消えていくのかもしれない。
(まあいいや。思い出しても仕方がないし)
 額に穴が空いた男の顔なんて、思い出しても夢見が悪いだけだ。
 そう割り切り、秀太は嘆息した。その名から目を離してしまえば、一瞬捕らわれた
奇妙な感覚からは解放された。

378 :174(3/6):2006/04/10(月) 23:25:37 ID:PiwQ73sK0
 一度腹をくくってしまえば、人を殺すなんて簡単なものだ。
「馬鹿なやつ……」
 ぽつりと、呟く。
 庄田隆弘は馬鹿な男だった。それだけは間違いない。
 身を挺してまで仲間を逃がすなんて。
『中谷! 逃げろ!』
 必死に自分の足にしがみつき、中谷を逃がそうとした庄田。
 どれだけ正しいことをしても、神様は見てなんていない。
 正義なんてものはない。
 信じるのも祈るのも馬鹿馬鹿しい。
 事実、秀太のBackmarks22は、あっさりと庄田の額を打ち抜いた。
 二度目の奇跡なんて、起こるわけもなく。
 引き金を引いた銃は、暴発することも、弾切れすることもなく庄田を殺した。
 エゴのために人を殺そうとした秀太。仲間のために身を挺した庄田。
 正しいのはどっちだ?
(最後は正義が勝つ、なんて、それこそテレビの戦隊モノの中だけの話じゃないか)
 戦隊モノ、という言葉に、思い出したくないことを思い出しそうになり、秀太は
軽く頭を振ってそれを追いやった。
 どうせ助けても、そいつもそのうち死ぬのだから。
 監督の言う『馬鹿』とは、こういう人間のことを言っているのだろう。
 馬鹿は死ぬのだ。
 生き残れるのは、郷に入れば郷に従う、賢い人間。
「やっぱり人間、群れるとダメだな」
 仲間なんてものがいるから、冷静な判断が出来なくなる。
 情に惑わされるのは、この場合毒でしかない。
(俺は、賢い人間だから――)
『お前はそれで賢いから、身の振り方は分かってるやろ』
 田中秀太は選ばれたのだ。
 生き残る価値のある人間であると認められた。その事実を、誇りに思わなければ
いけない。
 己という人間を確かめるように、秀太はゆっくりと左手を握り、そして開いた。

379 :174(4/6):2006/04/10(月) 23:26:04 ID:PiwQ73sK0
「……?」
 その時ようやく、秀太はチカ、チカ、と腕時計のライトが点灯していることに
気付いた。
「やべっ」
 すぐにポケットからイヤホンを取り出し、腕時計に繋げる。
「ハイ、秀太です」
 腕時計のアンテナを立て、スイッチを入れる。
 腕時計型トランシーバー。
 それが、『生き残る価値のある人間』に与えられたツールだった。
『遅いで』
「すみません、ぼんやりしていました」
 開口一番、苦言を呈した岡田に秀太は謝った。先程定時放送があったばかりだから、
もうそろそろ連絡が来るのではないかと予想はしていた。
 ちょうどいい。次に首脳陣から連絡が入れば、言ってやりたいことがあった。
「あの、赤星の探知機なんですけど、アレ、どういうことですか?」
 口調がきつくなりすぎないように気を付けながら、咎める。
「ああいうものがあるなら、俺にも渡してくれていいと思うんですけど」
 赤星の支給品である探知機は、ゲームを生き抜いていく中で非常に有利になる。
 本来ならばああいう道具は、自分のような潜伏者が持っておくべきではないだろうか。
あれを持っていれば、関本と鉢合わせて怪我をすることもなかったはずだ。
 そのことが秀太は不満だった。
 中村豊を襲った時に奪ってしまえば良かったが、残念ながらそこまでの冷静さ
は、あの時の秀太は持ち合わせてはいなかった。

380 :174(5/6):2006/04/10(月) 23:26:23 ID:PiwQ73sK0
『あーあれなぁ……』
 秀太の憤りを知ってか知らずか、岡田が間延びした口調で応えてくる。
『お前の分もあってんけどなー……』
 ぽりぽりと頬をかく仕草が思い浮かぶような声。
『なくしてもーたわ』
「なっ……」
『まあ支給品の管理は平田に任せとったし、文句はアイツに言ってくれや』
「…………」
 真実か――虚構か。
 真意の計りかねる応えに、そんな疑念が湧く。
 ふざけた理由だが、あの首脳陣ならあり得そうなだけにタチが悪い。
 だが、ないなら、ないと言えばいいだけであって、なくしたとウソをつく必要性
もあまりないように思えた。
 何より、彼相手に激昂しても仕方がない。一瞬沸騰しかけた感情を収め、秀太は
大きく息を吐いた。
『そんなことより、おまえ、豊を逃がしたな』
「えっ!?」
 唐突な切り出しに、再び心拍数が上がる。
(何で……)
 何故、知っている?
 秀太が中村豊を襲った時、もちろんそこには誰もいなかったはずだ。
(見られている……のか……?)
 慌てて秀太は視線を巡らせた。
 通信機越しに、微かに、鼻で笑うような息遣いが聞こえた。
 まるで、焦って周囲を確認した自分を、上から見下ろして嘲笑うように。
「…………」
 己の血の気の引く音が聞こえた気がした。
 よく考えれば、自分は何もこのゲームのことを知らない。
 仮にも主催者側についていながら、持ち得る情報はこのゲームに踊らされている
参加者と大差ないのだ。そのことに気付き、愕然とする。

381 :174(6/6):2006/04/10(月) 23:26:46 ID:PiwQ73sK0
「死んだと……思ってました……」
 喉から声を絞り出す。
 奮えないよう抑えるのが精一杯だった。
 カメラが設置されているのだとしたら、この自分の強ばった顔も見られているの
だろうか。
 どこからか見ていたにしろ、彼らが知っているのは崖を転がり落ちた中村を追わ
なかった自分だけだ。躊躇って逃げ出したのは事実だが、秀太の心情まで見透かす
ことは出来ないはずだ。
『…………』
 沈黙が落ちる。
 その見えないはずの心情を透かし見ようと試みているような、そんな居心地の悪
い沈黙だった。
『まあええわ』
 その言葉に、内心、胸を撫で下ろす秀太。だが、その安堵も次の瞬間にはかき消
された。
『お前には新たな任務を与えたい』

【残り37人】

382 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/10(月) 23:33:09 ID:2P1Xdz7J0
職人さん乙です!はじめてリアルタイム投下に遭遇した!
秀太の話はいつも切なくなるなあ
新たな任務ってなんなんだろ・・・気になる

383 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/10(月) 23:37:58 ID:iTf8v0DZ0



384 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/11(火) 00:11:56 ID:9v/eKFsu0
秀太・・・・・・・・かわいそうに

385 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/11(火) 19:01:43 ID:bhqZBbYi0
職人さん乙!
ドキドキする展開だ…。

386 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/12(水) 21:11:00 ID:braKOaDD0
ほしゅ

387 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/13(木) 10:03:45 ID:XztCgByv0
保守

388 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/14(金) 09:31:39 ID:uQK+S+jj0
hosyu

389 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/14(金) 21:08:42 ID:uQK+S+jj0
hosyu


390 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/15(土) 01:42:52 ID:vs28ZE9+0
hosyu

391 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/15(土) 22:11:04 ID:xX6tehh40
ほしゅ

392 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/15(土) 22:35:22 ID:MtKeEB+b0
◎今年だけで何と・・・

パウエル
スンヨプ
豊田
野口
小坂

◎過去には何と・・・

ペタジーニ
ローズ
マルティネス
シコースキー
ペドラザ
ヒルマン
ハウエル
メイ
小久保
落合
清原
江藤
工藤
広沢
川口
前田

主力や4番のオンパレード。交換トレードを除いてもこの凄まじい数。
こんなにも主力投手や4番ばかり根こそぎぶん盗っておいて、勝てない方がおかしい。
今年も早速新たにまんまと略奪に成功した、金満強奪選手のパウエル、スンヨプ、豊田らが大活躍です。
タダで強奪の4番小久保といい、今勝っているのは、よそ様の主力選手を次から次へと一方的にむしり盗ったおかげです。
偉大なる略奪・強奪帝王巨人軍は永久に不潔です。

393 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/16(日) 02:17:06 ID:YiqJKfXz0
連勝嬉しい捕手

394 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/16(日) 13:18:23 ID:Qq655o7q0
葛西タンと峰夫タンのその後が気になる 保守

395 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/16(日) 14:19:25 ID:Uy0tWvuS0
御大とイガーも気になるほっしゅ

396 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/17(月) 02:18:39 ID:Jdwtx6lT0
アブね、ほっしゅ

397 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/17(月) 09:34:00 ID:iQwiyg110
和田コーチ、どうなるの?
ほしゅ

398 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/17(月) 21:47:53 ID:HQ8RhW330
俺の峰夫はどうなったんだろ…保守

399 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/18(火) 22:10:27 ID:dISiSB6n0
ほしゅ

400 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/18(火) 23:43:03 ID:Czn4SLnq0
>>398
言っておくが俺の峰夫だぞ 保守

401 :& ◆ePe9WrGK2o :2006/04/18(火) 23:47:38 ID:mqRnuLhH0
t

402 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/19(水) 23:50:03 ID:dGI1MHZe0
峰夫タン大人気だな

403 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/20(木) 01:10:49 ID:SKzZrhaRO
眠いけど保守

404 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/20(木) 21:44:18 ID:6/7Kh9BH0
捕手

405 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/21(金) 01:56:50 ID:ft3rcH1nO
保守。
…保管庫携帯から見れないんだね…

406 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/21(金) 21:30:14 ID:03p+brmY0
ほしゅ

407 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/22(土) 10:13:37 ID:zJSr6LxW0
福原峰夫コーチ人気あるな ほしゅ

408 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/22(土) 20:55:12 ID:thaWU4zJ0
昨日の試合で球審が倒れて担架で運ばれるまでずっと世話してた峰夫タンって優しいな…保守

409 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/23(日) 09:34:11 ID:R+rdIar10
平田も心配そうに声かけてたんだってね…保守

410 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/23(日) 10:09:11 ID:QoxNeD5q0
春樹もそばで心配してたよ 戦友っていいもんだなぁ
保守

411 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/23(日) 23:52:54 ID:UhQ4lZvD0
ほしゅ

412 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/24(月) 17:22:44 ID:CUvGZ/8pO
(@ω@)<保守

413 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/24(月) 23:28:12 ID:hl6MN9bL0
捕手

414 :924(1/5):2006/04/25(火) 00:06:01 ID:jpcsXxBN0
>>381より
110.贖罪

「うん、そこのT字路の突きあたりを右に曲がって、次の道を左だね」
浅井を背負って黙々と歩く新井に傘をさしかけてやり、久慈は彼に合わせて
ゆっくりと歩いた。地図を見る必要がないよう、あらかじめ頭に叩き込んだ
ルートにそって進む。
「それからもう少し行くと、郵便局があるはずなんだ」
「あ、あの……久慈さん」
おびえたような声とともに、急に新井の足が止まった。

「なに?」
思わず腰の銃に右手をのばしたが、そうではなかった。
「こっちの道でないと、駄目ですか?」
「どうして?」
「いえ……その……」
返事にならない返事で言葉を濁したきり新井は黙ってしまった。
その思いつめた顔つきから、久慈にはピンと来るものがあった。
だが、思い浮かんだことを相手に確認するつもりはない。
「んー、とりあえずD-2に抜ければいいんだから、どの道でもいいよ」

久慈は何も気付いていないといった風でデイパックのポケットから地図を
取り出した。この辺りの道は行き止まりがあったり斜めに走っていたりと、
けっこう複雑に入り組んでいる。
「じゃ、向こうの道から行こっか」
軽い口調で進路を変えたが、新井の表情は固いままだった。久慈はそれが
気になり、地図と彼の横顔をちらちらと見比べながら歩を進めた。
「……久慈さん」
また少し行ったところで新井が立ち止まった。
「すみません。やっぱり、さっきの道でいいです」
そう言った彼は、何事かを決意したかのように見えた。

415 :924(2/5):2006/04/25(火) 00:07:58 ID:jpcsXxBN0
「いいのか? 本当に、大丈夫か?」
真剣な調子で念を押すと、新井は少し驚いた顔を見せた。
「……もしかして、分かってるんですか?」
久慈はうなずいた。聞かなくとも、自分の推測に間違いはないはずだ。
「そうですか……。久慈さんはすごいですね」
新井は微苦笑を浮かべたが、ほんの一瞬だけだった。
「やっぱり、現実から逃げたら……駄目ですから」

「もちろん、そうだ。でも受け止めるのがつらいなら、今は無理に見すえようと
しなくてもいいと思うよ」
それが久慈の偽らざる気持ちだった。新井は少し間をおき、答えた。
「俺、まだちゃんと謝ってもいなかったんです。禁止エリアになったら、もう
ここには来れませんよね。だから、今でないと……」
「……わかった」
いいだろう。少しでも新井が救われるなら。
久慈は今来た道に向かってゆっくりとターンした。心配でないと言えば、嘘に
なる。しかし、あの時とは違う。今の新井なら、きっと大丈夫だ。

わずかに太陽の傾きかけた海辺で顔を真っ赤にし、人を殺したと泣いていた
新井。彼の思い込みに反して、そばに倒れていた浅井は無傷だった。久慈が
そのことを確認してみせた時、彼の嘆きと苦悩は終わると思った。だが、涙は
止まらなかった。新井が震える声で告白したもう一つの過去。それは決して
ぬぐい去ることのできない罪。生きている限り、常につきまとう足かせ。
久慈は最初に出会った時以上に言葉を選び、心を尽くして彼に語りかけた。
そして今、彼は勇気を出して自分の過去と向き合おうとしている。

無言のまま歩き続け、小さな郵便局の傍らを通り過ぎた時、前方に転がる
「もの」があった。再び、新井の足が止まる。久慈は何も言わず彼を見た。
「大丈夫、です。……このまま、行きます」
新井は自分に言い聞かせるように大きく一つうなずくと、足を踏み出した。
傘を持つ久慈も一緒に歩き出す。雨の中、街灯のあかりにぼんやりと照らし
出された「それ」が次第にはっきりと見えてきた。

416 :924(3/5):2006/04/25(火) 00:10:45 ID:jpcsXxBN0
近くの建物の軒下に浅井を横たえ、荷物を置いた後、久慈は新井とともに
石毛博史(背番号48)の遺体のそばに立った。新井はしばらく彼を見下ろして
いたが、やがて帽子を取って膝をついた。久慈は立ったまま傘を彼の上に
かぶせるように支え、顎から頭部を撃ち抜かれた石毛の死に顔を凝視した。
ゲームが始まってちょうど24時間。晒しものにされた佐藤コーチを除けば、
死体を目の当たりにするのはこれが最初なのだ。だが、恐怖よりも悲しみが
先に立つ。驚いたように見開かれたうつろな目。きっと、突然のことに何も
分からぬまま死んで行ったのだろう。それでいて、彼の最期の表情には
言いようのない無念さが漂っている。

斜め上から新井の表情は見えないが、肩が小さく震えているのが分かる。
石毛の死とは直接に関わりのない自分でさえもこんなにつらい。まして
はずみとはいえおのが手にかけた彼の心中はいかばかりか。
いや、はずみだったからこそ、故意の殺害以上に苦しみは深いのだ。
「……ごめんなさい」
ようやくの思いでつむぎ出されたか細い声が、ほとんど雨音にかき消される
ほどの小ささで久慈の耳に聞こえてきた。その声に合わせ、久慈も静かに
目を閉じ、石毛のために祈った。

「久慈さん、すみません。……手伝ってもらえませんか?」
呼びかけられ、久慈は目を開けた。新井が自分を見上げている。
「このままじゃ、あんまりだから……」
そう言うと新井は石毛の肩に両手をかけた。久慈は彼の意図を察し、傘を
路上に置くと足の方へ回った。そのまま、二人は石毛を近くの民家の一室に
運び込んだ。冷たく硬くなった身体は体勢を整えることも瞼を閉じさせることも
できなかった。それでも、あのまま屋外にさらしておくにはしのびなかった。

417 :924(4/5):2006/04/25(火) 00:13:37 ID:jpcsXxBN0
「でも……これで少しでも許されるなんて考えたら、駄目ですよね……」
再びの祈りを終えた新井は目の前の石毛に語りかけていた。
「石毛さんに謝って、こんな所に運んで……それを石毛さんのためにと思って
いるけれど、本当は自分が楽になるためでしかないのかもしれない。だって、
どんなことをしたって石毛さんを生き返らせることはできないし……」
少し後ろに座る久慈は、いたたまれない思いで彼の後ろ姿を見守っていた。

――お前は悪くない。
新井の懺悔を聴いた時、あれほど繰り返し言った言葉だ。しかし、石毛の
遺体をこの目で見た今、その気持ちにゆらぎが生じていた。どのような形で
あれ石毛が新井に殺されたことは事実だ。突然命を奪われた石毛自身の、
あとに残された彼の家族の気持ちを思えば、そう言い切れるのか。
(それでも――)
久慈は無意識のうちに両手をぐっと握り締めていた。
「そうじゃない。どうにもならなくても、償おうとする気持ちが大事なんだよ」
新井が振り返った。

「よく、ここに戻って来た。本当に、よく勇気を出してここに来たと思うよ。
その気持ちは、きっと石毛も分かってくれるはずだ」
勝手な解釈かもしれない。だが、そう思いたかった。
「久慈さん……」
「お前も十分苦しんでるんだ。馬鹿げたゲームに巻き込まれて。言ったろ? 
本当に罪に問われなきゃならないのは、こんなのを計画したやつらだって」
久慈は新井に近付き、そっと片手を肩に置いた。

「すみません……。なんか、また心配かけちゃいましたね」
新井は両手で涙をぬぐい、顔を上げてまっすぐ久慈を見た。
「大丈夫です。俺は……大丈夫です」
「……うん。じゃあ、そろそろ行こうか。浅井も気になるしね」
笑顔を作って久慈が言うと、新井は小さく、はい、と答えた。

418 :924(5/5):2006/04/25(火) 00:17:37 ID:jpcsXxBN0
久慈は腕の時計を確認した。8時まであと15分。思いのほか時間を食ったが、
D-2まではわずかの距離だから、大丈夫だろう。そんなことを考えながら外に
出たが、浅井はもとの場所に横たわってはいなかった。
彼は意識を回復し、今まさに立ち上がろうとしていたところだったからだ。
「あ! 気がついたのか?」
「浅井さん……大丈夫ですか?」
二人が駆け寄った瞬間、寝起きのようにおぼつかなかった浅井の顔が
にわかに恐怖の色を帯びた。

「あ……わあああっ!!」
浅井は叫び声を上げ、傍らのデイパックを引っつかむや新井に投げつけた。
「浅井?」
「来るな! 人殺し!! 来るなあ!!」
わめきながら浅井は駆け出した。
「浅井! おい!!」
久慈は後を追おうとしかけたが、はっとして振り返った。

――人殺し。
投げられたデイパックを胸の前で持ったまま、新井は呆然と立っていた。
久慈は両手で彼の肩を強くつかんだ。
「新井、ちょっとだけここで待っててくれ! 荷物見ててくれ!」
「久慈さん、俺……」
新井の顔がゆがむ。みるみるうちに両目から涙があふれ出した。
「すぐ戻る! 頼んだぞ! いいな!?」
返事はなく、涙顔で新井はこくこくとうなずいた。久慈はよし、と言って手を
離し、浅井を追って走り出した。うかつだった。まさか、ここで目を覚ますとは
思わなかった。ちら、と後ろを見ると、立ち尽くす新井の姿が遠ざかって行く。
(頼むから、そのまま待っててくれよ)
前を向くと夢中で逃げる浅井が小さく見えた。その背中に追いつくべく、久慈は
スピードを上げた。

【残り37人】

419 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/25(火) 00:51:08 ID:ndZmjbXQO
職人様乙です!リアル投下に出会えて感動です…

…新井もう泣くなよー…そして浅井っちは何処へ…

420 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/25(火) 05:48:03 ID:mf0UwTO60
職人さん乙です。ついに浅井が起きたワァ!!
しかし久慈さんはどんどん大変になっていくわぁ・・・

421 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/25(火) 15:30:56 ID:yvqtsFMQ0
職人さん乙!久慈さんガンガレ!!

422 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/25(火) 16:36:37 ID:eDfz0/8K0
おちゅ

423 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/25(火) 22:35:56 ID:em2Rd+vj0
hosyu

424 :542(1/4):2006/04/25(火) 23:55:07 ID:zuEHA+ji0
>>418
111.PaNic-PaNic

 乾いた絶叫。
 何のために絞り出しているのか解らない、その悲鳴。
「あ、ああああ……っ、あ゙あ、あ!」
 掠れる声。上がる息。ひりつく咽喉。
 耳の奥も咽喉の粘膜もまぶたの裏も、とっくに耐用限界に達している。しかし足は
止まらない。止まるわけにはいかない。だからひたすらに走る。走る。―――走る。
(どうして……)
 江草仁貴(背番号26)は混乱と恐怖の渦の中に叩き込まれていた。その渦はぐる
ぐると同じところを循環し、どろりと停滞し、そして捕らえた江草の手足を蝕むように
増幅してゆくたちの悪いものだ。江草は混乱している。江草は―――ただ、ひどく混
乱している。
(みんな敵なのか? みんなそうなのか?)
 違う、そうじゃない、たまたま太陽さんがそういうひとだったというだけの話だ、だっ
て井川さんはオレを助けてくれたじゃないか、だって杉山はオレの味方じゃないか、
違う、みんなが敵だなんて、そんなの絶対に違う!
「ぁ……、ああ、ああ!」
 助けて欲しい、誰か、助けて欲しい。
 江草は走る。ただただ走る。方向を解っているかどうかも怪しいほどに、やたらめ
ったら走る。それは本能だ。ひたすらに、本能そのもの。
(ごめん。ごめん、杉山)
 気の強さには自信があった。肝の太さも、鼻っ柱の強さも、同世代の誰にも負けな
いと思っていた。なのにこれだ。目の前で殺意と狂気を見せ付けられてパニックに
なってしまっている。何のために独り出て来たのだ。何のために危険を冒して単独
行動をしているのだ。理性では解っているのに、身体は正直だった。歳の近い、ポ
ジションも同じ先輩に裏切られたという事実。自分の命の危険。
 実際に死の淵に立っているのだという、恐るべき現実の認識!

425 :542(2/4):2006/04/25(火) 23:55:49 ID:zuEHA+ji0
 鳴り響いた六甲颪を反芻する余裕はなかった。
 濡れた音でキンキン喚くメロディも、岡田の声も、江草の耳を右から左へと通過し
ていった。音が響く。響く。湿気を吸って、禍々しい旋律が無慈悲に響く。
 昼間の放送から7時間。長かった。ひたすらに永かった。この7時間、江草の中で
はあらゆる出来事が無茶苦茶に氾濫し、心臓の奥を、脳の最深部を、じわじわと凌
辱しつつあった。
 気付いた時にはもう手遅れなのだ。―――行った先を追いかけるんじゃない。
 かぶりを振った。結局理性など役立たずだ。読み上げられた人物たちの名が鼓膜
に引っかかり、ぶら、ぶら、と目の前で揺れている。彼らは行った。逝ってしまった。
「ど……して……」
 何故自分はこんなに走っているのだ。何故自分は泣いているのだ。何故自分は怯
えているのだ。何故。何故。何故。
「も、ヤだ……」
 目じりからこめかみに伝った涙の筋がすーすーと冷たくなる。肺が潰れそうだ。心
臓が壊れる。脇腹が軋む。身体を襲うのは痛みばかりだ。痛みと、痛みと、痛みと
……ああ、どこを探しても痛みしかない。
 握り締めたザウエルP220の感触だけが確かだった。左手でグリップをしかと握り、
胸に押し付けるようにして抱き抱える金属のオモチャ。自分を守る唯一の武器。事
実、先刻自分を守ったのは井川の持つ禍々しい玩具だったのだ。江草はそれを認
めざるを得ない。
(どこか、隠れられる所、隠れられる所―――)
 流石に当初の目的だけは何とか覚えていて、次々に過ぎていく鈍い風景の中で
建物の存在を探す。自分の帰りを待っているであろう杉山。倒れた狩野。助けてく
れた井川。生きているのか死んでいるのか解らなかった藪。自分にあからさまな殺
意を向けなかった人物たちの顔が次々と頭を過ぎっては消えていく。消えた後にこ
びりついていたのは太陽の虚ろな瞳だった。逃れようとしても追いかけてくる、昏く
て恐ろしい、そしてどこか哀しいその視線。
 振り払っても振り払っても、纏わりつく。

426 :542(3/4):2006/04/25(火) 23:56:23 ID:zuEHA+ji0
 江草は嗄れた咽喉に右手を当てた。痛かった。苦しかった。思わず息を絞ると、足
取りが一気にふらついた。
「うわッ!」
 木の根に足を取られたのだ、と気付いた時には鼻が土の中にめり込んでいた。
「ちくしょ、う」
 鼻腔に砂粒が張り付いて、二、三度大きく咳き込む。舌にもざらついた不快感を覚
えて、泡立った唾を吐き出した。口の中が粘つく。青臭い。草の匂いと泥の味。少年
の頃、泥だらけになって練習をした時に味わった、あの土の味。
「……ふ、」
 情けないと思うより先に、悲しさがこみ上げる。
「っく、う……っく」
 嗚咽が漏れた。自分はどうしようもなく、弱い。抗おうとする爪も牙もぺしゃんと押
し潰され、根こそぎ折り取られてしまっている。
「う、う……っく、うう、う……」
 江草は泣いた。声を上げて泣いた。
 しかし誰が江草を責められる? 彼の悲しみを、彼の痛みを、彼の苦しみを、一体
誰が嘲笑う事が出来る?
「……っ、……」
 混乱は、ひどく顕著で。
 うっそりと持ち上げた頭に鈍い痛みが這っていた。落ち着こうとしても、恐怖と激し
い動悸とがそれを阻害する。パニックに引きずり込む。
「はぁ、はぁッ」
 身体を起こし、涙と鼻水とでぐちゃぐちゃになった顔を、ぐいとひとつ大きく拭った。
落ち着くんだ。自分の帰りを待っている仲間がいるはずだ。自分を信じて待っていて
くれる人が、いるはずなのだ。だから落ち着け、落ち着くんだ。
 落ち着けったら!

427 :542(4/4):2006/04/25(火) 23:56:48 ID:zuEHA+ji0
(帰らなきゃ)
 呪文のように胸中で繰り返す、帰るという言葉。
 帰りたい場所。
 帰りたい、世界。
「二人のとこに、帰んなきゃ」
 自分の味方が、自分を助けてくれる人が、この灰色の空の下にいるんだから。
(オレは独りじゃないんだから)
 ……本当に?
(杉山たちは、オレを裏切らない)
 本当にそうなのか?
(そうだ、きっと、杉山だけはオレを裏切らない)
 その思い込みは危険じゃないのか?
(だから、帰るんだ)
 一度生まれた闇色のスポットは、ジワジワと心臓を侵食していった。肋骨で覆われ
た肚のなかに色濃く立ちこめ、ゆらゆら、ゆらゆら、そこに混乱が居座り続ける。
 ―――彼だけは信じられるという保証はどこにもないんじゃないのか?
 下腹部の更に奥、背骨の終着点がぎり、と冷える。
 混乱は底なしだ。
 その混乱を作り出しているのは―――
「何、バカな事……考えてるんだよ、オレ」
 ずず、と鼻を啜り上げ、江草はひとりごちる。
 ふと、右手の方向を見た。
 それを認めた時、江草の肩から少しだけ、少しだけ力が抜けた。
 雨でしっとりと濡れた森の瘴気が和らいだ気がした。
 江草の頼りない視線の先。木造の粗末な掘っ建て小屋が、灰色に織られたうすや
みの中にひっそりと建っている。
 そして、彼に向かってゆっくりと、ゆっくりと手招きをしていた……。

【残り37人】

428 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 00:54:08 ID:I71QSXin0
うおぉぉッ!職人さんたちキタ━(゚∀゚)━!
乙です!

久慈さん…そして江草ァアッ…!

429 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 00:56:51 ID:I4Fv3iOu0
うぉ、新作来てるー!

430 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 01:19:19 ID:Nh1XdLjc0
おお、リアルタイム投下来たー!乙であります。

431 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 22:44:34 ID:PvoSVPIz0
乙です!
どの選手の動きにも目がはなませんな

432 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/26(水) 22:46:43 ID:PvoSVPIz0
訂正。

はなませんな→離せませんな

433 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/27(木) 01:58:09 ID:3PhcpFyq0
最底辺まで落ちてる。保守

434 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/27(木) 06:00:38 ID:8h5aZTjO0
捕手

435 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/27(木) 16:40:52 ID:TQE6g6Y6O
(ヽ´_ゝ`)<ほしゅだお

436 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/27(木) 19:42:33 ID:g+SYYM/F0
ほしゅあげ

437 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/28(金) 06:54:21 ID:y6PkVIIK0
ほす

438 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/28(金) 21:46:12 ID:FrnHmzwV0
保守

439 :174(1/8):2006/04/28(金) 23:23:02 ID:xjdlHnM+0
>>427
112.裏切りの是非

 ピシャン……
(水の音)
 ひんやりとした感触が額に染み込む。
(心地よい)
 凪の海を漂うような感覚の中、小宮山慎二は、不規則に響く水音に耳を澄ませた。
 ゆっくりと意識が戻ってくる。ここは海ではない。布団の上だ。
 額の冷たい感触はタオルを水で濡らしたもので、すぐ近くで聞こえる水音は、
洗面器に張った水でタオルを濡らす音だ。
 小学生の時、熱を出した自分に母がよくそうやってくれた。
 だが今自分は小学生ではないし、母はここにはいない。
 誰かが自分を看病してくれている。
(誰)
 あの人しかいない。
 頼もしくて、優しくて。
 不器用な、笑顔。
「……さん……?」
 うっすらと目を開け、映った人影に、小宮山は小さく呼びかけた。 
「小宮山! 目覚めたか!」
「……っ」
 色が蘇った視界に飛び込んできた顔に、ギクリとする。
(違う)
 久保田さんじゃ、ない。
「良かったー。いきなり気ぃ失うから、びっくりしたっつーの」
 小宮山の心中を気にした様子もなく、明るい声が薄暗い室内に響く。
「なんか熱あるみたいやし、大丈夫か? 雨の中走ってたから風邪引いたんかもな」
 急に額が軽くなり、すぐに新しい冷たいタオルに置き換えられた。
 どれだけの時間自分が眠っていたのかは分からないが、この男――藤原通は、
ずっとこうやって自分の傍らでタオルを取り替えてくれていたのだろうか。

440 :174(2/8):2006/04/28(金) 23:23:22 ID:xjdlHnM+0
(藤原さん……何で……)
 自分はずっと久保田の一緒にいたはずだ。しばしばと目を瞬かせ、混乱する頭で
小宮山は記憶を再生した。
(そうだ――!)
 思い出した。
「ふ! じわら……さん……」
 ばっと身を起こし、被っていた布団を跳ね上げる。
 壁に背中をつけた小宮山の足下に、替えられたばかりのタオルが落ちた。
「小宮山?」
 突然飛び起きた小宮山に、藤原が不思議そうに聞いてくる。
 見つめてくるのは、一点の疑う余地もない、信頼に満ちた目だ。 
 その顔に、小宮山は最後に見た、血にまみれた彼の泣き顔を重ねた。
(この人は――久保田さんを殺した!)
 思い出したくもない惨劇が蘇る。
 血。包丁。久保田。哄笑。微笑。血涙。
 急激に寒気が襲ってきた。歯の根が噛み合わず、脳の奥に固い音が響く。全身が
震えた。
「おい、小宮山! 震えてるやん! ちゃんと布団来て寝とけ! 風邪酷くなるやろ!」
「……じゃ……せん……」
「え?」
「風邪じゃ、ありません……」
 布団をかけ直そうと乗り出してくる藤原を制し、そう告げるのが精一杯だった。
 その言葉に藤原は一度心配そうに小宮山を見つめ、すぐに明るい声で切り出した。
 久保田を惨殺したことも、泣き崩れたことも忘れているような、さっぱりした笑顔。
「あ、分かった! 怖いんやろ! そりゃあんな恐ろしいヤツと一緒にいたかと思うと、
怖いやろな。でも、大丈夫やで、俺がお前を守るから」
 胸を叩き、笑顔でそう言い切る藤原に、小宮山は何も答えられなかった。
 少しトーンを落とし、藤原が視線を床に落とす。
「本当は、俺も怖かってんけど……小宮山がおったから。お前は絶対信用出来る
やつやし、死んで欲しくなかったから」
(信用……?)
 その言葉が、未知の単語のように思えた。

441 :174(3/8):2006/04/28(金) 23:23:40 ID:xjdlHnM+0
「お前は、俺と一緒やろ? あいつとは違う。あいつみたいな苦労を知らんヤツは、
内心俺たちのこと見下してるに決まってんねん。そんなやつ、信用できるわけない。
外人も一軍の先輩達もあかん、俺らのことなんか虫けらくらいにしか思ってへん」
 次第に熱の籠もってきた彼の論説は、おおよそ小宮山には理解しきれないものだ。
 だが、少しずつ見えてきたものもある。
 自分を選択した理由――それは結局、消去法ではないのか? 
 彼自身が信用の条件を削り取っていった結果、その箱に残ったのが小宮山慎二と
いう小さなカケラだっただけではないのか。
「分かるやろ? こっちを信用してない人間は信用したらあかんねん」
 それは事実だ。だが彼の言葉は論理的なようで、全く破綻している。
「俺は、信用できる人間しか信用せぇへん。後は全員敵や」
 そう言い切った彼は、まるで自分の打撃理論を語るかのように活き活きと、また
自信に溢れていた。
「だから小宮山、お前は俺を裏切ったりせんよな?」
 当たり前のように、確認してきた男に、小宮山は悟った。
(この人は――)
 この男は、この男の理論の中「だけ」で生きている。
 その事実に、小宮山は愕然とした。
 ここにいて、ここにいないのだ。
 多分、この男の目に映っている小宮山は小宮山ではない。
 彼の中に生きる、偶像化された小宮山慎二だ。
 彼は自分自身の暗示にかかっているのだ。思い込みは信用を信頼へと変え、絶対的な
依存へと移り変わろうとしている。その流動は、酷く危険なものに思えた。
(この人は――キケンだ)
 小宮山慎二が今生きているのは、彼が幻の小宮山慎二を見ているからだ。
 もしここで小宮山が怒りに任せ、彼を罵倒したなら、彼の中の小宮山慎二はあっさり
と『信用できない』カテゴリーへと移されるだろう。
 それはすなわち、等しく死を意味する。

442 :174(4/8):2006/04/28(金) 23:23:59 ID:xjdlHnM+0
(銃……俺の……)
 唐突に感じた身の危険に、小宮山は縋るように視線を室内に彷徨わせた。気絶する
前は小宮山が拳銃を所持していたはずだが、目が覚めた時には丸腰だった。
(あった――)
 藤原の右ポケットの膨らみを見付け、小宮山は瞑目した。最後の望みの綱まで、
彼の手中にある。自己の判断基準に基づきあっさりと人を殺す人間が、一瞬で人を
殺せる武器を所持している。もしかしたら自分は、この島で最も恐ろしい男と屋根
を共有しているのではないか。
(耐えないと。今は……今だけは……)
 彼が望む自分でいなければいけない。
 震える身体を抑え、小宮山は毛布にくるまったままその場に正座をした。殺人者
の前にいつまでも寝転がっている度胸はない。
 その行動を、藤原は彼が落ち着いたと捉えたのだろう。
 ほっとしたように立ち上がり、部屋の隅から小宮山のリュックを持ってくる。
「そうそう、お前が寝てる間に放送あったんやけど……」
「放送!?」
「うん」
(死者は――)
 真っ先に思いついた質問を飲み込む。全てが夢でなければ、そこには彼の名前が
あるはずだ。
「まず禁止エリアはE2とC8。ってメモ取れやー」
 良いながら藤原が小宮山のリュックから地図とペンを取り出してくれる。
「ここはF3やから、しばらくは大丈夫そうやな」
 そう言ってくる藤原に頷きながら、小宮山は大人しく地図とペンを受け取った。
部屋の中央にあるちゃぶ台の前に座り、禁止エリアを書き込んでいく。
「死者がジョージ、太陽、 安藤さんと桧山さん、庄田と、……」
 そこで一息置き、藤原が名簿に目を落としながら満足そうに笑った。

443 :174(5/8):2006/04/28(金) 23:24:25 ID:xjdlHnM+0
「久保田」
 ガタンッ
「小宮山?」
「い、いえ……何でも……」
 何でもないわけがない。
 ちゃぶ台から落ちた腕を持ち上げ、体勢を整える。
「やっぱ具合悪いんちゃう? 寒くないか? お湯入れたから飲めよ。あったまるぞ」
「お湯……」
「お茶葉の缶が置いてあったけど、多分湿気てて使えへんし、お湯でカンベンな」
 お茶――やかん――
 蘇る凄惨な光景の中、ひとつだけ日常の世界から放り込まれたような鈍い黄金色の
やかん。
 視界の端に映った、湯気を立てるそれを思い出した瞬間、小宮山は急激な吐き気に
襲われ口元を抑えた。
 考えないようにしていた現実を突き付けられる。
 ――この家には、多分、まだ、アレがある。
「うっ……」
「小宮山!?」
「……ぐ……ぅ……っ」
 食道から込み上げてくる異物を必死で押し戻し、小宮山は部屋を飛び出した。
 トイレに駆け込み、ひとしきり嘔吐する。
 トイレの前には廊下がある。その奥には――その奥には――
「げぇ……は……っ」
 吐き出すものがなくなっても、小宮山は酸性の胃液だけを便器に落とした。
『お茶入れてくるわ』
 今にも倒れそうな不快感と共に、その時の光景が鮮明に蘇ってくる。

444 :174(6/8):2006/04/28(金) 23:24:44 ID:xjdlHnM+0
(ああ、馬鹿な人だ)
 考えたら分かるじゃないか。こんな無人島に残された茶葉が使い物にならないなんて。
 あの時、自分も気付いて止めれば良かった。
 あの時、久保田さんが台所に行くのを止めていれば――
『そんな古いお茶っ葉で入れてもおいしくないですよ!』
『お湯なら僕が見てくるので怪我人はじっとしてて下さい!』
 そう判断を下せれば、少なくともあの惨劇は回避できたはずだ。
 二人が藤原を信用して行動を共にしている限り、いずれは訪れる悲劇であった可能性
は否めないが。
(そうだ――いずれは起こる殺人だったんだ……!)
 激しく咳き込む。次に襲ってきたのは、後悔の嵐だ。
(俺が、藤原さんを連れてきたりしなかったら――!)
 藤原の狂気を、見抜くことが出来ていたら。
 相手が騙そうとしていたらなら、小宮山も見抜けたかもしれない。
 だがその時、藤原は確かに自分を信用していたのだ。
 小宮山が藤原を連れて帰る選択をしてしまった時、それは逃れられない運命へと
固定された。まるで双六の、絶対に止まらなければならない升目のように。
「うっ……ぐっ……」
 一通り胃の中のものを吐き出し、鼻の奥がつんと痛んだ。
 苦しさとは別の涙が込み上げてくる。
 目元を抑え、涙よ乾けと念じる。
 泣いてはダメだ。
(乗り越えなきゃ……)
 泣きたかった。
 泣けなかった。
「小宮山!」
 激しくドアを叩かれ、小宮山はハッと我に返った。

445 :174(7/8):2006/04/28(金) 23:25:02 ID:xjdlHnM+0
「大丈夫か?」
「吐いたら、少し楽になりました」
 ドアの前でオロオロと待っていた藤原に、戸を開けて顔を出し、そう告げる。
「そっかー。良かった……もうしばらく寝とけ! とりあえず寝とけ! 俺が面倒
みたるから! な!」
 肩を掴み、強制的に部屋に連れ戻そうとする藤原の腕から、ふいに力が抜けた。
「お前がいなくなったら、俺、どうしたらいいか分からん……」
「大げさですよ」
「そかな……」 
 俯いて呟く彼の手が、掴むと言うよりは、小宮山のユニフォームにしがみついて
いるように見えた。
「別の部屋から毛布かなんか探してくるわ!」
「……なかったと思いますよ。俺が隅から隅まで探……」
 あることに気付き、小宮山は自分の言葉を飲み込んだ。
(久保田さんのために――)
 久保田にやろうとしたことを、今藤原が自分にしてくれようとしている。
「小宮山? いいから部屋に戻って寝とけ、な?」
 泣きそうな顔で黙り込んでしまった小宮山に首を傾げ、藤原は二階へと上がった。


 二階から、ガタガタと押し入れを開ける音がする。
 小宮山は一旦荷物の置いてある部屋に戻り、天井を見上げた。
(今なら、逃げられる)
 そう思い、小宮山は手早くリュックの中に荷物を詰め、逃亡の用意をした。武器
を失ってしまったが、仕方がないだろう。
 地図も確認済みだ。禁止エリアを避け、南へ下る。水がなくなってきたから、池
で補給したい。
 あとは靴を履いて、裏口から飛び出して――
「…………」
 そこまでシミュレーションしたところで、小宮山は動きを止めた。
(もし俺がこの人を裏切ったら、この人はどうなってしまうんだろう)
 そんな疑問が掠めた。

446 :174(8/8):2006/04/28(金) 23:25:21 ID:xjdlHnM+0
(だってもし俺が――)
 あの時、自分が服を探している間に久保田がいなくなっていたら?
 そんなことは考えもしなかった。
 小宮山は久保田を信頼してたし、久保田も小宮山を信頼していると信じていた。
 彼が自分から逃げ出そうとするなんて想像も付かない。
(もしそんなことがあったら――)
 信じていた相手に自分が信じられていなかったと知ったら……
 そのときの絶望は、どれほどのものなのだろう。
『お前は俺を裏切らないよな?』
 一方的に押しつけられている信頼を、裏切るのは簡単だ。
(逃げた方が……いいんじゃないか?)
 それは絶対だ。早く逃げれば早く逃げるほどいい。遠くへ逃れれば、藤原が
追ってきたとしても、この歩くには広い島の中、再会する可能性は低い。
(けど……)
 小宮山の裏切りは、確実に藤原通の精神を追いつめるだろう。
(けど)
 その先にある、想像できない結末を空恐ろしく感じ、小宮山はその場を動けず
にいた。
「小宮山ー。ゴメン、なんかないみたいやわ」
 二階の階段付近から振ってくる声が、小宮山の金縛りを解いた。気持ちを落ち
着け、壁越しに聞こえるだけの声で返事をする。
「だから言ったじゃないですか」
「……もうちょっと探してみる」
 再びガタガタと家捜しを始めた藤原に、小宮山は無意識に胸を撫で下ろした。
(いいのか……?)
 本当に彼の側にいていいのか?
 彼は時計が狂った時限爆弾だ。
 何が引き金になるか分からない。
 彼が何かの拍子に自分を敵と認識した瞬間。
(俺は、死ぬ)

【残り37人】

447 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/29(土) 00:02:00 ID:p4pADV+t0
また新作キタ━(゚∀゚)━!!!
職人さん、乙です!
バンビが林みたいに藤原を怒らせなくて良かった〜
でも、この先どうなるんだろ……

448 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/29(土) 01:54:21 ID:PRoDIsH8O
職人様、激しく乙です!
バンビ、これからずっと藤原といるのかな…?危険だよ危ないよ…




放送で遂に安藤の名前が呼ばれちゃったのか…吉野早く起きろorz

449 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/29(土) 04:12:57 ID:bZ4UvaM80
新作キタ━(゚∀゚)━!
職人さん乙です!

安藤もひーやんも呼ばれたな……吉野も矢野も起きるな!・゚・(ノД`)・゚・


450 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/29(土) 23:23:51 ID:PRoDIsH8O
(´゚ぺ`)<保守だよ

451 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/30(日) 12:25:36 ID:H8EX4N46O
保守!藤原怖いよ藤原…

452 :924(1/6):2006/04/30(日) 20:26:01 ID:+JClBdXR0
>>446より
113.二兎を追う者

(おいおい、ちょっとあっけなすぎないか?)
塀の陰に身を隠した喜田剛(背番号55)はほくそえんだ。視線の先には、
街灯の下で傘をさして何事かを相談しているらしい二人の男。
まさか、これほど都合よく見つかるとは思わなかった。

名簿片手に死亡者の少なさに愚痴をこぼしたのは、つい先ほどの話だ。
おまけに3人も新たに加わったとなれば、いつゲームが終わることやら。
もっとも、自分も人のことは言えない。今まで殺せたのは、あの間抜けな上坂
のみ。その後狙った久慈、中谷、金澤、関本はいずれも逃がした。しかも、
関本には投げつけられたカミソリやハサミで軽い切り傷まで負わされる始末。
このまま収穫なしでは、むしゃくしゃして寝られそうにもなかった。

地図を見た時、もうすぐ禁止エリアとなるE-2が目についた。自分のいる場所
から近い。ここから逃げ出す者がいれば――。そう考えてF-3の中でもE-2が
目と鼻の先の場所まで来てみたら、あつらえたように「獲物」がいたのだ。
一人は背中を向けているが、背番号は荷物で隠れている。こちら向きの
もう一人は上下とも黒っぽい服を着ており、ユニフォーム姿ではない。

(さて、どうする?)
陰から様子をうかがいつつ考える。金澤と関本もそうだったが、一人しか
生き残れないこのゲームにおいて複数で行動するということは、まずやる気が
ないと見て差し支えないだろう。だが、あの時と同じやり方では駄目だ。
(二兎を追う者は一兎をも得ず――だっけか?)
金澤たちを甘ちゃんと笑ったが、自分もいいかげん甘かった。彼らを見くびり
すぎていたことだけではない。さっさと久慈を追わなかったこと、中谷の最期を
しっかり見届けなかったこと。反省せねばならない。
今度こそは、うまくやる。
喜田はゆっくりと塀から姿を現し、二人に向かって歩き出した。

453 :924(2/6):2006/04/30(日) 20:27:34 ID:+JClBdXR0
まず、向こう側の男がこちらに気づいた。その様子を見た手前のもう一人が
振り返る。桟原将司(背番号40)だった。
「え? あ……喜田さん?」
「よう、何やってんだ? こんなとこで」
喜田はにこやかに声をかけながら近付いた。そこで奥の黒い服の男が
桜井広大(背番号51)だと分かった。意外な組み合わせだ。

「E-2におったんですけど、禁止エリアになるんで移動してきたんです」
桟原が軽く会釈し、答えた。桜井は無表情のまま突っ立っている。
「やっぱりそうか? 俺もだよ。こんな急に禁止エリアなんて困るよなあ」
「そうですね。ほんまに……困ります」
喜田は何気なく二人を観察した。桟原は左手に傘、右手には地図を持ち、
小脇に木刀を挟んでいる。自分のバットと似たような武器だ。やはり片手に
傘を持つ桜井はどういうわけか上下とも黒いジャージを着ており、頭には
包帯を巻いていた。ポケットから銃のグリップらしきものがのぞいている。
(へえ、いいもん持ってやがるな)

「けど、お前らが一緒にいるなんて珍しいな」
「はい……まあ、いろいろありまして……」
桟原は笑顔で相槌を打つが、警戒しているのか、どこかぎこちない。喜田は
黙って自分たちのやり取りを聞いている桜井に水を向けた。
「どうした? やけにおとなしいじゃねーか」
桜井は少し目を細めて喜田をじっと見た後、おもむろに口を開いた。
「……あんたも阪神の選手か? 見たことないな。誰や?」

「はあ?」
喜田が首をひねると、横から慌てて桟原が口を挟んだ。
「俺らの先輩の喜田さんや。――あ、すいません。こいつ、記憶がなくて……」
「記憶が?」
「それがゲームのことだけやのうて、阪神に入ったことまできれいさっぱり
忘れてるんですよ。そやから、喜田さんの顔も分からへん状態なんです」
申し訳なさそうに桟原が続ける。

454 :924(3/6):2006/04/30(日) 20:28:27 ID:+JClBdXR0
「うっそだろー? 本当に何も憶えてないのか? お前」
顔をのぞきこもうとすると、桜井は無言のままうっとうしそうにそっぽを向いた。
その仕草がまるですねた子どものようで、喜田はおかしくなった。
「何があったんだ? こいつ」
再び桟原の方を向いて尋ねてみたが、彼も首をかしげた。
「さあ……俺が夕方に会った時は、もう記憶なくした後やったんで。けど、
どうも頭ケガしたのが原因らしいです。高校時代の記憶はあるみたいで、
俺のことはいちおう憶えてたんですよ。おんなし大阪やったし」

「へーえ。記憶喪失なんてドラマの世界の話だと思ってたけどなあ」
と言いつつも喜田は妙に納得していた。そうでもなければ桜井が他人と行動
するなど考えにくい。彼の気質からすれば、必ずやゲームに乗ってくるはず
だからだ。仮に相手を油断させるための芝居だとしても、桜井がその気なら
とうに桟原を殺しているに違いない。夕方に出会って今なおくっついていると
なれば、本当なのだろう。

(困るじゃねーかよ? お前みたいなやつがこんな状態じゃ)
喜田は心の中で桜井に文句をつけた。この男が頑張ってくれていれば、
今頃はもっと残り人数も減っていたのに。とはいえ、このゲームで生き残れる
のはただ一人。日頃から生意気で気性の荒い桜井は、そのままならかなりの
強敵になったに違いない。思わぬアクシデントに見舞われたライバルの姿は
拍子抜けすると同時に好都合であり、愉快でもあった。

「なんか、えらいおとなしくなってしもて、別人みたいなんですけどね」
苦笑しながらつけ加える桟原を喜田は冷ややかな目で見つめた。
(こいつは――まあ、どうってことないな)
記憶をなくした後輩に構っているくらいだから、お人よしもいいところだ。
金澤や関本と同じ種類の甘い人間。――しかし、油断は禁物だ。
さっき反省したところだった。
「で、お前ら、これからどうすんだ?」
さり気なく喜田は切り出した。

455 :924(4/6):2006/04/30(日) 20:29:25 ID:+JClBdXR0
「とりあえず、どっかその辺の家で休もうか思てます。ここは禁止エリアに
近すぎるんで、もうちょっと行ったとこにしようかと」
「そっか。もうこんな時間だもんな。――なあ、俺も一緒に行っていいか?」
「え……」
軽い戸惑いの色が桟原の顔に浮かんだ。
「俺、ずっと独りだったんだよ。仲間が欲しかったんだけど、こんな状況じゃ
誰が安全か分からないだろ? でも、お前らみたいに二人で動いてるなら
大丈夫なんじゃないかって」

「はあ……それは、いいんですけど、その……」
桟原は言葉を濁した。だが喜田は慌てず、むしろ余裕をもって尋ねた。
「あ、ひょっとして、俺のこと疑ってる?」
「ち、違います! そういうわけやなくて……」
首を大きく横に振り、桟原は桜井に視線を投げかけた。
「俺はべつに、いいっスよ。桟原さんがええんやったら」
にこりともせず桜井は答えた。それで、決まりだった。

桟原が迷っていた本当の理由が明らかになったのは、適当な家に落ち着いた
後だった。二人を居間に残して台所に行こうとした喜田は、廊下で桟原に声を
かけられた。
「喜田さん、ちょっと、いいですか? 話があるんです」
口の横に片手をかざして小声で言うと、桟原は桜井のいる居間を気にしつつ
喜田の背にもう片方の手を当て、廊下の向こうへと押して行った。
「なんだ?」

「……桜井のことなんですけど、大事なことなんで今のうちに言うときます」
やや躊躇する素振りを見せた後、桟原は話しはじめた。
「あいつ、記憶なくす前に結構いろいろあったみたいなんですよ。その……
ひょっとしたら、誰か……殺したんかも……」
遠慮がちな声は、最後の部分でいっそう小さく聞き取りづらくなった。

456 :924(5/6):2006/04/30(日) 20:31:23 ID:+JClBdXR0
「それは、確かなのか?」
喜田は驚いた顔を作ってみせた。実際には意外でも何でもなかったが。
「いえ、ほんまにそうかは分かりません。でも、あいつ今はジャージやけど、
ユニの前のとこが血だらけやったんですよ。そやのに本人はどこもケガなんか
してへんし、普通に考えたら、たぶん……」
「なるほど……そりゃ気になるな」
いや、それでこその桜井だ。

「そう思わはります? 俺も、そやから心配なんですよ。桜井が記憶なくす前、
もし積極的に誰か殺してたとしたら、思い出した時どうなるんやろうって。
ていうか、元々がヤバい人間やったら、記憶が戻らんでも今の状況が分かった
時点でやる気出すかもしれへんでしょ?」
「確かにな」
「そやから俺、喜田さんにお願いがあるんです」
不安と焦りに満ちていた桟原の表情がにわかに神妙になった。
「そんなやつと一緒におれんと思わはったら、今ここで俺らと別れてください」

喜田は目を丸くした。もっと都合のいい「お願い」を予想していたのだ。自分と
一緒に逃げてほしい、あるいは桜井を始末してほしいとでも言うのかと思った。
すぐには返事できずにいると、桟原はすまなそうに頭を下げた。
「せっかく声かけてもらって仲間になれたのに、こんなん言うてすいません。
けど、万一でも喜田さんが桜井になんかされたら大変やし……」
桜井が怖いくせに、桟原自身は彼と離れる気はないらしい。喜田には理解
できなかった。

「お前はどうするんだ? そんなこと考えてるのに桜井と一緒にいるのか?」
「うーん、そうなんですけどね。今の桜井はフツーに素直やし、ゲームのことも
半分夢やと思ってるみたいなとこがあるんですよ。そういうの見ると、なんか
ほっとけへん気がしてしまうんです。自分でもアホやなあと思うんですけど」
(ほんとだな、そのとおりだよ)
口には出さず、喜田は桟原を嘲笑った。

457 :924(6/6):2006/04/30(日) 20:32:30 ID:+JClBdXR0
「いいやつだな、お前」
「いや、そんな……ほんまは勝手に逃げたら後が怖いってだけです」
桟原は照れ笑いを浮かべて頭をかいたが、この場合、「いいやつ」とは
さげすみの言葉でしかない。
(ああ、まったくもって、お前は「いいやつ」だよ。吐き気がするくらいな)
「わかった。けど、俺はどこにも行かねーよ」
愛想よく言うと、下を向いていた桟原が顔を上げた。
「え……そやけど、ええんですか?」

「そんな話聞いたら、俺もお前らをほっとけなくなっちまうじゃねーかよ? 
いいさ、俺もお前と一緒に桜井を見ててやるよ」
「あ、ありがとうございます!」
こちらの心中など知るよしもない相手は大げさに頭を下げて礼を言った。
どこまでも馬鹿な男だ。
「じゃあ、また後でな」
「あ、喜田さん」
立ち去ろうとすると、桟原がまた声をかけてきた。
「もし桜井が喜田さんになんかしたら、その時は俺が全力で止めますんで」
(あのなあ、どれだけ人がいいつもりだよ?)
ここまで言われると、逆にからかわれているような不快感を覚えなくもない。
「……そう気を遣うなって。でも、まあ、俺もあいつには注意しとくよ」
喜田は軽く右手を挙げ、桟原に背を向けた。

「あーあ、やってられないよな、まったく」
台所で一人になった喜田は思わず声に出してもらした。
しかし、桟原の話は無駄な情報ではない。思ったとおり、桜井は誰かを手に
かけていたらしい。ならば、記憶を失っているとはいえ心してかからねば
なるまい。何より、向こうは拳銃を持っている。
(やるなら、一人ずつだな)

【残り37人】

458 :代打名無し@実況は実況板で:2006/04/30(日) 20:50:08 ID:H8EX4N46O
職人様乙です!最近更新多くて嬉しいー
それにしても、この状況はサジッキーが一番危ないんじゃ…桜井の記憶が戻ったとなると…ガクブルだよ…

459 :924:2006/04/30(日) 21:31:21 ID:+JClBdXR0
すみません、一つ訂正します。
>>452の3段落目の2行目、F-3とあるのはE-3の間違いです。

460 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 00:00:42 ID:8HqgfrgA0
乙です!

喜田怖ぇ…

461 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 03:49:16 ID:2Nm+5PoB0
職人様乙です!
サジッキー、一難去…る前にさらに一難きちゃったよ〜
バンビといいサジッキーといい、えらい爆弾を抱えちゃって、どうなっちゃうんだろ…

462 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 08:04:22 ID:IZPYZOgd0
まだここにまともなファンがいると思ってたの?
まともなファンはみんな避難所でまったりしてるよ
ここには低脳な馬鹿と腐ったアンチしかいない。荒らしたけりゃご自由にどうぞ

463 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 16:29:14 ID:7rh56Jp2O
(★_★)<保守るよ

464 :174(1/3):2006/05/01(月) 21:41:41 ID:9RTGGFf60
>>457
114.最初の男

「……任務……ですか」
 思わず、背筋が伸びる。静かに、田中秀太はその言葉を復唱した。
『放送を聞いて分かったと思うが、どうにもここに来て死者の出が鈍ってきとる。
お前のカバンの中に黒い箱が入っとるはずや。平田が抜かってなければやけど』
 慌ててデイバックの中を確認する。
「あ、ありました……」
 デイバックの底から出てきた四角い黒いケース。慎重に蓋を開けると、中には
玩具のような小振りの銃が収められていた。
『それを使って――』
 その後伝えられた任務は、悪魔からの指令だった。
「――じゃあ、俺は誰かを……」
『そういうことや。分かったか? 抜かるなよ』
「…………」
『聞こえとるんか?』
「任務……了解です」
 その言葉を最後に、通信が途切れた。


「ふぅ……」
 田中秀太との通信を切り、岡田彰布は小さく息を吐いた。
「ほんまに大丈夫かいな、あいつ」
 カメラで見ながら会話をしていたが、あの挙動不審っぷりはたいしたものだ。
 庄田を殺したところをみると、一応は吹っ切れたようだが……
「まぁ小物は小物やからな」
 器用な人間だが根は小心者だ。

465 :174(2/3):2006/05/01(月) 21:42:08 ID:9RTGGFf60
 テレビに映る田中秀太は、木の幹に持たれたまま顔を伏せていた。その表情は
この角度からでは読み取ることは出来ないが――
「どうでもええわ」
 どうでもいい。命令通りに動いてくれれば、駒である男がどんな葛藤を抱えて
いようが岡田には関係がなかった。
「秀太が動き出しましたか」
「なんや平田、ノックくらいせぇや」
「すみません」
 余り悪びれた様子もなく頭を下げた平田が、岡田に近づき秀太の映る画面を見上
げた。
「プロジェクトDや」
「ということはアレが必要になりますが……」
「もう言ってある。今向かってるところやろ」
「うまくいきますかね」
「大丈夫やろ。失敗してもたいして損せぇへんしな」
「それもそうですね」
 納得して頷く。最も、平田が岡田に対して首を横に振ることなどほとんどないが。
「そういえば、お前が秀太に渡し忘れたアレ、何で赤星には持たしとって俺にはないねん
言うとったで。なくした言うといたけどな」
「ははは。似たようなもんでしょう。まあ、おかげで……ねぇ? 結果オーライと
いうことで」
 無責任に笑い飛ばした平田の視線が、別の画面へと映る。
 同じく、岡田もそちらに目をやった。
「あっちは忙しそうやから、この件はこいつに任せとくか。……あいつには期待
しとるんやが」
「問題ないでしょう」
 安易に全肯定する平田の隣で、岡田は大きな欠伸をした。

466 :174(3/3):2006/05/01(月) 21:42:41 ID:9RTGGFf60
「……ちょっと、寝てくるわ。しばらく見といてくれ。居眠りすんなや」
「任せてください」
「……ん?」
 その時、通信用デスクに連絡が入った。寝る前に一仕事舞い込んだようだ。岡田
はデスクに近づき、ヘッドフォンを装着した。
「おうどうした。そっちはどんな感じや? ん? あいつら? どこやったかな……
ちょお待ってくれ――」


 田中秀太は未だ、雨の音を聞いていた。
(動かないと……)
 己の身体を叱咤する。
 自分には『任務』がある。
 あまりゆっくりはしていられない。やるならば暗い内にどうにかするべきだろう。
 だが、どうしても動く気になれなかった。
 雨が葉を打つ音が、全身を包み込む。
 途方もない深淵へと引きずり込むような――絶え間なく、楽譜も指揮者もない
静かなオーケストラ。
 身体は酷く疲れていた。眠たくはないが、出来るならばその音に身を寄せて眠って
しまいたかった。

 傷が疼く。
「いってぇ……」
 右手が痛い。
 心は、もう痛くはなかった。

【残り37人】

467 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 23:43:56 ID:/Xc5GOA5O
職人様乙です!
最近投下が多くて嬉しいです!

どんでんの動きが気になる。何をしようとしてるんだろう。

468 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/01(月) 23:48:00 ID:gyeY55XQ0
すげー!また新作来た!職人さん、乙です!!
秀太の新しい任務も気になるけど
これって要するにもう一人いるってことだよな…ドキドキ

469 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/02(火) 00:10:46 ID:itvSrESH0
またまた新作投下キタ━(゚∀゚)━!
素晴らしきかな黄金週間!!

470 :542(1/4):2006/05/02(火) 16:46:41 ID:NR3kVoB60
>>466
115.目醒めよ、と呼ぶ声ありて

 まどろみを破ったのはその声。
 その、名前。
「……16番、安藤優也」
 耳に落とし込まれたひとフレーズ。
 吉野誠(背番号21)は小さく身じろぎをした。鼓膜を掠めたその名前に引きずられ
るようにして、意識を手繰り寄せる。
 そう、そうだ。思い出した。
 忘れるなんてどうかしていた。
 オレは彼の名前をよく知っていた。
 その名前は。
 君の名は。
『―――吉野、起きろよォ』
(安藤……)
 一度堰を切った後は、洪水のように記憶が流れ込んできた。氾濫する川のように、
なみなみと注がれるコップの水のように。水差しから注がれた冷たい水はあっという
間に溢れ出し、火照った胸の中を冷ましながら拡がって行く。
「安、藤」
 ひどく長い間、眠っていたような気がした。
「安藤……」
 最初に視界に飛び込んできたのはどす黒く変色した自分の腹部。突き出た矢と、
逆さまの「Tigers」の刺繍。思い出す。背後から撃たれた事。腕と腹部の熱さ。力を
失って地面に打ち付けた膝の痛み。脳の奥を痺れさせる眠気。それから。
『吉野!』
 親友の声を。

471 :542(2/4):2006/05/02(火) 16:47:07 ID:NR3kVoB60
(呼んでてくれたのは、お前だったんだ)
 合点がいった。夢の中で―――不可解なあれは夢だったのだと、吉野は思った―
――感じた懐かしさも、耳ざわりの心地良さも、つまりはそういう事だ。ずっと自分を
呼んでいてくれたのは、他の誰でもなく、安藤だったのだ。
「う、……っ」
 関節が嫌な音を立てる。さっきから何となく耳を素通りしていた、ハウリングする人
間の声に叩き起こされ、吉野はハッキリ目を開けた。何事かを喋っているのだが、
ぼんやりした頭には内容がちっとも入ってこない。放り出した四肢が浮腫んでいるよ
うな気がする。指を動かすと、冷たくなった手のひらにジンと痺れが湧いた。
「あつ……」
 どくん、どくん、と傷が脈打つ。
(ここは)
 痛みは半ば麻痺していたが、代わりに気味の悪い熱さが身体一面に貼り付いて
いた。凝り固まった筋肉と神経をほぐすように首を二、三度捻る。頭痛が酷い。
(家?)
 手先に触れる畳の感触と埃っぽい空気。
 聞き憶えのある、大音量の曲。
 窓枠が軋む音。
「きもちわるい……」
 ガラガラに掠れきった自分の声が、まるで別人のもののように響く。咽喉が渇いた。
口の中が粘つく。不快だ。それに臭いも酷い。鼻腔粘膜をぴりぴりと刺激するような
キナ臭い臭いと、饐えた臭気とが絶妙に混ざり合い、胸の奥に嫌なものをこみ上げ
させる。
 鼻を突く、この異臭。
 異臭。
(何だろ―――この臭い)
 漸く。
 吉野は、異変に気付いた。

472 :542(3/4):2006/05/02(火) 16:47:31 ID:NR3kVoB60
(なんか……鉄棒を触った後の手、みたいな)
 砂袋をぶら下げたが如くに重い頭をようやっと持ち上げて。
「ァ……」
 ひゅう―――
 鋭く響いた風切り音は、吉野の咽喉が発したものだったのか、それとも蜂の巣状
に穴の開いた扉から吹き込んだ外気の仕業だったのか。
 吉野が座らされていた四帖半の畳敷きの区画には、少し傾いた卓が鎮座し、その
向こうには散乱したダンボール、紐で十字に縛られた古新聞が積み上げてあった。
黄色く変色した紙面。『讀賣新聞』。長年の宿敵であるチームの親会社が発行して
いるもの。そこに点々と、何かが飛び散ったような暗色の染みが付いている。卓の
上では湯呑みが斜めに倒れ、所在なさそうに転がっていた。こちらへ向かってうっす
らと延びるその影。窓からは薄暗い光しか差し込まない。それでも楕円の影はそこ
に在る。意味も無く、そこに在る。
 一段低くなった場所は板の間になっていた。埃の積もり方、艶の具合。明らかに放
置されて久しい。焦げ茶。焦げ茶。焦げ茶。黒。赤。白。赤。黒。焦げ茶。焦げ茶。
 横たわったもの。
 赤い血溜まりの中に、小さくなって横たわる大きな背中を持つもの。
 大きな背中、大きな背番号。うすやみに浮かび上がる、ビビッドな白と赤のコントラ
スト。網膜にハッキリと背番号が焼きつく。16。おかしい。ユニフォームが赤く汚れて
いる。背中にはあちこちに穴が開き、腹部には抉られたようなクレーターができて、
潤朱色の臓物が覗いていた。背番号の上の五つのアルファベット。A、N、D……
 眩暈が酷い。耳鳴りも。頭痛も。
「……」
 よろめきながら吉野は立ち上がった。立ち上がった感覚も無かった。覚束ぬ足取
りで数歩前に進み、後はがくんと膝を落とした。カタカタと身体全体が震えているの
は寒さのせいではない。いざるようにして進んだ。畳のへりを超え、そのまま板の間
に転げ落ち、這いつくばって進んだ。じり、じり、とそれは近づいてくる。それに近づ
いてゆく。
 紛れも無く死体だった。
 安藤優也(背番号16)の死体だった。

473 :542(4/4):2006/05/02(火) 16:47:53 ID:NR3kVoB60
「あ、ァ……」
 震える手を伸べる。じんわりと拡がった、ぬらぬら光るどす黒い海に手を浸すと、
あっという間に指が染まった。表面が固まりかけ、膜を張った血液が指の間に、爪
の間にへばりつく。ぬるつく感触。こびりつく塊。だらしなく、呆けたように口を開いた
まま凝視していると、掲げた手からぽた、ぽた、と血しずくが滴って太腿に水玉模様
を作った。随分と派手な飾りだった。こんなの必要ない。要らない。
 つー……と、安藤の血が手の甲を伝い、手首から袖に滲み込んでゆく。
 痙攣する膝を、ぐっと前に押し出した。床に緩やかなカーブを描いていた赤い死海
のふちが崩され、吸い取り紙がインクを吸い込む迅速さで、吉野のズボンが鮮やか
に染色されていく。ぺたんと正座した格好のまま、彼はただ、慄いていた。
(安、藤)
 横倒しに、背を丸めて倒れ伏す男。元々細い目は本当に細く、細く、それでもほん
の僅か、開かれたままだった。何を見ていたのか。何を見ようとしていたのか。確か
にその目は開かれたままで、彼は絶命していた。何かを掴もうとするように伸ばされ
た左手。肘は不自然に曲がり、彼自身の血の中に沈んでいる。
 壮絶な赤い死に化粧。
「……」
 ぐらぐらと、頭と身体が揺れていた。漏れ出る自分の声も、もう自分の耳では拾え
ない。代わりに低く低く鼓膜を叩くのは、聞こえるはずのないコラール。
 不意に目の奥が熱くなった。指先が熱くなり、咽喉の奥もひどく熱かった。思わず
両手で顔を覆う。にちゃり。嫌な感触。目を異常なほど見開いている事を、吉野は自
覚していた。吐き出した荒い息が手のひらにぶつかり、血臭を纏って戻ってくる。錆
びた金属の臭いだ。唇にもべったりと血が貼りついて、舌で湿すと、鉄の尖った味が
味蕾を刺激した。六甲颪はとっくに鳴り止んでいた。
 もう一度言葉を交わしたかった。そう願ったはずの友人は、変わり果てた姿となっ
て目の前に佇んでいる。もう言葉も発しない。笑いもしないし怒りもしない。手遅れ
だ。遅過ぎたのだ。全て、何もかもが遅過ぎた。
 その旋律が讃えていたのは、死神だったのか。
「―――」
 吉野は金切り声を上げていた。
 
【残り37人】

474 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/02(火) 18:41:56 ID:9+ig4oSeO
職人様すげぇ…
もう言葉が出ません…

475 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/02(火) 19:51:55 ID:oa+mji1HO
乙です!…涙が止まらないよ…(ノД`)・,゜・吉野ぉぉ…

476 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/03(水) 11:09:21 ID:wcnhWyM00
タイトルは賛美歌からか…
職人さん詩人じゃよ…(*´Д`)

477 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/03(水) 16:23:00 ID:nC/Lnd55O
一応保守!

478 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/03(水) 19:52:10 ID:HFFmCzbH0
葛西コーチ&福原コーチのその後はどうなりましたでしょうか 保守

479 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/03(水) 22:44:42 ID:7grH4RDJ0
乙です。

ウワアァァ ━━━━━。゚(゚´Д`゚)゚。━━━━━ ン!!!!

480 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/03(水) 23:34:27 ID:8t6rFhatO
今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡田死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね今岡死ね

481 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/04(木) 00:40:41 ID:R2WxoNEM0
238 名前:代打名無し@実況は実況板で 投稿日:2006/05/04(木) 00:30:36 ID:f0EbjWEv0
工藤は今岡の三振で何度もガッツポーズしてたけど、
まだ2アウトの段階であれ程のガッツポーズは普通しないよね。
熱いよな。

482 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/04(木) 14:28:36 ID:MKDS9/0OO
保守ります。

483 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/04(木) 23:24:21 ID:3EiPlXs+0
ほしゅ

484 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/05(金) 21:20:29 ID:a1p/nLOtO
(ノぺ`)・,゜・<保守だよ。…安藤…

485 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/05(金) 21:53:48 ID:MV7hhmec0
保守。
吉野ぉぉ・゚・(ノД`;)・゚・

486 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/06(土) 21:20:14 ID:eMKaFntf0
保守

487 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/07(日) 12:57:50 ID:rLHheJUp0
保守

488 :924(1/4):2006/05/07(日) 21:06:08 ID:KVviqJYf0
>>473より
116.リーダー

一休みしようと自分で言い出したものの、金本知憲(背番号6)は名簿を
見つめたままその場を動けなかった。
中村豊と秀太の名が呼ばれなかったことには他のゴレンジャーたち――
赤星憲広(背番号53)も、藤本敦士(背番号9)も、的場寛壱(背番号99)も、
皆一様に胸をなでおろした。何はともあれ二人は生きており、最悪の事態は
免れていた。そのことは喜ばしい。だが、死亡者は確実に増えている。
中でも、金本にはあの男の死が残念でならなかった。

頭の中を、年よりもずっと若く見える人なつっこい笑顔が去来する。
タイガースの生え抜き最年長は藪だが、在籍年数が最も長いのは先代の
選手会長でもあった彼――桧山だ。この苛酷な状況において、間違いなく
皆を導いて行ける選手だった。現選手会長の今岡は野球選手としての
実力こそ申し分ないが、おっとり構えたところがあり、自分が先頭に立って
チームを率いるという積極性には欠けている。この島のどこかで彼が他の
選手たちを集めて行動しているさまは、どうも想像できなかった。

そこまで考え、金本は我が身を振り返った。そういう自分はどうなのか? 
年下の選手たちを従えてゴレンジャーなどといきがっているが、果たして
そんな資格があるのかと。突然チームをあげての殺し合いなどという想像を
絶する非日常の世界に放りこまれ、動揺しないわけがない。恐怖を感じない
わけがない。だが、何かしなければならなかった。自分は仮にも最年長だ。
虎の兄貴と呼ばれる男なのだ。

――金本さんだってこんな偉そうに言ってますけどね、一人じゃ何も
できないからゴレンジャーなんて考えたんですよ。
藤本が中村豊に言った冗談。あの時、ピコピコハンマーでふざけて藤本に
殴りかかりながらも、心中は穏やかではなかった。
そのとおりだ。自分こそが、本当に弱い人間なのだ。

489 :924(2/4):2006/05/07(日) 21:06:42 ID:KVviqJYf0
ゲームが始まって24時間と少し。この間、自分が一体どれほどのことをした?
そう、何もしていないも同然なのだ。馬鹿げたゲームをやめさせたい、その
気持ちは変わらない。しかし、どうすればいいか――答えはいまだ導き出せて
いない。考えれば考えるほど、自分たちがいかに無力かということを思い
知らされるばかり。島から出ることはできず、外部と通信する術はない。最後は
必ず首輪の問題に行き着く。この忌まわしい金属の輪から解放されない限り、
首脳陣たちのいる学校に入りこむこともできない。

(なんでここにおらん? 矢野プー……)
救いを求めるように、今はどこにいるとも知れぬ同級生に呼びかけていた。
大学時代のチームメイトにして、投手陣の信頼も厚いタイガースの正捕手。
彼がいてくれれば、どんなに心強かったか。だから、真っ先に声をかけた。
なぜ、あの待ち合わせ場所に来てくれなかったのだろう。
結局、信頼されていなかったということか。

いや、そうではないはずだ。秀太、藤本と合流し、次に来るはずの矢野を
待っていた最中に起こったあのハプニング。おそらくは、悲鳴を聞きつけた
自分たちが離れている間に矢野は来てくれたに違いない。誰もいなかった
ので、あきらめて去って行ったのではないか。きっと、そうだ。
しかし、だとすれば、矢野は何と感じただろう。誘われて約束の場所に行って
みれば、誰も待ってはいなかったのだ。裏切られたと思ったかもしれない。
騙されたと思ったかもしれない。
(すまん、矢野……)

次に浮かんできたのは、やはり同い年であるあの男の顔だった。
(シモ……なんで一緒に来てくれんかった?)
中林に銃撃されたあの時、なぜ言われたとおり彼にあとを任せて逃げて
しまったのだろう。お前が逃げんなら、わしもここを動かん。それくらいのことは
言うべきだった。彼を失って悔やむくらいなら、いっそ弱みをさらけ出し、身も
世もなくすがりついてでも泣きわめいてでも、仲間に引き入れれば良かった。
どうせちっぽけな自分なのだから。

490 :924(3/4):2006/05/07(日) 21:07:21 ID:KVviqJYf0
(秀太……ユタカ……お前らはどこにおる? 何があったんじゃ?)
とめどなく後悔は続く。赤星が二人を捜しに行くと言い出した時、止めた自分の
判断は正しかったのだろうか。どんな理由があれ、今の自分は二人を
見捨てたに等しい。放送で生存が確定したとはいえ、今も無事でいるという
保証はなく、負傷していることも考えられる。そもそも、彼らを行かせず自分が
人探しに出ていたなら――。

「金本さん? ここに置いときますね」
我に返ると、的場がテーブルの上に置かれた丸い盆から湯気と煎茶の香りの
立つ湯のみ茶碗を一つ、自分の前に差し出していた。いつのまに台所に
行ったのか、まったく気が付かなかった。部屋の中を見まわすと、赤星は
窓際に立って外の様子を眺めており、藤本の姿はなく、テーブルの前に
座っているのは自分だけだ。
「あ、ああ……すまんな。ボーっとしとった」
金本は気まずくなったが、湯のみを手に取り、とりあえず一口すすった。

「あまりおいしくないかもしれませんけど、その点は勘弁してください」
「いや、なかなかうまいぞ」
茶そのものはお世辞にも味が良いとは言えない。だが、その温かさは
萎えそうな気持ちに確かな活力を与えてくれた気がした。
「そうですか? 良かった」
的場は笑みを浮かべると、残りの三つの湯のみを手際よくテーブルに配し、
赤星を呼んだ。

「ちょっと小降りになってきたけど、まだやみそうにないですね」
そう言いつつ席に着いた赤星に、金本は尋ねてみた。
「藤本はどうした?」
「トイレじゃないですか? もう戻ってくると思いますけど」
「ほうか……」
自分でも神経質すぎるとは分かっている。だが、誰かの姿が見えないと心配で
ならない。

491 :924(4/4):2006/05/07(日) 21:08:09 ID:KVviqJYf0
しばらくしてふすまが開き、藤本が入ってきた。お茶入れたから、と的場が声を
かけると、彼は嬉しそうな顔で腰を下ろした。
「お、サンキュー。――雨が少しましになってきましたね」
「ユタカさんたちはどうしてるかな……」
窓の方を見ながら赤星がつぶやいた。向かい合って座る藤本と的場が顔を
見合わせたが、二人は何も言わなかった。金本は部屋の隅に目をやった。
中村と秀太が帰ってきた時のために用意したタオルと着替えが置かれている。
寂しそうに出番を待っているそれらを眺めているうちに、ある考えが頭を
もたげてきた。
遅れて来た藤本が茶を飲み干したのを見て、金本は言った。
「みんな、今日はもう寝よう」

「もう、ですか?」
他の三人は当然ながら、驚いた顔をした。
「ゆうべはみんなほとんど寝とらんじゃろ。休むことも大事じゃ」
「でも、ちょっと早過ぎないですか? まだ8時回ったところですよ」
時計を確認し、的場が言った。
「いや、今のうちに寝とく方がいい。たぶん雨が降ってる間は動くやつも
少ない。そのかわり、明日は夜明けと同時に行動するからな」
「そうですね。どうせ寝るなら逆に今の方がいいかもしれません」
赤星が同意し、藤本もうなずいた。

「よし、寝る準備するぞ」
金本が腰を浮かすと、他の仲間たちも立ち上がった。的場はカラになった
湯のみを片付け、赤星と藤本は二階に急いだ。
このまま話し続けていても埒があかない。それなら、休んだ方がいい。
そんな考えがないわけではない。だが、金本には別の腹があった。
(こいつらには、気づかれんように――)

【残り37人】

492 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/07(日) 22:38:10 ID:27oKQSEs0
乙です!
アニキ…無謀な真似はせんでおくれ

493 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/07(日) 23:42:25 ID:5Um3fdY70
ヽ(`Д´)ノ シヌナ!

494 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/07(日) 23:43:10 ID:+RboJKm60
交流戦終わるまで生きて下さい。

495 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 00:11:12 ID:GzZnlnRX0
珍の犯罪2005
3月2日 元暴力団組員の「中虎連合会」元会長ら、著作権違反で逮捕
6月2日 ソフトバンク三瀬の金本に対する危険球に激怒、ゴミを投げつけバスを包囲、通行を長時間妨害する
6月3日 阪神ファン同士が喧嘩、被害者は骨折。容疑者が逮捕
6月8日 「守虎連合会」の会員を同会代表が暴行し逮捕された。同会は解散する
7月3日 阪神ファンがメガホン投げ入れを注意した警備員に暴行し、逮捕される
7月3日 阪神ファン4人が横浜ファンに暴行、4人とも逮捕される
8月3日 ファウルフライを追う横浜万永にカンフーバットを投げ入れ。当たらなかったが、万永は憮然とした表情
8月27日 打球を受けうずくまる巨人工藤に対し大歓声。中継したNHKの実況・解説から批判される異例の事態
9月1日 阪神ファンが試合前に相手先発の中日山本昌にボールを投げつける
9月7日 判定に激怒した阪神ファン数人が内野フェンスに上るなどして18分間の中断
9月10日 阪神シェーン・スペンサーが広島倉にタックル、倉は負傷退場。阪神ファンから「シェーン」コール
9月17日 敗戦に怒った阪神ファンが氷入りのコップを投げ入れ。赤星は「くだらんことするな」と激怒
9月29日 阪神優勝。道頓堀は封鎖されるが、網の目をかいくぐって合計66人が道頓堀に飛び込み
9月29日 優勝騒ぎでタクシーを破壊するなど多大な損害を与え、合計13人が逮捕される
10月22日 日本シリーズ第1戦敗戦の腹いせに器物損壊した阪神ファンが逮捕
10月23日 日本シリーズ第2戦で、阪神ファン2人が警察官2人に頭突き。現行犯逮捕される
10月25日 日本シリーズ第3戦で、阪神ファン2人が警備員に暴行、逮捕される。
10月25日 上とは別に、阪神ファンが警備員に暴行、こちらも逮捕される
10月25日 ロッテ福浦に紙コップが投げ入れられ、藪田にはつばが吐きかけられる。
11月10日 アジアシリーズ第1戦で、阪神応援の格好をした一団がライトスタンド最前列に陣取り、非難を浴びる


496 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 00:14:08 ID:ow2v43KH0
今岡をフクロにしたい

497 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 00:57:11 ID:2Ieu9sCy0
寝かせておいて出て行くと残った三人のほうが危ないぞ
でも今岡と遭遇するとこ見たいな

498 :174(1/6):2006/05/08(月) 16:34:37 ID:aULSZg0g0
>>491
117.こんな雨の中

 その放送は、矢野の側を離れ、鳥谷が別室の物置を探っている時に流れた。
 雨の降り注ぐ孤島はいよいよ夜の気配を深め、今後気温が下がっていくのは予想
できた。
 鳥谷自身は勿論、体調を崩している矢野の暖を取るためにも、新たに防寒になる
ものはないかと探していたのだ。
 ガタン!
 死亡者の中に『彼』の名を聞いた時、鳥谷は手にしていた段ボール箱を落とした。
ガチャガチャと箱の中で固い物同士がぶつかり合う音がする。
 コロコロと転がり出てきた、子供の握り拳大の赤い球体。
 紐の付いたそれは、ケンダマの玉の部分だった。どうやらこの段ボールは、不要
になった玩具箱か何かだったらしい。
 所々塗りが剥げ、茶色い木肌が晒されている朱色のボール。足下に転がっている
はずのそれをどこか遠くに見つめながら、鳥谷は独り、呟いた。
「桧山……さん……」
 その声は随分と掠れていて、喉の奥に不快な感触を残した。
(桧山さんが……死んだ)
 手にしていた物を落とす程の衝撃だったのに、胸中復唱する声は、随分と静かで、
胸に浮かんだ言葉はストンと胃の辺りに落ちて消化されていく。
 ああ死んだのかと、不思議なほど自然なことのように受け入れている自分を、
鳥谷は他人事のように自覚していた。
 本当は、どこかで予想していたはずだ。
 あの時、何か覚悟を決めた男の背中を見送る時、彼はもう、帰ってくることは
ないのではないかと――
『必ず戻る』
「……うそつき……」
 本当は、分かっていたくせに。

499 :174(2/6):2006/05/08(月) 16:34:57 ID:aULSZg0g0
 誰もいない部屋に、鳥谷の呟きが吸収される。灯りのない部屋の物置は、その奥
に深い闇を抱いていて、狭いはずなのに無限の広さを感じさせた。
「なんで……何のために……」
 俺たちを置いていったんですか――
 嘆くことの無意味さはよく知っている。鳥谷は頭を振り、込み上げる感情を追い
払った。尻ポケットからボールぺンと地図を取り出し、急いで先程告げられた禁止
エリアをメモする。気がかりなことがあった。
(矢野さん……)
 彼は眠っているだろうか。
 かなり疲れているようだったが、あの六甲おろしのフルコーラスだ。目を覚まし
ていたとしても不思議ではない。
 眠っていたとしても、目を覚ました彼に己の口から桧山の死を告げなければいけない。
(起きて聞いていたとしたら――)
 彼は、自分を信じるだろうか。
「…………」
 顔を合わせるのが怖い。
 彼は嘘をついた自分を責めるだろうか。冷たい視線で蔑むだろうか。
 予想できない幾つもの未来を想像し、鳥谷は地図を握りしめ、逡巡した。
 荷物は別室に保管してある。矢野の眠る部屋に入らず、そちらで荷物だけを手に
し、逃げ出してしまうことも可能だ。
 桧山を殺したと思いこんだ彼は自分を殺そうとするかもしれない。
 もし、廊下を渡り、彼のいる部屋に入った瞬間――襲われたら?
(いや……)
 鳥谷は頭を振り、一瞬自分の中に生まれた疑念を振り払った。
 これが、桧山が残した選択肢なのだから、きっとそこには、意味があるはずなのだ。
(逃げちゃダメだ)
 己に言い聞かせる。これは自分に託された仕事だ。
 矢野を頼むと、確かに桧山に言われたのだから。
(大丈夫)
 きっと道は拓ける。
 そこに、1%の信頼があるのなら。

500 :174(3/6):2006/05/08(月) 16:35:19 ID:aULSZg0g0
「矢野さん」
 ドアをノックし、声をかける。
「放送、聞きましたか」
 返事はない。もう一度ノックをして、応答を待つが、その向こうで誰かが動く
気配もない。
(寝てるのかな……)
 その可能性もある。そうなれば、目を覚ました彼にどう事実を伝えればいいのか、
そのことを考えるとまた心臓が重くなった。
「……矢野さん……入りますよ?」
 静かにドアを開け、部屋の中を覗く。
 ひゅぅ――と冷たい風が吹き込んだ。
「な……!」
 鳥谷は息を飲んだ。
 部屋には、誰もいなかった。
 明かりのついていない薄暗い部屋。
 人の形に窪み、乱暴に捲られたままの布団。
 床に落ちたタオル。
 そして――
 開いた窓から入り込む無数の雨粒が、部屋を冷たく濡らしていた。
(まさか……!)
 隣の、荷物を置いてあった部屋に駆け込む。そこには、鳥谷と矢野、二人分の荷物
が、触れられることなく放置されていた。
 それを担ぎ、もう一度矢野がいた部屋に戻る。突然の侵入者から逃げるため、部屋
の隅に置いていた矢野の靴がない。
(逃げた?)
 その結論に達した瞬間、愕然とする。呆然と、鳥谷は開いたドアの前に立ち竦んだ。
『逃げちゃダメだ』
『矢野さんのこと、頼むぞ』
 己を支えていたあらゆる柱が、音を立てて打ち砕かれていく感覚。

501 :174(4/6):2006/05/08(月) 16:35:41 ID:aULSZg0g0
「……そうかよ……!」
 吐き捨てる。
 波の上に波が重なり、徐々に大きなうねりとなり海岸を打ちつけるように、憎悪
とも憤怒ともつかない劣悪な感情が湧き上がってくる。
(あんたは、これっぽっちも俺のことなんか信用していなかったってわけだ!)
 頭が痛い。胃を締め付けるような苛立ちと共に、こめかみが酷く脈打った。
「人殺しの側には一秒もいられないってか……!?」
 突き上げる感情に名前を付けられないまま、鳥谷は左拳で壁を殴りつけた。
 拳から、骨を伝って痺れが肩まで届く。その痛みすら自分を嘲笑うようで、鳥谷
はもう一度壁を殴りつけた。今度は、拳に肌の切れるような痛みが走った。
 馬鹿馬鹿しい。自分で自分を傷つけるなんて、どうかしている。
 不意に力が抜け、鳥谷は口端に笑みを浮かべた。
 左手を持ち上げる。血の滲む側面が、ジンジンと熱を帯びた。
 指と指の合間から見える抜け殻の部屋。
 鳥谷敬は一人だった。
(ほら――)
 信頼のない信用は、こんなにも脆くて薄っぺらい。
 あの人は孤独だ。そして、自分も。
 いくら点と点が並んでいても、そこに1ミリの空白がある限り、それは点の羅列
でしかないように。
 自分達は独りなのだ。
(分かっていたはずなのに)
 なのに、こんなにも苛立たしいのは何故だ?
 心の奥底、どこかで小さく、裏切られたと叫んでいる自分がいるのは何故だ?

502 :174(5/6):2006/05/08(月) 16:36:02 ID:aULSZg0g0
 痛む左手で、乱暴に髪を掻き上げる。目の奥が熱い。涙は出ないが、鼻の奥にも
感じる熱に苛立ちが増した。
(何にむかついてるんだ、俺は?)
 逆に、これほどまでに悔しい自分が分からない。
(信頼してない人間に逃げられて、泣きたいくらいむかつくなんて!)
 そう、分かっていたはずだ。彼らの間に信頼など存在しないことを。
(分かっていたはずなのに……)
 違う。分かっているふりをしていただけだ。その言葉だけが空しく響く。
 本当に分かったのは――思い知らされたのは、たった今だ。
 信頼のない信用なんてあり得ないのだと――孤独とは、つまりはこういうことなのだと。
(体裁を整えて、理屈を並べて、格好をつけて――本当はあの人の側にいたかっただけ
じゃないのか!? 俺は!)
 誰かに縋りたかっただけではないのか。
 彼に対してだけの憎悪ではない。割り切っているつもり「だった」だけの自分の
甘さに直面し、言いようのない恥ずかしさと悔しさが渦巻く。
 彼の孤独に自己を重ねた己の幼さすら愚かしい。
 騰した感情を鎮めるように、冷たい風が吹き込んでくる。頬を刺すような冷気。
鳥谷はそれを己への戒めと受け止めた。
 気持ちを落ち着けるように息を吐き、鳥谷は窓の外を見た。あの時の、桧山進次郎
の言葉が蘇る。
『大丈夫や。みんなお前のことは認めてる』
 その言葉に、安心していなかったか?
(本当は――)
 何を期待していた……?
 彼が自分と矢野を残した意味が、必ずあるなんて。

503 :174(6/6):2006/05/08(月) 16:36:20 ID:aULSZg0g0
 辺りはすでに夜の帳に包まれていて、そこから見える他の民家の輪郭が、不気味
なオブジェのように暗闇に鎮座していた。
 そこを熱に弱った身体を抱えて、雨に打たれながら走り去る矢野輝弘の後ろ姿が
目に浮かんだ。
 同時に再び沸き上がる彼への怒りに、鳥谷は拳を握りしめた。
「あんた……どうするつもりだよ……!」
 その身体で。武器も持たず。この雨の中。
 それは酷く無謀な行動に思えた。
 鳥谷の知り得る、本来の冷静な彼ならあり得ない行動。
 それが、自分の元から一刻も早く逃げ出すことと天秤にかけての選択だとしたら――
(やっぱり……嘘じゃないですか……)
「桧山さん……」
 ぱたり、と力なく重力に従い落ちた左腕に、鈍い痛みが伝う。
 それでも抑えきれない激情に、食いしばった歯から漏れた。
(俺はどうしたらいいんですか――!)
 その答えを待たず、鳥谷は二人分の荷物を背負い、降り注ぐ冷雨の闇に飛び出した。


【残り37人】

504 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 17:13:40 ID:oXrXOz9y0
うわああああああ!!
なんだこれ最悪の展開だ……ウソだと言ってくれ、矢野…orz

激しくヘコみましたが職人さん乙です

505 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 18:03:11 ID:H8GtnLy30
かねもっさんといい、やのさんといい、動きが激しくなってきたよ・・・。

506 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 19:48:42 ID:C7z5edmZO
いよいよラストに向けて皆さん指導し始めですかな
wktk

507 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/08(月) 19:52:50 ID:xYJbwLqT0
ひいぃーたまんねー
くるしいよお
職人様乙です

508 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/09(火) 00:22:33 ID:oXfoPxKL0
うわああああああぁぁぁ・゚・(ノД`)・゚・
矢野…鳥谷うぁあっぁぁ

駄目だ…言葉が…

激しくショックだよ…!
職人さんすごすぎる…!!


509 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/09(火) 03:45:03 ID:YIjnFAOd0
虎バトって全体的に不気味さが漂ってるよな。
本当毎回緊張するしホラー小説読んでる感覚。
そこがたまらなく面白いんだけどね。
あと改めて職人さん達乙です。

510 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/09(火) 19:25:26 ID:JQkQ1yZk0
球バトの中でも完成度が高くて楽しいんだよね。
ドラマがあるっていうかなんていうか…。
ホンマに感動モンや。
職人さん達、ホンマに乙です!

511 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/10(水) 16:03:16 ID:08EVHVRY0
保守しときますよ

512 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/10(水) 20:12:02 ID:VfQt7ukQ0
自分はなんか全体的に絶望感漂ってるなと思ってた。
だがそれがいい。

513 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/10(水) 21:27:49 ID:i5Cg1Rhg0
どの職人さんも心理描写がいいよな
展開遅くても選手のキャラにリアリティーがあって読み応え充分

…といいつつ捕手

514 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/10(水) 23:47:03 ID:C3CQEotr0
捕手

515 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 00:57:09 ID:2ktgWSFa0
関係ないが現実のモナには早く復調してもらいたいな。
去年の軽くコズミックホラー入った強さが背景にあるから
バトのモナの恐ろしさも水際立つ。
これでモナにへたれイメージがつくとこっちの怖さも半減の希ガス

516 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 12:08:27 ID:U42f3GSw0
ここの今岡は俺はヘタレだと思ってた
藤原みたいに狂えない・下柳みたいに悟れないのが今岡で、狂ってしまうのも
悟ってしまうのもどっちも怖くて金本に縋り付こうとしてると言うか
で、問題は縋ろうとしてる藁もヘタレだってことw

今岡に限らずここのロワに漂うホラー感って、本当に怖いのは幽霊でも悪魔でもなく
それを生み出して心に住まわせる人間だ、っていう恐さだよなー

517 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 12:36:48 ID:/qyKwjVL0
虎バトは奥が深いよな
絶望的な状態での人の深層心理を抉り出すというか
強いメッセージ性を感じる

518 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 13:07:03 ID:LMqpfIrJ0
ここの職人さんは、独白部分が最高にうまいと思う。
「ほんとにそう言いそう!」と膝を打つことが多いよ。
新作を読んでると、ぐわっと展開しそうで、どきどき。ぞくぞく。

519 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 20:16:13 ID:dnItY4P80
保守

520 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 20:29:10 ID:RGWfsW7P0
なかなか人が死なないしグロい描写も少ないのに
この怖さは何なんだろね

これだけいろんな目にあってぶっ壊れないバンビが
実は最強かもしれん

521 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 21:15:05 ID:LMqpfIrJ0
バンビを見ると、擁護本能が働くのかも>大半のチームメイツ

522 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/11(木) 23:35:16 ID:LMqpfIrJ0
保守

523 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 03:43:41 ID:SyuG0tId0
保守


524 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 04:24:52 ID:SyuG0tId0
保守

525 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 06:13:28 ID:SyuG0tId0
保守

526 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 13:29:09 ID:SyuG0tId0
ほしゅ

527 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 17:46:05 ID:HIU4C6nb0
r

528 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/12(金) 21:28:46 ID:WQQGJQ6U0
捕手

529 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 13:49:16 ID:ceOL8Uit0
捕手保守歩手?

530 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 20:35:26 ID:/714BuZf0
保守

531 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 21:27:28 ID:RdjdXidT0
IDに豊が出た記念保守。

532 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 22:10:22 ID:6cR4IRhI0
捕手捕手捕手

533 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 23:37:16 ID:RdjdXidT0
保守

534 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/14(日) 03:18:28 ID:OyKHHRrT0
2日連続でIDに豊出た。保守

535 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/14(日) 11:53:55 ID:4d7RCorR0
hosyu

536 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/14(日) 18:50:24 ID:oGfVt7cZ0
保守

537 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/14(日) 21:40:19 ID:AsHV3XXm0
捕手

538 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/15(月) 00:26:48 ID:dJX3dBqv0
さすがに3日連続で豊は出なかった。しょぼーん保守。

539 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/15(月) 03:20:00 ID:dJX3dBqv0
保守

540 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/15(月) 10:59:33 ID:2IQke3sW0
捕手?いやいや、保守

541 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/15(月) 12:03:15 ID:pTG6s+xG0
捕手

542 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/15(月) 20:19:18 ID:Fh8YkxUw0
ほしゅ

543 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/16(火) 00:39:11 ID:mx/wXCZa0
保守


544 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/16(火) 02:30:52 ID:KUxEaWH80
非通知拒否なんて暗いことはしないでね!

545 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/16(火) 07:29:58 ID:KoWnbyZBO
朝から保守!新作楽しみー

546 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/16(火) 18:31:18 ID:Cw7kkxSd0
ほしゅ

547 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/16(火) 22:51:36 ID:sBVqOBee0
捕手

548 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/17(水) 20:10:22 ID:zfwCc6MO0
保守

549 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/18(木) 06:47:52 ID:ef333vZ60
保守

550 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/18(木) 12:49:03 ID:ef333vZ60
hosyu

551 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/18(木) 19:06:34 ID:5CKeR1w20
保守

552 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/18(木) 23:14:02 ID:ef333vZ60
hosyu


553 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/19(金) 09:09:01 ID:5wJMzkJsO
保守

554 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/19(金) 18:37:50 ID:+XsRaiPp0
ほしゅ

555 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/20(土) 12:27:44 ID:AUIKcz/PO
保守るよ

556 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/20(土) 21:34:33 ID:J3PfXbIG0
楽天サヨナラ保守

557 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/21(日) 00:14:28 ID:Idt62SyL0
ほしゅ

558 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/21(日) 03:13:04 ID:Aig6PcmMO
捕手

559 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/21(日) 03:21:06 ID:sI1a58L3O
下痢をご飯にかけてムシャムシャ食べたい

560 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/21(日) 15:23:54 ID:lROhV9EV0
週末は期待捕手

561 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/21(日) 20:53:57 ID:v45hKQbL0
野口

562 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 00:19:54 ID:jHsDVcz00
浅井

563 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 03:25:09 ID:9YVfGiAb0
ほしゅ


564 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 07:07:27 ID:9YVfGiAb0
数時間カキコがないと保守するようにしてるんだけど
あまり下がってなければ、少々放っておいても大丈夫なのかな?

565 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 17:45:18 ID:JpTpIvE30
下がっているから落ちるというわけではないはず。保守。

566 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 18:39:32 ID:9YVfGiAb0
OK。
てことは、やっぱり保守したほうがいいんだね。

567 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/22(月) 21:30:15 ID:hyhFU+Xi0
ほしゅ

568 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/23(火) 05:03:31 ID:wU4L7Cxt0
ほしゅ


569 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/23(火) 17:28:19 ID:wU4L7Cxt0
ほしゅ

570 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/23(火) 21:58:46 ID:crLWZRXH0
保守

571 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/24(水) 00:26:51 ID:CuLnHnOj0
ほす

572 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/24(水) 07:29:08 ID:TojaVXfg0
hosyu

573 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/24(水) 15:11:08 ID:CuLnHnOj0
捕手しとく

574 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/24(水) 22:41:22 ID:mmlH3cmE0
ほす

575 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 00:18:04 ID:dpZuvfqs0
ほしゅ

576 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 00:22:59 ID:8eNLNXhR0
ほす

577 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 03:44:57 ID:dpZuvfqs0
hosyu

578 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 07:04:57 ID:dpZuvfqs0
hosyu

579 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 16:14:01 ID:lsDflU91P
山田捕手

580 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 19:05:18 ID:dpZuvfqs0
hosyu

581 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/25(木) 22:53:37 ID:bW0S5FMc0
(´-ゝ-`)

582 :631:2006/05/26(金) 04:48:50 ID:KdCbB1R30
hosyu

583 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/26(金) 07:09:20 ID:KdCbB1R30
hosyu

584 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/26(金) 10:54:40 ID:d/45jULn0
hosyu

585 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/26(金) 17:47:44 ID:d/45jULn0
hosyu

586 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/26(金) 20:26:15 ID:IEE70PXg0
ほしゅあげ

587 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/26(金) 23:43:32 ID:5s1BrXGu0
保守

588 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/27(土) 07:18:24 ID:4JKvMRrS0
hosyu

589 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/27(土) 23:45:20 ID:+RfpV1Ej0
ほしゅ

590 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/27(土) 23:49:00 ID:p9PXFfqj0
入間市民会館の公開生放送が始まる2秒前に停電。

観客はキャーキャー騒ぐ。
10分間ロウソクの光で番組続行。
加藤茶 「電気代払ってないのか?今日は休みか?中止か?」
加藤茶 「すみません。今日は休みにすます。」
子供達 「え〜。え〜。え〜。え〜。」
加藤茶 「と思ったけど、やります。」
などとアドリブ
いかりや「え〜今、場内停電でございますけど、声はつながってますか?まあ、生放送でございますんで…」
加藤茶 「わ〜(大声)」
いかりや「わ〜(びっくるする)」
いかりや「今原因を究明しておりますんで…」
加藤茶 「しばらくお待ち下さいませ。」
いかりや「しかしあれだね。加藤君。15年やっててこういうのは初めてだね〜。」
加藤茶 「初めてだね〜。何だか知らないけどワクワクするね〜逆に。」
いかりや「喜んじゃあいかんよ〜。」
加藤茶 「はっはっは。そらそう。」
いかりや「そらそうだよ〜。局は大変なんだから。」
加藤茶 「これ、あれかね〜TBSの局長は飛ばされるかね〜」
高木ブー「はっはっは」
誰か  「長さん、映ってるよ!」
いかりや「映ってるけど暗くて分かんないよ。これじゃあ。」
顔を映し、ギャグをやり始めるメンバー。
志村ケンも、
「動物園に行きました。お池でアザラシ泳いでた背中になにかついているよ。どうやらそれは痣らしい」
「野球を観に行ったらピッチャ−が肩慣らしをしていた。片手に何かもっているよ。どうやらそれは刀らしい」
「歯ブラシ買いに行きました。歯ブラシたくさん売っていた。途中で毒ヘビ死んでいたよ。どうやらあれはハブらしい」


591 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/28(日) 11:53:03 ID:41aGJkya0
これはむしろ川相さんスレ向けじゃね? 誤爆じゃないよね?

592 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/28(日) 21:32:02 ID:LNbuamkb0
捕手

593 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/29(月) 06:36:56 ID:CkOvRxL50
hosyu

594 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/29(月) 21:25:47 ID:AZpZjut80
ほしゅ

595 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/30(火) 03:02:59 ID:2u8HFBQL0
hosyu


596 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/30(火) 06:27:40 ID:2u8HFBQL0
hosyu

597 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/30(火) 06:54:12 ID:jjJqtOcKO
あげ

598 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/30(火) 15:27:52 ID:oTr5AR8yO
捕手

599 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/30(火) 22:08:32 ID:2u8HFBQL0
俺の山東が次に出会うのは誰かな? 期待保守

600 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/31(水) 21:10:40 ID:n4URLAr20
しねよ


601 :代打名無し@実況は実況板で:2006/05/31(水) 23:20:22 ID:AA9klWid0
新作も待ち遠しいけど保管庫さんがどうされてるのかも気になる

602 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/01(木) 02:26:31 ID:TcFoYlr/0
誤変換くらい誰にでもあるって。>600

旧保管庫さんの若虎バトも気になる>601


603 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/01(木) 13:27:17 ID:6HXMcNXh0
最近読み始めたけど、
30人近く残ってるにもかかわらず92がねぇ…

604 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/01(木) 18:11:49 ID:qV+/JFph0
>>603
2004年のオフが舞台という事をご理解の上でご利用下さい

605 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/02(金) 00:07:46 ID:bWJp4tth0
ほしゅ

606 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/02(金) 00:39:27 ID:CYrqMz8e0
長期連載(?)やってると、どうしてもねぇ
以前、他のバトですごいレスした人がいたなあ…

607 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/02(金) 01:16:49 ID:XkMT1CL10
作家さんたちは読み応えのある作品を書いてくれているし
短期間でぱっぱと書けるものじゃないんだろうね。
気長に待つよ。保守。

608 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/02(金) 22:51:23 ID:1T+zttk70
保守

609 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/03(土) 01:33:33 ID:YnnhX4laO
(*・x・)

610 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/03(土) 09:38:49 ID:HZ1Arcko0
↑誰? 小宮山?

611 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/03(土) 21:13:29 ID:taV7TJEJ0
サヨナラ保守

612 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/04(日) 00:25:51 ID:rJlQw2Gc0
圧縮きたか? 保守

613 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/04(日) 01:11:45 ID:rJlQw2Gc0
緊急保守

614 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/04(日) 23:16:30 ID:eEjXn13f0
保守

615 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/04(日) 23:45:20 ID:yJO+VWQ+0
ビィールいかがですきゅぅ〜、ビィールいかがですきゅぅ〜↓

616 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/05(月) 08:08:41 ID:zozi60Rb0
ほしゅ

617 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/05(月) 17:48:55 ID:0lGLqPhc0
保守

618 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/06(火) 00:01:38 ID:zozi60Rb0
浅井タンを追いかけていった久慈さんが激しく気になるのぉ。


619 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/06(火) 20:16:27 ID:gAya9Tum0
ほしゅ

620 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/07(水) 05:35:29 ID:x1pstCDH0
hosyu

621 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/07(水) 13:30:55 ID:mTVgb5HU0
ほしゅ

622 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/07(水) 22:14:21 ID:6m7yJVNu0
ほしゅ

623 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/07(水) 22:15:10 ID:x1pstCDH0
hosyu

624 :174(1/6):2006/06/07(水) 22:42:53 ID:QBn7o0TR0
>>503
118.地上の星

「冷……(寒い)」
 母国語で小さく呟き、林威助は膝を寄せて身体を丸めた。
 森の奥に古ぼけた山小屋を見付けたのは、ウィリアムスと別れて程なくしてからだ。
 彼と出会うことで運が回ってきたのかもしれない。別れたばかりの同僚のことが
気になった。走ってでも彼に追いつき、一緒に身体を休めることを勧めたかったが、
彼には目的の場所があるようだったので、その衝動を抑え込み林は一人山小屋に留まる
ことを決めた。
 日があるうちはそれでも、周囲の様子を見回ったり、地図と睨み合いながら打開策
を考えたりと出来る範囲で行動を起こしはしていた。しかし、画期的な案が思いつく
わけでもなく日が暮れてしまった。
 太陽が落ちるといよいよ辺りは暗く、灯りのない室内では10センチ先の文字を
読むのも難しい。
 無駄だと思いながらも室内を探したが、暖を取れそうな物は何もなかった。ただ
しとしとと降りそぼる雨音を壁越しに聞きながら、出来るだけ身体を小さくして
体温を守ろうとする。今はただ、部屋の隅に蹲ってただ過ぎていく時を耐えていた。
「…………」
 話す相手もおらず、沈黙だけがむなしく狭い山小屋に響く。いつしか意識は屋根
を打つ雨音に集中していて、林は目を瞑って外の光景を想像していた。
 この時期の雨は冷たいだろう。木の下に眠るアリアスの遺体に林は思いを馳せた。
 打ち棄てられ、雨風に晒され、濡れそぼっていく哀れな魂なき身体。その想像に
目の奥が熱くなりそうなのを、林は慌てて振り払った。
 気持ちを切り替えようと、空腹に、すでに訴える気力もなくなった腹を撫でる。
デイバッグを引き寄せ、林は食べかけの菓子パンを取りだした。
「甘い……」
 かじり付くと、甘いカスタードの味が口に広がった。
 しかしカスタードというのは長くは持たないはずだ。ダメにしてしまうよりは、
早めに食べ切ってしまった方がいいのだろうか。
 しかし何日続くか分からないサバイバルを生き抜くために、食料は出来るだけ
保存しておきたい。林は逡巡した。

625 :174(2/6):2006/06/07(水) 22:43:27 ID:QBn7o0TR0
 残り二つのパンは、クリームパンよりは日持ちがしそうだった。食べる順番を
決めて、せめて今日の夜か明日の朝までは一つ目のパンで保たそうと決意する。
 飲みかけの水と、二つと半分の菓子パン。
 アリアスに手渡された彼の荷物は置いてきてしまった。ウィリアムスも彼の荷物
を持ち去ろうとはしなかったし、自分も、死者の遺品を持ち出すことに抵抗があった
からだ。
 だが今は、そのことを少し後悔していた。
 実に心許ない食料と空腹の狭間で、林は眠るアリアスの隣にひっそりと供えられて
いるデイバッグを思い出していた。
(そういえば武器――何入ってたんだろう)
 そんなことに思い当たる。
 林は麺棒というおおよそ役にも立たなければ危険性もない支給品だったが、ウィリアムス
が手にしていたのは大きなマシンガンだ。それだけでも、自分達に配られた支給品の
殺傷能力の範囲が伺い知れる。
「……っ!」
 はたと、林はある危険性に気付き息を飲んだ。思わず声に出して早口で呟く。
「待てよ、もし――アリアスの荷物を誰かが見付けたら……」
 そして、その中に入っている支給品が危険なものであったら。
 更に、それを手にした者が好戦的な人間であったら。
 林威助は唾を飲み込んだ。
 反射的に、自分のいる位置から一番遠いところにある、簡素な木製のドアに目をやる。
体当たりすれば易々と突き破れそうな、申し訳程度の閂がかけられているそこの向こう
には、夜の山中が広がっているはずだ。
 しばらくその閂をじっと見つめ、林は思考を巡らせた。
 林が感じた「もし」が、確率が低いのか高いのかも分からない。
 だが思い至ってしまったが最後、どうしようもない不安と焦燥感が胸中を巡った。
(戻る……か?)
 思い浮かんだ案を、別の理性が一蹴した。
 この雨の中、今さらあの場所に戻るのも煩わしい。
 だが一蹴したはずの案は、ものの数分と立たないうちにまた擡げてきて、林は
そわそわとドアに視線をやったりはずしたりした。

626 :174(3/6):2006/06/07(水) 22:43:56 ID:QBn7o0TR0
「あー、もう!」
 落ち着かない自分自身に苛立ち、林は床を叩いて立ち上がった。
「戻ろう」
 声に出して言うことで、自身に決意させる。こんな心境のままでは、おちおち眠る
ことも出来ない。疲労した身体で、眠らないことは、明日も続くサバイバル生活を
考えると自殺行為だ。
 自己弁護のように行動に根拠を付け、林は大股でドアに近づいた。
 閂を外す。小さく軋みを上げ、外側に開いた木板の向こうに広がった光景に、林は
溜息を付いた。
「うわ……」
 思わず踏み出しかけた足を戻してしまう。ぐちゃぐちゃになった地面に足を降ろす
のを躊躇ったというよりは、果てしなく続く闇と雨の空間にうんざりしたからだ。
(やっぱりやめようかな……)
 数秒前の決意が萎みかける。
 もうすでに誰かが持ち去っているかもしれない。ただの杞憂かもしれない。
 冷静に考えれば愚かな行動だ。だが言いようのない不安は刻一刻と募っていた。
 外に出るのを疎んじる気持ちとは裏腹に、酷く胸騒ぎがした。
 林は自分を駆り立てる焦燥感に従うことにした。
「よし……」
 意を決し、歩き出す。踏み出した足は泥土に沈み、不快な感触をスパイクの裏に
残した。
 小屋から出るとすぐに、冷たい滴がつむじや頬を濡らした。この分では、シャワー
を浴びた直後のようにびしょ濡れになるのに、さほど時間はかからないだろう。
 足下に注意しながら、林は数時間前に来た方向へと歩を進めた。
 薄闇に慣れてしまった目は、それでも辛うじて夜に沈む木々の陰影を捉えていた。
太陽は沈みきり、月は雲に覆い隠されているはずだが、全くの闇というわけではない
らしい。
 林は重力に従い降り注ぐ雨筋を辿るように空を見上げた。
 厚い雨雲は限りなく黒に近い灰色の様相を呈している。だがほんの一部分が、わずか
に白い絵の具を垂らしたような色合いを見せていた。

627 :174(4/6):2006/06/07(水) 22:44:17 ID:QBn7o0TR0
 雨雲が月を覆い夜の闇が島を支配する。
 三東洋は重なり合う枝葉の合間に覗く空を見上げた。
 こんな人工の灯りの届かない世界でも、真の闇は存在しないことを知った。
 広がる暗雲の一部が、うっすらと灰色を帯びていた。そこに月がある。太陽の光
を受け、地上に向けて輝く白い面を向ける月が。
 そこから漏れ出でる僅かな月光が、辛うじて闇の王を追い払ってくれていた。
(どれだけお先真っ暗でも、そこに一筋の光明はあるってことか)
 自分に光明はあるのだろうか。
 八方塞がりのような不安を押し隠しながら、藁をも掴む思いで三東はある場所に
向かっていた。そこに何かがある――あるいは誰かがいる――可能性は、三東自身
が期待している以上に低いかもしれない。理性のどこかが無駄なことはやめろと
囁いていたが、三東は諦めなかった。
 上空は風が強いらしく、月明かりを覆う灰色の雲の斑模様は、刻一刻と変化
していた。相変わらず降り注ぐ雨は、弱まったり強まったりを繰り返しながら、
容赦なく島全体を濡らしている。
 水気にぬめった足場は悪く、生い茂る木々は暗い林を迷路に仕立てていた。
 こんな夜の山を歩き続けるのは、決して賢明ではない。だが目を凝らし、手を
伸ばし、三東洋は目的の場所へと足を進めていた。
 目的地は島の南西半ばにある大きな水溜まりだ。島中央の山から走る小川の水を
溜めるそこに確実に向かうには、まず直線距離で川に向かい、そこから川下に降りる
のが賢明だろうと三東は考えた。最短距離で水辺に向かおうと、自分がいたG6地点
から真っ直ぐに西へと向かった。
 雨の音と、風の音。
 この世界には自分一人しかいないのではないかと思うほどの静寂をそれらで紛らわせ
ながら、三東は寒気に身を震わせた。
 純粋な冷気による寒気と同時に、今ここに自分を嘲笑いながら見つめる誰かがいる
のではないかという不安が襲ったからだ。
(どうせなら本当に一人なら、脅えることも、苛まれることもないのに)
 この世界に三東洋しかいなければ、彼が王であり神である。だが実際はこんな小さな
島でも、三東は目に見えない誰か――自分を殺そうとする誰かに脅え、彷徨い続ける
ちっぽけな存在だ。己の無力さに苛まれ、涙を流すしか出来ない捕食される側の人間だ。

628 :174(5/6):2006/06/07(水) 22:44:39 ID:QBn7o0TR0
 己を卑下する気持ちが止むことはない。この劣等感を払拭するには、自分自身が
恐れてやまない側の人間――つまり殺人者になるしかないと三東は信じていた。
 不意に雨音に混じり、川のせせらぎが聞こえた。近い。三東は駆け足に、音を頼り
に先に進んだ。
 茂みを掻き分け、ようやく少し拓けたところに出る。すぐには飛び出さず、三東
は慎重に周囲の様子を伺った。
 闇に慣れた目に、ボンヤリと岩の輪郭が映った。その手前に流れる小川が、夜空
を反映し黒々とした流れを下流に運んでいる。
 勢いよく流れる小川は、明らかに雨の影響で水かさが増していた。
 人気を探りながら、三東は静かに小川に近づいた。
 川縁に跪き、流水を目にすると、自然と喉が鳴った。支給された水はとうに空に
なっていた。おまけに歩き通しだった身体は、早く水分を欲しがっていた――無遠慮
に身体を冷やすだけの雨水ではなく。
 池に降りてから供給しようと思っていたが、考えを改める。溜まった水よりも、
この辺りの方が水が綺麗そうだ。
 雨水を取り込んでいるのが気になるが、背に腹は替えられない。
 空になったペットボトルの蓋を外し、三東は足下に気を付けながら身を乗り出した。
流水にペットボトルの口を沈める。
 半分ほど満たしてからそれを自分の口に持っていき、さらに半分ほどを飲み下す。
「ふぅ……」
 喉を通り食道を通過し、胃に溜まった冷たい水の感触に、三東は大きく息を吐き
出した。
 求めていた水にありつけ、心に余裕が出来た瞬間、三東は微かに鼻を掠めた臭い
に気が付いた。
「これは……!」
 その正体に気付き、一瞬、全身の血流が逆流するような衝撃を受けた。それは恐怖
というよりは、興奮だった。
 ぎこちない動作で顔を上げる。周囲を見渡しても、やはり人の気配はない。
 そうなれば、そこにある答えは一つだ。
 状況を予想すると同時に、三東の胸にある期待が飛来した。その期待は予感となり、
全身に力を漲らせた。

629 :174(6/6):2006/06/07(水) 22:44:57 ID:QBn7o0TR0
 慌てて立ち上がろうとするが、急く気持ちが足を絡め、小川の中に跪いてしまう。
水浸しになった下半身がじっとりと湿った。だがそれすらも構わず、三東は這うよう
に対岸に乗り出した。
(これは――血の臭いだ)
 導き出せる解答は一つだ。さしずめ血臭を頼りに小動物の死体に近づくハイエナ
のように、ふらふらと三東は歩き出した。
 その口元に微かに浮かぶ笑みと、前方に何かを期待して見据える瞳に映る尋常で
ない輝きが、すでに人としての倫理観を逸脱したものであることに、三東洋は気付
いていなかった。
(誰かが死んでる……)
 中村を殺した誰かに、あるいは沖原を殺した誰かに、確かに感じた畏怖の念が、
再び沸き上がってくる。
 雨に掻き消されそうな血臭は、どうやら対岸に続く林の中からのものらしい。
 それほど遠くはないだろうが、夜闇と木々の影に包まれたそこで、横たわっている
であろう死体を見付けるのは骨が折れそうだ。
 例え死体があったところで、そこには死体しかないかもしれない。普通に考えれば
その可能性が大きいが、一応確認するだけの価値はあるだろう。
 三東は動悸を抑えながら、何か不自然な影は落ちていないか地面に目を凝らした。
 その時、ほんの一瞬、雲と雲の僅かな切れ目から、その奥に押し込められた月明かり
が覗いた。
 何かがキラリと光った。
「ん?」
 夜空に瞬く星のように、暗闇の中に小さな輝きを見つけた。

【残り37人】

630 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/07(水) 22:53:49 ID:dF46hbI80
キタ━━゚+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゚━━ ッ ! ! !
職人様、2323しく乙です。


631 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/08(木) 00:01:25 ID:bE2ysDNS0
久々の新作キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
職人様ありがとうありがとう

林くんと三東ニアミス?ハラハラ

632 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/08(木) 02:12:57 ID:rwFMaIMa0
おお三東が!!!

633 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/08(木) 02:32:31 ID:kaEI4vbP0
久々にキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
職人様乙です


634 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/08(木) 05:02:25 ID:bqmyT7YO0
職人さん。。。乙。。。こわいよー。。。

635 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/08(木) 15:30:49 ID:zsxLPkxT0
t

636 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/09(金) 05:31:21 ID:2mrlwrUF0
もしかして林タンが・・・!

637 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/09(金) 18:57:08 ID:2mrlwrUF0
ぞくぞくする。。。

638 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/09(金) 22:09:08 ID:nXwgH9Bz0
                          コピペしないと死にます
           r-──-.   __      コピペするとバイクに轢かれます
        / ̄\|_D_,,|/  `ヽ
       l r'~ヽ ゝ__.ノヽ/~ ヽ l
       | |  l ´・ ▲ ・` l   | |       ドゴォォォ _  /
       ゝ::--ゝ,__∀_ノヽ--::ノ       ∧ ∧―= ̄ `ヽ, _
     ‐=≡t─‐/ヽ、_つ) __s)     ∵. ・(   〈__ >  ゛ 、_
    ‐=≡(ニニ(  ) /\\-.\          (/ , ´ノ \
     ‐=≡( (ニ:(/  | (O)T          / / / \
     ‐=≡ヽ、__,ノ ̄ ̄ヽ、_,ノ         /  / ,'
                           /  /|  |
                           !、_/ /   〉
                               |_/


639 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/10(土) 00:05:49 ID:2mrlwrUF0
だが断る

640 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/10(土) 05:27:24 ID:LHAFc0eD0
保守するお

641 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/10(土) 05:29:34 ID:LHAFc0eD0
ごめん、上げちゃったよ。さっきクッキー削除したのを忘れてた。

642 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/10(土) 15:10:27 ID:jOwFCu9Q0
保守

643 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/11(日) 08:11:38 ID:pmx8V/n70
保守

644 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/12(月) 00:02:00 ID:4WmJg7ml0
保守

645 :174(1/7):2006/06/12(月) 21:34:14 ID:VlmGwCTD0
>>629
119.死刑執行人

 雨で抜かるんだ地面はこの場合幸運だった。
 停電用に玄関前に設置されていた懐中電灯の灯りが極力拡散しないように気を
付けながら、手を添えて足下を照らす。鳥谷は民家の窓から続いている矢野の足跡
を頼りに進んでいた。
 彼がどこに向かおうとしているかなど予想は付かない。とにかく、足跡を追い
かけるしかない。
 矢野が桧山の訃報を聞いてすぐに部屋を飛び出したとしても、それほど距離は
引き離されてはいないはずだ。ましてや、相手は病人だ。下手をすれば、その辺り
で行き倒れている可能性もある。無論、あまり歓迎できる事態ではないが。
(桧山さん)
 暗闇の中、独り歩きながら、鳥谷は幾度目かの回想を繰り返していた。
 思い出すのは、やはり最後に目にした彼の背中だ。
 疑問は確信へと変わっていく。
(……やっぱり、どこかで予感していたのかもしれない)
 彼が、死に場所に向かおうとしていることを。
『必ず戻る』
 彼は大人だ。自分のために、人のために、都合の良い嘘をつく。嘘だと分かって
いながら騙されて受け入れるのもまた、大人なのだ。
(そうだ、本当は気付いていた)
 警告から目を逸らして、彼を見送った自分は彼を殺したのと同意ではないだろうか。
『桧山を殺したんか?』
 その問いかけへの答えを、いまだ鳥谷は探していた。

646 :174(2/7):2006/06/12(月) 21:34:38 ID:VlmGwCTD0
 どれくらい歩いただろうか。続いていた足跡が、突然途切れた。
 途切れたと言うよりは、背の高い芝の生い茂る場所に入り込み、足跡がかき
消されてしまったという方が正しい。
 おまけにこの暗闇だ。草の根を掻き分ければ、芝を踏み潰した僅かな足跡を
見付けることも出来るだろうが、それだけの作業をするには状況が不利すぎた。
 森に差しかかり、次第に深まっていく背の高い茂みに、先に続く地面は覆い隠
されている。
 見失ってしまった。
「くそ……」
 苛立たしく舌打ちし、鳥谷は懐中電灯を強く握り直した。二人分のデイバッグを
かけた肩にずっしりと感じる重みは、純粋な荷の重さだけではないはずだ。
(矢野さん――!)
 一体何処に向かったのか。
(俺ならどうする? 俺が矢野さんなら、どこに――)
 埒のあかない自問を繰り返しながら、当てもなく歩を進める。
「あれ……?」
 しばらくして、鳥谷は奇妙なことに気付いた。
 どこにも頼りはないはずなのに、足が自然とある場所へと向かう。
 ひっぱられるような――それは意識と無意識の狭間にある、ある種本能とも
酷似してまた非なる感覚。
 呼ばれている……気がした。
(何だ……?)
 オニサンコチラ――
 何も見えない状態で、手を叩かれて導かれているような、不思議な感覚。
 多分きっと。
(こっちに……)
 矢野さんがいる。
 予感というには余りには根拠の薄弱なそれを頼りに、鳥谷は深まる森に身を沈めていった。

647 :174(3/7):2006/06/12(月) 21:35:02 ID:VlmGwCTD0
(本当にこっちでいいのか……?)
 一人進む鳥谷に、答える声は勿論ない。不安は常につきまとうが、見付けられずに
朝を迎えるのも、じっとしていて朝を迎えるのも結果は同じだ。そう開き直る。この
雨の中、矢野を追って家を飛び出した時点で、やけくそに近い精神状態であったこと
は否定できない。
「……だったら、最後までやけくそを貫くしかないだろ!」
 低く呻き、自身に渇を入れる。雨は鳥谷の身体を濡らし尽くし、もはや寒いという
感情を訴えるのも馬鹿馬鹿しいほど身体は冷え切っていた。民家の屋根の下で丸まって
いたら少なくとも回避できた惨状に自ら足を突っ込んでいる自分を正当化する気には
なれない。
 何故ここまで彼を追いかけたいのかは分からない。
(あの人を捜し出して、どうするつもりだ?)
 投げかける疑問に応えられるのは己自身しかいない。
(俺を疑って、逃げ出した男に何を言うつもりだ?)
 分からない。
(何でもいい)
 鳥谷は出口の見えない迷路を放棄した。己自身が分からない疑問の解答を探そう
とすること自体が無駄なのだ。
(とりあえず、その辺でぶっ倒れてたら、見つけ出して、一発殴ってでも連れ戻す!)
 そう自身を高ぶらせ、挫けそうになる心を奮い立たせた。自分を支える感情が怒り
でも恨みでも良い。ここで挫けて、諦めてしまえば負けな気がした。……勝負する
相手がいるわけではないが。
 闇色の森は、静かに侵入者を見下ろしていた。誰もいないはずなのに観察されて
いるような、気味の悪い感覚が背中に張り付き、鳥谷は首を竦めた。
(気のせいだ、考えすぎだ――)
 一筋の不安がこじ開けた心の隙間に、黒い風が容赦なく吹き込んでくる。
 もう17人も死んだ。この島に潜む殺人鬼は一人ではないはずだ。
 言い聞かせる自身の思惑とは反対に、肺に溜まる不安は急速にその体積を増してくる。
(誰かが、この闇の中に潜んでいるかもしれない)
 そう、今この瞬間にも。

648 :174(4/7):2006/06/12(月) 21:35:29 ID:VlmGwCTD0
 そう思うと、ゾクリと背中を通った寒気に、鳥谷は息を飲んだ。自然と歩みが止まる。
 もの凄い勢いで膨れあがるイメージが、振り向けない鳥谷の背後にのそりと動く
黒い影を生んだ。雨で額に張り付いた髪の下に、緊張の汗が浮き出る。
(そう、誰かが……)
 足を忍ばせて、背後から、明かりを頼りに、狙いを済ませて――
 ガサッ!
「うっ……!?」
 唐突に背後で鳴った物音に、危うく飛び出しそうになった悲鳴を、鳥谷はギリギリ
のところで飲み込んだ。
 取り落とした懐中電灯の灯りが森を一閃し地面に墜ちた。
 それを放りだしたまま、手で口元を押さえ、地面に伏せて滑稽なほどジタバタと
もがきながら後ろを振り向く。心臓が通常の3倍ほどに肥大しているのではないか
と思うほどの音を立てていた。
 自分以外の何者かが立てた音に、暗闇じっと凝視すると、間を置かずバサバサッ
という羽ばたきが響いた。
 黒い影が不気味な奇声を上げながら暗い空に飛び立っていく。そして再び、そこ
には闇に相応しい静寂だけが鎮座した。
「……腰抜けるかと思った……」
 大きく息を吐き、鳥谷はか細い声で呟いた。
「情けねー……」
 烏の羽音一つにも戦々恐々している自分の滑稽さを嘆く。和也には見せられない姿だ。
 自然にそう考えてしまい、鳥谷は自分自身に待ったをかけた。
 鳥谷敬の失態を見て笑い者にする悪友は、もうこの世にはいない。
(和也はもういないんだろうが……)
 内心、自身に吐き捨てる。嫌な時に、嫌な事実を思い出してしまったことを激しく
後悔した。
「何で、誰もいないんだよ……」
 呟いた言葉は、あるいはそこにいない者に対しての呪詛だったのかもしれない。
 彼は平気なのだろうか。
 あの身体で、一人でこんな闇の中を歩いていて。
 暗闇を彷徨う、捜し人の背中を想像する。イメージの中の彼の表情は、試合中、
盗塁を試みた相手走者を刺殺した時の厳しくも力強いそれに似ていた。

649 :174(5/7):2006/06/12(月) 21:35:53 ID:VlmGwCTD0
(ずるい――)
 それは的はずれな嫉妬だった。だが、自分以上に辛い状況であるはずの彼が、一人
でいることを選んだことに――選べたことを、鳥谷は酷く妬ましく思った。
(俺だって、あの人みたいに強くなりたい)
 彼が自分の立場だったら、こんな風に惨めに泥にまみれながら後を追いかけたり
していないのだろうか。
 所詮この程度の信頼関係かと、割り切って一人で生きていけたのだろうか。
 閉ざされた心の隙間にすら入り込んで来るような暗闇は、自己の欺瞞を暴くには
十分だった。
 そう、これは欺瞞だ。
 信頼なんてしてないと言い聞かせながら1%の信頼に縋っていた。
 信頼と信用は別物だと割り切っている振りをして彼の側にいることを選んだ。
 誰かの側にいないと耐えられない、弱くて幼い自分を誤魔化すための自分自身への欺瞞。
(畜生……怖い――)
 その場に座り込んだまま、足下に落ちて弱々しい灯りで芝を照らす懐中電灯を拾い上げた。
(何してるんだ、俺は)
 尻餅をついた所から地面に溜まった雨水が染みこむ。不快な冷たさに眉根を寄せ、
鳥谷は立ち上がろうと懐中電灯を握った逆の手で地面に手を突いた。
「……?」
 一瞬鉄臭い匂いを感じ、その体勢のまま動きを止める。
(気のせい……か……?)
 一旦停止していた動きを再始動する。その手に付いた泥をユニフォームで拭い、
その時、一瞬自分の膝元を照らした灯りが映した色に鳥谷は息を飲んだ。
「……っ!?」
 慌てて、懐中電灯でもう一度自分の膝元を照らす。
 彼が手を拭いた太ももの部分、更には太ももの裏から尻の部分にかけて、泥に
混じって赤黒い液体が染み込んでいた。
(雨に流されて……)
 やや斜面になったそこを、何者かの血が流されている。その事実を理解し、鳥谷
は背後を振り返った。膝が嗤うのを抑え、一歩、また一歩と緩やかな坂を登る。

650 :174(6/7):2006/06/12(月) 21:36:15 ID:VlmGwCTD0
 雨滴の合間を縫い、風が吹いた。
 降りしきる雨の匂いに遮断されていた、その微かな鉄の匂いに気付いた瞬間、
鳥谷を導いていた糸が切れた。
「まさか……」
 ふらふらと臭いを頼りに近づきながら、鳥谷は迫り来る事実を受け入れる覚悟を
しなければいけなかった。
 少しずつ、心拍数が上がる。それと同時に、少しずつ、血臭の濃くなる場所へと
向かった。
 迫り来る、不吉かつ不快な予感――やがて、予感は確信に変わった。
 闇の中に、同化しきれていない倒れた人影を見付けた。
(ああ――)
 膝の力が抜ける。
 湿った幹に手を置き、鳥谷は己の身体を支えた。数メートル先に横たわる死体。
 力の入らない手で何度も懐中電灯を取り落としかけながら、鳥谷は息を飲んで
それを照らした。
 目眩がするような鮮血が視界に広がる。
 それは残酷な導きだった。ここまで何度も脳裏にちらついた男の、変わり果てた
姿がそこにはあった。
 仰向けに倒れる桧山進次郎の身体には、幾つもの銃創が残っていた。
 そういえば、自分も銃を持っているな、などと鳥谷は思う。もしかすると、自分
が殺したのではないか、そんな気すらしてくる。
 おぞましい量の血に深紅に染められたユニフォーム。おそらく沼のように彼の身体
を沈めていた流血は、今は降り注ぐ雨水に薄められ、流されようとしていた。それは
幾筋もの朱を垂らした流水の小径になり、大地に染みこみながらゆっくりと森全体に
広がっていく。
 その中央で眠る桧山の顔は――桧山の顔は――
 奇妙なほど、穏やかに見えた。
 生まれて初めて目の当たりにした、恐ろしいはずの死体の側で、何故だが酷く
安心している自分を、鳥谷は自覚していた。
 そこに桧山進次郎がいる。誰もいない暗闇を一人彷徨うよりは、よほどマシだ。
「来たか」
 唐突に背後から聞こえた声。それと同時に、銀色の刃が閃いた。

651 :174(7/7):2006/06/12(月) 21:36:39 ID:VlmGwCTD0
 喉元に添えられた刀を刺激しないよう、鳥谷はゆっくりと顔を上げた。
 鳥谷がもたれかかっていた木の裏から、静かに姿を現す、矢野輝弘。
 中国刀の柄を裏手に掴み、歪曲した切っ先を、矢野は鳥谷の喉元に向けていた。
 鳥谷敬は、じっと矢野輝弘を見上げた。暗闇の中、真っ直ぐとこちらを見てくる
冷たい瞳とかち合う。
 すると、刃を向けられているという状況に反し、驚くほど心音が落ち着いた。
「何で……ここが分かったんですか?」
 臆することなく、鳥谷は静かに矢野に問いかけた。
 躊躇うような沈黙が僅かに落ちる。
「……呼ばれた気がした」
(この人も同じか)
 矢野の答えに、そんな事を思う。
「鳥谷」
 矢野がその名を呼んだ。
「もう一度聞く」
 それは、酷く冷たく無機質な――死刑執行人の声だった。
「お前が殺したんか?」
(ほら、やっぱり)
 こんな事態に、内心沸き起こりそうな自虐的な笑いを、鳥谷は必死で堪えた。
 そこにある決定的な溝と真実の食い違いに、現実とは己の中の虚構を他人と共有
しているに過ぎないことを実感する。共有できるだけの情報がなければ、互いが互い
の現実を否定し合うだけだ。
 信用なんて簡単に崩れるもので、ゼロから積み上げることは非常に難しく、失えば
二度と戻ってはこない。
(桧山さん、やっぱり、あなたでないと……)
 数メートル先に転がる死体に語りかける。彼は自分に全てを託したらしいが、
その結末はあまりに滑稽で不条理なものだ。
(俺じゃ、この人を救えない――)
「殺した――と言ったら?」

【残り37人】

652 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/12(月) 22:06:44 ID:9nIjhxsw0
ぎゃー、新作来てるー!
職人さん乙!!!

653 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/12(月) 22:10:25 ID:EIsistcG0
うわ、うわ、う泡アゃわあわあああああっわわあわ
すごいよ、すごいよ、職人様GJ!
は、はやく続きが読みたいゼエゼエ

654 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/12(月) 22:57:30 ID:LsVYkmz70
ちょwW杯そっちのけで読んでしまったよ
職人さん乙
矢野はどうなるんだ!

655 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/13(火) 00:08:00 ID:OpS1dOFR0
いやぁぁぁぁぁぁぁ。
矢野!鳥谷の目をしっかり見て真実を間違えないでーーーー!!!!
職人さん、すばらしすぎます続きが早く読みたいです!

656 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/13(火) 07:18:32 ID:ckGhtUBC0
桧山さん、鳥谷くんに乗り移るんだ!そして、鳥谷君とともに、矢野さんを
救ってください!

657 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/13(火) 11:17:18 ID:I5ZX/BWV0
職人さん乙です!
鳥谷落ち着けエエエ!

658 :924(1/4):2006/06/14(水) 00:24:58 ID:MkIITj4k0
>>651より
120.異質の人間

行ける、と久慈は思った。相手は全力で駆けていたが、長時間意識がなかった
だけに足取りが危うい。距離を詰めるのにさほどの時間は要しなかった。
「浅井! 待ってくれ!」
大声で呼びかけたが、浅井はふらつきながらそれでも走り続ける。
「浅井!!」
久慈は思い切り両腕をのばし、相手の動きを止めるべく背中から抱き
かかえた。

「うわあ、ああああ!!」
バランスを崩して前のめりに膝をついた浅井は悲鳴を上げ、なおも逃げようと
じたばたともがいた。これとよく似た様子をどこかで見たことがある。
あの海岸で泣いていた新井も、こんな風にパニックに陥っていた。
「落ち着いてくれ! 俺は敵じゃない。何もしないから!」
懸命に声をかけると、浅井は暴れるのをやめ、こわごわと振り返った。
(そうだ、頼むから、落ち着いてくれよ)

「俺が分かるか? 久慈だよ」
久慈が両手をゆるめると、浅井は体ごとこちらにゆっくり向き直った。
「く……じ……さん?」
まるで不思議なものを見るように、浅井は久慈の顔を見つめてくる。久慈は
可能な限り優しい笑顔を作った。
「そう、心配しなくてもいい。もう大丈夫だ」

浅井はこわばった顔をほころばせかけたが、次の瞬間には表情が一変した。
「久慈さん、お、俺……あ、あ、新井に撃たれて、それで……」
思い出したらしい。ここからが肝心だ。久慈は気持ちを引き締めたが、表には
出さず軽い調子で言った。
「でも、当たらなかったんだ。なんともないだろ?」

659 :924(2/4):2006/06/14(水) 00:26:05 ID:MkIITj4k0
「俺……大丈夫なんですか? 今までいったい……」
「ショックで気を失ってたんだ。目が覚めて本当に良かった」
久慈はにっこり笑ったが、相手は一転してすごい剣幕で尋ねてきた。
「じゃあ、なんで! なんであいつがいるんですか!?」
「新井のこと? 一緒に君のこと見ててくれたから」
さらりと答えると、浅井は眉間にしわを寄せた。
「一緒に……?」

「そう、あの海岸近くの家に君を運んで、その後ずっとね。今、そこが
もうすぐ禁止エリアになるから移動してたところなんだけど、新井が君を
背負ってここまで連れてきてくれたんだ」
「だって、あいつは俺を撃ってきたんですよ!?」
浅井は再び強い口調で尋ねてきた。とうてい納得できないと見える。
「らしいね」
「『らしいね』じゃないですよ! 殺そうとしたんですよ!?」
詰め寄らんばかりの勢いだが、久慈は慌てなかった。
「それはちょっと違うと思うな。俺も新井に銃を向けられたんだけど」

「……久慈さんも?」
声のトーンが下がる。この事実は浅井にとってかなり意外だったようだ。
「うん。君が撃たれたすぐ後にあそこを通りかかってね。でも一生懸命説得
したら、銃を収めてくれた。ちょうどさっきの君みたいにパニック状態だったな」
「けど……現に俺は撃たれたんですよ? いくら当たらなかったにしても」
浅井は依然不服そうな表情だ。久慈はその気持ちを汲み取ってやるように
大きくうなずいた。そして、真正面から浅井の目を見て言った。
「分かってる。君がどんなにショックを受けたかもよく分かるし、新井を許せない
気持ちになるのも無理はない。でも、これだけは分かってほしい。新井は君を
殺そうとしたわけじゃない。あいつは、そう――怖かったんだ。そこにたまたま
拳銃みたいな強力な武器を持っていたのが不幸のもとだった。殺意じゃなくて
恐怖心が引き金を引かせた、と言えば分かるかな?」

660 :924(3/4):2006/06/14(水) 00:26:50 ID:MkIITj4k0
「……」
今度は、浅井は反論しようとはしなかった。
「それにさ、人を殺そうとするやつが一緒に君を介抱してくれると思う? 
だいたい新井が本当に殺す気だったなら、君も俺も今この世にはいないよ」
「……」
「後悔してたよ、新井は」
相手が完全に沈黙してしまったのを見て、久慈は続けた。
「取り返しのつかないことしたって、後悔してた。だから、君が無事だった時は
本当に喜んでたし、なかなか目を覚まさないからすごく心配してた」
言いながら久慈の脳裏にはしきりに石毛の死体がちらついていた。浅井の
ことは取り返しがつくが、新井が犯したもう一つのあやまちは、もはや
どうすることもできない。だが、今は浅井にそのことを言う必要はない。

じっと久慈の話を聞いていた浅井は、やがて静かに目を伏せた。
「それで……新井は今……どこに?」
「さっきの場所で荷物を見てもらってるよ。君さえよければ、一緒に来て
くれないか? 俺たち、どうすれば殺し合いが止められるか考えてるんだ。
仲間が増えればこんな嬉しいことはないよ」
浅井が新井のことを気にかける問いを発した。そのことに安堵すると同時に
久慈は一抹の不安をおぼえていた。新井は待ってくれているだろうか。

「……分かりました」
下を見たまま浅井は言った。
「完全にあいつを許す気になったわけじゃないですけど。……久慈さんが
そこまで言うんなら……たぶん、そうなんでしょう。」
「ありがとう」
久慈はホッとして笑顔を見せ、すぐに立ち上がった。
「じゃあ、行こうか。雨も降ってるし、早くどこかの家で休みたいしね」
足取りのおぼつかない浅井を気遣いつつも、久慈は急いだ。
(待っててくれてるよな?)

661 :924(4/4):2006/06/14(水) 00:27:34 ID:MkIITj4k0
しかし、もとの場所に戻った久慈を待っていたもの――それは二人分の荷物
だけだった。もちろん、浅井と久慈のものだ。新井の荷物と、新井自身は
忽然と姿を消していた。久慈は悪い予感が当たったことに愕然とした。
(あいつ、まさか――)
「新井!?」
久慈は辺りを見回しながら声を張り上げた。その後ろで浅井はどうすれば
いいか分からないといった様子で所在なげに立っている。
「ごめん、浅井。しばらくここで待っててくれるか?」
「え? あ、はい……」
待っててくれ。さっき、新井にもそう言った。彼は涙顔でうなずいた。大丈夫だと
思った――。

「新井! どこにいるんだ!?」
消えた後輩を探して久慈は再び雨の中を駆け出した。
「浅井のことなら心配ない! 出てきてくれ!」
(久慈さん――)
必死で呼ばわる久慈の声を、新井はすぐ脇にある民家の塀の陰で聞いて
いた。久慈は気づかずその前を通り過ぎて行く。新井は出て行きたい気持ちを
抑え、強く目を閉じた。
(久慈さん、俺……やっぱり、駄目ですよ……)
たとえ浅井が許してくれたとしても、彼らと一緒に行くことはできない。

(だって俺は、人殺しだから――)
浅井に言われるまでもなく、自分は人を手にかけた。その時点で彼らとは
違う世界の人間になってしまったのだ。
もう元の世界には戻りたくても戻れない――。
新井は塀につけた背中をずるずると滑らせてその場にうずくまり、両手で顔を
覆った。遠ざかりつつある久慈の声は、まだかすかに聞こえていた。

【残り37人】

662 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/14(水) 00:44:16 ID:1kGY62wN0
新作来た! このところ、新作が続いているね。
職人さんたち、本当に乙!

663 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/14(水) 00:46:55 ID:1kGY62wN0
新作読んだ。新井タン。。。久慈さんのためにも出てきてほしいなぁ。。。

664 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/14(水) 02:45:17 ID:vH1MwfKO0
職人さん乙です。久慈さん冷静でカコイイなあ。
>「完全にあいつを許す気になったわけじゃないですけど。……久慈さんが
>そこまで言うんなら……たぶん、そうなんでしょう。」
これ、なんだか浅井らしい言い回しでニヤリとしてしまった。

665 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/14(水) 20:21:02 ID:1kGY62wN0
そうなんだぁ。
やっぱ、独白部分が最高だよ、ここの職人さんたち!

666 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/14(水) 21:42:28 ID:1kGY62wN0
しまった。独白じゃなくて科白な。

667 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/15(木) 03:46:30 ID:yVVPMZl80
しまった。666をゲットしたのは俺だったのか orz

668 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/15(木) 17:52:08 ID:yVVPMZl80
hosyu

669 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/16(金) 01:20:47 ID:dfiRoC8S0
hosyu

670 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/16(金) 20:56:41 ID:dfiRoC8S0
hosyu

671 :542(1/7):2006/06/17(土) 02:23:17 ID:9fgljcKw0
>>661
120.どうして

 元の家に戻る、という選択は賭けだった。
 井川慶(背番号29)は迷いつつも、結局、それが最善の策だと思わざるを得なか
った。下がってゆく気温。冷たい雨。日が没してしまうと動きづらくなる。
 痛かったのは片岡篤史(背番号8)の襲撃だ。彼がまだあの家に留まっていなけ
ればいいのだが。森に置いて来た藪恵壹(背番号4)はまだ軽く意識が混濁してい
たし、あまり長く抛っておくのは危険だ―――割合冷静な頭をよそに、身体の方は
痛いだの何だのと勝手に喚いている。悲鳴を上げる肋骨に、そうだ、自分も怪我
人だったと思い出して苦笑いした。小脇に抱えているのはトカレフと花火。ああ、な
んてハニーな相棒。生身の人間よりも頼りになりそう。
 件の家の戸口は開け放たれていた。
(まだツイてるな)
 罠でない限り、自分が留まる家のドアを開けっ放しにしておく間抜けはいない。
 戸の前に花火の残骸が蹴倒されているのを確認し、一つ目の家、二つ目の家の
前を過ぎ、そっと三つ目に近づいてマッチを取り出す。
 シュボ!
 この花火というおよそ武器とはかけ離れたグッズだが、意外と使える事に井川は
気付いていた。バチバチ……と音を立て始めたところで勢い良く玄関の中に放り
込む。派手な音と煙を撒き散らすのを、建物の陰に隠れてじっと待っていた。
 10秒。20秒。息を凝らし、耳を澄ます。中で人が動く気配はない。
(大丈夫、かな)
 家が薄い靄に燻される様をじっと見遣りながら、ふと、他愛もなく思った。
 ―――まるでバルサンを炊いているみたいだ。
(何のために、こんな事してんだか……)
 うんざりだった。取って返す時のぬかるんだ道にも腹が立ったし、ふらつく藪に肩
を貸し、やっとの思いで家に辿り着いた途端に鳴り響いた六甲颪には殺意さえ抱
いた。玄関でつまずいてバランスを崩し、藪の頭を思い切り板の間にぶつけてしま
った事についてはこの際許しておいて貰いたい。岡田から通告された内容を書き
取るので精一杯だったのだから。

672 :542(2/7):2006/06/17(土) 02:24:10 ID:9fgljcKw0
「……」
 その藪は壁にもたれて座り込んでいた。新たに手当てをしてやった左肩は血が
止まりつつある。何とか失血死は免れたようだ。ちらとも身じろぎしないが、かと言
って眠っているわけでもない。彼の細い目はしっかりと開いている。
 その唇がつと、動いた。
「ジョージ、クボ……安ちゃん……ひーやん……」
 順々に、低い低いその声で、宣告された死者たちの愛称を呟く。
「和田さん、八木さん」
 どうして、と独りごちる。
「太陽……」
 聞いていられなかった。―――聞きたくなかった。
 ガスコンロに歩み寄る。しゅんしゅん、と音を立てて沸騰する薬缶の湯を、ひびの
入った湯呑みと、取っ手が折れたマグカップとに注いだ。温かな白い湯気と、テー
ブルの上に並んだ二つの影。いやにちぐはぐだった。
「……藪さん」
 ああ、鬱陶しい。空気が澱んでいる。
「聞こえてます?」
 強めた口調に、藪は僅かに首を振る事で応えた。だが頭を擡げてこちらを見る
ほどの気力は無いらしい。ふー……と、細く深い息を吐き、いかにも大儀そうに、
もう一度首を縦に振った。
(瀕死、か)
 ぐったりと腰を落とす様は、まるで死にかけのキャラクターだ。
(俺って人非人だな)
 これが自分の性格なのだが、それでもこの期に及んで、間違った方向に冷静な
自分自身に嫌気が差した。―――それは同時に、お荷物状態の藪にもだ。
 ただ、だからといって彼を放り出すなんて事はしない。自分がルーキーの時から
背中を見てきた、そしていつの間にか追い越してしまった先輩の抱える悲哀や、
悪気のない生真面目な性格を、井川はよく知っている。それだけに、何とはない親
近感だとか、チームメイトとしての好意的な見方だとか、そういうものもあるにはあ
って、やはり見棄てるという選択肢からは自然とカーソルが外れるのだった。
 変人だと言われる自分にだって情はある。
 仲の良かった藤田太陽(背番号15)に、友情を抱いていたように。

673 :542(3/7):2006/06/17(土) 02:24:43 ID:9fgljcKw0
(どうして)
 何もかも、解らない事だらけだ。疑問符は井川の外郭に絡みついて離れない。
胸中の自分は漫然と問いかける。頭の中の自分はそれに答える術を持たない。
(どうして)
 太陽は死んだのか。
(どうして)
 藪は彼を殺したのか。
(どうして)
 太陽は自分を殺そうとしたのか。
(どうして)
 ―――自分は太陽を殺せなかったのか。
「どうして?」
 それでもたった一つだけ、解る事がある。その仔細は目の前の男が知っている
はずだ―――彼の呟いていた言葉の正体が、自分の推測どおりなら。
「どうして、ですか?」
「……何、が」
 からからに掠れた声。そして疲れた声だった。濡れて下りた前髪の間から、昏い
眼が覗いていた。浅黒い顔、削げた頬が、手負いの獣を連想させる。
「井川。……何が?」 
 聊か残酷な選択ではあったが―――井川は彼をじわじわ追い詰める事にした。
馬鹿正直な解らず屋にはそれが効果的だ。本題をぶつけるのはまだ早い。焦ら
ず、ゆっくり、ゆっくり、地を奪ってゆく。
「どうして、殺したんですか。どうして太陽を殺したんですか?」
 外堀から埋めるのだ。外堀を埋め、侵入し、内堀を埋めにかかる。手足をもいで
押さえつけて、抵抗する気など綺麗さっぱり失わせてから核心を抉り出せばいい。
 彼が一歩退いたところへ、もう一つ、石を置く。
「ねえ。片岡さんの時はあんなにグズグズ言ってたのに。どうして?」
「……井川」
(嘘が吐けない人だな、ホントに)
 とかく彼は目の変化が顕著だ。瞬きの回数が増え、黒目が右上を彷徨い、次い
でストンと右下へ落とされた。頭の中で逡巡し、整理しようとし、だが結局纏まらな
い。迷った挙句に中途半端な無難さを選ぶ。その経過が見えるようだ。

674 :542(4/7):2006/06/17(土) 02:25:17 ID:9fgljcKw0
「――井川」
「どうして、殺した?」
 口を開き掛けた藪に追い討ちを掛ける。
 逃げを許さない井川の口調に、彼は口を噤んだまま、また一歩退いた。苦しそう
なのに、どこかでこちらを憐れんでいるような目がそこにある。見下ろしているのは
自分のはずなのに、何故かひどく居心地が悪い。
(ヤな人だよ、アンタはさ)
 中途半端な同情。中途半端な諦め。中途半端な怒り。中途半端な抵抗。考えよ
うによってはそれは優しさだ。或いは、配慮。中庸。ひとつの大人しさ。
 しかしそんな耳触りの良い、薄っぺらな言葉は井川の最も嫌うものだった。
(言いたい事があるなら言えばいい、嫌な事は嫌だって言えばいいのに)
 三つ四つの子どもでもあるまい。答えたくないならそう言えばいいのだ。そうしな
いのなら、もはや一個の独立した人間である意味がない。
 井川は強い。純粋で頑固で、緊密で、精度が高くて、意志の強い人間だ。そうい
う人間だからこそ、人気チームでエースを張って実績を残してきている。
 それは裏を返すと―――
(アンタは一体、いつも何考えてるんだ。いつも、何考えて、生きてるんだ)
 藪にはそういった感覚が決定的に欠如しているように思えてならない。
 まるで負け犬だ。
 井川が胸中で斬り捨てたのと同時に、彼はおもむろに顔を上げた。叱られた子
どものように萎縮して、しかし目だけは大人のそれで、井川の顔を見ている。もう
退がるマスがない事に気付いているようだった。無論こちらにも、ここで赦すつもり
なんてない。―――そして、ここで見棄てるつもりも、ない。
『ごめんな、井川』
 目でものを言う人間なんて嫌いだ。
(本当は言いたいくせに。本当は大声で叫びたいくせに)
 なのに、彼はそれを表に出そうとはしない。
 言葉には出さないくせに、目の中では必死にそれを訴えている。
 タチが悪い。
「藪さん」
 返事を促す。
 ―――アンタは全てが中途半端だ!

675 :542(5/7):2006/06/17(土) 02:26:22 ID:9fgljcKw0
「―――ごめん」
「……」
「ごめん、井川」
(やっぱし、何にも解ってねぇ)
 求めていたのはそんな答えではないのに。
 彼は勘違いしている。井川は藪が太陽を殺した事それ自体に憤っているのでは
ない―――勿論、親しかった彼の死は衝撃には違いないし、悲しい。藪に対して
わだかまりの気持ちがないといえば嘘になる。しかし事はそもそも、太陽が井川に
襲い掛かってきた事に帰結するのだ。藪を責めるのは、『道義上』井川には出来な
い。何しろ、片岡と対峙した時に殺害も辞さない事を容認したのは、他ならぬ井川
なのだから―――問いの意図は別のところにある。
「オレ、知ってた。お前が太陽と仲良かったの……知ってた。知ってたのに、それ
 なのにあいつを殺した……」
 そうか、知っていたのか。知っていて、その仲のいい後輩二人が目の前で殺しあ
おうとしているのを見て、発砲したのか。あんな底なし沼のような暗い顔で、不自
由な手で引き金を引いて、太陽を殺したのか。
 その時アンタは、一体何を考えていた? ―――何のために、手を汚した?
「お前が殺されそうだったっていうのは、確かに動機ではあったんやけど。でも他
 に太陽を止める方法はあったはずなんだ。なのにオレは、それを選ぼうともしな
 いであいつを殺した。多分……解ってたけど、殺したんや。……多分」
 自嘲とも言えない、鬱々とした声音で付け加えて、藪は深く息を吐く。
 抑圧された負の感情は、重たげに下降して板張りの床に吸い込まれていった。
立てた膝の上に載せられた右手が震えている。ふと見ると、その人差し指と中指
の先に血がこびりついていた。誰のものかも解らない、赤い欠片が。
(―――「多分」?)
 ぴたりと、思考が止まった。
 事実関係を確かめるかのようにゆるゆると続く稚拙な独白の中に、異物感のよう
な引っかかりを覚えた。
「ちょっと」
「多分そうやと、思う……」
「ちょっと、藪さん」

676 :542(6/7):2006/06/17(土) 02:26:49 ID:9fgljcKw0
 放っておけば延々懺悔し続けそうなところを遮り、井川は藪の右肩を掴む。
 単に言葉のあやならばそれでいい。
 しかしそうでないのなら。
「何?」
「『多分』って、どういう事っスか」
 一瞬、ぐっと言葉に詰まった藪の目に走った、明らかな動揺。
「どういう事?」
「……だから、つまり」
「説明して下さい」
 畳み掛ける。明らかに返答に窮した様子で、彼は救いを求めるかのようにそっと
左下へと視線を移した。助けてくれる存在があろうはずもないが。
「それは……その」
「本当の事が知りたいんです」
 本当の、にアクセントを置く。大体どこをつつけばいいのかが解ってきた。どこを
叩いて、どこをすかせば彼の頭の中を覗く事が出来るのか。
「……怒らないで」
 顰めた顔を一段と困惑に染め上げて、藪はおずおずと視線を合わせてきた。
「怒らないで、聞いてくれるか」
「怒りません」
 今更怒って何になるんスか。呆れた声で言い棄てると、そっか、と藪は低く呟い
た。井川の口調に糾弾の色合いが薄い事を見て取って、何事かを考え込むような
表情になる。
 もう一押し。
「ホントの事言って下さい。もう建前とか何とか……そんなん無駄ですよ、無駄。
 俺ら、5分後に死ぬかも知んない世界にいるんスよ? あん時言っときゃ良かっ
 たって、後で後悔しても遅いっぺ」
 おかしな言い回しに、馬から落ちてるぞ、と静かに指摘し、藪は唇を歪めた。そ
れは苦笑と呼ぶには疲れ過ぎていたが、確かに笑みの形をしていた。
 翳の落ちた煩懊の笑みに、人間、極限に達すると笑う事しか出来ないというのは
真実なのだなと、井川は思った。
「―――オレにも解らないんだ」
 空間がぷつんと途切れ、そこにことりと沈黙が落ちる。

677 :542(7/7):2006/06/17(土) 02:27:17 ID:9fgljcKw0
「オレ自身にも、実は……よく解ってない」
 冗談ではない事は直ぐに伝わってきた。「何も考えていない」という意味でない事
も、彼の困りきって倦んだ表情からそれと察知出来る。
「前からなんだよ。時々あったんだ。ずっと前から、ごくごく、たまに。自分の行動の
 理由が解んなくなったり、記憶があやふやになったり」
 彼は本当に解っていない。
 それは自分の行動の理由を分析する事を放棄したというのではなく、蓋し、能力
的に、解っていないという事だ。
(……これは)
 少しばかり。
 想像していたよりも、ややこしい場所に手を突っ込んでしまったのかも知れない。
「どうして太陽を殺したのかも、どうして、そもそもこんな事になっちゃったのかも。
 どうしてこんな事、お前に話してるのかも……」
 大柄な二人の男が膝詰め交わした会話は、薄暗い袋小路に迷い込んでいた。じ
っと沈黙が垂れ込める。空気が澱んで、澱んで、どろどろと蠢く。
 雨粒が屋根を叩く音。微かな風の声。二人分の、押し殺したような気配。
「……クボも、ひーも、ジョージも、みんな」
 脈絡なく発せられた言葉は、淡々と、しかし、涙を滲ませたような透きとおった灰
色をしていた。
「どうして、死んじゃったんだろうな」
 ―――どうして。
「どうして、死ななきゃいけなかったんだろうな」
 訊かれても、こればかりは答えようがない。こっちが教えて欲しいくらいだ―――
太陽の死に顔を想起し、井川はじわっと、何かが胸の内に湧くのを悟る。自分が
彼を殺せなかったのは、彼が友達だったからだ。彼を友達だと思っていたからだ。
それ以外に理由は見当たらない。それ以外にどんな理由が必要だというのだ?
 手にした湯呑みのひびからぬくいものが沁み出て、手のひらを湿していく。
「どうして、オレは……太陽を殺してしまったんやろう……」
 井川は自分の涙腺から水分が分泌されたのを感じた。
 溢れる事のない、溢れさせる事の出来ない、それは密やかで悄愴たる涙だった。

【残り37人】

678 :542:2006/06/17(土) 02:28:44 ID:9fgljcKw0
章番号間違えました。正しくは121番です。すみません。

679 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/17(土) 03:14:41 ID:G0VElOQx0
来た来たー!
職人さん、乙でございます!

680 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/17(土) 03:21:00 ID:cWGlgoJ+0
涙が…職人様の文章力にカンパイ

681 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/17(土) 03:23:01 ID:G0VElOQx0
新作読み終わった。藪さんとイガーの会話、この後どうなっていくんだろう。。。

682 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/17(土) 07:34:28 ID:TriBM9FM0
徹夜明けの朝っぱらから心がざわめいた。
職人さん、乙です。

683 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/17(土) 18:19:35 ID:npeuiuU80
保守

684 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/18(日) 00:40:06 ID:V5h77Dzf0
hosyu

685 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/18(日) 04:45:13 ID:V5h77Dzf0
hosyu

686 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/18(日) 09:36:00 ID:GAl97zLH0
少し細かい指摘ですが、桧山さんのこと、金本さんや矢野さんは、ひーやんと
呼んでいます。

687 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/19(月) 00:22:24 ID:WBRHN30Z0
保守

688 :924(1/3):2006/06/19(月) 00:27:22 ID:fil3NPUs0
>>677より
122.囚われ人

階段を降りてくる足音が響く。――あの男が戻ってくる。
小宮山慎二(背番号60)は背負いかけていた荷物を床に投げ出し、急ぎ
布団に戻って毛布にくるまった。
「ごめんな。やっぱり、あらへんかった……」
ふすまが開き、部屋に入ってきた藤原通(背番号2)は開口一番わびた。
「いえ、そんな……気を遣わないでください」
右手で左の二の腕をぎゅっと掴み、懸命に身体の震えを抑える。普段なら
どれほど有り難いか知れない先輩の優しさが、今はただ不気味だった。

「なんや? 荷物まとめてたんか?」
藤原が傍らに放り出されたリュックに気づいたらしい。
「あ、いえ! これは、その……」
小宮山は反射的に身を起こした。逃げるつもりだったと悟られれば、何を
されるか。言い訳しようとするが、とっさにはうまい言葉を思いつかなかった。
「あー、そっか。さてはお前、ここにいたくないんやな?」
ずばりと言い当てられ、小宮山は硬直した。
「あ……あの……」
頭が真っ白になる。やはり、迷わず逃げてしまうべきだった。
だが、後悔してももう遅い。

「わかるわかる。あんなもんが家ん中に転がってるんや」
こちらのおびえをよそに藤原は何度も大きくうなずいた。どうやら、自分から
逃げ出そうとしていたとは受け取らなかったらしい。
(――あんなもん)
小宮山は安堵するより、その意味するものを思い浮かべてぞっとした。
「俺も嫌なんや。台所はそこいらじゅう血だらけでえらいことになってるし、
戸を閉めとかんかったら廊下とかこの部屋までにおいがしてきそうやし」
誰がそんな有様にしたかは完全に忘れたかのような言い草だ。

689 :924(2/3):2006/06/19(月) 00:29:59 ID:fil3NPUs0
「そやから、お前が起きたら移動した方がいいと思ってたんやけど、まだ
具合が悪そうやからなあ。もう少し休んどけ。その間に俺が準備しとくから」
そう言うと藤原はてきぱきとその辺のものを整理し始めた。
ごろりと仰向けに転がった久保田の身体。首から勢いよくほとばしる赤い
液体。血の雨を浴びた藤原の高らかな笑い声――。それらを思い出し、
小宮山は動けなかった。

「なあ、なんで荷物がこんなにあるんや?」
不意に藤原が手を止め、尋ねてきた。
「え?」
「俺のと、お前のと、久保田のはいいとして、もう一つは?」
言われてはじめて小宮山は忘れていた男のことを思い出した。
「それは……桜井さんのです」
彼は結局どうなったのだろう。久保田は何も語ってはくれなかった。

「桜井? あいつも一緒なんか? どこにいるんや?」
「一緒だったんですけど……今はどこにいるのか、わかりません」
「わからん? なんで」
「話すと長くなるんですけど、藤原さんと会う前、俺が一人で外に出て帰ったら
二人ともいなくて、ケガをした久保田さんだけが戻ってきたんです。でも、何が
あったか言ってくれなくて、桜井さんがどうなったかは分からないんです」
話しながら小宮山は久保田と桜井との間に何が起こったか考えていた。
様々なことがあったため落ち着いて考察する暇がなかったが、謎が多すぎる。

「そんなん、すぐ分かるやんか。久保田が桜井を殺したってことやろ?」
「……え」
あまりに唐突で思いがけない答えに小宮山は思わず顔を上げた。こちらを
まっすぐ見ている藤原の顔は、確信に満ちていた。
「それで何があったかお前に言えんかったんやろ」
「でも……さっきの放送で桜井さんの名前は、なかったんですよね?」
小宮山はいささか呆れつつ、遠慮がちに尋ねた。この程度の疑問を呈した
くらいで怒るとは思えないが、彼に限っては分からない。

690 :924(3/3):2006/06/19(月) 00:32:58 ID:fil3NPUs0
「あ、そっか。けど、久保田がなんかしたに決まってるやんか。お前、やっぱり
あんなやつといたら危なかったって。俺が来てよかったな。な?」
けろりとした顔で悪びれもせずに言い放つ。とても肯定できず小宮山は無言で
うつむいたが、その動作が藤原の目にはうなずいたと映ったらしく、彼は
満足げな笑みを浮かべた。

小宮山の推測は逆だ。むしろ、久保田の負傷こそ桜井の仕業ではない
だろうか。その証拠に、彼が持っていた拳銃がどこにも見当たらないのだ。
久保田にとどめを刺さなかったことも無駄な殺人はしないと言った桜井なら
説明はつく。だが、それにしても疑問は残る。桜井はなぜ荷物を残したまま
消えたのか。桜井の戒めを切ってやったのは、果たして久保田なのか。
そして、彼はどうして自分に何も話してくれなかったのだろう。

「小宮山、どうしたんや? ほら、もう少し横になっとけって」
藤原が近寄ってきた。じっと座ったままでいるので気になったのだろう。
小宮山が促されるまま身を横たえると、そっと毛布をかけてくれた。
「遠慮せんと寝たらええ。心配いらん。俺がついてるから」
彼は優しく笑った。久保田を殺した直後に見せた、あの表情だった。
限りない慈愛をたたえた、どこまでも残酷な微笑み。小宮山は目を閉じた。
眠るためではなく、自分に注がれる異様に熱っぽい眼差しを避けるために。

(どうして逃げられなかったんだ?)
小宮山はおのれに問うた。自分が逃げた結果、藤原がショックを受けようと
心配する義理があるのか? 身勝手極まりない理屈を振りかざして久保田を
殺し、一方的に信頼関係を強要する男の運命など、どうでもいいではないか。
何より一緒に居続ければ、こちらの命さえ危うくなるかもしれないのだ。
(でも……)
なぜ迷う? 藤原の何がそんなに気にかかる? 自分でも分からなかった。
もう、何も考えたくない。このまま眠って目覚めなければどんなにいいか――。

【残り37人】

691 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/19(月) 00:38:48 ID:2X5nER870
新作ー!
職人様乙です。
小宮山ー逃げてー超逃げてー(ToT)

692 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/19(月) 23:23:52 ID:KYvQG72W0
おぉ、仕事から帰ってみたら新作が!
職人様乙です。

藤原もなんかカワイソスな奴よのう(´・ω・`)

693 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/20(火) 03:44:35 ID:ZLsBAey80
人間が「壊れる」というのは、この藤原みたいな状況を言うんだな、とオモタ。
本人の中ではいちおう論理が成り立っているところが怖い。

694 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/20(火) 18:22:54 ID:ZLsBAey80
hosyu

695 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/21(水) 02:58:58 ID:ppZc9ZP40
hosyu

696 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/21(水) 20:52:58 ID:ppZc9ZP40
hosyu

697 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/22(木) 19:26:37 ID:UAJDZVUl0
ほしゅ

698 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/22(木) 22:47:22 ID:8T5WhPCp0
保守

699 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/24(土) 01:05:56 ID:zPcyQ8Df0
今岡と藤原と三東が怖い

700 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/24(土) 03:58:41 ID:TPnyFqAt0
御大も怖い。
でも全員の狂気や弱さが見え隠れしてるから恐ろしかったり
悲しかったり愚かだったりするんだろうな…職人さんのGJスゴス

(゚д゚)スゴー

701 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/24(土) 22:49:37 ID:JcoBN23X0
矢野も怖いなあ
怖いというより危なっかしいといった方がいいか

702 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/24(土) 22:52:43 ID:EsrtQZ93O
パ・リーグの試合に赤星ユニ着てくるな超糞ゴミウルトラボケカス集団

703 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/25(日) 19:24:32 ID:daVoNiXW0
保守

704 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/26(月) 19:32:46 ID:OOYo2B+UO
★ゅ
久々にまとめて読んだら電車の中で泣きそうになった俺テラヤバス

705 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/26(月) 21:02:54 ID:0jzwRc6g0
>>704
どこで泣いた?

706 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 15:24:11 ID:GQjE4JFZ0
保守させていただきます。

707 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 22:36:33 ID:LGIrnhIe0
ほしゅ

708 :174(1/5):2006/06/27(火) 23:26:35 ID:QagRv3Vf0
>>690
123.ルナティック・パラドックス

「ジョージ――?」
 近づき、そこに横たわる男の正体を確認し、三東は声に出してその名を呼んだ。
 勿論返事はない。仰向けに眠る男は胸の前で両手を組み、穏やかな死に顔を天に
向けていた。
 ジョージ・アリアス。先の放送で確かにその名を呼ばれた男の遺体が、そこには
あった。
 雲の切れ間から一瞬の覗いた月は、三東をそれに引き逢わせる道標の役割を果たす
と、用が済んだとばかりに再び分厚い雨雲の背中に隠れた。
 その胸元に、銀の十字架のペンダントを見つける。
 先ほどの輝きは、アリアスの胸のクロスが月明かりを反射して光ったものらしい。
 だが三東は、その余り馴染みのない外国人の同僚の遺体そのものよりも、その
傍らに供えられたデイバックに心を奪われていた。
 慌ててそれを取り上げ、恐らく持ち主であろう男の隣で中身を漁る。手の付け
られていないペットボトル、3つの菓子パン――ここまでは三東が支給されたもの
と同じだ。
(そして……)
 バッグの最奥に触れる三東洋の手が震えた。そこにある感触に、全身が総毛立つ。
心臓がもの凄い勢いで脈打ち、血流が巡る。濡れた半身の冷たさも、鼻を突く死臭も、
全てを忘れた。全神経がそれを握る自身の右手へと集中する。
「奇跡だ……」
 唇が戦慄いた。掠れた声に紡がれた台詞と、畏怖と歓喜が入り交じったその表情
は、神の奇跡を目撃したモーセにすら酷似していたかもしれない。
 ゆっくりと――震えすぎて取り落としそうな手で、主と共に眠っていた支給品を
取り出す。固く、冷たい鉄の感触。
 こんなにも都合の良いものがあってよいのだろうか? 三東は自問した。しかし
答えは確かにその手の内にある。
 三東の手の内に収まっているのは、一丁の拳銃だった。
「……ぁ……は……っ」
 口が三日月の形に割れる。肺が震え、吐き出される息もまた震えていた。

709 :174(2/5):2006/06/27(火) 23:27:02 ID:QagRv3Vf0
 月のない空にそれを掲げる。
 ウェブリー&フォスベリー。オートマチック方式リボルバーという世にも奇妙な
メカニズムを持つそのアンティークな拳銃は、不思議に三東の手に馴染んだ。
 ずっしりと重い鉄の塊は、狙いさえ違わなければ遠目からでも人を殺めることが
出来る。それは三東が渇望し続けた力だった。
(ああ――)
 三東は歓喜した。これは神が自分に与えた武器だ。
 ここまで幾たびの失敗にも、挑戦し続けた自分への最高のプレゼントだ。
 この場合の神とは、決して目の前のジョージ・アリアスが生前崇めていた慈悲の
神ではない。三東はキリスト教徒ではないし、ごく平均的な日本人であり、決して
信心深い方ではない。
 これまでも、ごく平均的な日本人として、野球の神様や勉強の神様に祈ったこと
は多々あるが、もちろんそこに信念や信仰はない。それは八百万の神を原点に持つ
日本人独特の感性とも言えるし、ただ都合の良い時に都合の良い神を崇められる軽薄
な民族の特徴とも言える。
 今の三東は、自分を人殺しへと昇格してくれる救いの神の、狂信的とも言える敬虔
な信徒だった。
「……は……はは……っ」
 横隔膜が痙攣し、引きつったような笑いが唇から漏れた。
(これがあれば俺は――)
 人を殺せる――だろうか?
 焦がれ続けた願いを叶えるに相応しい器に、三東は高揚した。
 もう、恐怖からの解放は目の前にある。
 三東が恐れ、敬う殺人者達が、早くこちらに来いと手招きしていた。
(殺せる! 殺せる! 殺せる――!)
 目を見開き、空を仰ぎ見る。ただ三東がその瞳に映すのは、雨模様の夜空ではなく、
見えるはずのない白い月だった。

710 :174(3/5):2006/06/27(火) 23:27:34 ID:QagRv3Vf0
 三東洋はその月に感謝を捧げた。これは冒涜の神々からの贈り物だ。一筋の、
しかし輝かしい光明が、三東の未来を照らしている。
 天から差し込む光柱に包まれる幻想に浸り、三東は己の全細胞が歓喜に打ち震える
快感を味わった。異常に放出されたアドレナリンが瞳孔を開かせ、焦点の合わない瞳
が異様なまでの輝きを放っている。見る人が見れば、そこに常軌というものを逸脱した
何かを見て取ることが出来ただろう。
 極限状態での絶望と恐怖は、彼を自らが生み出した神の狂信者へと変えていった。
 さらに不幸なことに、彼の狂気を、心を砕いて正してくれる人間は、この島には
いても三東の隣にはいない。
「ふ、ふは……っ」
 笑いが止まらなかった。人を殺せることに、これ程まで歓喜している自分に疑問
を挟む余地は、すでに三東にはなかった。自分が人でない超越した何かへと向かおう
とする高揚感が、全ての理性を白霧の中へと覆い隠していく。
 一丁の拳銃と、二つのデイバッグを携え、三東はぬかるむ土を踏みしめて歩き出した。
その歩調は危うげなく、どこか英気にすら充ち満ちている。
「は……はは……っ……ハハハ――!」
 引きつった哄笑は林の奥まで続き、やがて雨へと掻き消された。
「フハハハハ……!」
 三東は己が狂っていることを悟った。


「ない……」
 掠れた声を落とし、林はアリアスの遺体を見下ろした。正確には、その隣を。
 雨風に立ち向かいにながらようやく辿り着いた時には、すでに林の全身は服の
まま池にでも飛び込んだような濡れ鼠だった。
 寒さのせいだけではない血の気の失せた顔で、林は何度も確認するように木の裏
や周囲数メートルに視線を巡らせた。
 雨風を避けるように木の根元に供えられていた遺品は、そこに不自然な空間を
残して姿を消していた。
(誰が……)
 嫌な予感は的中していた。

711 :174(4/5):2006/06/27(火) 23:27:59 ID:QagRv3Vf0
 跪き、あったはずの場所に手を触れる。湿りきった周囲の土や幹に対し、そこは
不自然に乾いていた。
 何度も指先の感触を確かめ、林は奥歯を噛み合わせた。何者かによってアリアス
の荷が持ち去られてから、さほど時間が経っていないのは確かだ。
 戸惑っていた時間がなければ、あるいは先を越せたかもしれない。
 アリアスの支給品の正体によれば、取り返しのつかない事態を招いてしまった
可能性がある。沸き上がる後悔の念を抑えることは出来なかった。
 先刻の定時放送で、新たに6人の死者の名前が告げられた。
 その中には、二軍で仲良くしていたかけがえのない仲間達もいた。
 信じたくない事実だが、そこに呼ばれた一人、ジョージ・アリアスの死を目の前
で見た林にとって、その情報を虚構のものだと自分に言い聞かせるのは到底無理な
話だった。
 放送によればすでに22人がアリアスと同じ運命を辿っている。一人や二人の過ち
ではない。死者の遺品を持ち去った人間が、この殺人者達の一員であったとすれば――
(落ち着け、最悪な方向にばかり考えるな)
 震える身体を抱きしめ、頭を振る。
 別段戦意がない者でも、この状況なら良心の呵責を感じながらも拾っていくという
ことは十分ありうる。
 アリアスの遺品が、林と同程度の害のない物だったかもしれない。必死に良い方向
に気持ちを向かせようとするが、あまりに根拠のない楽観視は現状では無理な話だった。
「はぁ……」
 落胆と疲労の混じった溜息を吐く。
 膝に泥が染み込むのも厭わず跪いたそこに、わずかに、人の体温が残っている気が
した。……恐らくは気のせいだろうが。
 もう少し早ければ、出会うことが出来ただろうか。それが「出会う」ことになるのか、
「出会す」ことになるのかは相手次第だが。
 すぅ――と一呼吸深呼吸し、林は気持ちを落ち着けようとした。雨に濡れる森の
匂いと一緒に、鼻に付く血臭や死臭まで吸い込んでしまったので逆効果だったかも
しれない。眉を顰め、林は意識を傍らで眠る同僚へと向け直した。

712 :174(5/5):2006/06/27(火) 23:28:28 ID:QagRv3Vf0
(また戻ってきてしまった……)
 過去と言い切るには早すぎる悲しい記憶が舞い戻ってくる。
『きっと、本当は生きたかったんだ。ありがとう』
 海の凪のような穏やかな青い目が語った最後の願いは、ついぞ聞き入れられること
はなかった。
 死を望んでいた彼が改心し、生きることを全うしようと希望した瞬間、その命が
絶たれるとは、なんと残酷なことなのだろう。神という者が本当にいるならば、
それはあまりにも残酷な仕打ちだった。
『”イキテ”クダサイ』
 自分にその言葉を贈った、もう一対の碧眼を思い出す。彼は今頃どうしているの
だろうか。放送で彼の名が呼ばれなかったことに安堵しながら、最後に自分が同行
することを拒んだ彼の決意を秘めた視線の意味が気がかりだった。あれを思い出す
度に、酷く胸騒ぎがするのだ。この不吉な予感は、先程アリアスの荷の行方に不安
を抱き、ここまでやってきた時のざわめきとも似ていた。
(大丈夫――彼は強い人だから)
 頭を振り、そう自分に言い聞かせる。
 もう一度彼の魂に祈りを捧げる。またその武器が、人を殺そうとする者以外の
手に渡っていることを、林は祈った。
「よし……」
 元いた場所に戻ろうと、立ち上がる。とんだ無駄足を踏んでしまったが、もう一度
アリアスの顔を見ることが出来て良かった。ともすれば孤独と、己の無力さに挫けて
しまいそうな情熱を呼び戻すことが出来た。決して諦めてはいけない。決して、この
ゲームを許してはいけないのだと。
 一度周囲を見回してから、先程よりは少し弱まった雨の中、来た道を引き返す。
 林が通った後――永遠の眠りにつくアリアスの傍らに、二つの足跡が交錯していた。
 そのぬかるんだ地面に刻まれた足跡……ほんの数分前についたその真新しい足跡に、
林威助が気付くことはなかった。

【残り37人】

713 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:32:23 ID:KclklqdP0
新作、キタ━━━ヽ(≧▽)人(∀゚ )人(≧▽≦≡≧▽≦)人( ゚∀)人(▽≦)ノ━━━!!!!!

RINちゃん・・・

714 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:38:07 ID:bpjNE/2o0
職人様乙です!
三東怖えええええ!!!

715 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:44:09 ID:q6yCmpwQ0
職人さん乙でございます
りんくん超逃げてー!

716 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:45:51 ID:tJ7McjwO0
職人様乙です!リンリン心配だぁ・・・

717 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:51:22 ID:WFpgk8a8O
なんというか…、
このどうしようもない絶望感というのが虎バトの持味だよね…orz
職人様すげぇ…

718 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/27(火) 23:57:02 ID:KGM/mxyH0
乙です!

リンリン、三東と出会いませんように…

719 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/29(木) 00:46:00 ID:oicLDCSs0
三東ついに武器を手に入れたか・・・怖いよ

720 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/29(木) 03:42:41 ID:3m21yPYc0
BGMはパイプオルガンだな。ここ。
職人さん、こえーよ!

721 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/30(金) 02:27:58 ID:5TdmzXDj0
ますますヤバイ方向に……

722 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/30(金) 16:19:12 ID:lFLZMbWe0
ああ…

723 :代打名無し@実況は実況板で:2006/06/30(金) 22:02:37 ID:jxENip+R0
神からの贈り物〜で、太鼓谷稲成か?と思ったおいらは同郷人

724 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/01(土) 06:06:08 ID:loFFJJ2i0
hosyu

725 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/01(土) 17:47:08 ID:loFFJJ2i0
hosyu

726 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/01(土) 21:34:21 ID:loFFJJ2i0
hosyu

727 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/02(日) 11:53:06 ID:M3/dmyop0
気になるのはリンリンと藪&井川・・・

728 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/02(日) 12:12:28 ID:bBsewSCd0
自分は一押し選手がリアルでもバトでもへたれてるんで
もー気が気じゃない。

729 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/02(日) 18:17:52 ID:8bEpMO300
>>728
おお、それは気の毒な

730 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/02(日) 20:36:49 ID:LmOjXcvC0
チンポコ強ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇwwwwwwwwwwwwww

731 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/02(日) 21:56:05 ID:0S/iaiVK0
矢野と鳥谷の続きが気になるなあ

732 :924(1/4):2006/07/03(月) 01:34:22 ID:78+tr+g30
>>712より
本性(1)

喜田剛(背番号55)は手にしたコルトガバメントの感触を確かめた。ここまでは
実にうまく、怖いほど思惑どおりに事が運んだ。明日に備えてもう寝ようと
言い出したのが自分なら、万一のために交代で見張りをすべきだと提案し、
一人目を買って出たのも自分だ。見張りには武器が必要だということで、
桜井広大(背番号51)の拳銃を拝借しようとしたが、こちらが言い出すまでも
なくあっさりと桟原将司(背番号40)が提供させてくれたのだ。

桜井は薄気味悪いほどおとなしかった。話しかけてもほとんどしゃべらず、
そのたびに桟原の気まずそうなフォローが入った。こちらを警戒しているよう
でもあり、単に関心がないだけのようにも見える。ただ、桟原のことは信用
しているらしい。この拳銃にしても、最初は少し渋っていたが、桟原が強く
促すと結局は従った。

銃が入手できたことは非常にありがたい。この武器をもってすれば二人の
命はすぐにでも奪えるが、予備の弾丸がない以上、ここでの使用は賢明な
選択とは言いかねる。眠ってくれれば、銃によらずとも殺せるからだ。喜田は
その時を待っていた。奥の布団に入った桜井はほどなくして静かになったが、
手前の桟原はまだ布団の中でごそごそとうごめいていた。気ははやるが、
焦りは禁物だ。上坂の殺害に成功して以降、ことごとく獲物を逃しているのだ。
相手を見くびることなく、慎重にやらねばならない。

(それにしても、のん気なもんだな)
二人して並んで無防備な姿をさらしている後輩たちの姿は、侮蔑を通り越して
どこか哀れだった。眠りについたが人生の最期などとは夢にも思っていない。
夢にも思っていないと言えば――自分がこの手で人を殺す日が来るなどとは、
それこそ考えもしなかった。一人を殺しただけでも普通なら大ごとなのに、
今また当然のごとく二人を手にかけようとしている自分がいる。

733 :924(2/4):2006/07/03(月) 01:35:59 ID:78+tr+g30
(やってしまえば、どうってことないんだな)
金属バットを手に体育館を出た時は、完全に吹っ切れていたわけではない。
佐藤コーチの無残な死体が示されたことにより、殺し合いが冗談ではないと
思い知らされた。生き残るには、チームメイトを殺すしかない。しかし頭では
分かっていても、本当にそんなことが許されるのか? 考えながら歩を進めて
いた時、偶然にも目撃したのだ。上坂太一郎(背番号43)が久慈照嘉(背番号
32)を襲うところを。

狂ったようにカマを振り回していた上坂だったが、最後は久慈に逃げられた。
落胆の色が漂う彼の背中を見ているうちに、思った。この男なら、殺しても
いいのではないか? 他人を殺そうとする者は、自分が殺されても文句は
言えないはずだ。そして――いとも簡単に人生最初の殺人が終了した時、
喜田の心の迷いはきれいに消え去っていた。
(あと37人か……)
せめて一桁になるのはいつのことだろう。そんなことを考えていると、桟原が
また身体の向きを変え、ため息をつくのが聞こえた。

「どうした? 寝つけないのか?」
あたかも桟原を気遣うふりをして尋ねた。
「なんか、寝たらあかんような気がして……」
こちらの殺意を見透かされているようで、喜田は少し動揺した。
「なんでそんなこと考えるんだ? どうせ2時間後には交替してもらうんだ。
今のうちに寝とかないと損だぞ」
「……今朝、寝坊したせいで取り返しのつかへんことしてしもたんです」
答える桟原の声は、妙に沈んでいた。

「なんだそりゃ。放送が聞けなかったのか?」
「まあ、そういうことなんですけど……」
そういえば、桟原が桜井と出会う前の話は聞いていなかった。もっとも、
どうでもいいことだ。
「心配すんな。朝になったらちゃんと起こしてやるから」

734 :924(3/4):2006/07/03(月) 01:37:07 ID:78+tr+g30
「……」
桟原は何も言わず、布団を頭まで引っかぶった。
「サジ?」
一つ鼻をすする音が響き、桟原は急に布団を跳ね上げ上体を起こした。
「あの、なんか寝れそうにないんで、俺が見張りやります。喜田さん、先に
寝てください」
(おいおい――)
「ひょっとして遠慮してるのか? いいんだぞ。先に寝てくれて」
喜田はいら立ちを隠し、相手の申し出を退けようとした。
「いえ。こんな時にアホかと思わはるでしょうけど、今朝は寝坊しただけや
のうて昼寝までしてたんで、ほんま全然眠くないんですよ。」

(こっちはお前がさっさと寝てくれないと困るんだよ)
思わず心の中で舌打ちする。何も知らない桟原はおもむろに腰を上げた。
「あ、その前にちょっとトイレに行ってきます。……すいません」
その言葉と同時に喜田は桜井に目をやった。仰向けに横たわる顔の部分は
暗いので見えないが、規則正しいリズムを刻む呼吸音は、彼が完全に眠って
いることを示している。部屋を出た桟原が階段の電気をつけてゆっくりと下へ
降りていくのを見届けると、喜田はポケットに銃を突っ込み、桜井の枕元に
忍び寄った。今のうちにこの男を始末できれば、残った桟原はどうにでもなる。

(よし――)
両手をそうっと桜井の首にかける。銃は使いたくない。バットでは音が響く。
刃物を使うと血のにおいが立つうえにユニフォームが汚れる。
「ん……」
桜井が頭を動かした。喜田は今しも力をこめようとした手を離した。人ひとり
くびり殺すのに実際どれくらいの時間を要するのか分からない。目を覚ました
相手に抵抗されないとも限らないし、仕留める前に桟原が戻ってきたら
厄介だ。
(あっちが、先だな)
喜田はそばに置いてあったタオルを1枚手に取り、立ち上がった。

735 :924(4/4):2006/07/03(月) 01:38:47 ID:78+tr+g30
階段を下りると、用を済ませた桟原がトイレのドアを閉めて廊下を戻ってくる
ところだった。
「あれ? 喜田さんもトイレですか?」
これから自分に降りかかる残酷な運命も知らず、きわめて悠長な声だった。
「ああ。寝る前にいちおうな」
「ほな、お先に行ってます」
桟原が軽く頭を下げて脇をすり抜けた瞬間、喜田は両手のタオルをふわりと
後ろから彼の首にかけた。

「あ……が!」
びくん、と全身を引きつらせた桟原はとっさに両手をタオルにかけて引き
剥がそうとしたが、喜田はそうはさせじと渾身の力で絞め上げた。
「き……ださ……?」
懸命に抵抗しながら桟原は問いかけようとしていた。後ろを振り返ろうと首を
ひねり、消え入りそうな切れぎれの声で。
「な……ん……」
(なんでって? ――忘れたのかよ)

自分たちは殺し合うためにこの島に連れてこられたのだ。殺せない者は、
餌食になるだけだ。
(お前みたいなお人よしは遅かれ早かれ誰かに殺される運命なんだよ。
だから、悪く思うなよ……)
ぎりぎりとタオルを絞め続けると、不意に桟原の抵抗が弱まり、身体から
急速に力が抜ける手ごたえが感じられた。

【残り37人】

736 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 01:39:55 ID:78+tr+g30
章番号が抜けていました。124です。すみません。

737 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 02:07:45 ID:55cE1ZfP0
職人さま乙です!

あーあーあーあーあー。
サジッキー…

738 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 02:09:22 ID:Dk5F5aUG0
サジッキーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!

。・゚・(ノД`)・゚・。
。・゚・(ノД`)・゚・。
。・゚・(ノД`)・゚・。

739 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 02:39:33 ID:RF1kD7Xj0
タイトルが気になるな・・・

>>737-738
まだ【残り37人】だぞ!

740 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 14:55:16 ID:9GPwjmOp0
あああサジキーーーーーー

741 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 19:02:59 ID:PSntlmN60
職人さん乙です!

は、はやく(2)が読みてえ…ドキドキ

742 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/03(月) 19:11:50 ID:CSdw/iqN0
こんなとこで言うのもなんだが、サジキって1軍の中じゃ抜群に若かったんだな…
喜田に呼び捨てされてるのなんか不思議な感じ

743 :924(1/5):2006/07/04(火) 01:19:19 ID:u1KdpKX+0
>>736より
125.本性(2)

(やったか?)
喜田はタオルから手を離し、支えを失って崩れ落ちようとする桟原の身体を
素早くかかえこんだ。85キロの体躯の重みがずっしりと両腕にのしかかる。
そのまま音を立てぬよう、静かに床に寝かせた。ふうっと一つ息を吐く。
もっと時間がかかるかと思ったが、意外とあっけなかった。だが、気を失った
だけという可能性もある。念には念を入れよだ。
うつ伏せになった相手の首の下にタオルを差し込み、絞め直そうと手を
かけた時、ぎし、と上方から床のきしむ音が聞こえた。

「どうなってんねん……?」
つぶやきと共に、階段の降り口に桜井が姿を現した。
(まずい――!)
「な!? ちょおっ、何やってるんや!!」
階下に視線を向けた桜井が叫んだ。その顔はみるみるうちに驚愕から
憤怒の色を帯びてゆく。
(くそっ――)
喜田がポケットの拳銃を取り出すのと、桜井が階段に足を踏み出すのはほぼ
同時だった。もはや弾を惜しんでいる場合ではない。

「ぐは!!」
銃の安全装置を外そうとした瞬間、頭に激痛が走った。がらん、と音を立てて
床に落ちたそれは、桜井が投げつけた桟原の木刀だった。ひるむ間もなく
今度は桜井自身がすさまじい勢いで飛びかかってくる。
「てめえ、よくもっ!!」
桜井は左手で喜田が銃を持つ右手を押さえつけ、自らの右のこぶしを
振るった。喜田は銃だけは手放さないよう注意しつつ空いている左手で反撃を
試みたが、いかんせん利き手でないだけに分が悪い。

744 :924(2/5):2006/07/04(火) 01:20:22 ID:u1KdpKX+0
「う……くっ……ごほっ! げほっ!」
その時、倒れていた桟原がにわかに激しく咳き込んだ。
(生きてた――!?)
「桟原さん!?」
とっくみ合っていた男たちはともに一瞬動きを止め、桟原を見た。言うまでも
なく、二人の反応は正反対だった。一方は安堵し、もう一方は動揺した。
その違いは、両者が再び戦闘態勢に戻るまでのわずかな時間の差を生んだ。
喜田が遅れをとったと気づいた時、武器は手を離れていた。

ひときわ力のこもったパンチを受けて背中が壁に叩きつけられ、間髪を入れず
眉間に鈍い衝撃が加えられた。桜井が手中におさめたコルトガバメントの
銃口だった。
「どういうつもりやねん!? 目ぇ覚めたら誰もおらんし、なんかあったんかと
思ったら……。お前、俺らを騙したんやな? 最初っからそのつもりで
声かけてきたんやな? え!?」
問い詰める桜井の声は怒りをあらわにしながらも勝ち誇り、どこか楽しそうに
響く。頬は高揚感で赤く紅潮し、両の眼はぎらぎら輝いていた。
喜田は死を覚悟した。覚悟しつつ、つられて思わず口の端を吊り上げた。

「……ああ、そうさ。もう少しだったのに」
(こいつは――)
関本や金澤とは違う。威嚇ではなく、桜井は本気で殺そうとしている。
しかも、そのことにまったく迷いがない。同じ種類の人間だから、分かるのだ。
「お前がこんなとこで起きてこなけりゃ、うまく行ってたのにな」
自分が思ったとおり、やはり桜井は桜井だった。そのことが、命が尽きようと
している今、なぜかとても愉快に感じられた。
「ふうん。そら、残念やったな」
桜井の顔に嘲りの笑みが浮かび、指が引き金にかかった。
「タマがもったいないけど、まあええわ。死ねや」
事も無げに言う彼の目は、ぞくりとするほど冷たかった。

745 :924(3/5):2006/07/04(火) 01:21:35 ID:u1KdpKX+0
「……やめろ! 桜井、やめえ!」
突如として横から飛んできた声に、引き金を引きかけた桜井の指が止まった。
喜田が目だけを思い切り横に動かすと、四つん這いの恰好で喉元を押さえた
桟原がこちらを見ていた。
「あかん!……そんなん、あかん。あかん、あかん!」
そこで桟原はうつ向き、何度も苦しそうに咳き込んだ。おさまると再び顔を
上げ、桜井に向かって声を絞り出した。
「……頼む。あかん、そんな……。やめてくれ……っ!」

「なんで止めるんスか?」
桜井は横目でちらりと桟原を見たが、すぐにまた喜田を見すえた。
「嫌やったら、ちょっとだけ目ぇつぶって耳ふさいでてください」
思いがけない制止にも平然とした態度を崩さない桜井に対し、むしろ予想外の
助け舟に驚いたのは喜田の方だった。
「……ちゃう、そんなことやない。その人を……殺すな。殺したら、あかん。
その人は、仲間なんや。おんなじ阪神の一員なんや」
断続的に咳を交えつつ、桟原は訴えた。

(救いようのない馬鹿だな……)
喜田は呆れた。おのれを騙して殺そうとした相手をなおかばう人のよさ。
先ほど桟原は自分に言った。桜井が何かしようとしたら、全力で止めると。
まさか、あの約束を忠実に果たしてくれるとでも言うのだろうか。
(あいつと同じだ――)
三東に襲われ、それでも彼は悪くないと言い張っていた金澤の滑稽な姿が
浮かんだ。まったくもって、甘い。甘過ぎる。だが、今の喜田にはこの唾棄
すべき甘さこそが頼みの綱になりえた。あきらめかけていた生への執着が、
再び頭をもたげてきた。

746 :924(4/5):2006/07/04(火) 01:22:40 ID:u1KdpKX+0
その間にも桟原は必死になって救いの言葉をつむいでいた。
「お前は忘れてしもてるやろうけど……一緒に野球やってきたんや。
俺も、お前も、喜田さんも、他のみんなも……」
(そうだ、もっと言ってやってくれ)
喜田は心の中で桟原にエールを送った。そして桜井に隙ができれば、この
絶体絶命の状況を打開することも可能になるのだ。

「そっちこそ、忘れたんスか? 今、こいつに何されたか」
やれやれ、と言いたげに桜井は鼻で息を吐いた。喜田の期待とは裏腹に、
彼は桟原に応じつつもそちらを見ようとはせず、あくまで眼の前の敵に神経を
集中させている。ぴたりと当てられた銃口を通してびしびしと伝わってくる
圧倒的な殺気。それだけで気おされてしまいそうだ。少しでも妙な真似を
すれば、即座に頭に穴があくだろう。

「こいつは、あんたを殺そうとしたんスよ? 下手したら、俺ら二人とも死んで
ましたよ? 仲間や言うたところで、こいつはそんなこと思ってませんて」
ぐり、と桜井は銃口を喜田の眉間に食い込ませた。
「だいたい他人を殺そうとするやつは、自分が殺されても文句言えんでしょ?」
「それでも……俺は思てる。少なくとも、俺は今でも、仲間やと思てるんや」
桟原は傍らに転がる自分の木刀に手をのばした。

「言うたやろ……俺は殺すのも、殺されるのも嫌やて。もう、人が死ぬのは
嫌や。うんざりなんや。もう、ええ加減にしてほしいんや。そやから俺は、
お前にも、誰も殺してほしない……」
木刀を杖代わりにつき、桟原はゆらりと立ち上がった。
「桜井……もしお前が誰か殺したりしたら、俺はもう……」
ふらつく足元と弱々しい声。対照的に、桟原の目には力がある。得体の
知れない迫力は、桜井とは別の意味で不気味だった。
「もう、お前とは、つきあいきれん。……これまでや」
ぴくり、と桜井のこめかみが動いた。

747 :924(5/5):2006/07/04(火) 01:23:31 ID:u1KdpKX+0
「……なんでです? 桟原さん」
そこではじめて桜井は首をめぐらせ、桟原に顔を向けた。両者の視線が
ぶつかった時、喜田の眼に映る桜井の横顔がはっきりとゆがんだ。
「なんで、そうなるんスか? 俺は――」
いら立ちを滲ませた声が吐き出されると同時に、絶え間なく押し寄せていた
殺気が一瞬にして失せた。見事なまでの変化だった。今、桜井の意識は
喜田を離れ、桟原のみに注がれている。このチャンスを逃す手はなかった。

「桟原さんが危なかったから、俺は……っ」
圧力の抜けた銃の先からは、桜井の手の震えが確かに感じられた。
(今だ――!)
喜田は眉間に当てられた凶器の銃身を右手で強くつかみ、引き上げた。
桜井がハッと我に返った。再び、その眼に鋭い光が宿る。

「――っのやろお!」
彼の手は、すぐさま奪われかけた銃のグリップを確保した。
「桜井!? やめ――!!」
桟原が叫んだ。
ぱあん、と乾いた音が一つ響いた。

【残り37人】

748 :924:2006/07/04(火) 01:28:47 ID:u1KdpKX+0
たびたび、すみません。正しくは>>735からの続きです。

>>739
はい、まさに仰るとおりですw

749 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/04(火) 02:10:46 ID:f3SigcPR0
(2)キテタY⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!!

ああ、今度こそヤバそう。喜田か?喜田なのか?


750 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/04(火) 03:30:21 ID:6dqUMszC0
なんだこりゃ・・・超きになる・・・一気に(3)を読みたい・・・

751 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/04(火) 06:43:25 ID:kNh0JO0c0
サジッキー、いいひとすぎるよ…・゚・(ノД`)・゚・

752 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/04(火) 09:49:38 ID:LhkTJYX/0
ど、どうなったん・・・

753 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/04(火) 18:59:29 ID:YBPc9co3O
この暑い日に鳥肌立ったよ
職人様乙です!

桜井…

754 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/05(水) 01:31:15 ID:zcAQ8L/I0
保管庫さんは忙しいのかな、最近更新されてないけど…

755 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/05(水) 23:27:44 ID:dQARR/1A0
ほしゅ

756 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/06(木) 06:06:23 ID:C0R+g6kf0
hosyu


757 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/06(木) 20:07:56 ID:rloumvXB0
やのほしゅ


758 :174(1/7):2006/07/07(金) 00:29:03 ID:sJ3dqn9P0
>>747
126.無音の嘆き

「殺した――と言ったら?」
 うっすらと、鳥谷の唇が弧を描いた。
 透明な笑み。
 それは意趣返しだったのかもしれない。何も言わず自分から逃げ出した男への。
 もっとも、命を落とすリスクを賭けるには、実に下らない仕返しだが。
 これは意地だ。子供同士の意地の張り合いのような、実の伴わない虚勢の張り合い。
 月のない夜。鳥谷の手元で光る懐中電灯。そのほのかな灯りだけが浮き上がらせる
薄闇の中で、視線だけが絡み合う。
 泥と雨にまみれてまで探し出した男は今、逃げる余地も与えぬほどの厳格さで
鳥谷に刃を向けていた。
 先に信用を放棄した男。
 彼を前にしてこれ程までに悔しいのは、恐らく、どこかに甘えがあったのだろう。
と、鳥谷は自覚していた。
 ――薄っぺらい信用にも、辛うじて支える絆があると。
 矢野はまっすぐに鳥谷の目を見据え、その問いかけに答えた。
「お前を、殺す」
 沈黙が落ちた。
 研ぎ澄まされた刃の、ほんの1,2センチ先にある、鳥谷の頸動脈。
 どれくらいの時間が流れたのだろうか。体感では怖ろしく長い間に思えたが、実際
はほんの数秒間だったのかもしれない。
 一時停止されたドラマのワンシーンのように、二人共が微動だにしないまま――
壊れたテレビのノイズを彷彿させる雨音だけが、その空間の時が止まっていないこと
を知らせていた。
 先に静寂を破ったのは、鳥谷の方だった。
「あなたは、俺が殺したと思いますか?」
 矢野の目を見て、もう一度問いかける。その時、鳥谷敬は、もしかしたら自分でも
気付かないまま笑っていたかもしれない。死を間際にすると、意外に人は恐怖を感じ
ないものなのだろうか。その表情を、矢野は目を細めて見定めている。

759 :174(2/7):2006/07/07(金) 00:29:37 ID:sJ3dqn9P0
 彼の瞳が、揺らぐことはない。
 その意味を悟り、鳥谷はすっと気持ちが軽くなった。
(ああ、俺は死ぬのか……)
 ぼんやりと納得する
 それでもいい気がした。
 分かり合えなければ死ぬ。この世界では、ただそれだけのことだ。
(桧山さんは誰かに殺された。――あの人は誰かを憎んだりしなかったはずだ)
 きっと分かり合えなかった。だから殺された。
 だったら――
(仕方がないじゃないか……)
 彼にとって自分は、紛れもない殺人者なのだから。
 ふいに、鳥谷は視線を矢野から逸らした。
 数メートル先に眠る、桧山の姿を目に焼き付ける。
 その死体は、やけに満足げに見えた。
(あなたは……何をやり遂げたのかな……)
 自分はこの死をもって、彼に何かを伝えることが出来るのだろうか。
 もしかしたら本当に自分が殺したのではないか。矢野が寝ている間に桧山を連れ
出し、森の奥で銃殺したのではないか。だからこそ、自分はこの場所に辿り着いた
のではないか。その記憶が欠落しているだけではないのか。
 鳥谷を見返す曇りのない――全ての現実を受け止め覚悟を決めたような、救いを
求めない瞳を目にした時、一瞬、そんな可能性に思い至ったが、今ではそれが気の
迷いであると言い切れる。
 自分は桧山を殺していない。それが鳥谷敬の紛う事なき真実である。
 しかし、それが矢野輝弘の真実であるとは限らないのだ。真っ白い部屋の中央を、
硝子の壁で一枚隔てた右と左は全く同じ世界に見えるが、それらは間違いなく別々
の空間であるように。
 だからこそ彼の瞳にはこんなにも迷いがないのだと――鳥谷敬はそう思っていた。
 たった今、その瞬間まで。
 視線を落とした時、ポツリと、地面に落ちた滴に気付く。
「なんで……泣いてるんですか」

760 :174(3/7):2006/07/07(金) 00:30:01 ID:sJ3dqn9P0
 掠れる声を絞り出す。雨粒とはまた異質な滴に顔を上げた鳥谷は、矢野の泣き顔
を見た。その両目から溢れた涙が、無理矢理歯を食いしばっていると分かる頬を
伝って流れ落ちる。
(泣いている)
 音もなく涙を流す彼の叫びが、鳥谷は確かに聞こえた気がした。
 今にも壊れそうなギリギリの淵で保たれている精神が悲鳴を上げてる。
(この人は泣いている。大声を上げて)
 子供のように泣き叫びながら、このゲームを呪っている。
 それは、魂を揺さぶるような慟哭だった。
「――」
 応えない矢野に向かって、何一つ声をかけられずに、鳥谷は彼の素顔を見つめた。
強く、しなやかな司令塔の仮面の下にある痛々しいまでの哀しみを突き付けられた
心臓が、磔られたように動けなかった。
(この人は――)
 心が共鳴する。そこに視えた傷に、酷く既視感を感じた。
 哀しみや怒りや、嘆きが――全てが混じり合い、激しい水流となって滝壺に流れ
落ちてくるような。
 鼻の奥がつんと痛み、脳の中心が熱くなる。
 奥歯を噛み締めた矢野の顔が、痛みを堪えるように歪んだ。
 ヒーヤン……
 声を押し殺した唇が、確かにそう動いた。
 ぐらり、と、矢野の身体が傾いだ。
「――!?」
 その瞬間、鳥谷に突き付けられていた刀が恣意的に逸らされた。雨に打たれ、
柔らかくなった地面に切っ先が突き刺さる。
 鳥谷は身を乗り出し、辛うじて中国刀にもたれかかる矢野の肩を掴んだ。
(身体が熱い――!?)
 酷い熱だ。
 息を切らし、項垂れる矢野の身体が異常に震えていた。
 刀を支えにする彼の身体を持ち上げ、自分にもたれさせる。浅い息遣いの合間に
漏れる嗚咽が鳥谷の耳に届いた。それが、心臓に石を詰め込まれたように重くのし
かかった。

761 :174(4/7):2006/07/07(金) 00:30:23 ID:sJ3dqn9P0
 彼が内包する闇と、哀しみの深さに、同情というよりは一種の共感と、本能的な
恐怖すら感じた。
 あの時、刃を突き付けてきた瞳はただ一欠片の救いも求めてはいなかったのに、
「救えない」と――「救いたい」と感じた訳を今になって理解する。
(……でも俺は、何も出来ない)
 彼の傷を知ったところで、自分が彼を救うことなど出来ないのだ。
 これだけ近い所にいても、彼の精神は手を伸ばしても届かない、余りにも遠く高い
ところにある。
 己の無力を実感し、戦慄く肩に置いた手に力がこもった。
『鳥谷――』
 誰かに呼ばれた気がした。
『手を、伸ばしてやって』
 弾かれたように、桧山の遺体を見やる。だが勿論、死者は起きあがることも話し
かけることもなく、ただ雨に打ち付けられ風に晒されている。
 それは鳥谷自身の記憶の中の声だ。だが、それは今確かな暖かみを持って鳥谷を
導いていた。
『その人は、見た目ほど強くはないから――』
 ふわりと、脳裏にその男の人を食ったような笑みが浮かんだ。
 思わず、笑ってしまった。
(だってほら、桧山さんは笑っているから)
『ヒーヤン……』
 あの時、蚊の鳴くような声で彼が縋った名前を覚えてる。
(何だ、やっぱりあなたも、縋りたいんじゃないですか)
 こんな馬鹿みたいな強がり二人を、桧山はどんな気持ちで見守っていたのだろう。
 今まで自分の腹の底を渦巻いていた醜い嫉妬が、音も立てずに気化していく。
 昇華されていくそれと一緒に、気持ちまでもが軽くなっていった。

 ぽん、

 ぽんぽん。

「なに……やってるん、お前……」

762 :174(5/7):2006/07/07(金) 00:30:56 ID:sJ3dqn9P0
 抱きかかえた後頭部を軽く叩いた鳥谷の行動に、矢野が僅かに顔を上げた。
「桧山さんに――」
 その冷や汗の浮いた顔を見返し、こちらは余裕すら感じさせる笑みを浮かべて
見返してやる。
 今この瞬間、今まで自分を苛んでいた劣等感や嫉妬は、全てが思い込みであった
のだと鳥谷は確信していた。その強さが妬ましかった人は、とてつもなく脆い存在
であることを悟った。
(本当に強い人間なんていないのかもしれない――)
 強がることは出来ても、強くはなれない。誰かがいるからこそ、弱さを補い合える
のではないか。
 桧山が自分に知らせたかったことのほんの一部を、鳥谷はようやく理解することが
出来た気がした。
 硝子壁に手を伸ばしたらそこに穴が空いていたような、呆気ない幕切れに苦笑する。
矢野が鳥谷を遠ざけようとしていたように、鳥谷自身も矢野輝弘という男に壁を作って
いた。幻想とも言える強さを押し付けていた。
「あなたを頼むと言われました」
「……生意気」
 眉間に皺を寄せたいつもの表情で、不機嫌に返す矢野。
「いいんですか? 俺を殺さなくて」
「お前に俺は騙せへん」
「……おかしなことを言う人ですね」
 少しだけ目を細めて口を閉ざした後、鳥谷は肩を竦めて笑った。
「……しんど……」
「病人がこの雨の中歩き回ってたら当然ですよ」
 満身創痍の先輩に対し、どこか見下ろした口調で言って、大げさに溜息をつく。
「追いついたら――正直、一発ぶん殴ってやろうかと思ってたんです」
 大先輩だとか、そんなことは関係ない。この状況では自分の方が圧倒的に有利で
あるし、こうなることを見越せずに飛び出した先輩の頭の悪さを内心小馬鹿にしても
誰も責めはしないはずだ。当人以外は。

763 :174(6/7):2006/07/07(金) 00:31:22 ID:sJ3dqn9P0
「…………」
「やる気、失せました」
 無言の先輩が、言外に優越を滲ませている後輩対し、不満を抱いているのは間違
いない。だが、それすら気分が良い。散々振り回された鬱憤をこういった形で晴ら
すことくらいは許されて然るべきだろう。形勢逆転してここまで余裕の出来る自分
の単純さが今は愛おしくすらあった。こんなにも安らいだ気持ちになったのは久し
ぶりな気がする。人間なんて劣等感を抱いていたら気分が悪いもので、優越感に浸
れば気分が良くなる、単純な生き物だ。
「頼むから、大人しく眠っていて下さい」
「……言っとくけど、俺は逃げてへんぞ……」
 完全に見下ろされ、言い訳の尽きた子供のような怨嗟を滲ませて矢野が声を絞り出す。
その瞳はすでに魯鈍としていて、襲い来る疲労か、睡魔か、おおよそそういったもの
との戦闘態勢に入っているようだった。
「お前から逃げるほど……俺は……恐がりじゃ、ない……」
「……安心しました」
 すぅ……
 その言葉を最後に、寝息を立てだした矢野に、鳥谷は大きく息を吐いた。
「ったく、面倒な人だな……」
 ポツリと呟く。まだ1年しか付き合いがなく、しかも誉められるより怒られること
の方が多かった鳥谷にとって、矢野は尊敬できる、しかしある種近寄りがたいオーラ
を持った大先輩だった。少なくとも、投手陣だけでなく、野手、監督コーチから厚い
信頼を寄せられる頼もしい虎の頭脳が、こんな子供っぽい負けず嫌いな一面を持って
いたとは想像し難かった。
 そう思うと、彼の1歳年下の桧山進次郎は、さすがによく彼の扱いを心得ていたな
と感じる。
『大丈夫や。みんなお前のことは認めてる』
(まだだ――)
 鳥谷は、いつかの桧山の言葉を否定した。しかし、今のそれは決して否定的な否定
ではない。
(俺はまだ、自分自身を認められない)
 過小評価ではない。その言葉から逃げるのではなく、頼るのでもなく、自分を客観的
に判断した結果を、鳥谷はようやく出せた気がした。

764 :174(7/7):2006/07/07(金) 00:32:04 ID:sJ3dqn9P0
(俺は……この人に、認められたい)
 今は桧山の代わりでしかない。
「はは……」
 思わず笑いが込み上げた。
『俺は恐がりじゃない』
(俺は――怖かった)
 彼に見捨てられるのが怖かった。側に誰もいなくなるのが怖かった。
 筒井がいない。桧山がいない。誰もいない。
(怖くて、怖くて、怖くて――)
 誰かに助けて欲しかった。
「温かい……」
 雨と夜霧に体温を奪われ、指先や耳の先は冷え切っていた。だが、腕の中の存在は
確かに生きている。そのことに、鳥谷は酷く安心した。
「まったくもう……」
 呟きが闇夜に吸い込まれる。
 お互い様、とはまさにこのことだ。
(『助けて』も言えないんだから)
 泣きたいくらいの安堵に、鳥谷は暗い夜空を仰ぎ見た。ただ独りではないという
この事実が、こんなにも心強い。
「弱いくせに、馬っ鹿みてぇ……」
(一人で生きていくことも出来ないくせに)
 ただ雨の音と死者の沈黙が、二人を静かに包んでいた。

【残り37人】

765 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 00:53:35 ID:jpn2ySC40
職人さんありがとう…!!
もう…もう…!!。・゚・(ノД`)・゚・。

ひーやんの死が、鳥谷矢野コンビにこうやって「何か」を残してくれたんだな。
ひーやんを殺したモナも気になるよ…。

766 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 01:00:52 ID:CQLdAJGW0
職人さん乙です。
矢野と鳥コンビの続きが気になってましたw
桧山の息吹がこの二人を繋げたように思う
矢野鳥コンビの強くて儚い部分がよく表現されていると思った
>765のいうようにモナへどういう影響を及ぼすかも気になって気になって

767 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 01:02:36 ID:aDZ26dnw0
寝る前にのぞいてみたら新作が来てるじゃないですか!

昨夜、リアル矢野のヒロイン聞いたばっかりなのでセリフが
彼の声で蘇ってきますた・・・(つд`)

768 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 01:07:51 ID:uSZQEIZz0
職人さん乙です。
「2人を会わせるのが自分の役目」ってこういうことだったんだな…ひーやん
矢野がマーダー化したら怖すぎる…と思ってたんでホッとした

金本も矢野も描かれているのは強さじゃなくて弱さなのに、人を動かす強い力のようなものを感じる
職人さんたちが凄すぎると思うが、素材になってる選手も本当に面白い人達だと思った



769 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 01:14:59 ID:6VhMDV/t0
職人様乙です。
よかった…。
矢野鳥もよかったし
なによりひーの死がムダにならなくてよかった…・゚・(ノД`)・゚・

途中までまさしく息をのんで読んでたけど
ふたりが分かりあえてからはほのぼのしちゃって
ニヤニヤしながら読んじゃったよ。

770 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 01:20:38 ID:2DCjfb1r0
職人様乙です
このスレには泣かされっぱなしだ

みんなみたいにうまい言葉が出てこなくてはがゆいよ
とりあえず、二人の距離がほんの少し縮まってよかった
でもほんとに矢野と鳥谷を「救える」のは
それぞれ違う人なのかなぁ…とも思って少しかなしい

何が言いたいかわからんな
いい作品をありがとう

771 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 02:24:46 ID:wth4oEG60
ああああはじめて泣いたよ!
しかも悲しくて泣くんじゃなくて
こんな気持ちで泣くのははじめてだ。
職人さんお疲れ様です!
この鳥と矢野が愛しくてしかたないよ・(ノД`)・゚

772 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 03:52:45 ID:hc15w6YQ0
マジ泣きした・・・なんていっていいのかわかんないけど、
一番好きな章かもしれない。

773 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 07:02:45 ID:mIvRvbOE0
『鳥谷』『手を伸ばしてやって』『その人は見た目ほど強くないから』
この桧山さんの言葉にマジ泣きしました!本当に優しさがにじみあふれた、
桧山さんらしい言葉だなぁと思います。
子供のケンカみたいな感じで、よかったです
この二人が、生き延びて欲しいです。

774 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/07(金) 21:10:07 ID:2gOPdUeZ0
ひーやん、カコイイ

775 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/08(土) 00:02:57 ID:dZMDRwJi0
矢野にもらい泣きだよ、コンチクショウ

776 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/08(土) 13:28:41 ID:3VxqTshm0
素直になれとりたにいっ

777 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/08(土) 17:34:11 ID:RTVcSM500
みなさんご飯はおいしいですか?

778 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/08(土) 17:34:38 ID:RTVcSM500
大誤爆

779 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/08(土) 21:02:54 ID:XFB9Tj180
保守がてら誤爆にレスすると、最近食が進まない。
夏バテの始まりかもしらん。

780 :542(1/9):2006/07/09(日) 00:09:55 ID:Q763Rqts0
>>764
127.OBたちの行動論 Vol.1:遅い男

 西の空はあかあかと燃え、東の空は澄んだ深縹に沈んでいた。
 紺色の大気にとろりと流されたテキーラ・サンライズが、ブルー・ムーンの湖面に
あでやかな渦を描き、橙と紫の波紋を浮かび上がらせる。それは東へゆくにつれ
てボンベイ・サファイアへ、そしてグラン・ブルーの濃い蒼へと変わっていった。
 秋深まる涼やかな空。そこに絹のようになめらかな薄雲がかかり、発熱する地表
との間に湿った空気をなみなみと湛えている。伊藤敦規(元背番号47)はその目
にも綾なる情景を前に、センチメンタルな気持ちになる暇もなく、ノスタルヂアに浸
る余裕さえなく、暮れなずむ神戸の街中で愛車のベンツを飛ばしていた。
『いきなりどうしたんですか、そんな事訊くなんて』
 携帯電話越しの声は電子の匂いがする。彼とは一週間ほど前に顔を合わせた
ばかりだ。そんなに時を隔ててはいない。
『……アツさん、何かあった?』
 彼まで巻き込むつもりはなかった。だから、それ以上は言わなかった。
 伊藤が頑固なのを彼もよく知っていたから、それ以上詮索しようとはしなかった。
ただ言葉の端々にただならぬものを感じ取っていたようで、伊藤が遠慮がちに、だ
が有無を言わせぬ口調で今すぐ会いたいと告げると、二つ返事で了承した。
『じゃあさ、アツさんの都合さえ良ければ俺のうちに来て下さいよ。今日嫁さんが遅
 いんで、大事な話でも大丈夫ですよ』
(急がないと)
 盗聴を恐れたわけではない―――そこまで手が廻っているとは流石に考えづらかったので―――それでも直接会おうと思ったのには理由がある。
 彼は恐らく今回の『計画』を知らないのだろう。彼にまで知られているのだとした
ら、かなり広範囲の人間が何らかの形で関与している事が予測される。
 得てして、共犯者の増加は情報漏洩の危険性を高めるものだ。
 犯罪計画は(特に素人のそれは)関わる人間が少ないほど成功率が上がるし、
露見するリスクも減る。いたずらに関係者を増やすような真似はしないはずだ。
(でも―――)
 伊藤には、今すぐ警察に駆け込む事だって出来る。
 そうしないのにもやはり理由があるのだ。

781 :542(2/9):2006/07/09(日) 00:11:56 ID:Q763Rqts0
 一つ。警察は死体が出ないと動かない。二つ。伊藤は徹底した現実主義者であ
り、まだこの事態を心のどこかで疑っている。そして三つ。誰がどの程度関わって
いるのかが、託された計画書からは推測する事が出来ない。
 選手たちを助ける為には、誰が敵で誰が味方か見極める必要がある。
 あのクソ真面目で堅物で、曲がった事が大嫌いな、瞬間湯沸かし器の葛西稔
(背番号82)でさえ関係者にされてしまったのだ。今から会う男とて例外ではない。
 フロントガラスに踊り始めた霧雨を見ながら、陰鬱なため息を吐く。
 彼がこんな『計画』を容認するとは考え難い―――それでも、脅迫という手段は
常に念頭に置く必要がある。会って、直接確かめるのが一番だろう。
(それにこの先何が起こるか、解んないし)
 遠山に伝言を遺していった八木裕(背番号3)の、実直そうな顔が頭に浮かぶ。
 ―――足を突っ込んでしまったからには、ある程度の覚悟はしておかなければ
ならないだろう。八木にもそれくらいの心構えはあったはずだ。
 事を構える前に友人の顔を見ておいても、バチは当たらないと思う。
 ワイパーの必要性を感じる前に目的地に着いた。
 愛車と駐禁取締りとの分かち難い関係性に思いを馳せる余裕はなかった。路肩
にベンツを停め、バッグを引っ掴んでポーチへ駆け寄る。チャイムを鳴らしてから
の僅かなタイムラグすらもどかしい―――はずなのに、彼の顔を見るのを恐れて
いるような、奇妙なせめぎあいが伊藤の中にはある。
「アツさん」
 開いた扉の向こうから、長身痩躯の男が顔を覗かせた。
 相変わらずの細面。相変わらずの優男じみた顔。変わらない。何も変わらない。
変わるわけがない―――
「そんなに急いで」
 ああ、とか、うん、とか曖昧に頷く。靴を脱いでふと顔を上げると、彼がティッシュ
ボックスを差し出していた。エリエール。パルプ100パーセント。
 たっぷり数秒間、中途半端に腰を曲げた姿勢のままその意味を考え込んで、漸
く自分の額に汗の玉が浮いている事に気がついた。
「あ、ああ……ごめん、ありがと」
「どういたしまして。ホント久し振りだよねぇ、アツさんがウチに来たの」
 去年は結局来なかったでしょ。残念だったなあ。

782 :542(3/9):2006/07/09(日) 00:12:25 ID:Q763Rqts0
 小さく笑う彼のひょろっとした背中、少し伸びた襟足。ざっくりと編まれた白いコッ
トンセーターの袖口から覗く骨ばった手首。
(……オレの推測が当たっているのなら)
 現在進行形で行われているはずの惨劇。それによって導かれるであろう(少なく
ともそのような意図で計画が作られ、実行されたのだろうから)結末が、彼のこの
後の人生を左右するであろう事は想像に難くない。
 つまり彼から引き出した情報がそのまま、『計画』を阻止する手駒になる事は、十
分有り得るという事だ。
「今コーヒー切らしちゃってて。紅茶でいい?」
「お構いなく」
「ごめんねえ」
 長い手足を窮屈そうに縮め、差し向かいに座る。茶器を扱う彼の慣れた手つき。
注ぎ口から落ちてゆく琥珀の液体。平和な情景だ。血生臭さとは縁遠い。
「なあ、ノブ。……さっきの話なんやけどさ」
 『計画』が本当なら、悠長な事はしていられない。
「詳しく教えて。気になる事とかあったらそれも……なるべく全部」
 言ってから流石に気が差して、差し支えない範囲でと付け加えると、彼は解って
ますよとでも言いたげに苦笑した。伊藤の性格も好みも知っている彼は、カップに
ミルクを注ぎ、茶色と白の角砂糖を一つずつ落として金の匙でかき混ぜる。すっと
引き上げたその先から、キャラメルブラウンのしずくがひたりと落ちた。
「……電話がきたんです」
 ソーサーに載せたカップを伊藤に渡しながら、彼は口を開いた。プリンスオブウェ
ールズの華やかな香りが鼻腔をくすぐり、咽喉奥へと滑り込んでいく。
「1ヶ月は経ってないかな。うん、確か2、3週間くらい前だったと思います。アツさ
 んだから言うんだけど」
 アツさん口堅いしね。一旦言葉を切って、紅茶をストレートのまま一口含み、それ
からすっと視線を合わせてきた。
「ぶっちゃけた話ね。―――来年、合併球団のコーチをやって欲しいって」
(来た……)
 カップを持つ手に力が入る。
 純白の肌に野いちごレリーフの、ミントンのボーンチャイナ。指が緊張を帯びた
せいか、ソーサーとカップがぶつかって、チン、とひどく上品な不協和音を奏でた。

783 :542(4/9):2006/07/09(日) 00:13:18 ID:Q763Rqts0
「まだ詳細は全然詰めてないんだよね。とりあえず、二軍のコーチって事だけ。球
 界再編で悪くなったチームイメージを刷新するためにも、フレッシュな顔ぶれがい
 いとか言われて……でもさ、ちょっと変なんだ」
「変?」
「その電話してきた相手ってのがね、オーナー本人だったんですよ。オリックスの、
 宮内オーナー」
「オーナーが?」
「そう、直々に。普通、二軍のコーチ候補にまでオーナーが電話しますか? 何か
 ちょっと、変でしょ。そこまで気合いが入ってるって事なのか何なのか」
 俄かに話の流れが怪しくなる。甘い液体で唇を湿し、続きを促した。
「そりゃまあ……異例だと思うよ。それで? 宮内さん何て言ってたの?」
「『これからオリックスは変わるんだ、人気獲得のためにもに色々やっていく。もう
 既に手は打ってあるんだ。だから是非、オリックスのOBで阪神も経験した君にも
 手伝って欲しい』とか。えらく意気込んでましたよ。」
 伊藤は無言でカップを置いた。かちゃんと華奢な音を立てたのが耳障りだった。
「でもさ、何かこう……そりゃ、コーチになってくれって言われたのは嬉しいよ。嬉し
 いけど、何か、どこか引っかかるんですよね。微妙にしっくりこないって言うか」
 贅沢なのかな、こういうのって。
 苦笑を崩さずに、だが完全に笑っているわけではない顔で彼は呟く。
「もっと嬉しいもんだと思ってたんですよ、プロ野球の現場からもう一回、自分が必
 要とされるのって。でも何だかなー……そういう気持ちになれなかったんだよね。
 あの人の声とか喋り方、何かちょっと、鼻につくって言うか」
 あの人。
 ―――オリックスの宮内義彦オーナー。
(この『計画』、思ったより根は深いのかも知れないぞ……)
 宮内オーナーと言えば辣腕で知られる人物だ。政財界、産業、金融に証券と多
方面へ影響力を持ち、近鉄とオリックスの合併騒動でも盛んにその影を見え隠れ
させていた。
 仮にその人物が噛んでいるとなると、話がぐっとややこしくなる。彼は法律を作る
側―――要は代議士や官僚、政府筋のお歴々だ―――にも数多の人脈がある
のだろうし、息の掛かった人間だっているだろう。
 黒をグレーに、グレーを白にする力を持っているという事だ。

784 :542(5/9):2006/07/09(日) 00:14:43 ID:Q763Rqts0
(脱法行為も多少の揉み消しも朝飯前やろうな、こういう人は)
 全ては伊藤の仮説に過ぎない。
 宮内オーナーが黒幕の一人だという解法は、あくまで伊藤の推測でしかないの
だ。しかし彼の話と自分や遠山のケースを考え合わせると、何かしら裏があるよう
に見えてならない。それに一度はオリックス―――阪急に身を置いた人間として、
ピンと来るものも確かにある。
 宮内オーナーの紳士じみた容貌に潜む、峭々として冷ややかな鮫の眼を思い浮
かべ、なるほどありそうな話だと伊藤は思った。
 そもそも、興行収入などで年間莫大な(桁がどれくらいかは知らないが、選手全
員の年俸よりは高いだろう)黒字を叩き出すプロ野球チームを、優勝翌年にBクラ
スになったからと言って潰すなど狂気の沙汰としか思えない。まして殺人ゲームな
ど論外だろう。要らないなら売ればいいのだ。伊藤の選手時代、年俸闘争などに
絡んで吝嗇を散々あげつらわれた商魂逞しい阪神がそうしなかったのは腑に落ち
ない。
『計画終了後の予定』
 葛西から東辰也(背番号96)に託された計画書の中の、最後のチャプター。
 伊藤が事件とオリックスの関係を疑ったのは、その項目に引っかかったからだ。
『最後まで生き残った選手は帰る事が出来る』
『その選手と計画に関わったメンバーには、無条件で合併新球団か新生球団への
 入団が約束されている』
 単に球団を消すのが目的だと考えるのは、聊か短絡的だ。
 この常識外れの球団解体計画に対してフォローを入れるからには、合併球団新
生球団共に、阪神タイガースを潰せば得をするという筋書きになっているのではな
いだろうか?
 新生球団はともかく、あのオリックスが端た金でこんな面倒事に協力するとは考
えづらい。金では買えないベネフィットを見込んでの事と考えるのが自然だ。
 真っ先に思い当たるのがフランチャイズの問題である。
 ファン獲得に苦しむオリックスにとって、フランチャイズで喰い合うタイガースは煙
たい存在に違いない。関西地区のファンを獲得出来て、更に球団数を減らす事が
出来れば、これ以上都合のいい展開はないだろう。『計画』に多少、裏で手を貸し
ているのではないかという疑念は的外れなものでもあるまい。

785 :542(6/9):2006/07/09(日) 00:15:07 ID:Q763Rqts0
(こんな事が実際に起こるからには、何かからくりが隠されてるはずだ)
 近鉄は赤字を理由にオリックスとの合併を選択した。
 そして阪神は弱さを理由に、球団消滅を選択した。
 その手段は選手同士の殺し合い。元の世界に帰る事が出来るのは、最後まで
殺し抜いた、たった一人だけ―――
 そんなわけの解らない理屈があるか!
「何か―――何か他に気になる事とか、変な事とか言ってなかった? 何でもいい
 んだ。小さな事でもいいから、思い出して」
「気になる事、ねぇ……うーん」
 もう少し、全体図を描くためのヒントが欲しい。幾許かの動揺を心の中に押し込
めつつ、何か手掛かりを引き出そうと試みる。
「そう言えば」
 と、彼が口を開いた。言おうか言うまいか逡巡するように瞬きをして、伊藤の顔を
ちらりと見る。見て、言葉を続ける。
「『ここだけの話、阪神よりもウチに来た方が将来的にも色々と賢明ですよ』とか何
 とか……最後にちょっと唐突に言ってきたのは、まあ変と言えば変だったかな。
 阪神から俺のところにオファーでも来てたっていうならともかくさ。まあショーバイ
 ガタキだし、相当意識してるって事なのかも知れないですけどね」
「……」
 状況証拠というものは、時に物的証拠よりも強烈なインパクトをもたらす。
「あとは大して印象に残るような事はなかったと思いますよ」
 一息ついて、彼はカップを取り上げたが、伊藤はもう口をつける気にはなれなか
った。所在無く動かした視線が、テーブルの隅に投げ出された煙草の上で止まる。
ハイライト。割合渋い好みだと思う。ピースよりはマシかも知れないが―――
 その青いパッケージを眺めてふと、自分もこの男も、もう若くないのだと思った。
 伊藤は口を開いた。
「ノブ、有難う。ごめん、帰るよ。いきなりごめん」
「え? ちょ、ちょっと、アツさんどしたの」
 自分でもおかしな行動をとっていると解っている。何せここに来てから30分ほど
しか経っていないのだ。前触れもなく連絡を寄越してやってきて、やたら突っ込ん
だ話を要求したと思ったら突然帰ると言い出す、この身勝手さといったらない。
 まるで真夜中にやってきて騒々しくドアを叩く、迷惑な訪問者だ。

786 :542(7/9):2006/07/09(日) 00:15:44 ID:Q763Rqts0
「ごめん。ホントにごめん」
 謝り倒す伊藤を暫くじっと見て、彼はふっと表情を崩した。仕方ないなあ、とでも
言いたげな顔だった。
「……何か大事な用事があるんだ?」
「うん、そうなんだ。ごめん」
 本当にどこまでも人の好い彼に、罪悪感がちくちくと胸を刺す。
 リビングを出るところで何気なく部屋を振り返った。低い猫足ガラステーブルに、
ぽつねんと可愛らしいティセットが一式。半分ほどカップに残ったミルクティの湖面
が名残惜しそうに揺れている。ああ、飲んでおけば良かったかな。
 玄関のドアを開けた途端、びゅう、と頬に強い風が当たった。
「あれ、雨強くなってきたな……車のとこまで送ろっか。傘ないんでしょ」
「大丈夫大丈夫。気、遣わないで」
 ポーチのところまで雨が吹き込んで水浸しになっている。傘を示した彼を制し、無
理に唇の端を上げた。冴えない中年男同士の相合傘なんて、しまらないだろ?
 冗談めかすと、彼はあはは、と屈託なく笑った。
「じゃ、突然ごめん。また今度埋め合わせするよ」
「気をつけて」
 数歩、足を踏み出した。玄関のライトが作る白い光の楕円は、ちょうどポーチの
屋根が途切れるところまで伸びていて、伊藤の革靴を照らしている。秋の空は変
わりやすい。あっという間に陽が落ちた世界はわけもなく暗く、不気味だ。
 伊藤はとめどなく水をしたたらせる空を見上げ、それからゆっくりと地面へ視線を
落とした。足元を囲む白いピンスポット。その縁から先へ、どうしても次の一歩が踏
み出せなくて、震える手で革製のキーホルダーをぎゅっと握り締める。去年、父の
日と誕生日のプレゼントだと言って娘が贈ってくれたものだ。
「ノブ……」
 ―――失うものは、誰だって多い。
「オレたちってさ。結構、付き合い長いよな」
「そうですねぇ。阪急、オリックス、それからちょっととんで阪神か。確かに長いね」
 指を折りながら、チームメイトとして過ごした年数を数えだす彼はどこまでも屈託
がなかった。伊藤はため息をついた。彼は善良だ。

787 :542(8/9):2006/07/09(日) 00:16:15 ID:Q763Rqts0
「オレたちって、友達……なのかな?」
 トモダチ。
 妙に懐かしい響きを持つ伊藤の問いかけに、彼は一瞬だけ面食らったような表
情をして―――そしてすぐ破顔した。
「アツさんがそう思ってくれるなら、そうです」
 優しい奴だ。
「そっか」
「そうです」
「……ありがと」
「何、お礼なんて言ってるんですか」
 軽く後頭部を掻きながら彼は笑う。その襟足を後ろから引っ張ってやりたいよう
な、子どもじみた衝動が伊藤の胸を過ぎった。彼の笑い方はいつでも鷹揚で好ま
しく、嫌みがない。『王子様』と二つ名がつくだけの事はある。
「あのさ、アツさん」
 首を傾げ、視線を落として彼は口を開いた。照れた時の癖だった。
「例えばさ。何か凄く困った事が起こった時とか、そういう時に俺が役に立てるよう
 だったら。―――アツさん、遠慮なんて要らないんだから。何でも言ってよ?」
 後で悔やむのはもう沢山だから。
「ノブ、お前」
「人生何があるか解んないんだし」
 肩を竦めて笑ったその貌が。
「……」
 思わず胸が詰まり、伊藤はぐっと息の塊を呑み込んだ。呑み込んだまま、小さく
小さく、ありがとう、と呟いて、くるりと身を翻す。今度こそ振り返らなかった。振り返
れなかった。そのまま一言も発さずに駆け出していた。
 少し強くなった雨が、肩を、腕を、長めの髪を濡らしていく。小走りに愛車に駆け
寄ると、弾みで撥ね上げた水溜まりの飛沫がジーンズの裾に黒い模様を作った。
肌寒さと焦燥のせいか、キーを鍵穴に上手く差し込む事が出来ず、あっと思った
瞬間にホルダーが指から滑り落ちる。
 慌てて拾おうとして、くっと、締めつけられるような苦しさに襲われた。
 ―――ああ、やっぱり彼に会いに来て良かった。

788 :542(9/9):2006/07/09(日) 00:17:57 ID:Q763Rqts0
「……ホント、頑固だねえ、アツさんは」
 バタン、と車のドアが閉まり、エンジン音が響く。その様子をじっと眺めながら彼
は独りごちた。
「あんな深刻そうな顔して。言ってくれてもいいんじゃない? 何のために、直接会
 いに来たのさ」
 それとも俺じゃ無理って事かね?
 自問して、軽く嘆息する。
 何があったのかは解らないが、伊藤は結局、肝心な事は言わなかったようだ。本
当に頑固な男だと思う。だが無理に言わせる事もあるまい。必要なら彼は必ずそ
う言うはずだ。とやかく言っても仕方がない。
 ただ、伊藤のあんな切羽詰った顔は随分と久し振りに見た気がする。
「心配、だなぁ」
 走り去る車のテールランプを見送って、星野伸之(元背番号34)は雨空を見上げ
た。橙模様はもう見えない。灰色と藍色を混ぜたようなどんよりしたスクリーンが重
く重く、こちらに向かってのしかかって来るだけだった。

【残り37人】

789 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 00:25:56 ID:Gec9xelJ0
来たぜー!
職人さん乙!!!

790 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 00:40:38 ID:jxFRTz5VO
新作キタ━━(゚∀゚)━━!!!
課長、心配だよ課長…

791 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 01:27:45 ID:axci49vz0
殺し合いの現場じゃないのに息がつまるなぁ。
職人様乙です!

792 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 21:44:10 ID:Gec9xelJ0
hosyu

793 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 22:59:25 ID:TUlhk1Ch0
王子萌えです。課長カワイイww でもドキドキ…

794 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/09(日) 23:16:36 ID:WWzXGhDd0
サジッキーが気になるよサジッキー・・・

795 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/10(月) 23:03:36 ID:GR0vik3D0
気になるといえばやっぱり御大の呟いてた言葉だなあ

796 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/11(火) 10:39:59 ID:Gc0t/Rrk0
セッキーとカナザーも気になるお。

797 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/11(火) 11:41:09 ID:x5VYTDRYO
シュウタも気になる。

798 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/11(火) 14:28:23 ID:BjxH3lCe0
現状照らし合江草杉山組は共倒れかorz

799 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/12(水) 00:44:23 ID:hT70LjjP0
保守

800 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/12(水) 15:26:34 ID:hT70LjjP0
800サネ!

801 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/12(水) 22:48:10 ID:l9syBhLjO
☆ゅ

802 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 03:43:16 ID:LMzZd0VfO
新作を期待しながらほしゅ

803 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 09:57:33 ID:2GPbD26W0
          スコココバシッスコバドドドンスコバンスコ  _∧_∧_∧_∧_∧_∧_
            从 `ヾ/゛/'  "\' /".    |                    |
       ?? ≡≪≡ゞシ彡     〃ミ≡从≡=<     うおおおぉー!!!    >
.          '=巛≡从ミ.(▽∀▽; )彡/ノ≡》〉≡.|_  _  _ _ _ _ ___|
.         ゛=!|l|》リnl⌒!I⌒I⌒I⌒Iツ从=≡|l≫,゙   ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨
          《 l|!|!l!'~'⌒^⌒(⌒)⌒^~~~ヾ!|l!|l;"
.          "l|l|(( (〇) ))(( (〇) ))|l|》;
           `へヾ―-―    ―-― .へヾ    ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド


804 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 10:03:25 ID:vjjbr8bC0
なんか知らんけど、激しいなw

805 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 17:33:42 ID:L1KyhsdW0
age

806 :保管庫”管理”人:2006/07/14(金) 15:59:15 ID:fSWlDM4M0
どうも…本当にご無沙汰しています。
とりあえず生きてます。
気づけばもう半年近く保管作業ができてなくて、本当に申し訳ないですorz

まとまった時間ができたので、やっと保管作業に入っています。
まだアップできていませんが、今週中にできればなぁと思っています。
なのでもうしばらくお待ちください…

あと、携帯から見れるようにも頑張ってみます。
何せ話しの数が多いので、いつになるかはわかりませんが…。

それでは報告だけですみませんでした(´・ω・`)

807 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 17:27:48 ID:CmoLkTpE0
>>806
保管庫さん!乙です!
保管作業がんがって下さい!いやもう感謝してます。
ほんまに。いつもありがとうございます。

808 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 21:08:34 ID:hStXZEIq0
>>806
乙です


809 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 21:36:48 ID:qzEAMu9K0
>>806
乙であります!
がんがってください!

810 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 23:25:03 ID:Alt4sJ8A0
>>806
保管庫さん、いつも乙です
大変だと思いますが、楽しみにしています

811 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/15(土) 16:29:29 ID:YCicl9qx0
ほしゅ

812 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/16(日) 00:06:53 ID:C3WE07FC0
保守

813 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/16(日) 20:35:51 ID:IaR9ezfu0
うまい飯が食いたい?
なに言ってんの??wwwwww
ぎりぎりのところで踏ん張って最後に栄光を掴むのが魅せる野球なんだよwww
死ぬのはお前らwww
亡命でもしてあの世にでも逝っちまいなwww日本にはもう入れないような状態になるだろうしなwww
確実性のある強力正義巨人軍が最後は優勝だwww
定番の犬ルトの炎上をせいぜい楽しみな(プゲラ

814 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/17(月) 00:41:58 ID:drkXlXYU0
>>813
アリアスを大金で拾ってまで頑張ってますもんね、
ところでその確実性のある強力正偽巨人軍は今何位?首位でしたっけ?
精々喪服着て蒸し暑い中頑張って下さい。

815 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/17(月) 00:55:16 ID:EjvdLEhB0
>>814




816 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/17(月) 22:57:53 ID:1UKoYbel0
ほす

817 :上戸彩のファン:2006/07/18(火) 21:21:03 ID:MnmJCPWfO
アニキを予約します。

818 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/19(水) 03:54:27 ID:HjqZ4Hn90
ほしゅ

819 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/19(水) 21:50:30 ID:+pT1uhZZ0
井川と御大、気になる

820 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/20(木) 02:26:31 ID:nsYtWhPX0
hosyu

821 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/21(金) 01:24:07 ID:M+pbw6+H0
ほしゅ

822 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/21(金) 01:31:26 ID:fZYme+rz0
保管庫さん更新キタ━━(゚∀゚)━━!!!
乙です!

823 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/21(金) 21:13:36 ID:J2d4+iwZ0
保管庫さん乙です!
ありがたやありがたや…

824 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/22(土) 09:54:33 ID:PnJi4p/C0
保守

825 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/22(土) 15:23:39 ID:cNmo38Or0
ほしゅ

826 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/22(土) 17:58:23 ID:twrc8G990
阪神ファンってチョンが多いよね( ^∀^)ゲラゲラ

阪神ファンってチョンが多いよね( ^∀^)ゲラゲラ

阪神ファンってチョンが多いよね( ^∀^)ゲラゲラ

阪神ファンってチョンが多いよね( ^∀^)ゲラゲラ

阪神ファンってチョンが多いよね( ^∀^)ゲラゲラ

827 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 00:14:54 ID:MCM2RTNG0
いっぺん読み返したらズルズルやめられなくなるなオモシレ〜

828 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 00:29:31 ID:OC2QPRgV0
同意。
読み返しはやめられなくなる。

829 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 22:34:30 ID:/vA6yzHW0
ほす

830 :174(1/6):2006/07/23(日) 22:44:59 ID:oXhJCGk+0
>>788
128.RE-START

 雨の音がする。

 深々と降り注ぐ雨の音を窓の向こうに聞きながら、赤星は何度目かの寝返りを
打った。
(眠れない)
 当たり前だ。――寝ようとしていないのだから。
 万が一にもまだ寝付き切れていない彼らに気付かれないよう、十分時間は取った。
布団の中で待っている間に自分が寝てしまわないかという不安があったが、どうやら
杞憂だったらしい。これから自分がしようとしていることに、脳が緊張感を活性化
させる物質を分泌しているらしく、目は冴えるばかりだった。
 あれから待ち続けた2人は結局帰ってこず、金本の一声でメンバーは就寝の準備
に入った。
 一人ずつ夜番を立てようという藤本の提案を、そこまでする必要はないだろうと
却下したのは赤星だった。
 全員、肉体的にも精神的にも疲れている。このまま秀太と中村が戻ってこないなら、
明日は朝早くから動かなければいけない。今のうちに疲れを癒すべきだともっとも
らしく説得しながら、本来の目的は別のところにあった。
 二室ある畳の部屋に、的場と赤星、金本と藤本に分かれて眠った。さりげなく出口
に近い方に布団を陣取った赤星は、廊下に続く襖に頭を向けて寝ころんでいた。
 うっすらと目を開け、赤星は耳を澄ませた。弱まったと思った雨はまた少しの間
強まり、今また弱まって穏やかな小雨が続いている。
 絶え間ない、雨が薄い木の壁を叩く音。
 それに紛れて、的場の規則正しい寝息が聞こえる。
(よし――)
 決意し、赤星はそっと身を起こした。

831 :174(2/6):2006/07/23(日) 22:45:37 ID:oXhJCGk+0
 夕方のうちに押入の中から探し出し、布団の中に隠していた懐中電灯を握りしめる。
武器はなかった。確か裏口に、中村豊が置いていったフライパンがあったから、あれ
を持っていこう。
『2人が帰ってこなくても、朝まで待とう』
 そう金本と約束をしたものの、湧いてくる胸騒ぎを、赤星は払拭できずにいた。
 極力物音を立てないように部屋を出て、裏口へ向かう。
 外界へ繋がる簡素な出入り口の前に立ち、赤星はこのアジトを後にする時の2人
の姿を思い返していた。
 中村はライフルと探知器を、秀太は拳銃を持って、ここに立っていた。緊張した
面持ちで、しかし決意を秘めた眼差しで。
『まかしといて下さい』
 そう言って自分の胸を叩いた中村の言葉は力強かった。初めて金本たちに連れられ、
洞窟で出会った時のおどおどとした彼とは全く別人のように。
 これはきっと『ゴレンジャー』の力だ。赤星自身も多分、ゴレンジャーに誘われ
なければ、これほど自分らしく行動できていたとは思えない。
 それは多分、藤本も的場も、秀太も一緒だ。
(秀太――)
 緊張しているのか、珍しく口数少なくアジトを後にした同級生を思い出す。
(お前も、無事だよな、秀太……)
 こんな状況にあっても、秀太は秀太らしかった。時に人を笑わせ、時に冷静な意見
を言って――ふざけているように見えて、実は他の誰よりも一歩引いて全体を見通
している。そんな秀太を、赤星は素直に一目置いていた。
(お前は、殺しても死にゃしないよな)
 秀太へ向けた言葉は、そのまま自分自身に言い聞かせている言葉だ。
 己の中の嫌な予感を、ごまかすために。

832 :174(3/6):2006/07/23(日) 22:45:58 ID:oXhJCGk+0
 錆びたドアノブに手をかけ、赤星は大きく深呼吸をした。
(ゴメンな、みんな)
 一人で行こうと思った。
 他のメンバーに迷惑は掛けられない。一人なら。
(ゴレンジャーには金本さんがいる。藤本も的場もいる)
 もしも自分に何かあっても、彼らは道を見失ったりしないだろう。
「赤星……?」
 唐突に後ろからかけられた訝しげな声に、赤星は全身に電流が走ったように、
ビクンと身体を引きつらせた。
「何、やっとるんじゃ」
「金本さんの方こそ……」
 低く抑えられた声には、咎めるような響きが含まれている。
 赤星は極力動揺を押し隠し、ゆっくりと振り返った。
 廊下に立つ人影は暗闇に飲まれていたが、その声と口調を聞き間違えるわけがない。
 一瞬にして跳ね上がった心拍数を抑える努力をしながら、赤星は手にした懐中電灯
のスイッチを入れた。無遠慮に、向かい合う相手を照らし出す。
「トイレじゃ」
 突然の光量に顔の前に手を翳しながら、金本が憮然と応えた。
「そんな物騒なもの持ってですか?」
 光を当てた瞬間、彼が背中に隠した物を赤星は見逃してはいなかった。視線で、
金本が後ろ手に持ったSMGを指し示す。
「それに、トイレは向こうですよ」
「…………」
 容赦のない指摘に、目が慣れてきたらしい金本が無言で赤星を見た。
 えらく情けない顔をしている――と赤星は思った。それは眩しさに目をしょぼ
つかせているのだけが理由ではないだろう。
 そんな彼の表情に、思わず苦笑する。
(この人も、俺と同じことを考えたのかな)
 自分一人ならばと。
 自分という重みを理解し切れていないのは、実に彼らしいと思った。
(俺と、あなたじゃ、重みが違うんですよ)

833 :174(4/6):2006/07/23(日) 22:46:17 ID:oXhJCGk+0
 もしかしたら自分も、ただ自分の重みを理解しきれていないだけの人間なのかも
しれないが。
 金本が気まずげに黙ったのはほんの一瞬だった。すぐに開き直ったように、厳
しい声を赤星に投げつける。
「部屋に帰れ」
「いやです」
「帰れと言うとる」
「じゃあ金本さんも帰って下さい」
「わしは後で帰る」
「後でっていつですか?」
「……」
 押し問答はそこで終わった。深遠のような沈黙が落ち、重苦しい空気が流れる。 
「すみません、金本さん。行かせて下さい」
 大きく息を吐き出し、赤星は改めて頭を下げた。ここで説得されるつもりは
なかった。許されるまで、土下座してでも彼に自分の熱意を伝えるつもりだ。
 自分のやっていることが、彼らを裏切る判断であることは分かっている。それ
でも、このままにはしておけない。一刻一秒でも早く、彼らを見つけ出さなけれ
ばいけない。募り続ける不気味な焦燥感を、拭い去ることが出来なかった。
 深々と垂れた頭に鋭い視線が突き刺さる。赤星の最敬礼を、金本は黙って見下
ろしていた。
「嫌な予感がするんです」
 顔を上げた赤星は、石像のように動かない男の顔を真っ直ぐに見据えた。
「早く行かないと。全部なくなってしまうような」
 手のひらにすくい上げた大切なモノが、砂粒となって指の先をすり抜けていって
しまうような。
 自分の真剣な思いの全てがその視線に宿るように、見つめた金本の顔には苦み
走った何かが浮かんでいた。
「中村さんも、秀太も、俺は失いたくない――!」
 知らずに両拳を握りしめる。絞り出した言葉は、強く握るあまりにスイッチを
切ってしまった懐中電灯の明かりと共に暗闇に消えた。
「ぶっ……」
 返ってきたのは、笑いを堪えきれずに吹き出した音だった。

834 :174(5/6):2006/07/23(日) 22:46:35 ID:oXhJCGk+0
 自分の真剣な告白に似つかわしくない返事に、思わず目を丸くする。
 更にニヤニヤ笑っているらしい金本が大股で近づいてくると、そのまま、赤星の
脇をすり抜けるように通り過ぎた。
「行くぞ、レッド」
 すれ違い様かけられた台詞。
「何があっても明け方までには帰る。これは絶対じゃ」
 その言葉の意味に、赤星はぱっと顔を明るくした。
「了解です、リーダー」
 同時に、その名で可愛がってくれた、和田コーチを思い出す。
 彼は無事だろうか。何の因果かこのゲームに参加者側として巻き込まれて
しまった、打撃コーチの穏やかな笑みが浮かんで消えた。
「リーダーは赤じゃろ」
「金本さんイエローっぽいですね」
「カレーばっか食っとらんぞ」
「誰もそんなこと言ってないじゃないですか」
 軽口をたたき合いながら、裏口のドアを開き、外に出る。雨は緩やかに降り続
いており、これくらいなら傘なしで出かけるにも抵抗はなかった。いくら小雨と
いえ何時間も彷徨いていたら、どちらにしろずぶ濡れになってしまうだろうが。
 懐中電灯の灯りで足下を照らしたところで、背後から声をかけられた。
「抜け駆けは許しませんよ」
 驚いて振り返った赤星と金本は目に、廊下に静かに佇む二つの影が映った。
「絶対、どっちかやると思ったけど両方やるとは」
「俺達置いていくつもりですか?」
 呆れたような口調と共に、大げさに肩を竦める小柄な影。それに追随し、もう1人
がわざとらしく首を傾げる。
「藤本……的場……」
 隣で呻いた金本の声には苦いものが混じっていた。苦みと、笑いが絶妙に混じった
ような――そう、苦笑というやつだ。恐らく、同じ種類の表情を自分も浮かべている
ことは想像に難くない。
 どうやらすっかり行動を読まれていたらしい聡い2人組に、せめてもの意趣返しに、
赤星はライトを直接向けた。

835 :174(6/6):2006/07/23(日) 22:47:08 ID:oXhJCGk+0
「うわっ!? 眩し! 目がー!!!」
 的場は無反応だったが、藤本が悲鳴を上げ理想的な反応を返してくれたことに多少
溜飲を下げつつ、赤星は小さく嘆息した。計画は大失敗だ。
「的場、藤本、すまん……だが俺は――」
「いても立ってもいられないんでしょう? 分かってますよ」
 恐らく引き留めるであろう2人に先手を打つべく口を開いた金本の言葉を奪い、
的場は悟った顔で笑った。
「見逃してあげる代わりに、俺たちも連れて行って下さい」
 こちらは藤本だ。先程まで目を瞬かせていて、的場に台詞を奪われたのが気に入
らなかったらしい。腰に手を当て、人差し指をこちらに向けた妙に演出めいた姿勢
で綽々と言い放つ。
「……しょうがないやつらじゃのう……」
 長々と溜息を吐きながら、金本が大仰に天を仰いだ。
「よし」
 呆れと諦めを4:6くらいでミックスした、さばけた声が場を仕切り直す。
 その声に負けないほど、赤星の気分は空模様に反して実に清々しいものになって
いた。彼らを欺こうとしていたことに対する後ろめたさが払拭できたせいだろうか。
 やはりゴレンジャーはこうでないと、と思う。「こう」がどうなのかは、赤星自身
も具体的には説明できないが、とにかくゴレンジャーは「こう」なのだ。
 今この場をまとめ上げようとしている男が顔を上げ、3人の仲間達を見回した。
 釣られ、赤星も一人一人の顔を見上げた。
 堪えきれない笑いに、ニヤニヤと口端を歪める藤本。
 その隣で、控えめな笑みを浮かべる的場。
 そして、彼らを見回す金本の瞳には、頼もしい彼らを誇る色が浮かんでいた。
「ゴレンジャー、出陣といくか」
『了解』
 リーダーの一声に、三つの声が重なった。

【残り37人】

836 :174:2006/07/23(日) 22:47:47 ID:oXhJCGk+0
保管庫様更新乙です!!
いつも本当にありがとうございます。

837 :174:2006/07/23(日) 22:48:30 ID:oXhJCGk+0
すいません、間違えて思いっきりageてしまった・・・orz

838 :174:2006/07/23(日) 22:50:15 ID:oXhJCGk+0
ageてなかった・・・二度すみませんorzorz

839 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 01:09:48 ID:YRZS7ypO0
ゴレンジャーキタ─wwヘ√レvv~(゚∀゚)─wwヘ√レvv~─!!!!!!
職人様、乙です。

でも、ゴレンジャーが動くってことは秀太が追いつめられて行くってことなんだよな…

840 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 01:14:07 ID:a+E+nOi60
新作キタ━(゚∀゚)━!

職人さんGJ!!そしてイ「www

841 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 09:46:42 ID:Zmy/nrORO
職人様乙です!!

ゴレンジャーよ無事に帰って来てくれ(ノД`;)

842 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 09:53:15 ID:aB+uuWYu0
ぎゃあ新作キタ━(゚∀゚)━!
職人さん乙!
一気に読んでしまった!

843 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 13:57:20 ID:aLj5+m400
新作キタコレ
職人様乙です!
ゴレンジャーの話が読んでて一番安心するな(´Д`)
そして不安でもあったりorz

844 :924(1/5):2006/07/25(火) 00:29:52 ID:mnq5+Saa0
>>835より
129.最後の「攻撃」

衝撃で背中が壁にぶつかり、鈍い音を立てる。
崩れる身体を支えきれず、そのまま床に仰向けに転がる恰好になった。
「く……」
喜田は低くうめき、銃弾が命中した左胸に手を当てた。傷口からは泉のように
血が湧き出ているのが感じられた。
(ああ、これで終わりだな――)
なぜか冷静だった。どうやら、急所は外れたようだ。だが、ろくな治療も
受けられないこの島では、いずれ出血多量で死ぬのがオチだろう。

桟原が木刀を放り出して何やらわめきながらそばに駆け寄ってきたが、
喜田は彼を無視し、自分を撃った張本人に目をやった。
「……どうした? さっさと、撃てよ」
見苦しくあがく気はなかった。人の命を奪って生きると決めた以上、己もまた
同じ選択をした誰かに殺されるかもしれない――と。自分はそれを受け入れた
うえでゲームに乗ったのだ。
だが、悠然とこちらを見下ろす桜井は、覚悟の催促をあっさりはねつけた。
「貴重なタマやのに、お前のために二発も使ってやれるわけないやろ? 
ほっといたら、どうせ死ぬんや」
せせら笑いながら銃を持った右手をこれ見よがしに揺らす。
「アホやな。あのままおとなしく撃たれてたら、楽に死ねたのに」

「ちょ、ちょお待って下さい。今、手当て……」
「やめろ、サジ」
あたふたと立ち上がろうとした桟原を、喜田は即座に止めた。
「……お前なんかの情けは……受けねーよ」
「けど、そんなこと言うてる場合やないですって!」
そのやりとりを黙って見ていた桜井は、急に何か思い出したようにぱっと
奥へ向かって廊下を駆け出した。
「お、おい! どこ行くんや!?」

845 :924(2/5):2006/07/25(火) 00:31:02 ID:mnq5+Saa0
桟原は桜井の走って行った方向と喜田を見比べ、おろおろしながらも自分の
ユニフォームのボタンに指をかけた。
「あ、あの、とりあえず、これで血……」
「やめろ。お前に助けられるくらいなら……このまま死んだ方がマシなんだよ」
「あの……俺、なんか恨まれるようなこと、しましたっけ?」
「そういうことじゃねーよ……」
恨みなどはない。ただ、とことん腹が立って仕方ないだけだ。

「……そうだな。俺を助けてくれる気なら……一つだけ、頼みたい」
あることを思いつき、喜田はそむけていた顔を桟原に向けた。
「あ、はい? なんです?」
ホッと顔を緩ませ尋ねてきた桟原に対し、用意しておいた一言を投げつける。
「俺に……とどめを刺してくれ」
安堵しかけた表情が再び暗転する。そうだろう。こいつにできるわけがない。
だから、言ってやった。

「俺はもう、駄目だ。……今はもう、さっさと楽になりたい」
「そんなん、まだ分かりませんって」
「自分の身体のことは、自分が一番よく分かる。……台所に刃物があるだろ? 
いや、首輪でもいい。もう、手を動かすのもしんどいんだ……」
「そ、そやけど。そんなこと……俺には、できません」
桟原は青ざめた顔で首を振った。予想どおりの展開に、心中でほくそえむ。

「……なるほどな。お前はいいやつなんかじゃない。ただ……卑怯なだけだ」
「卑怯?」
思いがけない言葉だったのだろう。桟原は少し驚いたような表情を見せた。
「殺すのも殺されるのも嫌だって言ったよな。けどそれは、要するに自分が
後味の悪い思いをしたくない……そういうことだろ?」
「それは……」
「違うなら……やってくれるよな? 俺の、最後の頼みだ」
(どうする? 無理だよなあ、お前には)
喜田は返事を待った。桟原は苦悩の色を浮かべ、黙り込んだ。

846 :924(3/5):2006/07/25(火) 00:32:03 ID:mnq5+Saa0
「桟原さん、ちょっとのいてください」
不意に沈黙が破られる。桟原の後ろに、戻ってきた桜井が立っていた。
「そいつにとどめ刺すんで。銃は使いたくないし、まあ、これで」
彼の右手には、銃の代わりに一振りの包丁が握られていた。
「ちょお待てや!」
桟原は慌てて桜井の前に立ちはだかった。
「なあ、こうなったらもう、殺す必要なんかあらへんやろ? これだけのケガや。
今のこの人は、もう俺らになんもでけへん。違うか?」

喜田は相も変わらぬ主張をうんざりしつつ聴いていた。この時ばかりは桜井が
ありがたかった。彼の寝言を平然と否定してくれたからだ。
「これだけのケガやから、手当てしてやったところで、どうせ助かりませんて。
それやったら、はよ息の根止めて楽にしてやった方が親切でしょ?」
「お前……」
桟原はそれきり言葉を失った。顔が見えずともショックを受けていることが
ありありと分かる背中に向かって、喜田は追い討ちをかけた。
「……そのとおりだ。だから俺は、お前にとどめ刺してくれって頼んだのにな」

「喜田さん……」
振り返った彼は、今までに見たことのない苦渋に満ちた表情をしていた。
「桟原さんはなんも気にすることないっスよ? 俺が撃ったんやから、俺が
責任持って始末しますって。そやから、向こう行っててください」
慰めになろうはずもない言葉とともに、桜井が桟原の肩に手をかけて促した。
「ああ、そうだな。何もできないやつは……さっさと行けよ」
この一言が、悄然と立ち尽くす桟原への「とどめ」だった。

「なんで……」
二人から去れと言われては、引き下がるしかない。
「なん、で……。なんで、こんな……」
桟原は両手で頭をかかえこみ、こびりついた悪夢を振り払かのように大きく
何度も左右に振った。そして、よろめくような足取りで階段をのぼっていった。
その打ちひしがれた様子は、喜田の溜飲を少なからず下げた。

847 :924(4/5):2006/07/25(火) 00:33:26 ID:mnq5+Saa0
「さて、と。――ええ気味やな。どんな気分や?」
桜井はしばらく心配そうに桟原を見送っていたが、彼の姿が見えなくなると
喜田の傍らに膝をつき、楽しそうに言った。
「勘違いすんなよ? 俺はお前が気の毒やから楽にしてやりたいなんて、
ほんまはそんなこと、ぜんっぜん思てへんからな。お前なんか、思い切り
苦しんで痛がって死んだらええんや」
喜田は苦笑した。これはこれで、桟原とは別の意味で腹が立つ。自分は
桜井に負けた。だから死ぬ。そのこと自体は仕方がない。それでも、この
生意気な後輩にすんなり命をくれてやるのは、おもしろくなかった。

「だったら……なんでとどめを刺そうとする?」
「しゃあないやろ。死にかけでも生きてるうちは、あの人がほっとかへんし」
(あの人、な)
正直、口をきくのも億劫だ。一秒でも早く楽になりたいと思わないでもない。
だが、どうしても言ってやりたかった。
「なあ、桜井……お前はなんで、あいつにくっついてるんだ?」
「なんで、そんなこと聞くんや」
手にした包丁を無造作に振って感触を確かめつつ、桜井は聞き返してきた。
「……不思議なんだよ。俺と同じで、人殺しなんか何とも思わないくせに、
あいつには……気持ち悪いくらい素直じゃねーかよ?」
「さあ? お前には関係ないやろ」
桜井は包丁を逆手に持ち替えて同じように振り、やっぱこうやな、と小さく
つぶやいた。まともに相手をするつもりはないらしい。それなら――。
「そういや、サジのやつ……さっき、おもしろいこと言ってたよな」

「なんやねん、おもしろいことって」
包丁を構えかけた手が止まった。今度は、乗ってきそうだ。
「お前も聞いてただろ? お前が誰か殺したら……もうつきあいきれんって」
先ほど、みなぎる桜井の殺意を一瞬にしてかき消したあの言葉だ。
「何が言いたいんや」
「……べつに。てことは、お前らもこれで終わりなのかと思っただけで……」
余裕にあふれていた桜井の顔が急速にかげるのを、喜田は見逃さなかった。

848 :924(5/5):2006/07/25(火) 00:34:26 ID:mnq5+Saa0
(ほら――)
狙いどおりの反応に嬉しくなる。何があったのか、桟原は桜井に対して並々
ならぬ影響力を持っているらしい。
「あいつは、はっきり言ってお前のこと……怖がってるからな」
相手の心の揺れを見すまし、また一つ石を投げる。
「お前みたいなヤバいやつとは……本当は、一緒にいたくないんだとよ」
「……ええかげんなこと言うな」
「いいかげんじゃない。……二人になった時、そう言ってたんだよ」
「騙そうとしたやつの言うことなんか、信用するわけないやろ」
桜井は冷静に答えているつもりらしいが、焦燥は隠しようもなかった。

「信じないなら……それでいいさ。けど――」
喜田は視線を桜井から天井へと移した。
「あいつ……ひょっとしたら、今のうちに逃げてるかもな」
つられるように桜井が天井を見上げた。不安がはっきりと見てとれる顔で。
わかりやすすぎる。傷に響くのもかまわず、喜田は声に出して笑った。
「もうすぐ死ぬくせに、なにアホみたいに笑ろてんねん?」
毒づくいらいらした声が、なんとも耳に心地良い。
「お前こそ、なに泣きそうな顔してんだよ?」
桜井は言葉に詰まった。喜田はここぞとばかりに畳みかけた。
「あいつに見捨てられるのが怖いのか? ……心配なら、さっさとやれよ。
もたもたしてると、逃げられるぞ?」

「……やかましい! ふざけんな!!」
きらり、と包丁がひらめく。顔を真っ赤にした桜井が、両手で握ったそれを
額の高さまで持ち上げた。次に、満身の力で振り下ろす。
「とっととくたばれ!!」
喉元めがけて一直線に落ちてくる刃を、喜田は満足して待った。
最後の最後に桜井の怒りと焦りを引き出してやったことで、気分はこのうえなく
晴れやかだった。

【残り36人】

849 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 00:49:01 ID:fOFJd+/U0
職人さん乙です!

桜井と喜田の殺伐ぶりがいいなあ

850 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 01:01:13 ID:YbGTaSaO0
職人様乙です!!!

桟原の今後が気になる……。

851 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 01:01:21 ID:1vYFVxrS0
二日連続新作キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
職人さん乙です!

喜田…っつーかサジと広大もこれからどうなるのかwktkだよ。

852 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 01:51:03 ID:2TYvLbAy0
職人様乙です!

喜田カコイイ!とか思った自分は人として間違っとるのだろうか…

853 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 01:52:50 ID:8CDW256A0
職人さん乙。
キダゴ…
でも桜井とサジは死んだ喜田の掌の上で踊らされる訳だ
続きが気になる

854 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 05:51:04 ID:lkubY4+j0
おおおお、しばらく来てなかったらゴレンジャーが
でもゴレンジャーに何かあったら立ち直れないかもしれない・・・_| ̄|○
読んでて一番救われるし好きな選手ばかりだし・・・ハア

855 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 13:02:50 ID:3TSB7Amj0
>>854
禿同

そして頑張れ広大!(ノД`)
さじっきーが死ぬところとかあっても見たくないなorz



856 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/26(水) 00:03:39 ID:zyW+wjpq0
>>852
桜井カコイイ!と思った自分よりは多分マシだ

857 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/26(水) 01:36:00 ID:WRF/T88L0
ASに主力つぎ込んで疲れさせるアフォ阪神ファン

858 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/26(水) 02:28:46 ID:VUqUlrwT0
職人様乙です!
キダゴ・・・!(つД`)
仲間割れで死ぬのって見るの辛いな・・・orz

856>>
同じく桜井カコイイ!と思った漏れはどうすれば o rz

859 :858:2006/07/26(水) 02:29:53 ID:VUqUlrwT0
そしてまさかの誤爆orz

>>856

でした(ノД`)

860 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/27(木) 18:40:50 ID:TbVkz7bO0
保守

861 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/27(木) 21:35:05 ID:xcw9HDix0
糞打線、ポンコツ引っ込めー
桜井、喜田、林使えー

862 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/27(木) 21:40:55 ID:9OX7tkD20
♪ いいぞ、がんばれ!ドラゴンズ〜 ♪
              ♪ 燃〜えよ、ドラゴンズ〜 ♪
 ♪ チャッチャッチャッ ♪
   ..,-─‐‐-、       ..,-─‐‐-、        ..,-─‐‐-、
 ,-‐_|_ CD__|-‐-、 ,-‐_|_ CD__|-‐-、 ,-‐_|_ CD__|-‐-、
((⌒l ´・▲・` l⌒) )((⌒l ´・▲・` l⌒) )((⌒l ´・▲・` l⌒) )
 ヽニゝ__∀__ 人ニノ   ヽニゝ__∀__ 人ニノ   ヽニゝ__∀__ 人ニノ
 ((( ;;"~;;;"~゛;;)    ((( ;;"~;;;"~゛;;)    ((( ;;"~;;;"~゛;;)
  . ミ;,,_,ミ;,,_,,;ミ       ミ;,,_,ミ;,,_,,;ミ       ミ;,,_,ミ;,,_,,;ミ
            ♪ チャッチャッチャッ  ♪


863 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/27(木) 22:03:48 ID:JvOjGFmY0
ドアラがずれて、いつもにましてキモイ・・・

864 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/28(金) 06:48:21 ID:sEP7uIMs0
ポンコツ打線?楽天を見よ!

865 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/28(金) 19:12:44 ID:cLrHAj2E0
ほしゅ

866 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/28(金) 20:58:10 ID:RpT+dOUi0
藤川を3塁までいかせて、還せず。
糞打線め

867 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/29(土) 02:25:43 ID:8SVjw2o30
ほしゅ

868 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/29(土) 06:13:54 ID:Ii7Hbfqx0
やっとこさ、勝てたわ。
それにしても中日強い。

869 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/29(土) 22:06:31 ID:Vm+6UA+D0
>868
やっとこさ、負けたわ。
それにしても中日強い。

870 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/30(日) 09:26:22 ID:/zNaRX0V0
桜井はバカだから一軍でつかえないのか?

871 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/30(日) 22:24:10 ID:KeGhwYTh0
保守

872 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/31(月) 00:16:29 ID:wBMeGrZu0
捕手

873 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/31(月) 06:14:55 ID:sSjc+9Ci0
藤川3イニング、消極的な岡田采配、疑問

874 :代打名無し@実況は実況板で:2006/07/31(月) 20:08:00 ID:njRW9vCJ0
岡田もねばり強いでえ。
少々のことで、こたえるかいな。

875 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/01(火) 07:16:10 ID:AWoZKB/k0
ほすほす

876 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/01(火) 20:47:29 ID:sHbuKzEA0
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w
★今夜は巨人軍の一発攻勢でダサい阪神なんて即死w

877 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/01(火) 21:07:20 ID:wEZ8Inl40
矢野の配給ミスだ。もったいないねえ。
歩かしてもいいのに、1−3だし。

878 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/02(水) 19:55:35 ID:qm5Pque30
そう全打席、敬遠でもいいくらい。
ところで、阪神の4番は何て名前の人でしたかなあ?????????

879 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/02(水) 22:43:28 ID:hZXDx40m0
         \ 亀 田 ハ カ ッ タ な ? ! / 
 ____________________________
| |llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll|llll| |
| 0.   1   2    3   4. _5_,  .6    7   8   .9   10.|
|                    ( ゚Д゚)                    |
|                 U   つ               .. ...|
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  ̄ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                      U"U

880 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/03(木) 06:17:21 ID:JeppG8vu0
Gに3タテされる可能性大!

881 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/03(木) 21:24:15 ID:CwrXkOMR0
2タテですみました!

882 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/04(金) 20:49:48 ID:Jh2KV3ob0
ほすほすほす

883 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/05(土) 02:27:31 ID:AK9FO7tOO
捕手

884 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/05(土) 14:38:58 ID:ADGjFLtJ0
ほす

885 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/05(土) 23:57:14 ID:2dUsGSXF0
ほっすん

886 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/06(日) 09:15:09 ID:JjiNRtua0
やのほしゅ

887 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/06(日) 20:40:38 ID:oBTcL9Tm0
なんとか勝てるか

888 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/07(月) 02:38:47 ID:89jY5AAa0
あさいもほしゅ

889 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/07(月) 19:48:33 ID:+9q+2d8E0
ほしゅします

890 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/07(月) 22:22:16 ID:9Ntri7dW0
清峰は光南にひどいことしたよね

( ´・ω・`)

891 :924(1/5):2006/08/07(月) 23:57:07 ID:MmV6AU5Q0
>>848より
130.もう一度

中谷仁(背番号66)はF-3の一角にある民家にいた。暗くならないうちにと
森の中をもと来た方向に引き返し、たまたま地図に載っていた寺が実際に
見つかったことで自分の位置が把握できたのは幸いだった。しかし、この島
には自分の知らない禁止エリアがまだいくつもあるに違いないのだ。放送を
しっかり聴いておかなかったことを今さら悔やんでもどうにもならない。
とりあえず今夜はここで寝るとして、やはり誰か仲間が欲しかった。

(仲間、か……)
昨日の今頃は、庄田と一緒だった。もう随分昔のような気がする。あの時は、
本物の殺人ゲームに巻き込まれているなどとは、夢にも思っていなかった。
そして今日――庄田が命がけで危険を知らせてくれなければ、自分も
ただでは済まなかっただろう。彼にはどんなに感謝しても、し尽くせない。
対照的に、その後に遭遇した喜田とのことは、思い出したくもなかった。
仲間だと思っていた同級生が自分を殺そうとした。そのことはもちろんショック
だった。しかしそれ以上に、彼があんな風に自分を見くだしていることに
傷つけられた。一刻も早く記憶から消し去ってしまいたい。

一つため息をつき、中谷は右手で懐中電灯を、左手で1枚の紙切れを取った。
棚にあった本から破り取った1ページである紙片には、初めてまじめに聴いた
夕方の放送の情報が書き込まれている。死亡者は6名。その中には、庄田と
ともにもう一人、同い年の男が含まれていた。
(太陽が……死んだ――?)
チームに8人いる79年度生まれの中では、太陽と自分にだけ妻子がいる。
自分とは違い、今年に入って子どもが生まれたばかりの彼は、喜びに
あふれているように見えた。その幸せが妬ましく思えたこともある。
だが、今はただ彼の死が痛ましく、帰りを待っているであろう家族のことが
案じられた。
(どうやって死んだ? 殺されたんか? 誰が、そんなこと……)

892 :924(2/5):2006/08/07(月) 23:57:46 ID:MmV6AU5Q0
中谷はうつむき、さらに深く大きなため息をついた。
(みんな、どうしてるんや……)
7人いる同級生のうち、庄田は自分が見ている前で殺され、太陽も死んだ。
喜田はゲームに乗った。残るは浅井、萱島、藤原、そして井川だ。朝と昼の
放送はほとんど聞き流していたため、彼らの名が呼ばれたかどうかはまるで
憶えていない。無事でいるなら、彼らの一人として人を殺す側に回っている
とは考えにくかった。そして誰よりも気にかかるのは、やはり井川だった。

(お前は今……どこにいる? そんで、何してる?)
また、心の中で尋ねてみる。
(お前なら、こんなことになっても、たぶん大丈夫なんやろうな……)
井川は肉体的にも精神的にも強い人間だ。加えて一途で、曲がったことを
誰よりも嫌う。おそらく自分なりに力を尽くし、この状況に立ち向かっているに
違いない。中谷が知っている井川――若くしてタイガースのエースの座に
のぼりつめた友は、そういう男だった。

(俺も……できたら、お前みたいに……)
なぜだろう。井川のことを考えていると、自暴自棄になりかけていた気持ちが
おさまり、かすかな希望が見える気がするのだ。あきらめずに生き延びられる
よう努力したい、と。そして生きて帰れたなら、もう一度上を目指して野球に
打ち込みたい、と。
(もし、できるなら……)
もう一度、家族ともやり直したい――と。

その時だった。玄関の方でドアを開ける音が聞こえたのは。
ぎくりとして中谷は耳を澄ませた。秀太も喜田も、突然の訪問者だった。彼らに
襲われた時の恐怖が即座によみがえる。
即座に傍らのリュックを引き寄せ、懐中電灯を消した。用心して部屋の灯りを
つけていなかったのは良かった。しかし、ろくな武器を持たない身では逃げる
しかない。脱出可能なのは古びていかにも立て付けが悪そうな窓だけだが、
音が立つのは必至だ。どうすればいい?

893 :924(3/5):2006/08/07(月) 23:58:24 ID:MmV6AU5Q0
中谷は荷物をかかえて部屋の中を見回し、急いで、しかしできるだけ静かに
押入れを開けた。秀太の時のように、やり過ごそうと考えたのだ。
(なんで、こんなことばっかりなんや……)
わが身の不運を嘆きつつ中に入り込んで息を潜めると、そろそろと廊下を
歩く音が近くなり、不意にふすまの隙間から光が差し込んできた。
部屋の電灯をつけたらしい。

「……誰も、おらんみたいやな」
入ってきた何者かがつぶやいた。それが誰の声なのか、思い出している
余裕はとてもない。
(そう、そうや。誰もおらん。おらんから、早く行ってくれ)
中谷は目を固く閉じひたすら念じたが、その祈りは通じなかった。いきなり
押入れのふすまが開け放たれたのだ。なんの前触れもなく、唐突に。
(――え!?)

「うわあっ!?」
素っ頓狂な声を上げたのは相手の方だった。中谷は身を縮め、両腕で
無意識のうちに顔の辺りをガードした。運が悪いにもほどがある。なぜ、よりに
よって真っ先に押入れを開けてくるのか。もう、おしまいだと思ったその時、
こちらを認識した男がやけに明るい声で言った。
「……あ? 中谷? 中谷やんか!」

「え……?」
中谷は目を開け、おそるおそる腕を下ろした。
「あー、びっくりした。一瞬、死んでるんかと思った。ていうかお前、こんなとこ
入って何やってんの?」
ぽんぽんと言葉を投げかけてくる男は、灯りを背にしているためすぐには
誰なのか判別できなかったが、ユニフォームではなくトレーナーに身を包んだ
藤原通(背番号2)であると分かった。その右手には小さな拳銃が握られて
おり、銃口はこちらを向いている。
(……!)

894 :924(4/5):2006/08/07(月) 23:58:55 ID:MmV6AU5Q0
「え? あ、これ? 心配すんな。今しまうから」
中谷のこわばった表情の原因が自らの持つ銃であると気づいたらしく、
藤原は笑顔でその凶器をポケットに突っ込んだ。
「やっぱり、誰がいるか分からんし。けど、お前やったら大丈夫やんな?」
当然のごとく確認されるが、頭が軽く混乱して何も言えなかった。
「あ、そや! 小宮山が一緒なんや。ちょっと待っててくれ」
返事がないことを気にする様子もなく、藤原は急に立ち上がるとすたすたと
廊下の方へ歩いて行き、玄関に向かって声をかけた。
「おーい、小宮山! 大丈夫やから入ってこい! 中谷がいたんやけど、
こいつやったら心配ないから」

しばらくして、小宮山慎二(背番号60)がおずおずと姿を現した。こちらは
ユニフォーム姿だ。
「中谷、さん……?」
目が合うと、彼はいくぶん表情をやわらげ、軽く会釈した。
「布団かなんかないかと思って押入れ開けたら、中谷がおったんやわ。
なあ中谷、どっかに布団ないか? 小宮山が調子悪いんでちょっと寝させて
やりたいんやけど」
言われてようやく中谷は押入れから這い出たが、すぐには答えられなかった。
突然やって来ててきぱきと場を取り仕切る藤原にただただあっけに取られ、
心を落ち着ける暇もなかった。

「いえ、いいんです。もう、なんともないですから」
小宮山が恐縮した面持ちで言った。藤原は彼の面倒を見てやっているらしい。
となれば、この二人はまず安全な部類の人間なのだろう。
「なあ……藤原」
だが、それにしても、と中谷は思った。
「ん?」
「お前ら、今夜はここにいるつもりか?」
「いたら、あかんのか?」
藤原はなんとも意外そうな表情で尋ねてきた。

895 :924(5/5):2006/08/07(月) 23:59:56 ID:MmV6AU5Q0
「いや、そうやなくて……俺がいるのにいいんかってこと。……なんていうか、
俺のこと、警戒とか、してへんのかなって」
先ほどから藤原はなんの疑いもなくこちらを信じきっているように見える。
そのことにも中谷は戸惑っていた。なにしろ、誰が敵になるか分からない状況
なのだ。相手に戦意があるかどうかを見抜くことは容易でないが、自分に
その気がないと分かってもらうことも同じくらい難しいに違いない。藤原がなぜ
こうも素直に自分を信じてくるのか、嬉しくないわけではないが、奇妙に
思えた。もっとも、押入れに隠れていた男など恐れるに足りないと考えて
いるのかもしれないが。

「当たり前やんか。お前は俺らと一緒やろ? 信用できるやつやろ?」
疑いなどかけらほども抱いていないといった顔で藤原は確認してくる。
その目の異常なほどの曇りのなさに中谷はどぎまぎした。
「それは、その……俺が仲間になってもええってことか?」
「うん。どうにかして助かる方法を考えようと思ってるんやけど、仲間は多い
方がいいやろ? お前やったら大丈夫やし」
「そっか……」
中谷はようやく心から安堵した。自分はまだ、天に見放されていなかった、と。
そして、庄田が殺されて以来はじめて望んでいた仲間ができたことを喜んだ。
小宮山が自分たちのやりとりをどこか不安げな眼差しでじっと見ていたこと
には、気づくはずもなかった。

【残り36人】

896 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/08(火) 01:44:04 ID:hYzA7kCq0
職人様乙です!

根拠もなく強力に信じられると
その勢いに押されて自分も根拠なく
相手を信じてしまうんだなぁ…

897 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/08(火) 05:49:24 ID:Po9lsAIm0
職人様新作投下乙です!

>>896
禿同。考えさせられた。

これからのコミーが心配だよorz

898 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/08(火) 21:27:48 ID:MBN+v0II0
まだまだ5ゲーム差

899 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/08(火) 23:58:08 ID:3X/vApo00
乙です!

う〜ん、藤原にとってはどこまでが「俺らと一緒」なんだろうか

900 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/09(水) 10:31:31 ID:SkFql9Of0
\\ ボーイズビーアンビシャ〜〜〜ス               //
   \\            ボーイズビーアンビシャ〜〜〜ス//
       _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.
     ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
     (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡
    _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.     _ _∩.
  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡  ( ゚∀゚)彡
  (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.   (  ⊂彡.
   |   |     |   |     |   |     |   |    |   |     |   |     |   |
   し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.    し ⌒J.   し ⌒J.   し ⌒J.    し ⌒J

901 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 02:19:04 ID:Ef843/rQO
保守

902 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 17:03:05 ID:t6LluHSeO
捕手

903 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 20:04:36 ID:rW3pk5EU0
アリズミ、おまえが退場じゃ。
審判の勉強しなおせ。

904 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 20:06:18 ID:2nkVUDzI0
明らかなミスジャッジ 
主審は処分されるべし!!

905 :ファン:2006/08/10(木) 20:06:46 ID:ESF92ATM0
審判なにもんやねん!!あいつら全員解雇したれやーー

906 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 20:07:25 ID:VetTu6f/0
ありえない

907 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/10(木) 20:11:28 ID:/0KgxUQb0
ぶっころ

908 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/11(金) 16:54:57 ID:dtQlBbWH0
もなー

909 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/11(金) 19:23:48 ID:ns6KWk5O0
リー即ツモYou were mine 4000-2000でしゅね

910 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/11(金) 21:22:11 ID:qdIBUbhXO
266:「名無しわざとか?」とかイヤミを言われた :2006/08/11(金) 16:21:19 ID:OJKnEgiO [sage]
アリの巣コロリってあるじゃん。
蟻の行列にポンと置くと、一瞬ビックリして列が乱れる。邪魔だなと言わんばかりに迂回する列が出来る。
そのうち好奇心旺盛な一匹がアリの巣コロリに入る。そいつをマネして何匹も入る。毒とも知らずにツブツブを運び出す。
一匹が一粒づつ。いつのまにか行列はアリの巣コロリが折り返し地点になる。黄色い粒と黒い蟻が作り出す模様は綺麗で見てて楽しい。
一匹が一粒づつ、丁寧にせっせと毒の粒を運ぶ。せっせと、せっせと、せっせと、せっせと。蟻さんって働き者だなと思う。
俺も頑張らなきゃなと思う。次の日、あれほど沢山いて俺を困らせた蟻が一匹もいない。
ほんとにいない。探してもいない。泣きたくなった。                   このレスを見た人は4日後にあなたの大切な人がいなくなるでしょう・・・・それが嫌ならこのレスを5つの板にコピペしてください。 信じるか信じないかはあなた次第です。

911 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/12(土) 08:45:47 ID:lus70V4R0
ほすほす

912 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/12(土) 20:52:42 ID:jJEaveLC0
消化試合中。

913 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/13(日) 16:29:31 ID:kPiXOmLa0
パリーグのほうが、プレーオフあるから面白い。
セは阪神までが消化試合。

914 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/13(日) 22:17:08 ID:OIMqN4/h0
捕手

915 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/14(月) 17:01:39 ID:ILfD5Vaz0
捕手

916 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/14(月) 20:29:20 ID:3nUgzH0G0
ほす

917 :924(1/4):2006/08/15(火) 00:30:33 ID:2umjRUKA0
>>895より
131.違和感

「……やっぱりな。控えでも、秀太さんも一軍の人間やもんな」
藤原は深く得心した様子でうなずいた。中谷が秀太の襲撃を受け、庄田を
殺された過去について語り終えたところでのことだ。普段の秀太からは想像も
つかない変貌を今なお心のどこかで信じられずにいる中谷にとって、藤原が
まったく驚きもしないことはかなり意外だった。
「一軍の人間やから、どうかしたか?」

「一軍で活躍してたくさん稼いでる人にしてみたら、俺らみたいな二軍の人間
なんか、虫けらみたいなもんやってこと。普段はそんな素振り見せんでも、
こういう状況になったら途端に本音が出る。そやから、そんな簡単に殺して
しまえるんや。どうでもいいからなんや」
徐々に語気を強めながら、藤原は一気にまくし立てた。
「いや、それは――。……そうかもしれんな」
いささか乱暴な言いように異を唱えかけたが、ふと考え直して同意した。
――お前は生きてたって仕方ないだろ?
同級生にすらあんな風に見られていた自分だ。一軍で華々しく活躍している
選手にとっては、確かに虫けらにも等しいかもしれない。

「そやろ? そんなやつらなんか、ハナから信用できるわけがないんや」
わが意を得たりと藤原は続けたが、中谷の思いは別の所へそれて行った。
(井川も――そうなんやろか)
「信用できんのは一軍のやつらだけやない。外人もや。所詮は出稼ぎ感覚で
阪神に来てるやつらやし、チームメイトの絆もくそもない」
もがき続ける自分をよそに、一人はるかな高みへと飛び去って行った井川。
彼の存在は、この絶望の中で自分の支えとなった。しかし、本当は向こうに
してみれば、自分などそれこそ虫けらのようなものではないだろうか。
井川なら道を踏み外さないとは自分が勝手に思っているだけで、もしどこかで
出会えば、彼は簡単にこちらを殺そうとするのではないか?

918 :924(2/4):2006/08/15(火) 00:32:51 ID:2umjRUKA0
「ていうか、あいつらはそもそも俺ら日本人とは物の見方とか考え方が
根本的に違う。そっからして、あかん」
(いや、そんなはずはない。井川は――)
「俺は一軍のやつらと外人はみんな敵やと思ってる。正直、あいつら全員
殺しても構わんと思ってる」
(井川は、そんなやつやない……)

「中谷? 聞こえてるか?」
反応のなさに業を煮やした藤原が身を乗り出してきた。
「え? ああ、うん」
ほとんど聞いていなかったが、適当に返しておく。見ると、かなり興奮して
話していたようで、藤原の顔は赤かった。彼は一息つき、最後を締めた。
「結局、俺らが頼れるのは同じ立場の人間しかおらんってことや。小宮山と
お前に会えて、ほんま良かったわ」
「そやな……。俺も、良かったよ」

小宮山の名が出たところで、中谷は先ほどからおとなしく正座している彼に
目をやった。先輩二人の傍らで縮こまり、居心地悪そうな様子が不憫だ。
「小宮山、大丈夫か? なんか、具合悪いらしいけど」
中谷が気遣って尋ねると、藤原も声をかけた。
「そうや。やっぱり横になった方がいいんと違うか?」
「いえ、大丈夫です。ほんとに、平気です。……何ともないです」
小宮山は首を横に強く振ったが、表情はかたく、顔色もさえない。

「そうか? ならいいけど、ほんまにしんどかったら遠慮せんと言えよ。
――ところで、お前らの方はいつから一緒にいるんや?」
藤原に話題を振ると、彼は待ってましたとばかりに話し始めた。
「えーっと、会ったのは今日の5時くらいやったかな。それがなあ、小宮山が
久保田に騙されて危ないとこやったんや」
中谷は気づかなかったが、小宮山の青白い顔からさらに血の気が引いた。
(久保田?)
その名を、7時の放送で耳にしたことが引っかかった。

919 :924(3/4):2006/08/15(火) 00:35:25 ID:2umjRUKA0
「自分で言うのもなんやけど、俺が来てへんかったら小宮山がどうなって
たんかと思うと、ほんまぞっとするわ」
藤原は嬉しそうに話すが、中谷の心中は徐々にざわつき始めていた。
「久保田って……さっきの放送で呼ばれてたよな」
もしかして、彼の死には藤原が関与しているのでは――そんな考えが頭を
かすめた時、目の前の男はこれ以上ない明快な答えをよこした。
「そら、俺が殺したから」

「え?」
聞き取れなかったわけではない。恐るべき意味を持つその台詞があまりにも
簡単に、そしてなめらかに発せられため、思わず確かめたくなったのだ。
「俺が殺したから。久保田を」
藤原はさらりとした調子でこともなげに繰り返した。
「殺した? ……お前が?」
後ろめたさなど微塵も見せず、むしろ誇らしげにさえ話す同級生に対し、
中谷は驚きのみならず恐怖を感じた。その色を見てとったらしく、藤原は一転
して悲しそうに表情をゆがめた。
「なんやな……そんな顔すんなよ。仕方ないやんか。やらんかったら、こっちが
やられたんやから。な?小宮山」

「……あ、はい……。あの……」
急に水を向けられた小宮山は弾かれたように肩をすくめると、ほとんど消え
入りそうなか細い声で答えた。
「そ……うなんです。……藤原さんが、来てくれなかったら、俺は……」
そこまで言ったところで小宮山はうつむき、右手で口元を押さえた
「俺……は……」
その先はもはや言葉にならなかった。声の代わりに涙がこぼれ落ちた。
「あー、もう。小宮山、泣くなって!」
藤原は小宮山の肩に手をかけ、やや強引に引き寄せた。
「ショックなんは分かる。お前はあいつのこと本気で信用してたんやもんな?
騙されてるとも知らんと」

920 :924(4/4):2006/08/15(火) 00:37:43 ID:2umjRUKA0
優しく小宮山を宥める藤原を、中谷は不思議な気持ちで見ていた。今こうして
後輩に対して思いやりを見せる姿におかしなところはない。にもかかわらず、
すぐ前にいる彼がどこか遠い世界にいるかのように思える。それは、彼が
殺人という自分が経験したことのない禁断の行為に手を染めたからか。
「中谷、お前は色々あっても、ここまで誰も殺さんと来たんやろな」
小宮山の背をさすってやりつつ藤原が聞いてきた。中谷は内心の動揺を
抑え、まあな、と短い言葉を返した。すると、相手は即座に切り出した。
「けどな、ほんまの敵に会ったら、どうしてもやらんとあかん時かてあるんや。
俺は、その覚悟はできてる。けど、小宮山はそうやないから、俺が守って
やらなあかんと思ってる。お前は、どっちや?」

「俺は……そんなこと、考えもせんかった。だいたい武器がショボかったし」
秀太の凶行を見ても、逃げるという発想しか浮かばなかった。喜田には
煽られてつい向かって行ったが、殺してやろうという気はなかった。
「はっきり言って、武器の強い弱いは関係あらへんぞ。気持ちの問題や。
俺かて最初はベルト一本だけやった。それでも、何とかしようと思った」
再び、藤原の口調が熱を帯びてくる。
「そういうことやったら……俺にはお前みたいな覚悟はないんやろな」
「なら、お前は俺が守ってやる。お前も、小宮山も、俺が守る。そやから、
お前も俺を裏切ったりせんよな?」
自分を見すえる真剣な眼差しには、有無を言わせぬ迫力があった。

「ああ、もちろんや。……よろしく、頼むわ」
言いながら、中谷は何か釈然としないものを感じていた。藤原の言うことにも
理があり、よく分かる。しかし、たとえ正当防衛だとしても、人ひとり殺したと
躊躇なく言い放つ感覚に、自分とは相容れないものを感じていた。
(いや、考えすぎやな……)
恐れる必要はないはずだ。彼は自分を信用してくれており、守るとまで言って
くれているのだから――。中谷は懸命に不安を打ち消そうとした。
小宮山は下を向いたまま声を殺してはいたが、依然として泣き続けていた。

【残り36人】

921 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/15(火) 05:58:22 ID:zizHmQyr0
職人様乙です!

中谷ー!気付け〜気付くんだ〜!!

922 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/15(火) 14:48:41 ID:ao8Pja3f0
乙です!

なんかもうコミーがかわいそうすぎるよ…

923 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/15(火) 19:20:38 ID:6jt38FYh0
おお、新作〜!
職人さん、お盆にもかかわらず、お疲れ様です。

コミー、マジでかわいそうだな。


924 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/16(水) 08:55:30 ID:gsrApnRz0
ほす

925 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/16(水) 14:47:59 ID:rf3gUulF0
職人様乙です!
藤原が怖い……この純粋さが怖いよ……。

926 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/17(木) 04:33:54 ID:n0UmLFxs0
ほほほほす

927 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/17(木) 23:58:32 ID:n0UmLFxs0
わかなほしゅ

928 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/18(金) 14:02:28 ID:C+25YCEp0
職人様乙です!
あかん、中谷気付けー!
ああでも藤原も不憫といえば不憫やし・・(´Д`;)

929 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/18(金) 16:22:50 ID:FQwI5jRe0
藤原本人には一切悪気ないからなー
むしろ善意から出てる行動・・・

930 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/18(金) 21:10:41 ID:GW+HGh5X0
捕手

931 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/18(金) 22:29:41 ID:gWPNvVNs0
岡田監督さん、潔い身の処し方をしてくださいね。
ファンの精神衛生上のためにもお願い申し上げます。

932 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/20(日) 03:05:57 ID:GuC8FCAeO
保守

933 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/20(日) 21:57:08 ID:M4zwdsSt0
きどほしゅ

934 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/21(月) 08:34:35 ID:tVTiMcq+0
たぶちほしゅ

935 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/22(火) 06:02:21 ID:H+G9fG5k0
ヤヴァイ。保守

936 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/23(水) 00:14:02 ID:HmbbtlUd0
hosyusyu


937 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/23(水) 20:07:14 ID:2yIqSzea0
こみちゃん=ほしゅ

938 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/23(水) 22:55:44 ID:xcYvBCWK0
e

939 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/24(木) 21:09:56 ID:2PhoxlYn0
捕手保守

940 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/24(木) 23:23:19 ID:sdojkrom0
ほしゅ

941 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 02:27:26 ID:JO6QDkKgO
保守

942 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 17:47:34 ID:JNu8YgAf0
福原頑張れよ〜上原に負けるなよ〜

943 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 18:00:02 ID:JNu8YgAf0
福原頑張れ

944 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 18:03:47 ID:BmWAEx+EO
(;´д`)=3
今岡…

945 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 18:06:29 ID:JNu8YgAf0
金本1発頼むぞ^

946 :虎虎虎 ♦Mr/Tigers:2006/08/25(金) 18:08:41 ID:ibwiz37w0
保守

947 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 18:18:11 ID:V1XyzevW0
ずさんな阪神岡ちゃん三くだり半の真相は…
25日に50歳の誕生日を迎えた岡田監督が阪神タイガースを去った。
現在2位に沈む成績不振の責任を取った形だが、背景にはフロントとの埋められない溝があった。
選手への愛着とフロントとの確執。そのはざまで孤独感を強めた末の決断。辞
任経緯の説明さえチグハグなフロントの発言に、
阪神低迷の原因が垣間見える。(夕刊フジ)

948 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 20:31:41 ID:iT+/GkRD0
岡田は頭が悪い。勝つ野球をせな。
まあ辞任は望むところ。

949 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 20:50:30 ID:sssZWtdD0
         _________
      ,.r‐''''...................-、
    /:::::::::::::::::::_ ::::::::ヽ
    !::::::::::::::::::::::}十{::::::::::::::i
    !::::::::::::::::::_,,、-'''''' ̄ ̄`'ヽ
    |ミシ ̄ ̄__,,,〜,__ !'''"
   .(6ミシ  ,,(/・)、 /(・ゝ |
     し.    "~~´i |`~~゛ .i
      ミ:::|:::::........ f ・ ・)、 ...:::i
    ノ_ヽ::::::::::::-=三=-:::/
  /| | |\ヽ:::::::::::゛::::ノ/
/| | | | |\ ̄ ̄ ̄ | | \
岡田彰布:阪神タイガース永久監督。


950 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/25(金) 21:44:52 ID:AJHWrzQ20
__ _________
  r | |――┐  r――  ヽ
  L.! !_∧_∧ Li__   \
  ._| |(  ゚∀゚) ||____    \_              (~ヽ       .. .
 (_| |/   /つ⌒ヽ  i     \)         /⌒ヾ .\\_   :・:∵:
    \ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄"''' - ..,,  人 /⌒ヾ / \\ ̄ヽ∴: ゲハァッ
  _  \_/⌒ヽ________/⌒ヽ  て   / ノテ-ヽ( 。Д。)二二つ  
    ヽ      _ノ r―――─―――┐ _ノ ドカッ/ / /   ∨ ̄∨
     |  ____| 三三三三三三三.|__l__    / / | |
  | ._|--[_______________] / __) ノ )
 ノ.|  |    ===========[___]======='   ー'    し'
_ノ_ノ               ヽ__ノ_ノ

951 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/26(土) 00:01:23 ID:zsoH2AFU0
スレが伸びてるから来てるのかと思って正座してみたらorz

952 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/26(土) 21:07:43 ID:4EsKaQ70O
ほしゆ

953 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/26(土) 21:08:33 ID:4EsKaQ70O
星由

954 :174(1/6):2006/08/26(土) 23:54:26 ID:b/NLDqvp0
>>920
132.橙火

「お、雨が上がってきた」
 最後尾を歩きながら、ひたすら雨に泣き言を言っていた藤本が浮かれた声
を発した。
 その声につられ、赤星も頭上を仰ぎ見る。
 西の空を見上げると、はるか向こうの空で分厚い灰色の雲がぷっつりと
途切れていた。藤本の言葉通り、降り注ぐ雨もまばらになってきている。
時折、思い出したように小さな水粒が頬を打った。
 上空の風も強いようなので、しばらくすれば月明かりも拝めることだろう。
 家を出る時から少しずつ弱まっていたとはいえ、天候の回復は夜間の人捜
しには僥倖だ。
 排ガスに覆われた都市とは違い、ここで見る星空はまさに満天の、という
形容詞が似合うはずだ。だが残念ながら、今は天体観測に胸を躍らせていら
れるような気分ではなかった。
 殺し合いとか、そんなものとは全く縁のない状態で、このメンバーで星
を見に来たらきっと面白かっただろう。そういえば、優勝旅行で行った
オーストラリアの夜空も美しかったと、赤星はつかの間の追憶に浸った。
「おい的場〜、本当に豊が山に登るって言ってたんかよ?」
 先頭を歩く的場と金本に向かって、藤本が疑問符を飛ばす。
「はい、確かこっちの山の方に行ってみるって、二人でちらっと話して
ましたよ。気が変わってたら定かじゃないですけど」
 応えた的場の声はしっかりしたものだった。そう言われてしまえば、
手がかりは今のところそれしかないのだから、ただひたすら雨に濡れて
足場の悪い坂道をえっちらおっちら上がっていくしか自分達に為す術はない。
 とはいえ、もうかれこれ一時間近く探索を続けており、藤本が宛もなく山道
を歩くことに疑問を抱きだしてもおかしくない頃合いではあった。

955 :174(2/6):2006/08/26(土) 23:55:05 ID:b/NLDqvp0
 そもそも人を探すのに民家に向かうのではなく、山を登ったという情報も、
最初は半信半疑の部分があった。
 あの面倒くさがりの秀太が、わざわざしんどい山道を選択するとは意外
だったからだ。元気な中村豊の方が、何事かを閃いてごり押ししたのかも
しれない。
 登るとしたら比較的緩やかで歩きやすい道だろうと推測し、広い山道を選
んだ。何か手がかりはないかと周囲、足下を一円玉一つ見落とさない気構え
で睨め付け、一行は真夜中の登山を続けていた。
「中村さんの話だと、こっちの方角に探しに行くって言ってましたよ」
 だんだん不安になってきているチームメイトの雰囲気を察したのか、的場
が安心させるように力強い口調でだめ押しする。
「それに俺、こういう鼻は効くんですよ」
 有り難い言葉だが、この状況で慰めになるかどうかと言われれば微妙だ。
 しかし、疲れているのも不安なのも彼だって同じはずだ。それでも、ずっと
先頭に立って歩き続けている的場の気持ちが嬉しかった。
「そうだな」
(俺が言い出したんだら、俺がちゃんとしなきゃ)
 せめて彼の気持ちを裏切らないように、大きく頷くと、赤星は歩を早めて
先頭に並んだ。
「うわっ!?」
「あ、すみません」
 唐突に、ピタリ――と立ち止まった的場に、すぐ後ろから追い上げていた
赤星が思わず悲鳴を上げる。
「どうした?」
 同じく足を止め、問いかける金本。謝罪した的場が、きょろきょろと辺り
を見回していた。
「いえ、ちょっと……何か、今――」
 要領を得ない言葉を口にしながら、懐中電灯で足下や周囲の木々を照らし
出す。何かを見付けたのだろうか? 赤星はこれといって何も気が付かな
かったが、少し注意が散漫になっていたのは確かなので、見逃していない
とは言い切れない。

956 :174(3/6):2006/08/26(土) 23:56:14 ID:b/NLDqvp0
 一見したところ、そこは何の変哲もない山道の途上に見えた。しかし、
「おわっ!? 怖!」
 道脇を照らした途端、追いついてきた藤本から叫声が上がる。
 右手は急な傾斜になっているらしい。一歩踏み出して見下ろすと、黒々と
した闇がどこまでも広がっている。この時間帯では、下までどれくらいの
距離があるのかは判断できない。
「まさか、ここから落ちたんじゃ……」
 藤本が青ざめた顔で縁起でもないことを口走る。
「そんなこと……第一、何でここに……」
「これ……!」
 赤星の疑問を遮り、別の方向から後輩の声が飛んだ。
 懐中電灯は今のところ二つしかない。赤星がそのうちの一つで崖下を照らし
ている間に、的場は別の場所に移動して周囲を探索していたらしい。山道を
囲う木々の一本を照らし、その幹――ちょうど、人の頭の高さ辺りを凝視して
いる。
「銃痕……?」
 駆け寄った金本から発せられた単語に、その場の温度が数度下がった。
 早速、金本が民家からくすねてきたナイフを取り出し痕の周りの幹を削る。
ものの数分としないうちに、リーダーの掌に鉛の球が転がり落ちた。
 木の幹に穿たれた銃痕。
 この山に来たらしい二人の仲間。――その途上に残された銃撃の痕跡。
「これだけじゃ、何も分かりませんよ」
 嫌な予感がメンバー全員に巡った時、思いの外冷静な声を押し出したのは
藤本だった。
「秀太さんと中村豊さんが襲われた証拠にはならない。もう少し、探して
みましょう」
 その通りだ。たまたまここを通りかかった別の誰かが、別の誰かに狙撃
されたのかもしれない。それはそれで歓迎できる事態ではないが、今自分達
が探している二人が全く関係していない可能性だって十分にあり得る。
 藤本の提案に全員が頷き、かくして一帯の捜索が開始された。

957 :174(4/6):2006/08/26(土) 23:57:14 ID:b/NLDqvp0
 幸か不幸か、それが捜し人達が残したものであることが判明するのに、そう
時間はかからなかった。
 銃痕が見つかった木の近く――繁みの奥に、見覚えのある探知機が転がって
いたのである。
 同じ支給品を持っている人間がいないとも限らないが、ここはほぼ彼らと
断定しても問題はないだろう。
 銃痕と、その近くに放り出された、彼らにとってとても大切なはずの探知機。
 手がかりを発見して喜ばしいはずが、それが意味することを予測し、辺りに
沈み切った空気が漂う。
「大丈夫ですよ」
 自分自身に言い聞かせるように、赤星は呟いた。
「2人とも、生きているんですから――」
「ああ」
 金本が力強く同意する。そのことに安堵しながら、赤星は現状を頭の中で
復習した。
 定時放送を信じるなら、まだ彼らの死亡は告げられていない。
 だがそのことに、違和感を覚えているのも事実だ。
(生きているのに2人とも帰ってこないというのはどういうことだ?)
 ここで何者かに襲われ、逃げ出して、動けるだけの力があるなら、2人とも
帰ってきていいはずだ。
 はぐれたのか? 探知器も落としているくらいだ。何か不慮の事故があって
戻って来れないのかもしれない。2人とも? はぐれた2人が2人ともコンパス
を落としてしまって戻ってこれない――そんな都合の良いシナリオを赤星は頭
の中で破り捨てた。
 あるいは片方が動けない重症を追って、もう片方がそれを担いで近くで休んで
いるのかもしれない。その可能性はあった。
「この近く、探しますか?」
「そうじゃな」
 物騒な話だが、血痕でもあれば後を辿るには分かりやすかったかもしれな
い。暗くてよく見えないが、懐中電灯で辺りを照らしたところ、それもなさ
そうだった。これは喜んだ方がいいだろう。……どっちにしろ、昼間のもの
なら雨で流れている可能性が高いが。

958 :174(5/6):2006/08/26(土) 23:57:45 ID:b/NLDqvp0
「おかしいな、この辺りにはいないみたいですね」
 さらに捜索範囲を広げて、それこそ草の根まで掻き分けて探したにも関わ
らず、彼らの姿も、その痕跡すら残ってはいなかった。
 明らかに困惑の色を浮かべた的場が首を傾げる。
「金本さん!」
 その時、何かを見付けたらしい藤本の声が響いた。
 手招きしてくる彼に三人が近づくと、何やら白い紙切れを持ち上げてくる。
「これ秀太さんの地図ですよ。この落書き見たことありますもん」
 地図の端に描かれた不細工なイラストを指さし、藤本が確信に満ちた声で
告げる。
 思わず、赤星は乱暴にそれを取り上げて隅から隅までを観察した。だが、
下手くそな落書きがされてある以外は、禁止エリアなどのメモがされている
だけで、何もメッセージのようなものは残っていない。
 都合のいい期待が敗れ去り、赤星は肩を落として地図を握りしめた。
(秀太――)
 同級生の顔を思い出す。真っ先に浮かぶのは、自分とは正反対の飄々と
した笑顔だ。今その彼が、どんな顔でどんな局面を迎えているのか、赤星
には想像することが出来なかった。
 雨に濡れてよれよれになった紙切れから、彼の残滓を読み取ることは出来
ない。
 しかし水を含んだそれが、重量以上に重みを持っているように感じて――
根拠のない不安が、胸の内で膨らみ続けた。
(お前に、何が起こったんだ?)


「あ……」
 赤星の意識の中に、藤本の奇妙な声が割り込む。
 具体的に言うならば、幽霊かUFOでも目撃したかのような――声を出して
いるのか詰まっているのか飲み込んでいるのかよく分からない、奇妙な声。
 それが気にかかり顔を上げると、同じ感想を持ったのだろう、同時に金本も
胡乱な目を声の主に向けた。

959 :174(6/6):2006/08/26(土) 23:58:41 ID:b/NLDqvp0
「どうしたんじゃ? 猿、アホ面……」
 ひっさげて――と続くはずの憎まれ口は、リズミカルな破裂音に遮られた。
夜の静寂に轟いた穏やかならぬ音に、今度こそ間違いなく、全員が同じ方向
を向く。
 藤本が両目が転がり落ちそうなほど見開いて凝視していた方向――小高い
山の中腹から見下ろせる、夜の島の中央に。
「今、何かオレンジ色の光が……爆発?」
 しばたたく目に、驚愕の色が浮かぶ。藤本の説明を聞くまでもなく、次の
瞬間、昼のような輝きが起こり4人の顔を照らした。
「なんだ……?」
 一拍遅れて届く、爆音。
 島の中央にも程近い森の中――この島の心臓部とも言える体育館近くで
瞬いたオレンジ色の光を、4人は声も出せずに見守っていた。
 暗い森の一部で、炎が揺れていた。

【残り36人】

960 :代打名無し@実況は実況板で :2006/08/27(日) 00:09:01 ID:enB55pnL0
職人様乙です!
爆音ってことは三東か?三東なのか?(つД`)

961 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 00:50:07 ID:2fqtP7n80
何が起こったんじゃあああああ

962 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 01:35:18 ID:LPc/jTli0
職人様乙です!

いやーな空気が流れてる…

963 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 04:43:56 ID:41IuvOXd0
え?!何?!うわあぁぁもう嫌だよ・゜・。(ノД`)゜・。・
でも職人様ありがとう!

最初は悪趣味企画だと思った(スマソ)けど読むとすげーな、これ…

964 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 13:47:20 ID:L7K5v9Uy0
今まとめのリレー読んでる途中だけど、井川・藪ペアと関本・金澤ペア萌え

965 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 14:20:47 ID:kDaA+fw/0
がんばれゴレンジャー!

966 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 14:45:46 ID:estKmK3P0
大好きなゴレンジャーが何とか事態を打開してくれますように(-人-)

ついでに今のチーム状態も打開してくれ〜。・゚・(ノД`)・゚・。

967 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 16:19:24 ID:i/Llrr+Q0
うわ、なんか嫌な予感・・・まさかまさか、お前・・・

968 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 21:27:03 ID:bL79zCDN0
なんとか勝ちました。

969 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 21:27:56 ID:9EcpASqz0
彡 ゚ー゚)アハハ八八ノヽノヽノヽノ \ / \ / \ / \ /  \ /  \


970 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/27(日) 23:45:30 ID:vrWqpBhT0
土地勘ないんだけど、
逃げてる最中のセッキーとカナザーが再会できるのかどうか、
すごく気になってる。

971 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/28(月) 00:25:34 ID:2uIydLrJ0
福原好きの俺は早々脱落したのが悲しかったけど、その代わり関本が頑張ってて嬉しい

972 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/28(月) 00:29:17 ID:bPhSvT8Q0
今ならすぎえぐも活躍してくれるかなと思っている俺ガイル
リアルと混同しちゃいけないんだけどねw

973 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/28(月) 08:53:37 ID:bbexxoNQ0
>>971 セッキーが生きてる限り、おはぎも生きてる!

>>972 2003年オフの設定だもんなあ。


974 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/28(月) 16:55:46 ID:G5oCx+TW0
>964 同意。藪は大丈夫だろうか・・。あと、下さんの所で泣いてしまった。。

975 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/28(月) 23:30:08 ID:uDT9p5g00
御大の呟いてた言葉が気になって気になって仕方ない・・・

ところで、そろそろ次スレのこと考える時期かな?

976 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/29(火) 05:14:28 ID:L4/J6/TyO
age

977 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/29(火) 19:18:36 ID:pXviJnlG0
今日は勝てそうだな

978 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/30(水) 13:54:14 ID:4OqvkGM40
>>975
新作投下があるならそろそろ考えなきゃだな。
その辺のタイミングが分からん。

979 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/31(木) 06:22:03 ID:J3ZsoHLQ0
hosyu

980 :代打名無し@実況は実況板で:2006/08/31(木) 22:55:19 ID:QyyGgdb9O
捕手っ!

981 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/01(金) 20:23:34 ID:4JvVuczqO
スーパーage

982 :代打名無し@実況は実況板で :2006/09/02(土) 16:26:20 ID:cNxFhCoG0
捕手

983 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/02(土) 20:03:37 ID:w0/w42MGO
スーパーage最終章

984 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/02(土) 20:16:44 ID:pJj2EDIE0
ttp://blog.duogate.jp/mask555/
阪神のみをバカにする中日バカ男。
なぜ阪神だけ?
阪神ファンの女にブログで冷たくされたから。
他球団をバカにするのは真のファンじゃないね。
サイテー

985 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/02(土) 20:43:39 ID:yGJJIxB60
とりあえず次スレは立てたほうがいいね
挑戦してくる

986 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/02(土) 21:00:08 ID:yGJJIxB60
無理だった。誰かよろ
他バトスレについてのテンプレ部分のみ新しくしたので使って下さい

他球団現行スレ

広島東洋カープバトルロワイアル2005第二章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1150097510/

千葉マリーンズバトルロワイアル第14.章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1147095026/

日本ハムファイターズバトルロワイアル
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1153574704/

西武ライオンズ バトルロワイアル 第三章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1154347545/

一億円プレーヤーバトルロワイアル第五章
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1153748230/

関連スレ

各球団のバトルロワイアルスレを見守るスレ8
http://ex13.2ch.net/test/read.cgi/base/1147360492/

987 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/02(土) 21:01:45 ID:yGJJIxB60
他球団バトルロワイアル保管庫

讀賣巨人軍バトルロワイアル
ttp://www.geocities.co.jp/Athlete-Crete/5499/
横浜ベイスターズバトルロワイアル
ttp://www003.upp.so-net.ne.jp/takonori/
ttp://doubleplay.hp.infoseek.co.jp/ybbr05/ (2005年版保管庫)
広島東洋カープバトルロワイアル
ttp://brm64.s12.xrea.com/
ttp://www6.atwiki.jp/moriizou/ (2005年版保管庫)
中日ドラゴンズバトルロワイアル
ttp://dra-btr.hoops.jp/ (2001年版保管サイト)
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ (2001年版・2002年版保管サイト)
ttp://mypage.naver.co.jp/drabr2/ (2002年版保管サイト)
ttp://cdbr2.at.infoseek.co.jp/ (中日ドラゴンズバトルロワイアル2 第三保管庫)
ttp://qdr.mydns.jp/drbr2004/(中日ドラゴンズバトルロワイアル2004保管庫)
福岡ダイエーホークスバトルロワイアル
ttp://www3.to/fdh-br/
千葉マリーンズ・バトルロワイアル
ttp://www.age.cx/~marines/cmbr/
ソフトバンクホークスバトルロワイアル
ttp://sbh.kill.jp/
ヤクルトスワローズバトルロワイアル
ttp://f56.aaa.livedoor.jp/~swbr/
プロ野球12球団オールスターバトルロワイヤル
ttp://www.geocities.jp/allstar12br/
鷲バト
ttp://www.geocities.jp/trgebr/
ビリオネア・バトルロワイヤル
ttp://tokyo.cool.ne.jp/birioneabr/index.html

988 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 08:51:53 ID:8r+5yG7BO
保守

989 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 10:51:06 ID:wAjWhvlr0
阪神ファンの応援はなんであんなに糞なの?

990 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 18:59:09 ID:ZHhrmMe10
>>989
お前ら虚ヲタよりはましだけどな

991 :代打名無し@実況は実況板で :2006/09/03(日) 20:10:50 ID:Ep9JDiMU0
やのほしゅ

992 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/03(日) 23:49:08 ID:N4BhWHs3O
浅井捕手

993 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:14:27 ID:KCNv90g/O
1000

994 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:15:13 ID:KCNv90g/O
1000

995 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:15:53 ID:KCNv90g/O
1000

996 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:16:38 ID:KCNv90g/O
1000

997 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:17:18 ID:KCNv90g/O
1000

998 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:17:34 ID:hJdCEUfu0
1000なら彼女に告白

999 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:17:58 ID:KCNv90g/O
1000

1000 :代打名無し@実況は実況板で:2006/09/04(月) 01:18:37 ID:KCNv90g/O
1000

1001 :1001:Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。


実況は実況板でお願いします。プロ野球板での実況は禁止!
[ 野球ch ] http://live22x.2ch.net/livebase/

アンチ行為、他スポーツや球団・選手間との比較はアンチ板で。
[ アンチ球団板 ] http://ex13.2ch.net/kyozin/


449 KB
★スマホ版★ 掲示板に戻る 全部 前100 次100 最新50

read.cgi ver 05.04.02 2018/11/22 Walang Kapalit ★
FOX ★ DSO(Dynamic Shared Object)